今、「かわいい」と注目されている古墳がある。
古墳というと、3世紀半ばから7世紀にかけて築造された、当時の王や豪族など支配層の墳墓(お墓)。
それだけたくさんあれば、当然、個性もある。今話題の古墳は、その名前が「かわいい」。なんたって......。
「みかんのへた山古墳」
というのだから。
兵庫県赤穂市にあるこの古墳。「みかんのへた山古墳」という名称のおかげで、Xには、「これは...かわいい」「わー、行きたい」「ちいかわが登ってそうな古墳」などといった声が多数寄せられている。
「みかんのへた山古墳」というキュートな名称は、いつごろ、どのような経緯で付けられたのだろうか? 「みかんのへた山古墳」には、いったいどんな人物が埋葬されていたのか? 赤穂市教育委員会に聞いてみた。
かつては「みかんのへた」ではなく...
赤穂市教育委員会文化財課の担当者は、「みかんのへた山古墳」という名称の由来について、次のように語った。
「実は、もともと『みかんのへた』ではなく、戦前には『ゆうのへた』と呼ばれていました。いつ頃から『ゆうのへた』と呼ばれていたかについては定かではありませんが、少なくとも大正時代頃にはこう呼ばれていたようです」
「ゆう」とは古い関西弁で「柚子」のことだという。
「古墳のある山はきれいな半球形をしており、山頂に丸い古墳がとびだしたように築かれています。古墳のある山が柚子の果実、その上の古墳が柚子の『へた』のようにみえることから、こう呼ばれるようになったようです」
「戦後になると古墳の麓に蜜柑畑が作られ、子供たちが蜜柑の実を食べながら古墳に登って遊ぶようになったことから、しだいに柚子が蜜柑に変わり、『みかんのへた山』と呼ばれるようになったようです」(赤穂市教育委員会文化財課担当者)
1960(昭和35)年頃の「みかんのへた山古墳」の様子を捉えたモノクロ写真を見せてもらった。みかんのへた部分もくっきりと見える。
この古墳は、播磨灘を臨む海岸に築かれており、航路の管理や漁業といった「海」で活動を行った有力者の古墳の典型例として、1975(昭和50)年、兵庫県指定史跡となった。直径28メートル、高さ4.5メートルの円墳だ(2018~2020年度の赤穂市教育委員会調査による)。
小さな湾を見下ろすような立地で、遠くには家島諸島や小豆島・四国を臨むことができる。
近年の発掘調査では、副葬品の一部として、ヤマト政権から各地の有力者に配布されたと考えられている「鉄製甲冑」の破片が出土したという。
「鉄製甲冑は当時最新鋭の武具の一つで、こうした器物をヤマト政権から入手している有力者は、播磨地域でもごく一部に限られます」
「みかんのへた山古墳が築かれた時代、4世紀末~5世紀初頭という時代には、ヤマト政権が朝鮮半島や中国大陸との交渉を重視し、航路や海路を重視した時代と言われています」
「みかんのへた山古墳の被葬者も、ヤマト政権から港や航路の管理を特別に任されていたという人物像が発掘調査や近年の研究成果などから推測できます」(赤穂市教育委員会文化財課担当者)
「みかんのへた山古墳」の見どころは、やはり瀬戸内海と坂越(さこし)湾をのぞむ美しい景色だ。瀬戸内ならではの穏やかな海と、坂越湾に浮かぶ鍋島・生島の姿を一望することができるという。担当者は、「ぜひ美しい風景を眺めながら、なぜ当時の有力者がこの場所に古墳を造ることにしたのか、古代に思いをはせてみてください」と語る。
おすすめのアクセスを聞くと、JR坂越駅から徒歩で、江戸時代の雰囲気が残る坂越のまちなみを通り、みかんのへた山古墳へむかう遊歩道のウォーキングだという。
みかんでも食べながら歩く、古墳の旅。なんだか楽しそうではないか。行ってみたい。
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