車を運転している時、事故が発生したわけでもないのに、なぜか渋滞が起きることがある。なぜ? と思っていると、工事中に気付くことがある。

通学や通勤のため徒歩で移動中の場合も、急いでいるときにかぎって、工事中の看板に出くわすことも......。

みんなの生活に必要で大切な公共工事だと分かってはいても、思わずイライラしてしまう日もあるかもしれない。

そんなとき、こんな看板だったら、どうだろう? 

いまX上で話題になっている看板だ。ほとんどがひらがなで書かれていて、しかも語尾がなんか見慣れない。

「げすいどうを つくってるでね」

「でね」......って?

思わずニヤリとした人は、静岡県民らしい。

看板の下の方には「はままつしじょうげすいどうぶげすいどうこうじか」――浜松市上下水道部下水道工事課の連絡先が書いてある。

静岡県西部、浜松付近の方言のようだ。

とあるユーザーがこの標識を紹介したところ、投稿には数多くのいいねのほか、こんな声が寄せられている。

「もうひと目見た瞬間、訛りで静岡だと分かったw」
「方言丸出しじゃないの、可愛いから私は好きだけど笑笑」
「遠州弁? は三河弁に似とる」
「頭の中で、遠州弁アクセントで再生された」
「方言の標識良いな」
「子ども達が読めて良いアイデアな看板」
「なんかかわいい」

いったいなぜこの素敵な工事看板を立てることになったのか。工事を請け負っている会社、マットに詳しい話を聞いた。

どうして、ひらがなに?

「げすいどうをつくってるでね」 浜松の工事看板にSNS絶賛「...の画像はこちら >>

マットは、静岡県浜松市浜名区に本拠を置く、土木建築・施工・管理を主な業務とする企業だ。

Jタウンネットの取材に応じたのは、ひらがな&方言看板を立てた担当者だった。

看板が立てられているのは、浜松市浜名区三ヶ日町都筑にある「浜松市立三ケ日東小学校」の通学路。

「小学校1年生でも読めるようにしたい」と、このスタイルを採用したという。

また「静岡県立三ケ日青年の家」を出発点とするオリエンテーリングの経路にも同様の看板を設置しているそうだ。

「元々は漢字の看板にかなをふっていましたが、思い切って全部ひらがなにしてみようと思いつき、2024年度工事より、この手の看板を作成しています」(マット担当者)

ひらがな看板は、前年に実施した通学路向けひらがな横断幕の流れをくむものだという。

語尾が「でね」になる前は...

「つくってるでね」という方言についても、登場当初から変更が加えられている。

「方言の使用は、2024年度までは方言『だに』で、2024年度は『でね』にしております。断定系から柔らかい系に変更した感じです」(マット担当者)

「だに」の看板にイラストが描かれているように、マットでは「ひらがな」「方言」のほかにも「絵付き」の看板も使用している。このような工夫について、担当者は次のように語る。

「税金を使った公共事業である以上、この手のものは地域住民や通行者や発注者の理解が得られなければ実施できないと考えておりまして、少しづつ試しながらやってきている感じです」
「方言付きや絵つき看板は、年代を問わず、概ね良い評価です。今回の工事でもオリエンテーリングの子らが興味を持ってくれているようです」(マット担当者)

ところで、浜松市では毎年、工事現場周辺の住民の理解と協力を得ることを目的に、施工業者が実施した工事現場のイメージアップ状況を審査し、優れたものを表彰する下水道工事のイメージアップコンクールを実施している。

工夫を重ねている成果か、マットは12年連続(工事受注年)して表彰をうけているという。

23年度の受賞作品を見ると、マットは最優秀賞。「このさき げすいどうこうじちゅうだにっ」と書かれた横断幕や、堅苦しさの排除を目指したイラスト看板やポスターなどが評価されたようだ。

「浜松市役所はこの手のアイデアに対する理解度が高く、前向きに対応してくれる」と担当者は話す。

他の企業も、イメージアップのためにいろいろな工夫を凝らしている模様。浜松市内を移動するときは、下水道工事の現場にご注目を。

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