(公財)日本生産性本部(東京都千代田区、理事長:前田和敬)は、8月1日、2025年3月末決算の東証プライム上場企業の「有価証券報告書における人的資本開示状況」(速報版)を公表しました。本調査は2023年から継続し、今回で3回目となります。
人材を「資本」と捉え、その価値を最大限に引き出す「人的資本経営」が注目されるなか、内閣府令により、2023年3月末以後の事業年度にかかる有価証券報告書から、サステナビリティ関連項目として人的資本(「人材育成方針」「社内環境整備方針」)および多様性(「男女間賃金格差」「女性管理職比率」「男性育児休業取得率」)の情報開示が義務付けられました。
当本部ではこれを受けて、一昨年より有価証券報告書への記載状況を独自に調査・集計しています。今回は、2025年3月末決算の東証プライム企業(集計社数1,104社:6月30日時点で開示があった企業)について、提出された有価証券報告書から人的資本・多様性に関する記載内容を集計し、速報版として公表しました。本調査は、事業創造大学院大学の一守靖教授、浅野浩美教授の監修、分析指導の下、行われました。
主な特徴は以下の通りです。
【主な特徴】
1.女性管理職比率:5%未満の企業が依然4割だが減少傾向(別紙P5~6)
・女性管理職比率が5%未満の企業は全体の40.6%(昨年46.0%、一昨年48.2%)、10%未満が67.6%(昨年70.5%、一昨年72.0%)といずれも減少傾向(グラフ9、図表2)。
・5%未満の企業の割合が顕著に減少しており、取り組みが遅れていた企業での改善が進みだしている様子が窺える。
・女性管理職比率の平均は9.1%(昨年8.5%、一昨年8.1%)と漸増。
・業種別に見ると、サービス業、金融・保険・不動産業、情報通信業の順で高く、鉱業・建設業、電気・ガス業が低い(グラフ10)。
2.男性育児休業取得率:取得率60%以上の企業が大幅増(別紙P7~8)
・男性育児休業取得率は、60%以上の企業が全体の62.9%となり、一昨年の33.5%、昨年の48.8%から大きく伸びた(グラフ12、図表3)。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202507313015-O1-Y2yY7024】
・業種別の差異は解消されつつあり、女性管理職比率や男女間賃金格差と比べて成果が表れやすい取り組みと見られる(グラフ13)。
3.男女間賃金格差:平均格差72.0とわずかに改善(別紙P9~10)
・男性の賃金を100とした時の女性の賃金の割合(男女間賃金格差)は、全体平均で72.0と昨年の71.4よりわずかに縮小(グラフ16)。
・割合でみると、70~75未満が24.3%ともっとも多く分布(グラフ15)。75~80未満の分布が22.3%と、70~80未満が46.6%を占める(グラフ15、図表4)。
・業種別の賃金格差は、情報通信業で77.7ともっとも小さく、サービス業、製造業が73.9と続く。一方、金融・保険・不動産業が66.2ともっとも大きく、鉱業・建設業が66.7と続く(グラフ16)。
4.人的資本に関する記載の傾向:記載量は2年前より2割増加(別紙P12~14)
・有価証券報告書における人的資本に関する記載の文字数(図表をカウントしない場合)は、平均2,505字となり、一昨年の調査(2,095字)と比べて19.6%増加した(昨年の調査(2,319字)と比べると8.0%増。グラフ18)。自社の人的資本に関する取り組みについての開示意識が高まりつつあることが読み取れる。
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5.人的資本に関する記載内容分析:DX推進企業ほど男女間賃金格差が小さい(別紙P15~16)
・人的資本経営とかかわりの深い語について記載している割合を算出してみると、「人材育成」について98.0%の企業が言及しており、次いで「ダイバーシティ」96.4%、「健康経営」66.0%、「DX」43.3%であった。
・上記の語のうち、「健康経営」「DX」に言及している企業とそうでない企業では、言及している企業の方が、男性育児休業取得率が高かった。また、「DX」に言及している企業については、男女間賃金格差に関しても、言及していない企業と比較して格差が小さかった。(図表7および8)。
調査結果の詳細は、日本生産性本部の調査研究・提言活動サイト
https://www.jpc-net.jp/research/detail/007487.html をご参照ください。