「岩手銀行すげ」――2025年10月2日、X上にそんな感嘆の声が零れた。
添えられていたのは、立派なレンガ造りの建物の写真だ。
その正体は、岩手県盛岡市にある「岩手銀行赤レンガ館」。1994年に国の重要文化財に指定された、明治時代の建築だ。
「これを維持してるのは、企業としても尊敬出来る」
とも呟きながらこの建物を紹介したのは、新潟県で仏像・神像の保存修復活動等を行う「仏像文化財修復工房」の松岡誠一(@mokujiki2)さん。
このポストには4万4000件の「いいね」(10月15日時点)が付けられ、ユーザーからはこんな声が寄せられている。
「この前行ったけど本当に素敵だった!」
「こないだ盛岡行った時時間あったから見てきた。内装すごい」
「外観も素晴らしいが内部が圧巻 本当に細部まで惚れ惚れする美しさだった」
「東京駅によく似てるから、絶対辰野金吾の設計だろ!と思って検索したら、やっぱり辰野、「これが東日本大震災の揺れに耐えて2012年の夏まで岩手銀行の支店として普通に営業していたのだから、それも凄いと思う」
「岩手銀行中ノ橋支店。すぐそばには秋になれば天然の鮭がのぼってくる中津川。上流には珍しい擬宝珠がついている橋・上の橋があるよ」
Xには、「岩手銀行赤レンガ館」を絶賛する人々の声があふれている。Jタウンネット記者は投稿者・松岡誠一さんと、岩手銀行担当者に、詳しい話を聞いてみた。
たまたま建物を見て、迷わず中へ
まず投稿者・松岡誠一さんがこの建物を訪問したのは、10月1日のことだった。全くの偶然だったようだ。
「仕事で盛岡に行って、せっかくなので、盛岡城ともりおか歴史文化館に寄ろうと駐車場を探してグルグル回っていました。そして、たまたま停めた駐車場が岩手銀行のものでした。
駐車場を出たら、あの立派な建物が目に入って、迷わず中に入りました。外見の重厚感と中の華麗なデザインが素晴らしいです。また、建築当初からあまり改造されていなさそうなのも、感じ入りました」(松岡誠一さん)
「この建物は(外観はもちろん)内部も古い状態で残されていて、感動しました。さすが、国指定重要文化財です」と、松岡さんは感激した様子だった。
「2012年まで、銀行として使用していたのをお聞きして驚きました。こういう立派な古い建築がまちの中に残っていますと、まちの風景がうるおいますし、歴史の深さも感じ、住みやすい、いい都市なのだろうなと感じます」(松岡誠一さん)
松岡さんの言う通り、この建物は2012年まで銀行として使われていた。
「エントランスホールの八角形の天井は見どころです。東京駅を想起させるデザインで、入館してすぐご覧いただけます」(岩手銀行広報室担当者)
そう語るのは、取材に応じた岩手銀行広報室の担当者。
この建物を手掛けたのは、東京駅を設計したことで知られる辰野金吾氏。素晴らしい館内の意匠も、なんとなく感じていた既視感にも、納得だ。
岩手銀行では、そんな同館の館内や多目的ホールの貸し出しを積極的に行っているという。その目的は何か? 担当者に尋ねると、次のように答えた。
「周辺地域の活性化に貢献するため、施設を公開しています。もともと銀行として地域のお客さまに身近な建物でもあったので、ホールを貸し出し、イベント開催することで、地域のみなさまに何度も訪れていただければと思います」
「地域のみなさまが集まり、多くの方に楽しんでいただけるようなイベントに、ホールを利用していただきたいと考えています」(岩手銀行広報室担当者)
イベントカレンダーを見てみると、コンサートやトークショー、作品展やハンドメイド商品の展示販売会など、いろんなイベントが開催されているらしい。
特に、毎年12月に岩手銀行のグループ会社「manordaいわて」が開催しているクリスマスマーケットは人気だという。
「毎年多くのお客さまにお越しいただいています。2024年には2日間で5000名のお客さまにご来場いただきました」(岩手銀行広報室担当者)
うつくしい建物の中で、楽しいクリスマスマーケットとは素敵じゃないか。気になる人は、スケジュールの発表を待たれよ。