「『弓道』の文字で弓を引く人を描きました」――そんな呟きと共に投稿された1枚の絵が、X上で注目を集めている。
それは、2025年9月10日の「弓(9)道(10)の日」に、Xユーザーの文字郎(@982ra1)さんが投稿した1枚。
紺の袴・黒い上衣を着用した人が、立派な弓を力強く引いている。
しかもその「弓」は漢字の「弓」。射手の頭や腕、胴体などは「道」の字で表されているではないか!
パッと見は「弓道をしている人の絵」なのに、ちゃんと「弓道」の文字も読めるなんて......なんという表現力。
Jタウンネット記者は16日、作者の文字郎さんに話を聞いた。
「遊び心で、文字を絵にする」
文字郎さんは、デザイン書道家で墨絵師、グラフィックデザイナーとしても活動している人物だ。
中でも、文字と絵を組み合わせた「文字絵」を得意としている。注目を集めた「弓道」も、「文字絵」作品の1つだ。
「3年前くらいから、私の得意な書道を仕事にしていきたいと思い、それを宣伝する場としてSNSでの投稿を始めました」(文字郎さん)
最初は文字だけを書いて投稿していたが、あまり反応は芳しくなかった。そこから、見る人が喜ぶ投稿は何か、と見せ方を試行錯誤し、色々と挑戦していったという。
「その中で、私は絵を描くことも得意でしたので、『遊び心で、文字を絵にする』作品を投稿しました。
その評判がすごく良かったので、文字を絵にアレンジする『文字絵』作品を創作することに集中するようになっていきました」(文字郎さん)
文字絵を描く時は、文字を変形させる。文字郎さんがその際にこだわっているのは、「変形しても文字がカッコよく、美しくあること」。
また「『文字が絵になる面白さ』をわかりやすく伝えること」も大切にしているという。
「その工夫として、カラーのイラストと墨の文字を融合させる手法を取り入れています。
例えば、今回の『弓道』でいうと、カラーのイラストの部分は『弓の弦』『矢』『射手の袴』を描いていますが、そこに墨の線の『弓道』の文字を書くことで作品が完成します。
こうすることで、文字とイラストが融合し、『文字が絵になる面白さ』がわかりやすくなります」(文字郎さん)
ちなみに、「文字絵」というのは大昔から日本の存在している。
「平安時代、ひらがなを植物の絵に仕上げた『葦手絵』というものがあったり、江戸時代では、庶民の娯楽として文字で絵を描いた『文字絵』が流行ったことからも分かるように、古くから伝わる日本の伝統文化の一つです」(文字郎さん)
そんな伝統文化としての「文字絵」の面白さを伝えていきたい。「文字絵」を通して文字のカッコよさや面白さを伝えたい。
そんな思いで「文字絵」の創作に取り組んでいると、文字郎さんは語った。
「AI・デジタル全盛の時代だからこそ、今改めて、筆を持って、アナログで、生身の身体で表現することも大切にしたいと思っております」(文字郎さん)
文字でもあり絵でもある不思議な「弓道」に、X上では34万件以上のいいね(17日夕時点)のほか、こんな声が寄せられている。
「見入ってしまう」
「発想と象形テクの勝利ですね」
「違和感がないのがすごい」
「弓道やってる娘が感動してました」
こうした反響について、文字郎さんは
「反響のあまりの大きさに、ただただ驚くばかりでした。ユーザーの皆様よりあたたかな言葉をいただきまして嬉しかったですし、皆様がどういう部分に感動されたのかをお伺いできて今後の表現活動の参考になりました」
とコメントしている。
文字郎さんの「文字絵」は、主にXで完成形の画像、Instagram(@moji_ro_)で文字を書き入れていく過程の動画を視聴可能。アッと驚く作品がズラリと並んでいる。