海洋生分解性プラスチックの実環境での生分解性を実証するための試験方法を定めた国際規格が発行
ポイント
・ 実環境でのフィールド試験により、プラスチック製品の海洋生分解性を識別するための手法を規定
・ 大掛かりな試験設備が不要、かつ、試験実施者のスキルや経験などの個人差によらない試験方法
・ 海洋生分解性の評価が可能になることで、環境負荷の少ないプラスチック製品や樹脂の社会実装を後押し
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202505088511-O1-4f8njSvr】
海洋生分解性プラスチックの迅速な社会実装のため、海洋などの水環境下での生分解を実証する評価手法を規定した国際規格ISO 16636:2025(以下「本規格」という)が発行されました。国立研究開発法人 産業技術総合研究所(以下「産総研」という)は、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の委託事業「海洋生分解性プラスチックの社会実装に向けた技術開発事業/海洋生分解性に係る評価手法の確立」として、一般社団法人 日本バイオプラスチック協会(JBPA)、国立大学法人 神戸大学、国立大学法人 鹿児島大学の協力を得て、地方独立行政法人 大阪産業技術研究所、滋賀県東北部工業技術センター、広島県立総合技術研究所西部工業技術センター、愛媛県産業技術研究所紙産業技術センター、地方独立行政法人 東京都立産業技術研究センターと連携して、本規格の発行に貢献しました。
この規格が有効に活用されることにより、日本のみならず諸外国での海洋生分解性プラスチック製品の普及を後押しし、市場拡大につながることが期待されます。
下線部は【用語解説】参照
社会課題の解決
海洋プラスチック問題が深刻化する中で、海洋で生分解するプラスチックの普及が問題解決のための一つの手法として期待されています。そして海洋生分解される樹脂の開発、上市が進められています。これらの製品群が実際の海でどの程度の期間で分解されていくのか、あるいは海水中でどれくらいの期間使用に耐えるのかを評価するための試験法としてISO 22766がありましたが、工事を必要とする大掛かりな方法であり、国内での実施例はありませんでした。今回、本規格が発行されたことで、淡水系を含めた水環境のどこででも簡便に浸漬試験を行うことができるようになりました。製品群の環境中での生分解が実証でき、また、海洋環境でも安心して使用するための情報を得られることから、環境負荷の少ない製品の社会実装を迅速化させる効果があります。
規格発行までの道のり
実海域での試験方法はすでにISO規格が発行されていましたが大掛かりな試験方法であるため実施困難であり、日本での評価実績はなく、新たな試験方法が求められていました。
産総研は、NEDO「海洋生分解性プラスチックの社会実装に向けた技術開発事業」(2020年度~2024年度)の取り組みを通して、海洋生分解性プラスチックの評価技術の開発を進めてきました。海水が自由に出入りするような容器に試料を設置するよう定め、海洋を浮遊する状態を模した平易な試験方法を開発しました。また、浸漬による崩壊試料の回収操作は個人差が出やすいのですが、評価項目に厚みの減少速度を取り入れることで破片になるまで浸漬することなく、より短期間の浸漬で個人差のない結果が得られるようになりました。
本規格の提案はISOワーキンググループ内でも各国の多くの好意的な関心を得て審議され、簡便な手法ゆえの問題点や破片化した試料の海洋への散逸や試料表面への異物の付着などにどのように対処するかなどの課題を一つ一つ解決し、さらに、産総研海洋生分解性プラスチック標準化コンソーシアムや関係機関からの意見を取り入れて改良した上で今回の規格発行となりました。
今後の予定・波及効果
本規格は、大掛かりな試験設備を必要とせずに実施できる試験法であるため、欧米諸国のみならず、日本を含むアジアの国々で実施可能な方法です。
【表:https://kyodonewsprwire.jp/prwfile/release/M107968/202505088511/_prw_PT1fl_TmL928Mh.png】
予算制度
NEDO委託事業「海洋生分解性プラスチックの社会実装に向けた技術開発事業/海洋生分解性に係る評価手法の確立(課題番号:P20008)」(2020~2024年度)
経済産業省委託事業 省エネルギー等に関する国際標準の獲得・普及促進事業委託費(省エネルギー等国際標準開発(国際標準分野(新規対応分野)))「海洋生分解性プラスチックに係る技術評価手法の国際標準化」(2020~2022年度)
用語解説
ISO 22766:2020 Plastics — Determination of the degree of disintegration of plastic materials in marine habitats under real field conditions
プラスチック-実環境条件下での海洋生息地におけるプラスチック材料の分解度の測定
プラスチックの実海域での崩壊を調べる試験方法の一つ。試験は海域に限定され遠浅の潮間帯のうち潮汐の影響を受ける地点と海底とで行い、海底での浸漬では試料保持器具の設置により行われる。2mmのメッシュ上に残存する試料の量で評価される。
生分解性プラスチック
環境中の微生物作用により完全分解されるプラスチック。一般的には微生物の分泌する酵素で低分子量化が進み、次いで菌体中に取り込まれて代謝され、二酸化炭素にまで分解される。
海洋生分解性プラスチック
生分解性プラスチックのうち、海洋に生育する微生物により生分解されるプラスチック。
ISO規格
International Organization for Standardization(国際標準化機構)から発行される国際規格。
プレスリリースURL
https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2025/pr20250512/pr20250512.html
ポイント
・ 実環境でのフィールド試験により、プラスチック製品の海洋生分解性を識別するための手法を規定
・ 大掛かりな試験設備が不要、かつ、試験実施者のスキルや経験などの個人差によらない試験方法
・ 海洋生分解性の評価が可能になることで、環境負荷の少ないプラスチック製品や樹脂の社会実装を後押し
