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TVアニメ『杖と剣のウィストリア』オープニング主題歌「Fire and Fear」は、“覚悟と恐怖”をモチーフにしたロックナンバー。PENGUIN RESEARCHの根本的なスタンスともリンクしているというこの曲を収めたニューシングルについて、メンバーの生田鷹司(V)、神田ジョン(Ba)、堀江晶太(Ba)、柴﨑洋輔(Key)、新保惠大(Dr)に聞いた。
INTERVIEW & TEXT BY 森 朋之
――ニューシングル「Fire and Fear」のリード曲は、TVアニメ『杖と剣のウィストリア』オープニング主題歌。堀江さんは「杖と~」の作品性に強いシンパシーを抱いていたそうですね。
堀江晶太 はい。アニメの原作を読ませていただいて楽曲の着想を得たんですが、魔法を使えることが前提の世界において、主人公(ウィル・セルフォルト)はまったく魔法が使えない、持たざる者として存在している。そのなかで自分の存在意義をどう位置付けるのか?ということが軸になっているんです。それはPENGUIN RESEARCHの根本ともつながっているのかなと。秀でているものを持っていないとバンドをやっちゃいけないというわけではない、というか。改めて振り返ってみると「そういうことをずっと歌ってきたな」と思ったんですよね。
――「Fire and Fear」を直訳すると、炎と恐れ。このモチーフについては?
堀江 作詞に着手する前、かなり速い段階から「Fire and Fear」というワードが自分のなかにあったんですよね。本作のヒロイン(エルファリア・アルヴィス・セルフォルト)は氷の魔法の使い手なんですが、ウィルは彼女に憧れを抱きながらも、相反する生き方を探している。それを象徴するのが“火”なのかなと。
――なるほど。アグレッシブなロックサウンドも印象的ですが、生田さんはボーカリストとして、どんな意識でこの曲に臨みましたか?
生田鷹司 アニメのオープニング主題歌ではあるんですが、同時に「今の自分にぴったりな歌詞だな」と感じて。僕は以前、ただ漠然と走っていたんですよね。それがコロナのタイミングで挫折や失敗、諦めといったネガティブなものを抱えるようになって。そこから自分自身を見つめ直して、「自分は何者かわからない。でも、歩いていくんだ」という思うようになって……。その感覚にすごくハマっていたし、アニメの主人公に刺さるのはもちろん、僕自身の人生に刺さる歌詞だなと強く思ったというか。なのでレコーディングのときもあまり技術的なことは気にせず、自分自身の熱量、“ありのまま”をそのまま歌に込めたくて。
――生田さん自身にグッと引き寄せて歌った、と。
生田 そうですね。
――ダイナミックなギターサウンドもこの曲のキモですよね。
神田ジョン ギターに関しては、ほぼ何も考えてないです。意図してシンプルにしたわけでもないし、「こうしてみよう」と試したわけでもなくて、思うがまま弾いたらこうなったというか。ギター1本でしっかり存在感を出すということかな、意識したのは。あとはイントロですね。じつはPENGUIN RESEARCHのなかでもかなり難しいフレーズなんですよ。勝手に難しくしちゃったところもあるんだけど。
新保惠大 ドラムはギターと逆で、けっこう考えてフレーズを組み立てました。
――熱いバンドサウンドのなかで響く、美しいピアノのフレーズも素晴らしいなと。
柴﨑洋輔 ありがとうございます。晶太さんが作ってくれたフレーズがすごく良かったので、けっこうそのまま弾いていて。他の楽器陣が熱いプレーをしているなかで、壮大さやスケール感をピアノで担えたらなと思ってましたね。
――今後のライブでも大きな役割を果たしそうですね。
堀江 このインタビューを受けている時点ではまだ披露していないんですが、今のツアー(10都市を回る全国ツアー「Penguin Go a Road 2024「無病息災」」)の最後のほうではやる予定です。アップテンポのストレートなロックビートはこれまでもよくやってきたんですが、「Fire and Fear」には緊張感やヒリついた熱気を込めたつもりなので、それがライブでどう作用するか楽しみですね。ライブでもしっかり役割を持たせたいと思ってます。
――シングル2曲目の「蝉人間」は、これまでのPENGUIN RESEARCHにはなかったアプローチの曲では?
