事業創出の鍵は、R&Dへの原点回帰と連携強化

2025年8月5日
株式会社 電 通

 株式会社電通(本社:東京都港区、代表取締役 社長執行役員:佐野 傑)、株式会社電通総研(本社:東京都港区、代表取締役社長:岩本 浩久、以下「電通総研」)、は、企業のR&D部門、およびその他事務系部門760名を対象に、「新たな事業創出とR&Dの関係性に関する調査」(以下「本調査」、調査期間:2025年5月16日~5月21日)を実施しました。



 本調査は、「今までにない新たな事業創出や製品企画」に取り組む企業の実態と、取り組みにおけるR&D部門の貢献状況や抱える課題感を把握することを目的に実施しました。
その結果、取り組みの成果が上がっていると感じている企業ほど、R&D部門が中心となって取り組みを主体的にリードしている実態や、成果の出ている企業におけるR&D部門の特徴などが明らかになりました。本調査で得られた主なファインディングスは次のとおりです。

 

【主なファインディングス】

①  企業がR&D部門に期待している役割は「よりスピード感のある研究・開発」「グローバルで戦える技術の開発・研究」「事業成果を見込んだ研究・開発の推進」が上位。しかし、これらの期待に対する実際の貢献実感は低い結果に。

②  新たな事業創出や製品企画に自社が「取り組んでいる」と回答した従業員は全体で7割に上る。一方、「成果が上がっている」と回答したのは2割にとどまる。

 

③  R&D部門が生み出す成果が、新たな事業創出や製品企画に、「非常に貢献できている」と回答したのは12.4%。

 

④  自社の新たな事業創出や製品企画への取り組みについて「成果が上がっている」と回答した従業員と、そうではない従業員を比較すると、「成果が上がっている」と回答した従業員の方が、取り組みに対する「R&D部門の積極的な貢献」を、約4倍も実感できている結果となった。

 

⑤  新しい事業創出や製品企画への成果実感がある従業員では、R&D部門の業務実態や課題に対して共通した5つの特徴があった。

(1)中長期でのあるべき姿・研究戦略の共有ができている

(2)社内外での自社技術理解ができている 

(3)顧客ニーズへの深い理解がある 

(4)R&Dが新たな事業創出を主導・関与できている

(5)社外パートナーとうまく連携できている

 

注)本調査における構成比(%)は小数点第2位以下を四捨五入しているため、合計しても100%にならない場合があります。

 

【各ファインディングスの詳細】

① 企業がR&D部門に期待している役割は「よりスピード感のある研究・開発」「グローバルで戦える技
  術の開発・研究」「事業成果を見込んだ研究・開発の推進」が上位。しかし、これらの期待に対する実
  際の貢献実感は低い結果に。


● 企業がR&D部門に対して最も期待している役割は、「よりスピード感のある研究・開発」(73.4%)
  であり次いで「グローバルで戦える技術の開発・研究」(70.2%)、「事業成果を見込んだ研究・開
  発の推進」(69.9%)が続く。【図表1】

● 一方で、期待度の高い上位3項目は、「期待度と貢献度のスコア差」も同様に高い結果となった。「よ
  りスピード感のある研究・開発」(期待度と貢献度のスコア差:41.1pt)、「グローバルで戦える技
  術の開発・研究」(同24.2pt)、「事業成果を見込んだ研究・開発の推進」(同23.6pt)。【図表2】

 

【図表1】
Q. あなたの勤務先企業は、自社のR&D部門(研究・開発部門など)にどんな役割を期待していますか。それぞれあてはまるものを1つお選びください。

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202508013072-O4-ZiLH4vYa



【図表2】
Q. 引き続き、あなたの勤務先企業のR&D部門(研究・開発部門など)が会社から期待されている役割についてお聞きします。あなたが「非常に期待されている」「やや期待されている」とお答えになった役割について、現状の達成度はどの程度だと感じていますか。それぞれあてはまるものを1つお選びください。

