9月19日が何の日か、皆さんはご存じだろうか。
正解は、「育休を考える日」である。
2019年、「男性の育休取得をよりよい社会づくりのきっかけとしたい」という思いから、積水ハウスによって制定された記念日だ。
厚生労働省の令和6年度雇用均等基本調査によると、配偶者が出産した後、育児休業を取得する男性の割合は、どんどん大きくなっている。
2019年には7.48%だったのが、20年には12.65%、21年には13.97%、22年には17.13%に。そして23年には30.1%まで伸び、24年には40.5%で過去最高となった(23、24年は「産後パパ育休」を含む)。
男性育休は、ここ数年で一気に〝珍しいモノ〟ではなくなりつつあるというワケだ。

とはいえ、どんなものか広く知られているわけでもない。
そこでJタウンネットでは、9か月間の育児休業を取得した会社員男性とその妻の体験をご紹介する。
夫が育休中にしてたこと
「育休を9ヶ月取ってくれた夫の考え方と行動全てが素晴らしいので、忘れてしまわないように残させて欲しい...!」
Xユーザーのもか(@mom_mom_moka)さんは夫の9か月間の育休が明けて間もなく、そう呟いた。2025年3月3日のことだ。
もかさんと夫は、20代の会社員夫婦。2024年6月に息子さんが誕生した。
ポストによると、「育休取ってくれてありがとう」と言っても、「俺がただ自分の子の成長を間近で見たいと思っただけ」「それができるのは今しかない」と返してきていたというもかさんの夫。
そんな彼が育休期間に担ったのは「授乳以外の家事と育児をガチで全部」だった。

もかさんが何か家事をしようとしても、「俺にはどう頑張っても授乳はできないから」「授乳してくれてるだけで十分」と言われたという。
離乳食が始まってからは、もかさんがこだわりたい部分があるため離乳食を担当するようになったが、夫はこれも手伝ったり、洗い物は担当してくれたり。
もかさんは夫の育休期間を振り返り、こう呟いていた。
「私がやってるのは、授乳と、離乳食作りと、赤ちゃんと遊んでるくらい
後は、夫に毎日ありがとうと感謝の気持を伝えることくらい」(もかさんのポストより)
産後の大変な時期を、もかさんはかなり穏やかに過ごせたように見受けられる。

夫婦はどんな思いで9か月間を過ごしていたのだろうか? Jタウンネット記者19日、当時の話を聞いた。
周囲からは共感を得られない部分も
夫が9か月間の育児休業を取得すると知った時、もかさんがまず思ったことは「よかったね」だった。
もかさん:正直、この時はまだ男性育休のありがたさ(=育児の大変さ)をあまり分かっておらず、『育休?取りたいなら取れば?』くらいの気持ちでいました(笑)
ただ、9か月の育休を取得するにあたっては周囲とのずれを感じることもあったようだ。
もかさんの夫(以下、夫さん):取得自体は法律で決まっていることからもスムーズでしたが、若干共感を得られない部分はありました。夫婦で育休取得して何をするの? 手が余るのでは? という質問をされたことはありました(授乳以外の家事育児は全部できるのでやりますと答えていました)
それでも取得を決めた理由は、「子供とできるだけ一緒に過ごしたい」という思いがあったからだ。
夫さん:また、妊娠・出産に関して、妻には身体的な負担がある一方、私には何もないので、せめて育児は主体的に関わっていきたいと考えました

そうして過ごした9か月。どんなことが嬉しかったか、どんなことが大変だったかを尋ねると、こう答えてくれた。
夫さん:段々とハイハイの歩数が増えていったり、初めて見せる表情を見たり、子どもの成長を逃さず見ることができたことが嬉しかったです。よく寝てくれる子どもだったこともあり、あまり大変に感じたことはありませんでした
二人だからこそ
夫婦揃って子育てをスタートしたもかさん夫婦。二人だからこそできたこともある。
もかさん:二人で育児の方針を決めて、それを実践して、上手く行ったら一緒に喜んで、思うように行かなかったらまた二人で別の解決方法を探してまた実践して...というように、トライアンドエラーを二人で繰り返せたのがよかったと思います

同じ目線、同じ熱量で育児をしている大人が、自分の他にもう一人いること。その「ありがたさ」を感じたそう。
たとえば、息子さんがワクチンの副作用で熱を出した時のこと。
もかさん:夫は数か月前から楽しみにしていた大切な予定があったのですが、それを即座にキャンセルしたんです。私一人で看病できるから行ってきていいよと言いましたが、『息子が心配だから行っても楽しめない』と言って、付きっきりで看病してくれました
一人でもできる。でも、二人ならもっと心強い。この時の夫さんの行動は、もかさんにとって、とても印象深いものだったそうだ。

夫さんも、二人一緒だったからこその利点があったと語る。
夫さん:ほぼ全ての時間を家族で共有できていたことがよかったです。夫婦で同じ出来事に同じように向き合えたことで、認識のズレも少なく、その結果子どもも穏やかに過ごせたのではないかなと思います
結論→育休、もっと長くてもよかった
そんな充実の日々だったからこそ、夫さんの育休期間が終わる時は「寂しくてたまりませんでした」と、もかさん。
もかさん:今まで全部二人であれやこれやと相談しながらやってきたことができなくなることへの不安もありました
夫さんも、もう少し長く育休を取ってもよかったのではないか、と感じたそうだ。
実は夫さんは元々、制度上最長である1年間の取得をする予定だった。
夫さん:仕事はいつでもできますが子育ては1度きりなので、今となっては、元々の予定通り1年間取得してもよかったかなと思います」(もかさんの夫)

政府は、男性の育児休業取得率を、2025年までに50%、2030年までに85%にするという目標を立てている。男性の育休取得は今以上に〝当たり前〟になっていくだろうし、長めの育休を取る人も増えていくかもしれない。そのモデルのひとつになりそうな、もかさん夫婦の育休エピソードには、X上では合計5万5000件以上のいいね(19日夕時点)のほか、こんな声が寄せられている。
「とっても素敵なご夫婦ですね
これからもきっと、家族で力を合わせて行けるんだろうなあ」
「一世代前の子育て家庭なので、パパ育休なんて羨ましい!
そして、赤ちゃんの成長を間近で見られるのはパパにとっても幸せなことですよね。うちの夫にも経験させてあげたかったです」
「19年前のうちの夫もそうでした~((*´∀`*)) 今でも心から感謝している。
で、夫はその時間が自分にとって良かったからって男性育休制度に前向きな管理職になってるよ」