『劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく! Re:』喜多郁代役・長谷川...の画像はこちら >>

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極度の人見知りで陰キャな少女・後藤ひとりと、彼女がメンバーとして加入する4人組バンド・結束バンドの活動と成長を描くTVアニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』。2022年に放送されて一躍話題作となった本アニメを再編集した劇場総集編の前編『劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく! Re:』が、映画館で大ヒット公開中。

リスアニ!では、後藤ひとり役・青山吉能のインタビューに続き、今回は結束バンドのメインボーカリスト・喜多郁代役の長谷川育美に、映画に期待するポイントや主題歌である新作曲のエピソード、そしてこれまでのステージから得てきた経験をもとに夏からのライブへ向かう意気込みを聞いた。

INTERVIEW & TEXT BY 日詰明嘉

OP・EDを飾る結束バンドの新曲2曲「上位に食い込むほど好きな曲」

――長谷川さんは『ぼっち・ざ・ろっく!』が劇場総集編として公開されることを、まずどのように受け止めましたか?

長谷川育美 どのタイミングで聞いたのかは覚えていないのですが、シリーズ総集編の劇場作品が制作されるとは想像していなかったので、驚きました。音楽作品なので映画館の音響で聴けることはもちろん、ギャグも面白いので大画面で観たらすごく楽しそうだなと思いました。

――大勢のお客さんと一緒に観ると、笑える場面も感じ方が違いますよね。

長谷川 そうなんです。映画館って、その作品を目当てに来る人たちばかりだから、同じ『ぼっち・ざ・ろっく!』好きな人たち同士が集まって一緒に観るわけで、それってとても素敵なことだと思うんです。私も、みんながどの場面で笑うのかを知りたいので、公開後には映画館まで観に行きたいと思っています。

――完成した劇場総集編の映像はご覧になりましたか?(インタビュー時は劇場公開前)。

長谷川 それが、まだなんです。だからどういう編集になっているかは私も一切知らなくて。ただ、台本をほんの少しだけチラ見したところ、TVアニメの第1話と今回の劇場総集編では入り方が違ったので、時系列の並べ方はおそらくTVアニメと違ったものになるのではないかと想像しています。

――今回の総集編前編で描かれる範囲で、長谷川さんが好きなシーン、大画面で観たいと思うシーンはどんなところでしょう?

長谷川 基本的に、ぼっちちゃん(後藤ひとり)の奇行は全部楽しみです(笑)。こんなにも奇行のバリエーションあるんだって思わせるくらい、本当に色んなことをするので、それが大画面で観られるのはすごく楽しみです。

どの場面が使われているのか楽しみですし、そのとき映画館は一体どういう空気になるのか……(笑)。

――奇行での叫び声ひとつとっても、大音響で聞くと笑いのニュアンスは全然違ってくるでしょうし、大画面でダム映像が出たりしたら……。

長谷川 そうそう(笑)。実はダム映像のシーンも大好きなんです。他にも意味がわからないシーンであればあるほど、大画面で観たときにすごく面白くなると思うので、そこはとても楽しみです。かと思えば、ライブシーンが始まったらめっちゃかっこいいわけですから、そのギャップはすごく楽しそうですよね。お家でご覧になるときは、やっぱり1人とか少人数なことが多いと思うんですけれども、この作品は映画館の空気感込みで楽しんでいただければと思います。

――ちなみに前半での喜多ちゃんに関するシーンでのお薦めは?

長谷川 やっぱりライブシーンです。喜多ちゃんの努力の証でもあるし、そこで挫折を味わうシーンでもあるので、私も思い出に残っています。あのシーンでの歌の表現は(CDなどの)音源になっているものとは違う歌になってるので、そこも注目して聴いてもらいたいです。あと、ファンの方であれば一通り内容はご存知だと思うので、新作であるオープニング映像をご覧いただきたいですね。私もどんな映像になるのか楽しみにしています。

新曲と合わせて皆さんに楽しんでいただければと思います。

――ちょうど今お話に出ました本作のオープニングテーマ「月並みに輝け」ですが、まず音源を受け取っての印象はいかかでしたか?

長谷川 もう、思い切り自分のタイプすぎて、聴いたときはめちゃめちゃテンションが上がりました。めっちゃいい~!と思って(笑)。メロディも歌詞も好きですし、サウンドは疾走感があるし、もちろん今までの結束バンドの曲も全部好きですけど、いきなりそこの上位に食い込むほど好きな曲ですね。途中で一度音源をいただいていたのですが、実はそこから完成版では歌詞が変わっていて、そうしたブラッシュアップされていく過程も含め、こだわりのある楽曲になっているなと感じました。

――完成された歌詞ではどんなところがお好みでしたか?

