マニアと味わう「ご当地カップ麺」の世界

第百六十三回 東洋水産「推しの一杯 魁龍 どトンコツ」

文・写真:オサーン


カップ麺ブロガーのオサーンです。

「ご当地カップ麺」連載の第百六十三回目となる今回は、東洋水産のカップ麺「推しの一杯 魁龍 どトンコツ」を紹介します。

福岡県の人気ラーメン店「魁龍 博多本店」の豚骨ラーメンの味が再現されています。

カップ麺で豚骨の〝臭さ〟しっかり再現 福岡の名店「魁龍」監修...の画像はこちら >>

久留米ラーメンの「呼び戻し」スープが特徴の「魁龍」

「魁龍」は、福岡・北九州市で生まれたお店。大きな釜でスープを炊き続け、減った分だけ新たなスープを継ぎ足していくことで熟成が進んでいく「呼び戻し」と呼ばれる、昔ながらの久留米ラーメンの手法が用いられています。

そうしてできたスープはどろどろザラザラ。盛大な豚骨臭さも特徴で、これは好みが分かれるほど。

今回、カップ麺でこの豚骨臭がどう再現されているのか、気になるところです。

というのも、「魁龍」を再現したカップ麺はこれまで、十勝新津製麺(とかち麺工房)やサンヨー食品、サンポー食品などから販売されてきたものの、その豚骨臭を再現できていたものは筆者の知る限り無いのです。

カップ麺で豚骨の〝臭さ〟しっかり再現 福岡の名店「魁龍」監修の一杯が拓く「クサ旨」の道
東洋水産の「推しの一杯」ブランドで再現

そんな「魁龍」を今回カップ麺化したのは、東洋水産の「推しの一杯」。レギュラー商品として札幌味噌ラーメンの「彩未」や家系ラーメンの「環2家」といった名店の味を高いレベルで再現している、ノンフライ麺を使用した名店再現系本格カップ麺ブランドです。

定価は税別333円でカップ麺としてはかなり高額ではあるものの、味にもかなり期待できるのではないでしょうか。

パッケージには「荒ぶるクサさと旨さの濃厚ど豚骨ラーメン!」と書かれており、臭いことが売りとして前面に押し出されてるので、「クサ旨」な豚骨臭の再現も期待大です。

「クサさ」はいかに表現されたか?

カップ麺で豚骨の〝臭さ〟しっかり再現 福岡の名店「魁龍」監修の一杯が拓く「クサ旨」の道
「推しの一杯 魁龍 どトンコツ」完成

スープは粉末スープと液体スープを入れて作るタイプ。

粉末スープが作るベースとなる豚骨スープはまったく奇をてらわない味で、とろみによる濃厚感があり、豚骨の厚みとコクに、ほんのりと醤油の存在感が感じられました。

お店のスープはどろどろザラザラで、カップ麺では骨粉のザラザラ感はありませんでしたが、どろどろはある程度実現できているように思います。

今回「どトンコツ」という商品名で、お店でも自らのラーメンを「どトンコツ」と形容していますが、確かに豚骨ど真ん中の正統派なスープという感じがします。

カップ麺で豚骨の〝臭さ〟しっかり再現 福岡の名店「魁龍」監修の一杯が拓く「クサ旨」の道
スープ表面の油脂

そのベースのスープに加える「液体スープ」には、豚脂を中心とする油脂の他に、「熟成した香り」......即ち豚骨臭がつけられています。

液体スープの袋を開けて直接単体でのニオイを嗅いでみたところ、豚骨臭とは程遠いチーズのような不自然なニオイに感じられ、正直言ってこれは期待薄だと感じました。

しかしながら、スープに溶かして食べてみると案外自然な豚骨臭となったのです。

おそらくお店の豚骨臭はもっとすごいとは思いますが、他のカップ麺ではみられないレベルで臭みがしっかり表現できていました。

基本的にカップ麺の豚骨スープは濃厚であってもクセがないものが多いので、今回のようなスープはとても貴重で珍しい存在です。

お店と同じ太め麺、シンプルな具

カップ麺で豚骨の〝臭さ〟しっかり再現 福岡の名店「魁龍」監修の一杯が拓く「クサ旨」の道
豚骨ラーメンとしては太めの油揚げ麺

麺は湯戻し時間5分の中細でストレートに近い形状のノンフライ麺。

魁龍はお店の麺も太めですが、カップ麺でも一般的な豚骨ラーメンに比べてひとまわりふたまわり太いです。

今回と同じ東洋水産の「正麺カップ」の麺などに比べると抑えられているものの、豚骨ラーメンとしてはつるみや弾力が強めに感じられました。

お店では濃厚豚骨スープとマッチするやわらかめの茹で加減である「ずんだれ」がおすすめされており、今回もその「ずんだれ」の食感を再現しているとのことですが、それほど極端にやわらかいわけではありませんでした。

麺量は75グラムで、大盛ではない通常サイズのどんぶり型カップとしては多めで、カップの形状が同じの「正麺カップ」と同じボリュームとなっています。

カップ麺で豚骨の〝臭さ〟しっかり再現 福岡の名店「魁龍」監修の一杯が拓く「クサ旨」の道
チャーシュー、メンマ、ネギの組み合わせ

具は、チャーシュー、メンマ、ネギの組み合わせ。

豚骨ラーメンといえば、ネギがたくさん入っていたり、キクラゲが入っていたりすることが多いですが、今回はネギこそ入っているものの量は多くなく、キクラゲは入っていません。

あまり豚骨ラーメンらしくはない汎用的な具の構成だと思うかもしれません。

ただ、魁龍はお店のラーメンもチャーシュー、メンマ、ネギがベースの具となっています。

今回のカップ麺のチャーシューは脂身がないですが大きなタイプで、メンマも量がしっかり入っています。

定価税別333円でかなり高額なのでそれに見合うかどうかは微妙ですが、ボリュームはきちんとありました。

「クサ旨」道を貫いて欲しい

カップ麺で豚骨ラーメンの豚骨臭の部分に注目したものは少ないので、この「魁龍」の味を再現したカップ麺は稀有な存在といえます。

豚骨臭は好き嫌いがハッキリ分かれるところで、他社はその再現をするつもりはあまりなさそうですが、「魁龍」だけでなく豚骨臭の強いラーメンが人気の「田中商店」などの再現カップ麺も出している東洋水産には、これからも「クサ旨」の道を貫いていって欲しいところです。

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