東京・渋谷の「古代エジプト美術館」に展示されている1つのミイラが、X上で注目を浴びている。
どんなミイラか。
Xユーザーのいつき(@eki_itsuki)さんは、この魚のミイラをみて、あるものを思い出したらしい。たぶん、多くの読者も同じものを思い出したのではないかと思う。
そう。干物だ。干物に似すぎているのだ。
X上でも大きな共感を集めたのだろう。いつきさんが「干物じゃないよミイラだよ」と呟きつつ投稿した魚のミイラの写真には、2万9000件を超えるいいねが寄せられている(『「干物じゃないよ」 渋谷・古代エジプト美術館の〝魚のミイラ〟に2.9万人困惑「良いお出汁とれそう」』)。
「魚のミイラ」と「干物」の間には、どんなちがいがあるのだろう。古代エジプト美術館に聞いた。
魚のミイラ、どうやって作る?
取材に応じた古代エジプト美術館・館長の菊川匡さんによると、「魚のミイラ」は数年前にヨーロッパのコレクションから取得したもの。
記録が残っていないため正確な発掘場所や年代については「確定はできません」。ただ、エジプトのミニヤー県にある古代エジプト遺跡「オクシリンコス」で発掘されたものである可能性がとても高いという。
「オクシュリュンコス(オクシリンコス)ではこれまで、約5万匹、長さ6メートルに及ぶ魚ミイラの供物層が発見されている。当時、魚は神聖視され、神への供物・儀礼的存在として埋納された。包帯(リネン)とハルファ草(乾燥用の植物)を層状に重ねて保存していた」(菊川さん)
どうやら「魚のミイラ」は、神様へのお供え物として扱われているものだったようだ。それにしても5万匹って......凄すぎる。
菊川さんは、「魚のミイラ」がどのようにして作られていたと考えられているかも、教えてくれた。
手順としては、まず開腹して内臓を除去した後、塩を使って40日間にわたり脱水。それを酢で洗浄、乾燥させ、ホホバ油や没薬といった香油・軟膏を塗布する。ただ、「大型魚は内臓除去(開腹)されたが、小型魚は未処理のまま乾燥されていた例もある」。
さらに、腹腔内にクエン酸や重曹などの吸湿・防腐用の混合物を充填させてからリネン包帯で巻き、最後に蜜蝋(ビーズワックス)で表面をコーティングして完成だ。
そう聞くと、干物とはかなり違うものであることが分かる。ちなみに古代エジプト美術館に展示されている「魚のミイラ」は、包帯を取ってある状態とのこと。
魚のミイラ、食べられる? 館長さんに聞いてみた
ところで、古代エジプト美術館の公式Xアカウント(@Eva19kyHHT9uDyj)は23年6月25日、こんな呟きを投稿していた。
「当館ファウンダーの菊川は、いわきでメヒカリいただいたようです! 美味!
古代エジプトのお魚のミイラに似ているとか似ていないとか」
美術館側としても「魚のミイラ」が干物っぽいという認識はあるようだ。
ただ、食べることができるかどうかについて、菊川さんはこう断言した。
「もちろん、食べられません」
そりゃそうだ。
読者の皆さん、くれぐれも「魚のミイラ」で出汁を取ろう、などとは考えないように。
ミイラ喰いはミイラに、なっちゃうかもしれないぞ。
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