長谷川 “天才だって信じてた”から始まるのがすごく印象的でした。やっぱり、ぼっちちゃんはそういうところがあるじゃないですか。「自分なんて……」って自信がないところもあるけど、「自分ってすごい!」と思っている部分がある。それが曲の頭からよく出ているなと思いました。でも、その後に、実際はそうじゃないとか上手くいかないとか、挫折や気付きもきちんと描かれていて、その物語性もとても好きです。この歌詞は色んな人に共感していただけるんじゃないかなと思います。

――歌詞の中で“天才”に関することが何度も出てきますが、『ぼっち・ざ・ろっく!』という作品に携わった人や登場キャラクターのなかで、長谷川さんが「これは天才」と真っ先に思い浮かぶのは?

長谷川 えーっ!天才しかいないですよ!だた、私たちキャストが口癖のように言っているのは「斎藤圭一郎、天才」ですね(笑)。

だって、この作品で(シリーズ)初監督なんです。しかも、原作は4コマ漫画ということで、そのままアニメに持ってくるのは難しい。そんななか、コマとコマの間の埋め方や見せ方をすごく考えられて、1本のアニメーションとして面白くする作りにされているんです。私たちも当初からこれは天才の技だと感じていました。それで言うと、(結束バンドの楽曲の編曲を担当している)三井律郎さんもそれまで編曲のお仕事の経験はあまりなかったそうなのですが、もう長年やってきたかのように結束バンドの曲をアレンジしてくださっていてすごいなと思います。

――「月並みに輝け」のレコーディングのときの様子を教えてください。

長谷川 作曲してくださった音羽-otoha-さんと編曲の三井律郎さんも現場にいらっしゃっていたので、安心してレコーディングをすることができました。音羽-otoha-さんは「歌い出し最高!」とか、私の歌の良かったところを歌詞カードにたくさんハートマーク付きで書いてくれて、それが嬉しくて写真を撮って思い出に残しました(笑)。

――歌ってみての手応えや難度はいかがでしたか?

長谷川 そこまで難しくはなかったかもしれません。それを音羽-otoha-さんに伝えたら「ちゃんと考えて作ってるんで」って言ってました(笑)。だからこそより表現に集中できるので、より気持ちを込めながら歌わせていただきました。

――また、エンディングテーマ「今、僕、アンダーグラウンドから」についても教えてください。

長谷川 ちょっと爽やかさがあって、すっきりとエンディングを迎えられる感じがして、これも大好きな楽曲です。この曲は(伊地知)虹夏ちゃんが歌う「なにが悪い」を書いてくださった北澤ゆうほさんの作詞・作曲で、私もあの曲が好きだったので、今回、ゆうほさんの曲を歌えるのがすごく嬉しかったんです。実際に歌っていても楽しくて、早くライブで歌いたいなと思っています。

――歌ううえでのポイントはどんなところにありましたか?

長谷川 結束バンドの楽曲なので、結束バンドらしさは常に大事にしていました。あと、「歌詞に合わせて思い切り叫んでみて」と言われた部分がありまして、そこはきれいに声を出すというよりも、気持ちを込めて心の叫びを表現して歌ったりしました。“歪な僕を愛してよ”とか、ぼっちちゃんらしい歌詞がすごく良いですよね。歌詞の最後の“一つ一つ光る星を結ぶように”は、ちょっと「星座になれたら」に繋がってくるようなニュアンスがあって、そこも好きです。

「私、大丈夫」ステージに立つことで、歌唱を楽しめるように

――先ほど、「結束バンドらしさ」という言葉がありましたが、長谷川さんの思う「らしさ」を改めて言葉にするとどんなイメージでしょうか?

長谷川 不完全でもいいというか、むしろきれいじゃなくていいなと思っていて。その「らしさ」が逆に味になっていると思うんです。音楽的に言うと、『ぼっち・ざ・ろっく!』の作品のなかの結束バンドと、現実世界でのフェスに出るようなバンド活動がかけ離れざるを得ないのは難しいところではあるんですけど……。