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202505088511-O1-4f8njSvr】
海洋生分解性プラスチックの迅速な社会実装のため、海洋などの水環境下での生分解を実証する評価手法を規定した国際規格ISO 16636:2025(以下「本規格」という)が発行されました。国立研究開発法人 産業技術総合研究所(以下「産総研」という)は、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の委託事業「海洋生分解性プラスチックの社会実装に向けた技術開発事業/海洋生分解性に係る評価手法の確立」として、一般社団法人 日本バイオプラスチック協会(JBPA)、国立大学法人 神戸大学、国立大学法人 鹿児島大学の協力を得て、地方独立行政法人 大阪産業技術研究所、滋賀県東北部工業技術センター、広島県立総合技術研究所西部工業技術センター、愛媛県産業技術研究所紙産業技術センター、地方独立行政法人 東京都立産業技術研究センターと連携して、本規格の発行に貢献しました。
この規格が有効に活用されることにより、日本のみならず諸外国での海洋生分解性プラスチック製品の普及を後押しし、市場拡大につながることが期待されます。
下線部は【用語解説】参照
社会課題の解決
海洋プラスチック問題が深刻化する中で、海洋で生分解するプラスチックの普及が問題解決のための一つの手法として期待されています。そして海洋生分解される樹脂の開発、上市が進められています。これらの製品群が実際の海でどの程度の期間で分解されていくのか、あるいは海水中でどれくらいの期間使用に耐えるのかを評価するための試験法としてISO 22766がありましたが、工事を必要とする大掛かりな方法であり、国内での実施例はありませんでした。今回、本規格が発行されたことで、淡水系を含めた水環境のどこででも簡便に浸漬試験を行うことができるようになりました。製品群の環境中での生分解が実証でき、また、海洋環境でも安心して使用するための情報を得られることから、環境負荷の少ない製品の社会実装を迅速化させる効果があります。
規格発行までの道のり
実海域での試験方法はすでにISO規格が発行されていましたが大掛かりな試験方法であるため実施困難であり、日本での評価実績はなく、新たな試験方法が求められていました。
産総研は、NEDO「海洋生分解性プラスチックの社会実装に向けた技術開発事業」(2020年度~2024年度)の取り組みを通して、海洋生分解性プラスチックの評価技術の開発を進めてきました。海水が自由に出入りするような容器に試料を設置するよう定め、海洋を浮遊する状態を模した平易な試験方法を開発しました。また、浸漬による崩壊試料の回収操作は個人差が出やすいのですが、評価項目に厚みの減少速度を取り入れることで破片になるまで浸漬することなく、より短期間の浸漬で個人差のない結果が得られるようになりました。
本規格の提案はISOワーキンググループ内でも各国の多くの好意的な関心を得て審議され、簡便な手法ゆえの問題点や破片化した試料の海洋への散逸や試料表面への異物の付着などにどのように対処するかなどの課題を一つ一つ解決し、さらに、産総研海洋生分解性プラスチック標準化コンソーシアムや関係機関からの意見を取り入れて改良した上で今回の規格発行となりました。
今後の予定・波及効果
本規格は、大掛かりな試験設備を必要とせずに実施できる試験法であるため、欧米諸国のみならず、日本を含むアジアの国々で実施可能な方法です。
一般社団法人 日本バイオプラスチック協会では海洋生分解性プラスチック識別表示制度の枠組み内での積極的な活用を検討しており、連携した公設試験研究機関などでの試験実施を進めていきます。また、海洋生分解性プラスチックの生分解進行速度は海域によって異なるため、試験実施機関のネットワーク化によって複数海域での同時浸漬試験を実行できるワンストップサービスを検討しています。日本バイオプラスチック協会では、当該試験法の詳細を関係者に周知するために、オンラインで6月18日(水)に説明会を実施します。詳しくは、日本バイオプラスチック協会のウェブサイトをご覧ください。
【表:https://kyodonewsprwire.jp/prwfile/release/M107968/202505088511/_prw_PT1fl_TmL928Mh.png】
予算制度
NEDO委託事業「海洋生分解性プラスチックの社会実装に向けた技術開発事業/海洋生分解性に係る評価手法の確立(課題番号:P20008)」(2020~2024年度)
経済産業省委託事業 省エネルギー等に関する国際標準の獲得・普及促進事業委託費(省エネルギー等国際標準開発(国際標準分野(新規対応分野)))「海洋生分解性プラスチックに係る技術評価手法の国際標準化」(2020~2022年度)
用語解説
ISO 22766:2020 Plastics — Determination of the degree of disintegration of plastic materials in marine habitats under real field conditions
プラスチック-実環境条件下での海洋生息地におけるプラスチック材料の分解度の測定
プラスチックの実海域での崩壊を調べる試験方法の一つ。試験は海域に限定され遠浅の潮間帯のうち潮汐の影響を受ける地点と海底とで行い、海底での浸漬では試料保持器具の設置により行われる。2mmのメッシュ上に残存する試料の量で評価される。
生分解性プラスチック
環境中の微生物作用により完全分解されるプラスチック。一般的には微生物の分泌する酵素で低分子量化が進み、次いで菌体中に取り込まれて代謝され、二酸化炭素にまで分解される。
海洋生分解性プラスチック
生分解性プラスチックのうち、海洋に生育する微生物により生分解されるプラスチック。
ISO規格
International Organization for Standardization(国際標準化機構)から発行される国際規格。
プレスリリースURL
https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2025/pr20250512/pr20250512.html
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