堀江 少し実験的なところはありますね。去年の冬のツアーで演奏するために作った曲なんですけど、最初は「わかりやすくライブで盛り上がれる、元気いっぱいの曲にしよう」ということだったんですけど、作っていくうちにどんどん違う方向に進んで。ミックスが終わったときは、「最初にやりたかったこととは真反対の曲になった」と思いましたね。僕が多めに歌っているのもそう。それは鷹司が「こういう曲なら、晶太が多めに歌ったら?」と言ってくれたのがきっかけなんですよ。
生田 去年の冬のライブで披露したこときは僕がメインで歌ったんですけど、どうしてもエモさや明るさが入って、“ザ・PENGUIN RESERACH”みたいな感じになるなと思って。レコーディングに向けて制作が進んでいくなかで、曲の雰囲気が変わってきたし、晶太が歌ったデモの仮歌もすごくよかったから、「これは晶太が歌ったほうがいいんじゃね?」と思ったんですよね。
――「蝉人間」の歌詞も堀江さんの個性が出てますよね。
生田 そうなんですよね。僕のなかでは、すごい暑い夜に家に帰ってきて、玄関でバターンと倒れて、天井を見ながら「暑い! でも生きてやる!」と叫んでる感じというか。負の感情もあるんだけど、生へのしがみつきもあるんですよ、この曲には。
神田 周囲の視野をあまり意識せずというか、素直に書きたいことを書いている歌詞だなという印象ですね。
堀江 開けないほうがいいというか、人様に見せるようなものでもないので。普段、ウソをついて歌詞を書いてるわけではないけど、「ここは言わなくてもいいな」みたいな領域があって、この曲ではそこにちょっと踏み込んでるんですよね。最初から「おまえの人生を歌詞にして、メインで歌え」ということだったら、こういう歌詞は書いてないと思います。特殊な制作フロウだったし、少しずつ形が変わっていくなかで書いてもらったというか、書かせてもらった感じですね。自分としてはドラムもポイントで。ドラムが入ったときに安心したというか、「これでいい」と思えたところもありますね。
新保 晶太くんが歌うことだったり、楽曲全体の雰囲気を妖しい感じにしたというのもあって。それに合うようなドラムの音作りをやってみたんですよ。派手さを残しつつ、デッドな音(残響が少ない音)がハマるだろうなと思ったんですけど、こういう音作りは自分としても初めてでした。ドラムテックの方、エンジニアの方のおかげですね。
――鍵盤の音色も独特ですよね。
柴﨑 ピアノにエフェクターをかけてウネウネした音にしたり、不気味さを出してみようと思って。かなり実験的だし、面白い曲になったと思います。
――3曲目の「who are you? who are you?」は「太鼓の達人」の音楽レーベルWADIVE RECORDのために“堀江晶太 feat. 生田鷹司”として制作された曲“PENGUIN RESEARCHバージョン”。ストレートなロックナンバーですね。
堀江 そうなりましたね。WADIVE RECORDのために書いた曲は、僕が作曲家として曲を作り、ボーカリストの生田鷹司に歌ってもらったんですけど、それをバンドバージョンとして1から組み直すことになって。僕のほうでラフのアレンジをいくつか作って、メンバーの意見を聞きながら作っていくうちにどんどん騒々しい曲になったという。これも我々のいつものパターンですね。各楽器のアプローチやフレーズはみんなにお任せしたんですよ。それをミックスしたらこうなったというか、自由度が高い楽曲になりましたね。
生田 WADIVE RECORDのバージョンはファルセットを活かしたり、リズムをタイトにしてみたり、普段は出さないような自分を出してみようと思っていて。いざバンドでやるとなって、オケもかなりドカドカしていたし、「細かいことは気にせず歌おう」と。自分の家で録ったんですけど、いい意味でラフにというか、サクッと歌いましたね。
神田 「蝉人間」の晶太くんの歌詞じゃないけど、(ギタリストとして)あまり開けなかった引き出しを開けた感じですね、この曲は。
堀江 こういうマッチョなアプローチ、いつもの神田さんの流儀とは違うんじゃない?
