ギリアド・サイエンシズ株式会社
ギリアドとKite、 再発/難治性の多発性骨髄腫に対するanito-celの可能性に注目したiMMagine-1試験の最新結果をASH 2025で発表
–フォローアップ期間(中央値15.9カ月)で96%の全奏効率、74%の完全奏効/ 厳格な完全奏効、95%の微小残存病変陰性を示し、持続的奏効を継続 – – 予測可能かつ管理可能な安全性プロファイルを示し、第I相および第II相試験(iMMagine-1試験)で遅発性神経毒性または免疫エフェクター細胞関連腸炎は認められず– – 治験薬anito-celのデータが2026年の米国での上市計画を後押し –
ギリアド・カンパニーのKite(本社:米カリフォルニア州サンタモニカ)とパートナーのArcellxは、開発中であるanitocabtagene autoleucel(anito-cel)の第 II 相 iMMagine-1 ピボタル試験の新しい良好なデータを発表しました。治験薬であるanito-celは3ライン以上の治療歴のある再発/難治性の多発性骨髄腫(RRMM)の患者さんに対して、現在までに臨床的に意義のある、深い奏功かつ持続的な有効性と予測可能かつ管理可能な安全性を継続的に示しています。
米国のThe University of Texas MD Anderson Cancer Centerがん医科学リンパ腫・骨髄腫科准教授で、治験責任医師であるクリナ・パテル(Krina Patel)医師は次のように述べています。「これらのデータは非常に説得力があり、多発性骨髄腫の患者さんにとって重要な前進となります。iMMagine-1試験で深い奏効が確認されたことは心強いことです。臨床医にとって、持続的で意義のある有効性、予測可能な安全性プロファイル、そして信頼性の高い製造を有する治療法は不可欠です。anito-celは多発性骨髄腫患者さんのアウトカム改善において、重要な新たな治療選択肢となり得ることを示しています」
2025年10月7日時点のカットオフデータでは、anito-celの投与を受けた117名の患者さんを対象に、中央値15.9カ月の追跡調査を行った結果、独立評価委員会(IRC)による評価で96%の全奏効率(ORR)、国際骨髄腫作業部会(IMWG)の基準に基づく厳格完全奏効または完全奏効(sCRまたはCR)では74%を達成しました。117名中の患者さんのうち、102名(87%)はトリプルクラス曝露、48名(41%)は5剤抵抗、21名(18%)は髄外病変を有し、47名(40%)は高リスク細胞遺伝学的特徴を有していました。この複数の治療歴がある集団の多くにおいて、奏効は速やかに得られ、多くの場合は1カ月以内に認められました。最良奏効までの中央値は4.8カ月、厳格な完全奏効/完全奏効までの中央値は3.2カ月でした。微小残存病変(MRD)検査が可能だった96名の患者さんのうち、91名(95%)が中央値1カ月でMRD陰性を達成し、極めて高感度(≤ 10-5)な検査でもがん細胞が検出されませんでした。
12カ月時点の無憎増悪生存期間(PFS)率は82.1%、18カ月時点では67.4%、24カ月時点では61.7%で、多くの患者さんがこれらの時点で生存し、がんの進行が認められませんでした。全生存(OS)率は12カ月時点で94%、18カ月時点で88%、24カ月時点で83%と、多くの患者さんが生存していることを示しました。
重要な点は、カットオフ以前の少なくとも12カ月以上前に投与を受けたすべての患者さんにおいて、パーキンソニズム、脳神経麻痺、ギラン・バレー症候群、免疫エフェクター細胞関連腸炎などの遅発性神経毒性(ICANSを除く)が認められなかったことです。Kite主導の探索的試験(抄録番号 #503)では、CD4+ CAR T細胞のサブタイプの特性解析により、anito-celの神経系の忍容性プロファイルを裏付ける、さらなる機序の仮説が得られています。
Kiteエグゼクティブ・ バイス ・プレジデントのシンディ・ペレッティ(Cindy Perettie)は「多発性骨髄腫が進行した患者さんでは、治療に対する抵抗性が増すため、有効な選択肢は非常に重要です。iMMagine-1で確認された深く持続的な奏効に加え、予測可能かつ管理可能な安全性プロファイル、迅速かつ信頼性の高い製造体制は、anito-celが治療を再定義する可能性を示しています。私たちとArcellxの目標は、患者さんの負担軽減、外来や地域のがん治療におけるアクセス改善の可能性を秘める、差別化された一回投与の治療選択肢を2026年に提供することです」と述べています。
確認された副作用は、過去のデータと概ね一貫性を示していました。86%の患者さんでサイトカイン放出症候群(CRS)が認められましたが、概ね軽度で管理可能でした。実際、本試験の患者さんの83%ではCRSが発現しなかった、あるいはグレード1のCRS(発熱のみ)の発現という結果でした。免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS)は患者さんの8%にみられ、グレード3は1名のみ、その他はすべてグレード2以下でした。投与中に認められた主な血液学的有害事象は、白血球数の減少(好中球減少症)が71%、赤血球数の減少(貧血)が28%、血小板数の減少(血小板減少症)が26%でした。グレード3以上の感染症は、患者さんの9%に確認されました。
ASHで発表された追加研究では、anito-celの作用機序や治療アウトカムに影響を与える要因の詳細などCAR T細胞療法に関するさらなる知見が示されました。
