祖母を訪ねた様子を楽しそうに話した娘。そのあと、わが子にポツリ語り掛けた母の言葉。
40年たった今も思い出す、「美しい心の情景」でした。
――Mさん(愛知県・70代以上男性)の体験談。
<Mさんからのおたより>
40年も前のことです。若い教師だった私は、とあることから人間不信に陥り、夏休みに何の目的もなく山陰に旅に出ました。
帰路のディーゼル急行の車内は、まさに酷暑。急行といえど扇風機しかない時代です。
大粒の汗をかいて、私は狭い通路に立っていました。
うつろな私を見かねてか、対面座席に大人と子ども4人で座っていた中の男性が、「バッグを持ちましょうか」と声をかけてくれました。
私は遠慮もなくバッグを持ってもらったので、さすがに何か言わなくてはと思い、子どもたちの年齢や学年などを半ば義理のように尋ねました。
父親が気恥ずかしそうに
すると、姉妹だという女の子たちの妹の方が、家族で鳥取の祖母の所に行ってきて大阪に帰るところだなどと、うれしそうに話してくれました。
そのときです。笑顔で聞いていた母親が姉妹に向かって、まるで家での自然の会話ようにポツリとかけた言葉を、私は今でも克明に覚えています。
「お父さんが工場で一生懸命働いてくれたので、おばあちゃんの所に行けたんだよ。おばあちゃん、元気でよかったね」
たったこれだけの短い会話でしたが、父親が気恥ずかしそうに、でも何か心中から湧き出てくるような笑みを、日焼けした顔に浮かべていたのが印象的でした。
祖母へのいたわり、働いて家族を養う父親を敬愛する母子の心、本当に美しい心の情景でした。
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(※本コラムでは読者の皆さんに投稿していただいた体験談を紹介しています。プライバシー配慮などのために体験談中の場所や固有名詞等の情報を変更している場合がありますので、あらかじめご了承ください)
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