2023年にアーティストデビュー10周年を迎え、それまでの自身の音楽観を爆発させるようなアルバム『DETONATOR』をリリースした蒼井翔太。6年ぶりとなったフルアルバムを引っ提げて、2024年1月からは全国ツアーも開催し、各地を熱い時間で席捲してきた。
INTERVIEW & TEXT BY えびさわなち
10周年から先の10年は、さらに加速のついた時間にしたい
――アーティストデビュー10周年から先へと踏み出したばかりの蒼井さんですが、進み出したばかりの「その先」はどんな時間ですか?
蒼井翔太 意識としては、その“10年”の半分近くはコロナ禍だったので、もちろん11年目からの「さらなる先」を見つつも、今までの時間で少し忘れかけていたことを、ここから取り戻す!くらいの幕開けになったと思います。
――音楽活動的にも、ご自身のクリエイトするものとしては「もう一度勢いをつけていこう」という意識はありましたか?
蒼井 ありました。昨年、6年ぶりにリリースした3rdアルバムも『DETONATOR』(「起爆装置」を意味する)と名付けさせてもらって、蒼井翔太の音楽性の爆発をイメージしましたし、そのアルバムを引っ提げてのツアーもありましたし、ブーストがかかっていると思っています。自分としてもさらに掛けていきたいと思っているところですね。
――コロナ禍で停滞していたご自身の時間で、音楽をクリエイトする気持ちが折れそうになることはありましたか?
蒼井 曲を作っていくマインドが変わることはまったくなかったのですが、作ったあとにあるはずのライブのこと、みんなに会えないことに対しては不安がありました。計画を立てても最悪の場合は中止になることだってありえる時期でしたから。でも作る面ではデジタルシングルという新たなリリースの手法にしても、「いつかみんなのところに届く」という確信はあったので、作っていくことに関してためらいはなかったですし、ワクワクもしていました。ただやっぱり、僕の中では曲を出すこともすごく大事だし、歌い続けることも大事だけど、その先にみんながいないと、蒼井翔太のアーティスト人生はなかなか進めないところではあるので、その部分では毎回不安でした。ライブやイベントを計画しようとなったときは常に。ですが徐々にみんなに会えるようになったことで気持ちが高まっていきましたし、今回“蒼井翔太 LIVE 2024 WONDER lab.DETONATOR”の各会場で皆さんに会えて、目が合って、同じ空間で同じ時間を共有できることだけで安心できました。今回は声出し解禁のツアーで、僕たちは知らず知らずのうちに世の中や世界から、自然と我慢させられていたんだなということを改めて感じましたし、その我慢がステージでの爆発力に繋がりました。
久しぶりの声出しライブが見せた景色
――“WONDER lab.DETONATOR”の手ごたえはいかがでしたか?
蒼井 最高でした。声を浴びた瞬間テンションがアガりましたね。ライブのセットリスト自体が僕自身、すごくテンションのアガるものでしたし、アルバムの曲もすべて入れていましたし、『DETONATOR』ってタイトルもついているし……。そのタイトルの元、ずっと全力疾走を続けるセットリストだったので、最初から最後まで最高の時間でした。大阪と愛知では序盤にペース配分が狂ってしまい、途中で声が枯れたところもあってみんなに心配をかけてしまったかもしれないのですが、それくらいみんなの声と、僕たちがみんなのために用意してきたものが掛け合わさったあの瞬間の爆発力はすごかったですね。ファンの皆さんからも「今までで一番のライブだった」と言ってもらえて、まだまだ最高を更新し続けられているんだなと思えましたし、久々に暴れさせてもらいました。
蒼井翔太にとってのアニメ主題歌とは
――そんなライブを経て、デジタルシングル「EVOLVE」が完成しました。TVアニメ『出来損ないと呼ばれた元英雄は、実家から追放されたので好き勝手に生きることにした』のOP主題歌です。主人公のアレンを演じている蒼井さんですが、物語の印象をお聞かせください。
蒼井 前世のこともあり、転生したからこそ今世でのアレンの願いもあるのですが、その世界だけではなく、飛び越えた僕らのいる現実世界だって一筋縄ではいかないよね、というファンタジーだけど実際の僕たち日々の意識にもシンクロするようなところがあるなって感じています。アレン自身も今世での願いのために進んでいるけれど一筋縄ではいかないし、でも徐々に逆流のなかで自分が本当にやりたいことに気づいて、しっかりと噛みしめていく姿は僕らの世界にも通じるものだな、という印象でした。
――そのアレンは前世の記憶を持っているからこそ、既に戦いの経験も豊富ですし、強すぎるほどの存在ですが、アレンを演じる際に意識しているのはどんなことですか?