非臨床データ(抄録番号 #7644)によると、anito-celのD-Domain結合体はBCMAと結合と解離を迅速に繰り返すことで相互作用します。非臨床モデルにおけるCAR T細胞療法と関連して、このがん細胞との一時的な相互作用は、がん細胞を効果的に殺傷する能力を維持しながら炎症を軽減する可能性があります。さらに、前治療後、変化したBCMAが発現した患者さんにおいてもanito-celががん細胞を標的とする能力を維持することが示されており、BCMA標的療法の治療歴がある患者さんにおいてanito-celの有効性が維持される可能性が示唆されています。この機序に関する詳細を明らかにするため、結晶構造解析および抗体結合部位のマッピングを含むさらなる研究が進行中です。
anitocabtagene autoleucel(anito-cel)について
anitocabtagene autoleucel(anito-cel、旧名:ddBCMA)は、D-Domainとして知られるArcellxの新型コンパクト結合体を活用した、多発性骨髄腫(MM)向けに開発中のBCMAを標的とした初めてのCAR T細胞療法です。小型で安定したD-Domain結合体は、持続的なシグナル伝達なしにCARを高発現させ、BCMA標的から速やかに放出されるように設計されています。これにより、重度の免疫毒性を生じることなく、多発性骨髄腫細胞を効果的に除去できる可能性があります。anito-celは、米国食品医薬品局(FDA)によるファストトラック、希少疾病用再生医療等製品および再生医療先端治療の指定を受けています。
多発性骨髄腫について
多発性骨髄腫(MM)は、異常な形質細胞が骨髄内で増殖・蓄積し、正常な血液細胞を圧迫して排除することで、骨病変、骨密度の低下および骨折を引き起こす血液がんの一種です。これらの異常な形質細胞は、骨髄腫タンパク(Mタンパク)と呼ばれる異常な免疫グロブリンを過剰に生成し、腎障害および免疫機能低下を引き起こします。MMは米国および欧州で3番目に多い造血性悪性腫瘍であり、全血液がんの約10%、造血性悪性腫瘍による死亡の約20%を占めています。
iMMagine-1試験について
iMMagine-1試験は、プロテアソーム阻害薬、免疫調節薬(IMiD)および抗CD38抗体を含む、3レジメン以上の全身療法歴があり、直近の治療に対して難治性を示した再発/難治性の多発性骨髄腫(RRMM)患者さんを対象とした、非盲検な登録ピボタル第II相試験です。
本試験ではanito-celの単回輸注(目標量:115×106 CAR+ T 生存細胞)を受けた117名の患者さんにおける安全性と有効性を評価しました。有効性については、最初の6カ月間は毎月、その後の2年間は3カ月ごと、もしくは再発時に評価されました。長期的な安全性は、最大15年間、別の長期フォローアップ試験にて収集されます。
この試験の主要評価項目は、国際骨髄腫作業部会(IMWG)の基準による独立審査委員会に基づく全奏効率(ORR)です。副次評価項目は、完全奏効/厳格な完全奏効(CR/sCR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、奏効期間、微小残存病変陰性率(MRD陰性)および安全性です。
ギリアドとKiteのオンコロジー部門について
ギリアドとKiteのオンコロジー部門は、がんの治療方法を革新するために尽力しています。私たちは現在、がん患者さんのアウトカムを改善すべく、次世代の治療法、併用療法およびテクノロジーを駆使してイノベーションを推進しています。私たちは、最も大きな診療ギャップに対処すべく、がん領域のポートフォリオおよびパイプラインを目的を持って構築しているところであります。抗体薬物複合体技術および低分子化合物から細胞治療に基づくアプローチまで、私たちはがん患者さんのために新たな可能性を創造しています。
ArcellxとKiteの提携について
Arcellxとギリアド・カンパニーのKiteは、再発/難治性の多発性骨髄腫(RRMM)患者さんを対象にanito-celの共同開発・共同商業化を目的とした、グローバル戦略提携を締結しています。anito-celは、第II相治験および第III相ピボタル試験において、RRMM向けに現在開発しています。KiteとArcellxは今後共同でanito-celのアセットを米国にて商業化し、Kiteが米国外での製品上市を行う予定です。
将来予測に関する記述
本プレスリリースは、1995年「米国証券訴訟改革法」(Private Securities Litigation Reform Act of 1995)で定義される「将来予測に関する記述」に該当し、いくつかのリスクや不確定要素などの要因を含む場合があります。これらのリスク等には、ギリアドおよびKiteが現在見込まれるタイムライン内に臨床試験を開始、進行、完了する能力、またはそれらが全く完了できない可能性、anito-cel(iMMagine-1試験など)に関するものを含む、進行中または追加の臨床試験から得られた結果が好ましくない可能性、現在評価中の適応症について、進行中または将来の申請に関連するものを含め、規制当局への承認申請および関連する申請や承認のタイムラインに関連する不確実性、ギリアドおよびKiteがこれらのプログラムの開発中止を戦略的に決定し、結果としてこれらのプログラムが現在評価中の適応症について、全く商業化されない可能性、および上記のいずれかの根拠となる仮定も含まれます。これらのリスクやその他のリスクについては、米国証券取引委員会に提出している、2025年9月30日を期末とするギリアド四半期報告書(フォーム10-Q)で詳細に説明しています。これらのリスク、不確定要素およびその他の要因により、実際の結果が「将来予測に関する記述」で言及されたものと大きく異なる可能性があります。歴史的事実以外の全ての記述は、「将来予測に関する記述」とみなされます。このような「将来予測に関する記述」は将来の業績を保証するものではなく、リスクや不確実性を伴いますので、この記述に過度に依拠しないようご注意下さい。「将来予測に関する記述」は全て、ギリアドおよび Kite が現在入手できる情報に基づいており、ギリアドおよび Kiteは「将来予測に関する記述」を更新する義務を負うことはなく、更新する意向もありません。