思わず目を疑うビジュアルの〝橋〟が、日本に存在しているという。

どうして、こんなことに――?

「な、な、なんだこの橋は...っ!?
桁も橋脚も見事なまでに年代バラバラ、大正から令和まで一世紀に渡ってツギハギを繰り返しながら生き続けてきた究極のチャンポンブリッジ!! おったまげた...」

2025年8月23日にXユーザーのシグナル(@mahirunoisland)さんがそんな呟きと共に投稿し、注目を浴びたのは、なんとも奇妙な橋の写真。

別の種類の橋が、〝つぎはぎ〟のようなビジュアルなのだ。

色も材質もなんだかバラバラ。比較的最近作られたような箇所もあれば、逆に古い時代に作られたと思しき箇所もある。

どうしたらこんなことになるのか想像もつかない不思議な橋に、X上では1万9000件以上のいいね(9月10日昼時点)のほか、こんな声が寄せられている。

「は、橋キメラ......!」
「まさに歴史の生き証人?」
「テセウスの橋?」
「歴史の積み重ねを感じさせる」
「古いトンネルを補強や拡幅が行われた例は知ってますが、橋でもあるんですねぇ」

この橋は一体、何なのか。Jタウンネット記者は8月30日、まずは投稿者・シグナルさんに話を聞いた。

被災と補修を繰り返し...

「な、なんだこの橋は...」 栃木の衝撃的〝つぎはぎブリッジ...の画像はこちら >>

シグナルさんが8月23日に見かけたという〝ツギハギ〟の橋は、栃木県佐野市にある安蘇川橋だ。

もともと古い橋などの構造物が好きだというシグナルさん。その日は、友人2人と一緒に車で葛生駅(東武鉄道)の先にある鉄道の廃線跡を見に行っていて、その帰りに安蘇川橋に立ち寄った。

「現地に行くまでこの橋の存在は全く知らず、カーナビの案内でたまたま通りがかったのですが、欄干の形が途中で何度も変わる様子を見て、これはちょっと普通じゃないぞと思い、友人に『ちょっと寄り道していい?』と断ってUターンし車を停めました」(シグナルさん)

車を降りたシグナルさんが安蘇川橋を観察してみると、そこには様々な時代に行われた橋の塗装や施工の記録が残っていた。

「見たところ、恐らく2回の大規模な補修で橋桁と橋脚を造り直した、全部で3世代の部材の混合のようでした。ただ写真の通り、2回の交換を行った箇所がそれぞれ離れた位置だったため、形状の変化は2回にとどまらず何度も繰り返し変化する姿になっており、なかなか興味深い姿だなと思いながら写真を撮影しました」(シグナルさん)

記者は9月9日、安蘇川橋の歴史について佐野市にも話を聞いた。

取材に応じた都市建設部道路河川課の職員は、橋が〝ツギハギ〟になっている理由を、「台風の被災を受けたところのみ、復旧しているため」と説明する。

現存する資料で判明している限りでは、安蘇川橋が架設されたのは1928年だ。

その後、時期は不明だが橋脚・桁の一部が被災の影響を受け、それを1982年に復旧させた。

また、2019年の台風19号によって橋脚・桁が損傷し、その補修が2021年に完了。

2回の被災・補修の間の2010年には塗装工事も行っているという。

なぜ橋全体を作り直すのではなく、損傷した箇所の補修を繰り返すのか? 同職員はその理由についても説明する。

「1986 年、安蘇川橋下流に多田大橋が建設されたことにより、主交通が南側のバイパスに転換し、安蘇川橋を通るルートは、地域住民の生活道路としての位置づけが強くなった。このため安蘇川橋については、補修や災害復旧等による⾧寿命化を図ってきた」

補修を繰り返しながらも、昭和の初期から令和の今に至るまで在り続ける安蘇川橋。

歴史を感じさせるその〝ツギハギ〟姿は、長年に渡って地域の人々の生活を支えてきた「勲章」と言えるかもしれない。

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