昨年デビュー10周年を迎えた戸松 遥の最新楽曲は……なんと彼女のルーツである名古屋!自身もヒロインの八十亀最中を演じるTVアニメ『八十亀ちゃんかんさつにっき』の主題歌「DELUXE DELUXE HAPPY(デラデラハッピー)」は、彼女が愛してやまない名古屋のフレーバーがふんだんに盛り込まれた、それでいてどこを切っても戸松 遥楽曲と呼ぶにふさわしい逸品に!そんな戸松 遥に、『八十亀ちゃん』と溢れる名古屋愛をふんだんに語ってもらった。

――戸松さんといえば、皆さんご存知でしょうが愛知県出身。
愛知を代表する声優と言っても過言ではないかと。


戸松 遥 ありがとうございます!(笑)。うれしいです。まあ愛知県出身の方はほかにもいっぱいいらっしゃるんですけどね(笑)。

――そんな戸松さんがTVアニメ『八十亀ちゃんかんさつにっき』の主人公・八十亀ちゃんを演じるとともに、主題歌まで担当するということでお話を伺いに来ました。

戸松 改めて、愛知県に生まれてよかったなと心から思いましたね。普段声優の仕事をしていると訛りって足を引っ張ってしまうものなんですけど、本作はネイティブに話すことができる人が条件ということで、八十亀ちゃんを演じさせていただくことができました。

――八十亀ちゃん役は愛知県民だけ!

戸松 「愛知県の人じゃないとダメなんです!」という。こうして八十亀ちゃんを演じさせていただけて、ある意味愛知県代表という気持ちも増しました。地元を離れて10年ぐらい経ちますけど、いざアフレコとなると意外と名古屋弁が出てくるものだなと(笑)。

――普段はあまり出てこない?

戸松 しゃべらないですね。むしろあえてしゃべらないようにというか、出てきちゃうと仕事に影響しちゃうので。
実家に帰ってもなるべく標準語でしゃべるようにしています。

――なるほど。実家に帰ると周囲のしゃべり方に染まってしまいそうですね。

戸松 そうですそうです。3日以上いるとやられるので(笑)。

――ただ『八十亀ちゃん』では名古屋弁を前面に出して演技ができる。

戸松 はい。今では名古屋に住んでいたことを誇りに思います(笑)。そもそも愛知県が主役になる作品ってなかなかないじゃないですか。アニメでも関西弁の子はいるんですけど、名古屋弁ってなかなかいないですよね。すごくピンポイントでマトに当たっている作品だと思いますし、原作も名古屋ではものすごくプッシュされているんです。

――どうやら東海地区でも原作コミックスはすごい売れ行きだそうで。


戸松 そうらしいです。地元の人が見ても面白いというか、「そうそうそれそれ!」ってなる。県外の人から見たら「そうなんだ、知らなかった!」という発見もあって面白い作品ですよ。また主題歌も、原作の安藤(正基)先生と編集担当のアダチさんの共作で歌詞を作っていただきまして。

――原作者が作詞をプロの作詞家と共作するのは聞いたことありますけど、担当編集との共作なんて聞いたことがないですよ!

戸松 そうなんですよ(笑)。なのにすごいクオリティで。担当のアダチさんも岐阜の方で。

――作曲の田村歩美(たむらぱん)さんも岐阜県出身なんですよね。作家陣も東海地区で固めてきていますね……古川貴浩さん以外は(笑)。

戸松 私との付き合いは長いんですけどね、逆に今回は古川さんにはアウェーという。とにかく歌詞を見て「天才だな」って思いました。それくらい感動したんですけど、その感動をわかってくれる人が周りにいなくて(笑)。


――とにかく歌詞の中にこれでもかというぐらい名古屋に関するワードが盛り込まれているんですよね。

戸松 はい。歌詞をまじまじと見たら「これも、あれも名古屋にかかっているのかな?」って思うんですけど、より深いところではもう見た瞬間ぷるぷるぷるって震えるぐらい。

――震えるぐらい!

戸松 また、この遊び心が前に出すぎていないのがいい。愛知の人じゃないと絶対かけない歌詞だと思います。

――たしかに……。ちなみに冒頭の7時58分というのは、モーニングの開始時間か何かですか?

戸松 これはですね、758(なごや)にかけているんです。ど頭から攻めているんですよ!

――なるほど!わりと直球でした!

戸松 全部探すときりがないというか。正直私もレコーディングまで気づかなかったものもあって。デビューから十年来お世話になっているディレクターさんがいるんですが、その人は関西の方なんですね。レコーディングのとき、その人に「ここ、意味かかってんのわかる?」って関西弁で言われたときには「くっそ~!悔しい~!」ってなりました(笑)。私は全部わかったつもりでいたのに……というくらい油断ない曲なんです。


――ちなみに、戸松さんが見つけられなかったパートはどこですか?

戸松 Dメロの、“イチズな(GO YEAH!)”がよく見ると、“ナゴヤ”になっているんですよ!

――あっ、ほんとだ!

