妻を亡くし、疎遠だった娘にも先立たれて一人残された「おじじ」は、同じく一人残された中学2年生の孫・ニコを引き取ることになる。久しぶりに家族と一緒に暮らす日々は、想定外のことばかりだけどなんだか楽しい。
残された者の残り時間
読後、自分の手元や胸元にとてもあたたかいものを感じるマンガだ。体の半分をもぎ取られるような思いをしてしまったあとでも、生きている限り人間には暮らしが待っていて、その暮らしのなかで喪失感は埋まりっこないかもしれないけれど、それまでとは別の何かが自分のどこかから育っていくんじゃないか。残り時間が長くても短くても、幼くても老いていても、チャンスは等しくあるのでは。『浦さんちのロスタイム』の人びとを見ていると、そう期待してしまう。 妻と娘に先立たれた71歳の“おじじ”と、13歳の孫娘“ニコ”。それまでろくに会ったこともなかった二人が家族として暮らしはじめると、まあ本当にいろんなことが起こる。
事件はまだまだ続く。そもそも食べ物の好みどころか二人はお互いの距離感だってつかめていない。
おじじの喪失感は猛烈な後悔とともにある。彼をさいなむ虚しさやさみしさは身から出たサビだと本人は自覚しており、もっというと孫娘の登場で孤独な自分が救われるんじゃないかと一瞬期待してしまったことも、そんな生やさしいものではないことも、よくわかっている。とても繊細で聡い人だ。そして「なんてこと言っちゃったんだろう」というニコの横顔が切ない。
そんな波乱含みの二人の新生活が心配なのは読者だけではない。
この遺影たちのおしゃべりを、おじじとニコに聞かせてあげたいなあと思うが、そうもいかない。それに残された二人は不器用なりに何かできる気もするのだ。
大人と話すほうがラクな13歳
おじじと同じようにニコもまた家族を失った人であり、そして13歳であり、そんなニコの心の動きが私はとても好きだ。母親と一緒に暮らしていた東京を離れ、おじじの元にやって来たニコは、引っ越し屋や母の友人といった大人とフランクに接し、それまで交流のなかった祖父にも「おじじ」とかる~く呼びかける。初対面のご近所のおばさんたちともペラペラ話せる。
一見するとそれはコミュニケーション能力が高く堂々とした態度に思えるが、厳密にいうと違っており、かつて13歳だった大人の読者のなかには身に覚えのある人が多そうだ(私もその一人です)。
おじじもニコも不器用であり、自分の内側を見つめることに人一倍長(た)けている。
本作はニコの成長がとてもうれしいマンガでもあるのだ。
著 : たろ
同じく一人残された中学2年生の孫・ニコを引き取ることになる。
久しぶりに家族と一緒に暮らす日々は、
想定外のことばかりだけどなんだか楽しい。
不器用でハートフルなロスタイムがはじまる。 詳細を見る 既刊・関連作品
レビュアー
花森リド
ライター・コラムニスト。主にゲーム、マンガ、書籍、映画、ガジェットに関する記事をよく書く。
X(旧twitter):@LidoHanamori
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