■光永康則(みつなが・やすのり)
静岡県浜松市出身。小学館「ビッグコミックスピリッツ」増刊号でデビューし、上京。主に中原裕氏のアシスタントを務めたのち、小学館「月刊サンデー GX」誌上で『トラフィッカー』を連載。代表作は『怪物王女』、『南Q阿伝』、『カコとニセ探偵』(集英社)など。
■「シリウス」との思い出は、まさかの2軍扱い!?
□ 5月で「シリウス」は創刊11周年を迎えます。光永さんは、「シリウス」とは創刊以来のお付き合いですが、思い出深いエピソードはありますか?
光永:『怪物王女』が創刊号のラインナップから外されて、2号目から実質2軍扱いでスタートしたことでしょうかね。創刊号の掲載に間に合わなくなりそうな原稿もあったと聞く中、『怪物王女』は3話くらい原稿のストックがあったんですけど………。これを言うと、「シリウス」の編集さんには「またその話か」とうんざりされますが(笑)。
□ ──当時の貴重なエピソード、ありがとうございます(笑)! 連載中の『アヴァルト』は、「シリウス」創刊10周年の記念作品です。企画がスタートした経緯を教えてください。
光永:かねてから群集劇のファンタジーものをやれたらいいなと担当編集さんと話してまして、「シリウス10周年記念企画で、それを描いてみないか」と言われたのが始まりですね。
「大河ドラマみたいになっちゃうけどいいか」と尋ねたら「むしろそれで」と言われたので、じゃぁ描いてみようかしらと。
□ ──第1話では、ファンタジーの世界で生きる少年・タギと、宇宙船乗組員の青年・ロイド(カエル)、2人の視点が入り交じって描かれていますよね。物語の中心を、少年とカエルという組み合わせにしたのはなぜでしょう?
光永:少し突飛な設定なので、この物語を読者に受け入れて貰うには、まずはシンプルで感情移入しやすいキャラから物語に入ってきていただくのがいいかと思いまして、少年とカエルにしました。
「神」と同じ髪の色を持つ少年・タギ(左)と、カエルの姿をしたロイド(右)。
この2人の視点から、世界の真相が暴かれていく。
□ ──光永作品では、魅力的な女性キャラクターが多く登場し、彼女たちを中心に話が展開していく……というイメージがあったので、新鮮な印象を受けました。
光永:一応少年誌なので、女性中心で描く場合は必ずその女性と男子主人公との関係性も盛り込まなければならず、その場合、設定が設定ですので少し情報過多に陥ってしまいそうだという事情もあります。ただ、女性キャラは今後増えてゆく予定ですけどね。
■設定と深くリンクしたモンスター造形に注目!
□ ──モンスター造形のユニークさも、見どころだと思います。第1話登場の「スパゲッティ」は、おいしそうな名前とは裏腹に恐ろしい凶悪さですよね。
光永:いわゆる剣と魔法のファンタジー世界とは似ても似つかないものにしたいというのと、人間の美意識とは無関係に作られたものにする、というコンセプトがあります。
感情を感じられない見た目と行動が恐ろしい。
□ ──「神」である巨人アヴァルトは、どのようなコンセプトで作られていますか?
光永:アヴァルトについては「知性があるけど人間性がない」という風に見えていれば成功だと考えています。彼等のイメージカラーは青だけど、青にはそういう冷たくて理性的な効果があると思います。
ロイド(カエル)はすぐに、その正体を見破るが……!?
■テーマは一貫して「サバイバル」!
□ ──登場したキャラクターがあっという間に死んでしまったり、主人公たちの置かれる状況が目まぐるしく変わっていったりと、息も着かせぬハイスピード展開ですね! 今後どういう話になるのか、こっそり教えていただけませんか?
光永:さらに想像と違う事件が待っている予定です。ストーリーは出し惜しみせずどんどん前倒しで進めるつもりですので、そこのところは期待していただけるとありがたいです。また、当初の予定通り群集劇を思わせる別の主人公たちの話にも触れる予定です。触れるだけで終わるかもしれませんが……。
□ ──ずばり、本作のテーマは何でしょうか? 光永さんの思う見どころと併せて教えてください!
光永:最終的なテーマは1話から一貫して「サバイバル」です。生き残るために彼等は必死で世界を理解しようとするし、試練に抗い続けます。
□ ──ファンタジーならではの、描いていて楽しい点や、難しい点はどこでしょう?
初めて、世界観から自分の思う通りの漫画を描いているので作業は楽しいです。これが独りよがりにならなければいいと苦慮しています。
□ ──光永さんの持っている世界観が生きているんですね! その世界観に影響を与えているものや、今ハマっているものはありますか? また、それが作品に生かされている部分などあれば教えてください。
光永:僕は常に海外ドラマにハマっています。本作に影響を与えた作品も多いです。彼等(海外ドラマの制作側)は視聴者にふんだんにサービスしながらも、登場人物の人間性やテーマに対しては非常に真摯で、安易な妥協はしません。そういった点は見倣っていきたいです。
□ ──ありがとうございました! 最後に、今後を楽しみにしている読者の方へメッセージをお願いします。
光永:『アヴァルト』はありがちな設定の寄せ集めのようでいて、誰も読んだことのない漫画を目指しています。良い意味で期待を裏切り続ける作品にしていきたいと思っていますので、ぜひ暇つぶしのお供によろしくお願いします!
■本の紹介
□アヴァルト(1)
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