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202508013072-O5-2MS9S1e1


② 新たな事業創出や製品企画に自社が「取り組んでいる」と回答した従業員は全体で7割に上る。一方、
  「成果が上がっている」と回答したのは2割にとどまる。

● 新たな事業創出や製品企画に自社が「取り組んでいる」と回答した従業員は73.5%となった。
  【図表3】

● 一方で、取り組んでいると回答した従業員のうち、その取り組みの「成果が上がっている」と回答した
  従業員は、20.2%にとどまる。
【図表4】

 

【図表3】
Q. あなたの勤務先企業では持続的な成長に向け、今までの事業に捉われない、新しい事業創出や製品企画に力を入れて取り組まれていますか。

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202508013072-O6-x1d3A9fn

 

【図表4】
Q. 前問で、あなたの勤務先企業では今までの事業に捉われない、新しい事業創出や製品企画を取り組んでいると回答されましたが、取り組み成果をどの程度感じますか。あてはまるものを1つお選びください。

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202508013072-O7-44Y7ppnB


③ R&D部門が生み出す成果が、新たな事業創出や製品企画に、「非常に貢献できている」と回答したの
  は12.4%。

● R&D部門が生み出す成果が今までの事業に捉われない、新しい事業創出や製品企画に寄与しているか
  を尋ねたところ、「非常にそう思う・ややそう思う」と回答した従業員は全体の54.6%。その内、
  「非常にそう思う」と回答した割合は12.4%にとどまる。【図表5】

 

【図表5】
Q. 勤務先企業のR&D部門(研究・開発部門など)が生み出す成果は、今までの事業に捉われない、新しい事業創出や製品企画に寄与していますか?

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202508013072-O8-G7OyKZxV


④ 自社の新たな事業創出や製品企画への取り組みについて「成果が上がっている」と回答した従業員と、
  そうではない従業員を比較すると、「成果が上がっている」と回答した従業員の方が、取り組みに対す
  る「R&D部門の積極的な貢献」を、約4倍も実感できている結果となった。

● 新たな事業創出や製品企画の「成果が上がっている」と回答した従業員に対して、さらに、自社のR&
  D部門が新しい事業創出や製品企画に寄与しているか聴取したところ、「非常にそう思う」が43.6%に
  上った。【図表6】

● この数値は、新たな事業創出や製品企画について、「成果が上がっている」と答えなかった従業員の約
  4倍。新しい事業創出や製品企画の成果が上がっている企業ほど、その取り組みへのR&D部門の貢献
  が実感できている状況であることがうかがえる。【図表6】



【図表6】
Q. 勤務先企業のR&D部門(研究・開発部門など)が生み出す成果は、今までの事業に捉われない、新しい事業創出や製品企画に寄与していますか?

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202508013072-O9-DnAnzPgE

※「取り組みの成果実感大(TOP1)」のn数は、【図表4】の取り組みの成果実感を問う設問において、「成果が上がっている」と回答した方の数。

※「取り組みの成果実感小~なし(BTM3)」のn数は、同様の設問にて「やや成果が上がっている」「あまり成果が上がっていない」「全く成果が上がっていない」と回答した方を合算した数。


 

⑤ 新しい事業創出や製品企画への成果実感がある従業員では、R&D部門の業務実態や課題に対して共通
  した5つの特徴があった。

  <新しい事業創出や製品企画の成果実感が高い企業のR&D部門の特徴>

● (1)中長期でのあるべき姿・研究戦略の共有ができている

  「R&D部門のビジョンやゴールが明確に設定され、社内に共有されている」(70.7%)、「将来ある
  べき方向性を共有し、変化にチャレンジできている」(63.6%)、「短期/中期の両方を見据えなが
  ら適切なR&D戦略差配ができている」(60.0%)が高く、R&D部門の中長期のビジョン発信や部門を
  越えた社内浸透に関する項目のスコアが高い。【図表7】

● (2)社内外での自社技術理解ができている

  「自社でどんな技術開発が行われているか知っている」(64.3%)、「自社の保有する技術価値が世
  の中に伝わっている」(57.1%)、「自社の保有する価値が社内に伝わっている」(53.6%)など、
  R&D部門以外にも自社のコア技術の価値が理解されていることや、社外の価値発信ができていること
  がわかる。【図表8】

● (3)顧客ニーズへの深い理解がある

  「顧客ニーズへの深い理解の元、業務推進できている」(60.0%)の項目については、成果実感が低
  いと回答した企業と比較すると20pt以上の開きがある。【図表9】