蒼井 僕自身はRPGなどゲームをすごくやるのですが、好きなゲームだと何周もやりこむんですね。そういうゲームのなかには、一度クリアするとそこまでの経験値やレベルを引き継いでもう一度最初からできるものもあって、それがすごく好きなんです。強くいられますし、ゲームは状況もよくわかるので、やっていても楽しいんですよね。
――これまでにも様々なアニメの主題歌を歌われていますが、特にOP主題歌に対してはどのようなイメージがありますか?
蒼井 まずは作品の導入であること、ですね。本編が始まる前にOP主題歌を聴いてもらって、皆さんの中で本編のワクワクをもっと広げてもらう。その入り口でもありますし、作品が終わって何年か経過したあとに曲を聴くだけで物語の色んなシーンを思い出せる引き出し的な存在でもあると思います。僕がずっとアニメを観てきて、憧れてきたOP主題歌ってそういう存在なんですよね。今でも曲を聴けば、アニメが放送されていた当時のことやアニメシーンが思い浮かぶような、思い出を引き出すための1つの大きな引き出しであると感じています。
――ちなみに、特にOP主題歌として思い入れのある曲というと?
蒼井 TVアニメ『魔法騎士レイアース』の「ゆずれない願い」。もう、歌い出しの2文字でみんなが戦っている姿が思い浮かびます。エンディングならTVアニメ『「美少女戦士セーラームーン』の「“らしく”いきましょ」ですね。この曲が流れると、石田 彰さんが演じられていたフィッシュ・アイたち、アマゾントリオが浮かんできますから。
アレンの前で吹きすさぶ嵐のような勢いある「EVOLVE」
――アニメを観てくれる人にとってもきっとその引き出しの1つとなる今回の「EVOLVE」ですが、この曲の制作にあたって蒼井さんからのオーダーはありましたか?
蒼井 サウンド的にはバンドでありながらもシンセを入れて、サイバーな感じをガンガンに詰めていきたい、とリクエストさせていただきました。嵐のように吹き抜けていくアレンの強さにも通じるような、どんな逆境にも立ち向かっていく力強さをサウンドに出したいと思いましたし、ファンタジーでバトルもの、転生もの、という要素を盛り上げられるような、聴いていてワクワクするような楽曲じゃないとこの作品の本編を観てくださる方々を引き込めないですよね。そのためにも自分たちがワクワクするものを作りたい、と思って、そういったサウンドを目指しました。
――11年目に踏み出してからの爆発力と繋がっている印象がありますね。
蒼井 繋がっています。『DETONATOR』からの「EVOLVE」というのは、爆発してから登場する自分を想起させるような、演出にも紐づけられますね。ステージがドカーン!となったところに現れる11年目の蒼井翔太、というイメージです。やっぱり毎回、みんなを驚かせたいし、みんなを引っ張っていくのだから先頭にいなければいけない、進化していかなければいけない。だからこそ前作『DETONATOR』を超えていかなくちゃいけない!
――そんな1曲を受け取った際にはどのような印象がありましたか?
蒼井 聴いた瞬間から体中の血がぶわっと巡るような感覚でした。ワクワクしかなかったですね。テンポも速いですしすごくハイトーンなので、「こう歌いたい」という想いよりも、体を巡る血に任せるように歌いました。
――特に楽曲と蒼井さんのテンションが合致したのはどんなところでしょうか。
蒼井 日頃、失敗をすることもありますし、反省することがあると思いますが、僕はその反省や後悔を引きずり続けがちな人間だったんです。
――その「EVOLVE」はすでにライブで披露されていますね。
蒼井 はい!ツアー最後の日に!
――観客の皆さんの反応はいかがでしたか?