――作中では荒削りながらも青春のパッションを思い切りぶつけていますが、リアルなステージに出る結束バンドはプロフェッショナルである必要があると。

長谷川 そうですね。立つ舞台が大きいので、やっぱりしっかりしたものを見せなければと思っています。

そこは同じ「結束バンド」でありながらも、作中とライブで切り替えてまた違う表現をしているんです。私はもちろん上手くは歌いたいけど、それだけでなく感情を乗せたいという思いが強くあって。それは自分の中で“恒星”(2023年5月21日にZepp Haneda (TOKYO)で開催されたワンマンライブ“結束バンドLIVE-恒星-”)の頃から出来てきている感じがあります。そのときにライブならではの表現をたくさん試して、ライブ感みたいなものを掴めたんです。完璧でなくてもいいし、なんならちょっと荒いところはあるかもしれないけど、それが「結束バンドらしさ」になっていたらいいなと思います。

――それに関連して伺いたかった質問がありました。長谷川さんは、TVアニメの物語で描かれた喜多ちゃんとしてフリーズパックしたものをステージ上で再現するのか、それとも生きた喜多ちゃんとして経験をアップデートさせていくのか。今のお話からすると後者のようですね。

長谷川 そうですね。やっぱり作中のSTARRYでオーディションを受けている結束バンドが、“JAPAN JAM 2024”のステージに立てるわけはないと思うんです(笑)。アニメのままの結束バンドを持っていくと、私の中で整合性が取れなくなるので、立つステージに合わせていいと私は思っています。でも、気持ちは絶対に結束バンドですけどね。

やっぱりライブならではという部分を大事にしていますし、それぞれの場所だからこそ出せるものがあると思っていて。“JAPAN JAM 2024”のときに出せたものが、9月から始まるZeppツアーで同じように出せるかというと、そうではないだろうし、その場所で出せる生感、それこそがライブだし、私はそれを大事にしたいなという気持ちでステージに立っています。

――その感覚はいつ頃から固まりましたか?

長谷川 これも“恒星”の頃からです。最初の“ぼっち・ざ・ろっく! です。”(2023年4月23日にヒューリックホール東京にて開催されたスペシャルイベント)のときは、自分の中で納得のいくライブができなかったので、“恒星”のときは最初不安で、とにかく今このステージを一生懸命やろうとしか考えていませんでした。でも、歌っている最中からもう楽しすぎて、早々に「私、大丈夫」って思えたんです。音楽ディレクターの岡村(弦)さんからも「長谷川さんは楽しむ力がある人だ」と言っていただけたのが、すごく嬉しくて。それって当たり前に持てるものではないと思うので、それが私の強みかなと思いました。

――そういった経験をすることによって、今回の新曲も長谷川さんのなかで上手く歌えるようになったというような実感は持っていますか?

長谷川 元々ロックにあまり触れてきていなかったというのもあり、レコーディング中も歌い方ひとつからアドバイスをしていただくことが多かったのですが、ここ最近の曲は「もう結束バンドとしての歌い方が馴染んできたね」と言っていただけるくらい、瞬時に結束バンドとしての歌唱ができるようになってきた感覚はあります。歌も多分成長している気がします。

――後藤ひとり役の青山吉能さんも絶賛する長谷川さんの歌唱ですが、当初はそんなご苦労があったんですね。

長谷川 歌に感情を込めているつもりでも、聴いてみたら案外さっぱりして聞こえることがこれまではあったんです。でも最近は自分の中でそれがちょっとずつできるようになってきた感じがしていて、それがとても嬉しいです。歌というのは、どうしても上手い・下手という基準がありますけれども、私が好きなのは気持ちが乗っている歌なんです。そういう歌を歌える人間になりたいと思っていますし、結束バンドの楽曲は内から出てくる熱や叫びがすごく込められているものばかりなので、そういう感情面はやっぱり大事だなと思っていて。だからこそ技術も磨いて歌をより良いものにしていけたらと、ずっと思っています。

――その感情をより込められるようになった理由はご自身では何だと思いますか?

長谷川 やっぱり、ステージ経験が大きいと思います。そもそもこれまで歌のお仕事もそこまでなかったし、ましてステージに一人で立って歌うなんてことは、結束バンドまでありませんでしたから。そこから色々と経験させてもらって、こう表現したいという気持ちもどんどん出てきて、それが今の歌唱に繋がってるんじゃないかなと思います。

――ライブを楽しめている様子が伝わってきます。

長谷川 そうですね。でも私は声優としてのボーカルというか、結束バンドの喜多ちゃんとしての向き合い方しか知らないので、仮に「長谷川育美としてライブをやってください」と言われても、特にやりたいことは思いつかないんです。結束バンドだから「私はこういう表現がしたい」という欲が湧いてくるんだろうなと、毎回思いながら歌っています。

