ここまで徹底したリアリズムに満ちた小説を読んだことがない!
──青木理 (ジャーナリスト)



調査報道の醍醐味が味わえるノンフィクションのような推理小説。
ほんとうに面白い。


──佐藤優 (作家)



◎忘れてはならない。未解決事件の闇には、犯人も、その家族も存在する

「これは、自分の声だ」

京都でテーラーを営む曽根俊也は、ある日父の遺品の中からカセットテープと黒革のノートを見つける。ノートには英文に混じって製菓メーカーの「ギンガ」と「萬堂」の文字。テープを再生すると、自分の幼いころの声が聞こえてくる。それは、31年前に発生して未解決のままの「ギン萬事件」で恐喝に使われた録音テープの音声とまったく同じものだった――。

圧倒的な取材と着想で描かれた、全世代必読! 本年度最高の長編小説。



◎著者メッセージ

十六年前、大学の食堂で「グリコ・森永事件」の関連書籍を読んでいたとき、初めて“子どもの声を録音したテープ”が犯行に使われていると知った。その子どものうち一人は、私と同世代だ。関西の街のどこかで、彼とすれ違ったことがあるかもしれない……。そう考えると鳥肌が立ち、以来、私はずっとテープの子どもの話を書きたいと思い続けてきた。

この比類なき未解決事件は、昭和という時代、企業や株、警察組織、ジャーナリズム――などの要素が複雑に絡み合ってできたものだ。大学卒業後に新聞記者になった私は、そういった社会を構成する一つひとつの事柄を肌で感じ、記事にしてきた。

大学の食堂で小説の着想を得てから十年後、私は新聞社在職中に小説家としてデビューした。それでもまだ、この物語を捉えきれなかった。

転機となったのは、自分に娘が生まれたことだ。日々成長する彼女と接するうちに「この宝物を犯罪に利用するなど考えられない」と実感した。ユニークな挑戦状を駆使して警察を揶揄し、マスコミを利用して大衆を巻き込んでいった「かい人21面相」は、一面でルパン三世のように「憎めないワル」として見られる向きもある。だが、それは断じて違う。彼らは企業の社長を誘拐し、脅迫する会社に火をつけ、青酸菓子をばら撒いた凶悪犯だ。

今なら書ける。そう思った私は、自分で複数の資料をつくり、事件現場を歩き、関係者の話を聞き、登場人物の気持ちになってイギリスの三都市を巡った。そうしてパズルのピースを集めていくうちに、今、この昭和の未解決事件を描く動機は、やはり「子ども」にあると確信した。

本作品は被害企業などを仮名にしているが、事件の発生日時、場所、脅迫・挑戦状の文言、その後の報道を史実通りに再現している。「実際にこういう悲しい人生を歩まざるを得なかった子どもがいるかもしれない」との思いは、今も胸の内にある。

事件への考察はもちろん、章を追うごとに加速していく展開もこの小説の特長だ。大人が本気になって読める小説を目指し、持てるものを全て出し切った。

日本中をパニックに陥れた犯人や彼らに利用された子どもたちが、今このときも自分の半径十メートル以内で呼吸しているかもしれない。読者のみなさんには、心の準備を済ませてから、最初の一ページを開いていただきたい。



◎プロフィール

塩田武士(しおた・たけし)
1979年兵庫県生まれ。関西学院大学社会学部卒。新聞社に在職中の2010年『盤上のアルファ』で第5回小説現代長編新人賞を受賞し、デビュー。同作は第23回将棋ペンクラブ大賞(文芸部門)も合わせて受賞した。
他の著書に、『女神のタクト』『ともにがんばりましょう』『崩壊』『盤上に散る』『雪の香り』『氷の仮面』『拳に聞け!』がある。

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■本の紹介

◎罪の声

「これは、自分の声だ」

京都でテーラーを営む曽根俊也は、ある日父の遺品の中からカセットテープと黒革のノートを見つける。ノートには英文に混じって製菓メーカーの「ギンガ」と「萬堂」の文字。テープを再生すると、自分の幼いころの声が聞こえてくる。

それは、31年前に発生して未解決のままの「ギン萬事件」で恐喝に使われた録音テープの音声とまったく同じものだった――。 未解決事件の闇には、犯人も、その家族も存在する。 圧倒的な取材と着想で描かれた全世代必読! 本年度最高の長編小説。

  • 著者名:塩田武士
  • ISBN:9784062199834
  • 製品ページ:http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062199834
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