● (4)R&Dが新たな事業創出を主導・関与できている

  「他部門と協力したR&Dのプロジェクトがある」が60.7%、「R&D部門発で新規事業を主体的に主
  導・実現できている」が53.6%と、半数以上に。【図表9】

● (5)社外パートナーとうまく連携できている 

  外部のコンサルや協力会社との連携のしやすさを尋ねたところ、成果実感が高い企業の64.3%が「非
  常に連携しやすい・やや連携しやすい」と回答し、成果実感が低い企業は30.9%にとどまった。
  【図表10】

 

【図表7-9共通質問】

Q. あなたの勤務先企業でのR&D部門(研究・開発部門など)についてお伺いします。下記についてどの程度あてはまりますか。あてはまるものを1つずつお選びください。(とても当てはまる・やや当てはまる 計)



【図表7】

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202508013072-O10-25kFwyu9



【図表8】

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202508013072-O11-LSKHMntq


【図表9】

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202508013072-O12-uRkv0U92


【図表10】
Q. 続いて、外部のコンサルや協力会社との連携についてお聞きします。あなたの職場では、社外連携はどの程度進めやすいですか。

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202508013072-O13-t94PVySl

【調査担当者の解説】

 今回の調査では、「今までにない新たな事業創出や製品企画」に取り組んでいる大手企業は約7割を超え、「これまでの事業」から変革するための活動を行う企業が主流になってきた一方で、その成果を実感できているのは約2割と少数である実態が明らかになりました。


 また、少数ではあるものの、成果が実感できている企業ほど、「今までにない新たな事業創出や製品企画」においてR&D部門が積極的な貢献を見せていることが明らかになり、全社の中での変革のドライバーとしての重要な役割を担っている部門であることが推察される結果となりました。

 特に、「中長期でのR&D部門のあるべき姿・研究戦略の共有」「社内外での自社技術理解」「顧客ニーズへの深い理解」「R&D部門発の新たな事業創出の主導・関与」「社外のパートナー連携」といった点で、自社のR&D部門の活動を進化させていくことが、成功における重要なポイントであると言えます。

 当社と電通総研は、今回の調査で判明した点も踏まえ、クライアント内の部門間の懸け橋としての役割を担い、「企業の技術価値を事業創出へとつなげる」実践的R&Dプログラム「R&D For Growth」の提供を今後も加速していきます。

https://www.dentsu.co.jp/news/release/2025/0416-010870.html

 

【調査概要】

・目   的:「新たな事業創出や製品企画」に取り組む企業における、R&D部門の事業創出への貢献状
       況・抱える課題感を明らかにするため。

・対象エリア:全国
・対象者条件:20~69歳

    業種:農林・水産・鉱業、製造業、電気・ガス・熱供給・水道業

    売上:1000億円以上

   その他:社内にR&D部門が存在

・職種条件:R&D部門:所属する部門が「研究・開発」「設計・技術」

       事務系部門:所属する部門が「経営・社業全般」「経営企画・事業企画」「営業/営業企画・
       販売(直販)」「営業/営業企画・販売(代理店販売)」「商品企画・商品開発」「企画・調
       査・マーケティング」「デジタル統括・DX推進組織・DX専門組織」

・役職条件:管理レイヤー:会長・社長、Cクラス(CDO、CMO、CIO、CSO、CFO等)、本部長・
      事業部長、部長・次長

      現場レイヤー:課長・課長補佐、係長・主任、一般社員・契約社員

・サンプル:760

      (R&D部門)管理レイヤー:160/現場レイヤー:200

      (事務系部門)管理レイヤー:200/現場レイヤー:200
・調 査 手 法:インターネット調査
・調 査 期 間:2025年5月16日~21日
・調 査 機 関:株式会社電通マクロミルインサイト

※全体の760人に対し、スクリーニング調査での、R&D部門管理レイヤー、R&D部門現場レイヤー、

事務系部門管理レイヤー、事務系部門現場レイヤーの4層の出現構成比に合わせてウエイトバック集計を実施。「%」はウエイトバック後のスコア、「n」はウエイトバック前(回収時)のサンプル数を掲載。

 

                                              以上
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