戸松 これは歌詞カードを見ないとわからないですね。衝撃的でした。

――ここまでくると、あらたな名古屋ご当地ソングとして県民にどんどん歌ってほしいですね。

戸松 そうですねえ。私も本当に名古屋のご当地ソングにしていただけないかなと思っています。

――『八十亀ちゃん』本編にも河村名古屋市長がナレーションで登場していますし、それも夢じゃない?

戸松 そうですよね。1話の冒頭から市長が出ていて「すごい!」と思いました(笑)。八十亀ちゃん自身も公式の観光大使になっていていろんなイベントに出ているみたいですし、これをきっかけにいろんなところでこの曲が流れたらいいなと思っています。繰り返しになりますけど、やっぱり県民が見ても納得の歌詞なんですよ。全然知らない地域の人が書いたら、もしかすると「とりあえず“どえりゃー”と入れておけばいいでしょ」ってなりそうじゃないですか。でも、この曲はそんな浅いものでないので!(笑)。

――そうですよね!

戸松 これは誰が見ても納得の名古屋の歌詞だと思います。
それが愛知出身の私が歌うことは、本当に幸せなことだなって思います。

――と、名古屋ご当地ソングとしても一級品な「DELUXE DELUXE HAPPY」ですが、一方で戸松 遥楽曲としても間違いない傑作だと思います。

戸松 ありがとうございます、うれしい!

――先ほど戸松さんも言っていましたが、名古屋のワードも露骨に歌っている感じはなく、企画色がそこまで強くないんですよね。

戸松 そうそう、そうです。こうした楽曲は、一歩間違えるとキャラソンみたいになってしまいがちなんですけど、あまり何も考えずというか、自分が歌いたいままにうたおうと思って楽しく歌ったんですけど、実はディレクターさんに、「どんな歌でも戸松がうたうと戸松の曲になるね」って話をされて、「うれしい!ありがとうございます」ってなったんですよ。

――十年来の付き合いとなるディレクターからもお墨つきを得たと。

戸松 ディレクターさんとしても、個人の歌としては挑戦になるので、「どうなるんだろう」って思っていたみたいなんです。だけど、実際にレコーディングをしてみたら「安心したわ」って。「ちゃんと戸松 遥の曲になっているから」って聞いたときはホッとしました。逆にいえばノンタイアップじゃできなかった曲だと思うんですよね。

――たしかに、急に名古屋の曲を歌うことはないですよね。

戸松 急に地元に媚を売り始めたのか?って思われますよね(笑)。
これは『八十亀ちゃん』というタイアップがあるからできたことですよね。それでもあまり作品に寄りすぎちゃうとキャラソンと本人の中間になりがち。でも、これはすごく名古屋ソングなんですけど、全然自分として歌えたというか。

――これは古川さんのエッセンスもありますが、Aメロからしてアッパーな戸松さんの楽曲ですよね。またDメロの掛け合いも、ライブで盛り上がりそうですね。

戸松 ね!本当にいろんな方に、愛知県民じゃない方にも聴いていただきたいです。

――ちなみにこの楽曲、すでに披露されましたか?

戸松 まだなんですよ。これは私の願望ですけど、できたら愛知で初めて歌いたい。もちろんそれより先に歌える機会があればそれはそれで!すごく名古屋に寄せている歌詞なのに、今までの楽曲の中にポンと入っても異色じゃないので、今後ライブで普通に披露しても大丈夫な曲だと思います。ある意味ライブでやっと完成する曲かもしれないですね。

――戸松さんの楽曲らしく掛け合いもふんだんにありますから、ライブで一気に人気が出そう。

戸松 そうですね、一緒に言ってほしい!

――さて、2019年になってスフィアとしても活動再開を果たし、ソロでも新曲の発表となりました。今のお気持ちはいかがですか?

戸松 ありがたい限りです。これだけがっつりと故郷に錦を飾れる楽曲が、2019年の最初の戸松 遥の楽曲でよかったなと思います。私も去年、デビュー10周年という節目を迎えて、これからどんな新しいことができるのかなって考えていたんですけど、まさかこんな形で新しいことができると思っていなくて(笑)。

――たしかにこれまでとは違う導線で、戸松さんのことを知る人も出てくると思うんですよね。

戸松 きっと私が愛知だと知らない人も多いと思うんですけど、これをきっかけに知っていただければ。あと、この前『八十亀ちゃん』の先行上映会が名古屋であったりと、いろいろなきっかけで名古屋に帰れる機会も増えたんですよ。今まではツアーでしか行く機会がなくて、リリースイベントとかは、大阪はあるけど名古屋ではないことが多かったりして……。

――古から存在する“名古屋飛ばし”ですね(笑)。地元を飛ばすのは心苦しいでしょうね。

戸松 新幹線で名古屋駅を過ぎるときに「ごめん!」って。愛知県民としては、この機会に名古屋のことを知ってもらえたらうれしいですし、いろんな名所にも行っていただきたいです。……観光大使みたいな言い方になっちゃいましたけど(笑)。

Interview & Text by 澄川龍一



●リリース情報
「八十亀ちゃんかんさつにっき 6巻 特装版」(REXコミックス)
※「DELUXE DELUXE HAPPY」コミックCD同梱

発売中
¥2,000+税
一迅社

関連リンク
戸松 遥オフィシャルサイト
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