蒼井 一生懸命にノってくれたんですけど、驚いた顔がすごく印象的でした。アニメのPVで楽曲が使われていたので、聴いてはいたと思うのですが、ここまでハードな曲だとは思っていなかったのでしょうね。しかも今回のセットリストは爆速のセトリでもあったので、そんな勢いのなかで最後に歌いましたから。僕の中ではすごくエモい歌で響かせられた自負があります。
――ファンとしても嬉しいサプライズですよね。
蒼井 僕もテンションがアガりました。サプライズがすごく好きですし。僕自身もこれまで色んなアーティストの方のライブを拝見してきて、「ここで新曲を初披露です」っていうサプライズは本当に嬉しかったんです。自分もそれがやりたかったので、今回サプライズが出来てよかったです。
――「EVOLVE」はここからどんなふうに育っていきそうですか?
蒼井 どの曲よりも疾走感の強い曲ですし、みんなもペンライトの勢いが強くなるんじゃないかなって思います。コールがあるわけではないですが、みんなの心拍数をあげていく曲なので、蒼井翔太の中でもなくてはならない1曲になると思います。ここからの10年の時代を作っていく、大切な楽曲になりますね。
「EVOLVE」はビジュアルワークも驚きに満ちている
――MVについても教えてください。
蒼井 今までにない撮影方法でした。これ、街中で撮影をしたんです。大勢の人がいるなかで撮影したシーンもありますし、体にカメラを固定したり不思議な撮り方もして。今の最新技術を取り入れて、色んなシーンを盛りに盛って、スピード感ある映像に仕上がりました。
――新たな蒼井翔太を映像でも見せる1曲!
蒼井 それにジャケットも注目してもらいたいんです!東京公演ファイナルの後にアーティスト写真とジャケットを公開したんですね。ただこれは驚くどころじゃないなって思っていたので、先にお客さんにライブで言いました。「誰?って思うはずです」って。ジャブを打っておいたんですけど、やっぱり「誰?」ってなっていました(笑)。一瞬、わからなかったそうです。
――金髪……!
蒼井 でもツアー中の撮影だったので一夜限りで落とせる金髪でした(笑)。蒼井翔太としてバランスも大事だと思っているのですが、今回はアームウォーマーをつけているんです。僕としてはすごくテンションのアガるアイテムなんですが、蒼井翔太がアームウォーマーをつけて普段通りの柔らかい感じにしたら、かわいくなりすぎてしまうと思ったので、これなら振り切ってしまおうと思い髪型でバランスを取りました。ここまで髪をあげるのは「ウエスト・サイド・ストーリー」のトニー以来です。だから当時のことをちょっと思い出しました(笑)。「EVOLVE」には「進化」という意味もありますし、11年目一発目の蒼井翔太は違うぞということをビジュアルでも表現しました。
――ではそんな「EVOLVE」のリリースを楽しみにしてくれていた皆さんにメッセージをお願いします。
蒼井 何度か聴いていくにつれて、この楽曲のメッセージや作品の世界観がわかってくると思いますが、日常の中では「この先、こんなことが起きそうだな」とか「自分を変えたいな」というタイミングで聴いてもらいたいです。きっとなにかしらかみんなの背中を押せる、逆風ではなく追い風になれる楽曲です。「ちょっとマイナスなことを考えちゃうな」というときにはこの曲で吹き飛ばしてください!
――最後に蒼井さんにとっての「未来」。ここからどんなふうに進んでいきたいですか?
蒼井 蒼井翔太を表現していくことに変わりはないので、これまでの表現は幅広かったですし、『DETONATOR』もツアーも自分の中では一周回って原点回帰のような想いがあるんですね。ビジュアルも楽曲も。だからここからまた蒼井翔太独特の尖った表現が色づいていくと思います。時代は巡っていきますし、時間も流れていく。横線よりも螺旋を描くように何度も何度も新しくも変わらないものもある蒼井翔太を見せながら、バームクーヘンのように年輪を重ねていきたいです。
●リリース情報
デジタルシングル
「EVOLVE」
配信中

「EVOLVE」
作詞・作曲:綿貫直行 編曲:綿貫直行、佐藤厚仁
(TVアニメ『出来損ないと呼ばれた元英雄は、実家から追放されたので好き勝手に生きることにした』OP主題歌)
関連リンク
蒼井翔太 公式サイト
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蒼井翔太 公式X
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蒼井翔太 公式X(スタッフ)
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蒼井翔太 公式YouTube
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