マニアと味わう「ご当地カップ麺」の世界
第百六十八回 「一蘭とんこつ 釜だれ」
文・写真:オサーン
カップ麺ブロガーのオサーンです。
「ご当地カップ麺」連載の第百六十八回目となる今回は、博多豚骨ラーメンの名店「一蘭」の味を再現したカップ麺「一蘭とんこつ 釜だれ」を紹介します。
「一蘭」カップ麺の第3弾となる商品で、今回は「天神西通り店」限定メニューである「釜だれ」の味が再現されています
具なし高額カップ麺の先鞭
「一蘭」は、福岡に本店があり、北は北海道から南は沖縄まで全国に展開する本格豚骨ラーメン店。
臭みがなくてコク深いラーメンの味はもちろん、席がひとりひとり個別の「味集中カウンター」でも注目を集め、現在はインバウンド需要も獲得。
どこのお店も長蛇の列ができていることが珍しくありません。
そんな「一蘭」はカップ麺でも大きな話題を集めており、2021年に発売された第1弾カップ麺「一蘭 とんこつ」は、カップ麺離れした本格的な味もさることながら、カップ麺として明らかに異質な高額設定である定価税込490円(当時)が注目されました。
しかも高額なのに具が入ってない「かけラーメン」。
現在は高価格なカップ麺が多く出てきており、また「かけラーメン」も珍しくなくなりましたが、その先鞭をつけたのが「一蘭」と言っても過言ではありません。
2021年に第1弾カップ麺として「一蘭 とんこつ」、2024年に第2弾「一蘭 炎」が発売され、今回2025年に第3弾となる「一蘭とんこつ 釜たれ」が登場しました。
ちなみに、「一蘭 炎」は現在販売を終了していますが「一蘭 とんこつ」は販売中で、他にも袋麺や、棒ラーメン、箱ラーメンなどが充実しています。
いずれもかなり高額ですけどね。
天神西通り店限定!四角い器の「釜だれとんこつラーメン」
今回の「一蘭」カップ麺第3弾商品は、「天神西通り店」限定メニューである「釜だれ」の味が再現されています。
製造は第1弾、第2弾カップ麺と同じくエースコックが担当。
「釜だれ」とは、特製の「釜煮こみ焼豚」の煮汁を豚骨と合わせたスープ。
お店では四角い丼で供され、普通の豚骨ラーメンに比べて褐色がかった色味が特徴的。
定価は税込580円で、第1弾、第2弾同様にかなりの高額。
高いからといって必ずしも味が担保されるわけではないですが、それでも今回もカップ麺離れしたおいしさが期待できそうです。
「コクと甘みが際立つ「釜だれ」スープ
別添袋は3つですべて後入れ。
粉末スープ、液体スープ、秘伝のたれそれぞれに「A」「B」「C」のアルファベットが振られており、麺の湯戻し後に順番に入れていく形となっています。
今回も第1弾、第2弾に引き続き、今回も具は入っていない模様。
「一蘭」ならではのきめの細かな豚骨に、豚のコクや甘みが感じられる醤油味の「釜だれ」を加えたスープは、いつもの豚骨よりも褐色がかっています。
第一弾「一蘭 とんこつ」の豚骨スープも旨みが濃く、スープ表面に浮く油脂によってこってり感が強いのですが、今回のスープは焼豚の煮汁を合わせた「釜だれ」によって、さらに甘みや旨みが濃いこってりしたスープでした。
豚のコクと甘みによるスープの厚みは、「一蘭」カップ麺はもちろん、筆者がこれまで食べてきたどの商品よりもカップ麺離れしているように思います。
一方で、通常の豚骨スープで感じられる豚骨のスッキリした旨みはなく、釜だれは諸刃の剣状態。
今回の「釜だれ」とこれまでの「一蘭とんこつ」だと、おそらく好みは真っ二つに割れそうで、純粋な豚骨ラーメンが好きならばこれまでの「一蘭とんこつ」が、豚骨醤油など他の味が好みならば今回の「釜だれ」を好むのではないかと思います。
どこのお店でも食べられる「一蘭」の通常の豚骨ラーメンが好きならば、いつもの「一蘭とんこつ」の方が魅力的な味かもしれません。
硬めで粉っぽさを再現した細いノンフライ麺
そんなスープに合わせられているのが、細ストレートのノンフライ麺と辛だれ。
やはり今回も具はまったく入っておらず、「かけラーメン」状態です。
別添「秘伝のたれ」に入っている辛だれは、これまでの2つのカップ麺に入っていたものと同じのようです。ちなみに、特に豚骨ラーメンでは赤いたれをスープの上にのせるのはよく見ますが、その元祖は「一蘭」とのこと。
辛さはそれほど強くないものの、辛味とともに甘みがあり、スープの味に広がりを加えています。
ただ、今回はスープ自体がかなり甘いので、過去の2品に比べると辛だれの効果は限定的で、味よりも視覚効果の方が大きいように思います。
麺は、湯戻し時間4分の細くてストレート形状のノンフライ麺。
細いのに湯戻しに長めの4分を要しながら硬めの食感となっており、歯切れの良さや粉っぽさが感じられます。
バリカタ食感や粉っぽさのある博多麺をノンフライ麺で再現するのは明星食品が一番上手だと思っていますが、今回の麺はエースコック製ながらまったく引けを取りません。
エースコックの他の商品では今回のような細麺が使われる商品は出てこないので、技術的には可能でももしかしたらコスト的な問題でなかなか使えない麺なのかもしれません。
高価格が許容できるなら間違いのない一杯
というわけで、「一蘭」のカップ麺第三段「一蘭とんこつ 釜だれ」をレビューしました。
「一蘭」ならではのきめの細かい豚骨スープに、「釜だれ」によってコクや甘みが加えられ、カップ麺では出会ったことがないような厚みが感じられます。
一方で、「一蘭」豚骨のスッキリした魅力は「釜だれ」によって薄れており、必ずしも単純にスープの魅力が増したわけではないとも感じました。
「一蘭」のいつもの豚骨スープとは別物のおいしさですが、カップ麺ではなかなか得難いリッチな味です。
味だけではなく価格もカップ麺離れしていますが、高額設定が許容できるなら間違いのない一杯でしょう。
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