ここがらくちん!幻の巨大クラゲを隠れ家として利用している稚魚たち
Image credit:Schmidt Ocean Institute

ここがらくちん!幻の巨大クラゲを隠れ家として利用している稚魚...の画像はこちら >>

 クラゲの中では世界最大級であるにもかかわらず、深海に生息するため、めったに見ることができない幻の「ダイオウクラゲ」は、深海生物好きを魅了してやまない。私もその中のワンオブゼムだ。

 アルゼンチン沖の深海で撮影された貴重なダイオウクラゲの映像には、傘の下に小さな稚魚の群れが身を寄せ、一緒に泳ぐ姿が映っていた。

 アルゼンチンの研究チームは、稚魚たちが巨大クラゲを隠れ家代わりに利用して、捕食者から身を守っていると考えている。 

 この研究成果は『Ecology[https://esajournals.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/ecy.70542]』誌(2026年10月14日付)に掲載された。

深海探査機が捉えた幻の巨大クラゲ

 アルゼンチンのブエノスアイレス大学のマリア・エミリア・ブラーボ博士率いる研究チームは、2025年12月から2026年1月にかけて、アメリカのシュミット海洋研究所の調査船に乗り込み、アルゼンチン沖の深海を調査した。

 遠隔操作型の無人探査機(ROV)を使って探査中、水深約250mの薄暗い海中に漂っているダイオウクラゲの姿をとらえた。

 ダイオウクラゲは世界最大級のクラゲであり、傘の幅は1mを超え、腕の長さは10mに達することもある。

 これほど巨大なのに、1899年に最初の標本が採取されて以来、世界中でまだ120回未満しか目撃されていない幻のクラゲなのである。

 ダイオウクラゲには、「スティギオメデューサ・ギガンテア(Stygiomedusa gigantea)」という学名が付けられている。「冥界の巨大なメデューサ」という意味だ。

 スティギオは、ギリシャ神話で冥界を流れる川「ステュクス」に由来する。メデューサは、ギリシャ神話に登場する髪がヘビの怪物の名前で、クラゲの長い触手がその髪に似ていることから、クラゲを指す言葉になった。

 今回撮影された個体は全長約6mに達し、海流の中に長い腕をなびかせながら泳いでいた。

[画像を見る]

クラゲの傘に潜り込む稚魚たちの姿をとらえる

 映像を詳しく確認すると、ダイオウクラゲのまわりには、約19匹の小さな魚が泳いでいた。

 この魚はイボダイ科のクロアブライボダイ(Centrolophus niger)の稚魚である。

 稚魚の群れはクラゲの長い腕の周りを泳ぎ回り、傘の下を出入りしていた。

[画像を見る]

 深海の海中には身を隠す場所がほとんどなく、魚の稚魚にとって非常に危険な場所である。

 研究チームは、稚魚たちが暗闇から襲いかかってくる捕食者から身を守るため、巨大なクラゲを動く隠れ家として利用していると推測している。

 ダイオウクラゲには刺す触手がないが、巨大な体と長く伸びた腕は、稚魚を狙う捕食者にとって厄介な障害物になると考えられている。

[動画を見る]

50年前からの予想が映像で初めて裏付けられた

 過去の調査でも、ダイオウクラゲのそばに別種の深海魚が寄り添う姿が確認されている。アシロ目フサイタチウオ科のタラソバシア・ペラギカ(Thalassobathia pelagica)の成魚だ。

 しかし、クロアブライボダイの稚魚の群れがダイオウクラゲと一緒に行動している姿が映像に捉えられたのは今回が初めてとなる。

 1973年、北大西洋で行われたトロール網の調査でダイオウクラゲとクロアブライボダイが同時に引き揚げられた。

 当時の研究者たちは2つの生物が一緒に生活している可能性を示したものの、自然の生息地で生きた状態を観察できなかったため、正確な関係性を証明できなかった。

 それから半世紀以上が経過し、今回のアルゼンチン沖の探査で、ついに映像による証拠が得られたのだ。

[画像を見る]

相利共生なのか?クラゲ側の利点はまだ謎

 映像の中には、1匹の稚魚がクラゲの口腕の表面にある何かをついばんでいる様子も記録されていた。

 稚魚がクラゲの寄生虫を食べていたのか、クラゲが捕らえた獲物を奪っていたのか、あるいはクラゲの体そのものをかじっていたのかは判断できていない。

 クラゲと暮らす魚の中には、クラゲの寄生虫を取り除き、お返しに食べ物と隠れ家をもらっているものもいる。

 だが今回の映像からは、ダイオウクラゲが何か得をしているのかどうかはわからなかった。

 研究チームは、この関係が魚だけにメリットがあるのか、クラゲも利益が得られる「相利共生」なのかはまだわからないという。

[画像を見る]

日本の食卓でおなじみの魚にも共通する習性

 クラゲを隠れ家として利用する習性は、日本の食卓でおなじみの魚にも見られる。

 クロアブライボダイはイボダイ科に属しており、イボダイ科の英名は「Medusafish(クラゲの魚)」という。

 日本沿岸に生息するイボダイの幼魚も、大型のクラゲを隠れ家や餌として利用する[https://www.pref.tokushima.lg.jp/file/attachment/832091.pdf]ことが報告されている。

 魚たちがクラゲを生活の拠点として利用するたくましい姿は、深海でも浅瀬でも共通しているようだ。

 そして必ずコメントに来るであろう「食べられるの?」問題だが、ダイオウクラゲが食べられるかどうかはわかっていない。

 深海の網で引き揚げようとすると体がドロドロに崩れてしまうため、食卓に上がる機会はなさそうだ。

 一方で隠れ家にしていたクロアブライボダイの方はと言うと、ヨーロッパではたまに市場に並ぶこともあるため食べることはできるそうだが漁獲量は少ないという。

Amazon : 食品金庫 クラゲ(刻み)刻み沙クラゲ 1kg 8mmカット スライス 高級珍味

References: Argentina’s Deep Sea Is More Biodiverse Than Scientists Thought - Schmidt Ocean Institute[https://schmidtocean.org/argentinas-deep-sea-is-more-biodiverse-than-scientists-thought/] / A School of Baby Fish Was Seen Riding a 6-Meter ‘Phantom’ Jellyfish in The Deep[https://www.sciencealert.com/giant-phantom-jellyfish-found-with-entourage-of-fishy-passengers-hitching-a-ride]

編集部おすすめ