――喜多ちゃんとしてというか、彼女を通しての表現。

長谷川 歌唱の部分で喜多ちゃんのフィルターを通すことはもちろんそうですし、作詞の方もぼっちちゃんをその身に落とし込んで書いてくれているので、ぼっちちゃんが書いた歌詞をどう歌うべきか、作品全体で見せたいものは何かを考えたうえで表現しますし、やっぱり作品というものがあるからこそ湧いてくる意欲なんだと思います。そう考えると私はやっぱり声優だなと思います。そして声優をやっているからこそできる表現もあると思うので、そういうところを大事にしていきたいなと思います。

――“JAPAN JAM 2024”の映像を少し拝見しましたが、ファンの温かさが印象的で、フェスにおけるアウェイ感がありませんでした。ご自身ではこれをどのように受け止めましたか?

長谷川 本当にアウェイ感がありませんでした。実際にステージ上から「『ぼっち・ざ・ろっく!』を知らない人ー?」って聞いたら、むしろ知らない人の方が少なかったんです。私としてはもっと知らない人がいてくれたら、これから好きになってもらえる人を増やせると思ったのに(笑)。でも、こんなにも大勢の人がフェスにまで会いに来てくれたのは嬉しかったですね。私自身も、推しが出演するとなっても、フェスまではさすがに……と見送ってしまうタイプなのでわかるんです。こうしておそらく馴染みがないところにまで会いに来てくれるのは勇気のいることだと思うので、とても嬉しかったです。

――さらにこの夏は日本最大級の野外フェス“ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2024”への出演があります。こちらの展望をお聞かせください。

長谷川 結束バンドはプロのミュージシャンの方々に演奏していただいて、キャストが歌うという方針を取っているのが特徴です。たまに「キャストが演奏してほしい」という声をいただいたりするのですが、私は自分だけが創り手だと思ったことは一度もなくて。当たり前の話ですが、アニメ作品というのは大勢のスタッフさんが愛を持って各々のお仕事を通じて1つのものを作っていて、私はそれが大好きなんです。だから、私はこの結束バンドという形態がめちゃくちゃ幸せで大好きですし、私もこの結束バンドのメインボーカルとして楽曲をとにかくたくさんの人に届けられるように、常に成長していけたらと思っています。普段は役者なので、慣れないことも多いですけれども、感情の部分であったり、その場所のライブで得られた感情を大事にしながら、結束バンドの曲を届けられたらいいなと思います。

――アニメが始まった頃に“ROCK IN JAPAN”に出られるなんて……。

長谷川 思わないですよ!(笑)。この前、“JAPAN JAM”のステージに立ったときに、「これ、声優をやっていて見られる景色じゃないな」って思いましたもの。貴重な体験をさせてもらっていますし、それもこうして素晴らしい作品に巡り会えたからこそだと思っているので、この経験は大事にしていきたいですし、できることならもっと色んな場所に出ていきたいと思っています!

――秋からは「結束バンドZEPP TOUR 2024 “We will”」が予定されています。意気込みはいかがでしょうか。

長谷川 前回の“恒星”は一夜限りのワンマンライブだったのが、今度は全5公演のツアーとなります。まだどんな内容になるかはまったく知らないのですが、ツアーでやっていくからには、“恒星”よりも進化したところは見せたいですし、ツアーの中でも成長していきたいと思います。毎月ライブができるなんて、またとない機会だと思うので、体力面に気をつけて、みんなで成長の場にしていけたらと思っています。

●作品情報
『劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく!』
前編『劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく! Re:』全国公開中
後編『劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく! Re:Re:』2024年8月9日(金)公開

■スタッフ
原作:はまじあき (芳文社「まんがタイムきららMAX」連載中)
監督:斎藤圭一郎
シリーズ構成・脚本:吉田恵里香
キャラクターデザイン・総作画監督:けろりら
副監督:山本ゆうすけ
ライブディレクター:川上雄介
ライブアニメーター:伊藤優希
プロップデザイン:永木歩実
2Dワークス:梅木葵
色彩設計:横田明日香
美術監督:守安靖尚
美術設定:taracod
撮影監督:金森つばさ
CGディレクター:宮地克明
ライブCGディレクター:内田博明
編集:平木大輔
音楽:菊谷知樹
音響監督:藤田亜紀子
音響効果:八十正太
制作:CloverWorks
配給:アニプレックス

■キャスト
後藤ひとり 青山吉能
伊地知虹夏 鈴代紗弓
山田リョウ 水野 朔
喜多郁代 長谷川育美

関連リンク

アニメ「ぼっち・ざ・ろっく!」公式サイト
https://bocchi.rocks/

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