神田 そうなんだけど、こういうラウドなギターをシングルコイル(ギターのピックアップの種類)で弾くのが俺の流儀かな。スクリーモバンドをやってたときも、ジャズマスター(ギター)をドロップBの変則チューニングにして弾いてたので。
――ジャズマスターといえば、オルタナを象徴するギター。ラウド系ではあまり使用されないですよね。
神田 そう、俺はオルタナがベースなので。PENGUIN RESEARCHに限らす、そこを崩すのは違うかなと思ってます。
新保 ジョンのギターが00年代のメタルコアっぽい感じだったので、そこに引っ張られた感じはありますね。俺もそういう系統のバンドをやっていたし、もともと大好きなジャンルなので。ただ昔の感じをそのままやるんじゃなくて、「今の自分がやったらどうなるか?」ということも意識していました。
柴﨑 晶太さんと「ピアノではなくて、あえてシンセだけでやってみたら面白いかもね」という話をして、そこからフレーズを作っていったんですよね。ただ、自分はいわゆるラウド系とかスクリーモを通ってなくて。この曲の鍵盤を弾くにあたって、そっちのジャンルンをめちゃくちゃ聴きました。
――5人のアプローチや意思が込められたバンド然とした曲だと思います。今年は全国ツアーもあり、新作のリリースもあって。ロックバンドとして真っ当な活動が戻ってきましたが、PENGUIN RESEARCHとしてのこの先のビジョンをどう描いていますか?
堀江 ツアーの合間にメンバーやスタッフさんともそういう話をよくしているんですよ。当たり前にライブができるようになったことで、改めてライブをやる意味だったり、意義を持たせないといけないと。10周年も近づいているので、そこに向けて精力的に活動を行いたいと思うし、いろいろなことを考えていて……。ただ、全部やればいいということでもないと思うんです。メンバーそれぞれに向き不向きもあるし、違いもあるので、慎重にそれを見据えていきたいんですよね。バンドに限らず、複数人が集まって事を進めようとするときに、理想だけを追求すると「理想以外のものが何も残らない」ということになりがちだと思うんですよ。現状、何か歪みがあるというわけではないんだけど、気持ちよくバンドを続けたいし、真っ当に音楽に向き合える環境を作っていけたらなって。
生田 何でもそうなんですけど、僕は準備をするのが大嫌いで(笑)。けっこう「またあれが始まるのか」みたいな気持ちになるんだけど、ライブに関してはそんなことなくて、ずっと楽しいんです。なんだかんだ言って「音楽をずっと続けたいんだな」というのもわかってきたし、あまり物事を深く考えすぎないようにして、感情の赴くがままやっていきたいですね。「みんなを楽しまるためにもっとがんばろう」みたいなことを思うと失敗しがちなんですけど、これまでの経験から言っても。そうじゃなくて、ありのままの自分で「楽しい!」という姿を見せることが大事なのかなと。そうやって自分自身のパフォーマンスを磨いていけば、先は明るいはずだと思ってます。
神田 今のツアーもそうなんですけど、すごくいいライブをやれている実感があって。そのことにもっとたくさんの人に気づいてもらえるようなアプローチをしていきたいですね。「こんなにカッコいいことをやってる、こんなにすごいライブをやっているバンドがいる」って知ってほしいし、ライブバンドとしての幅も広げていきたいと思ってます。
新保 ライブでも制作でも“らしさ”みたいなのものが年々強くなってきた感じがあって。それをもっと色濃くしていきたいし、そのためには一つ一つの制作に真摯に向かうしかないと思ってます。そういうメンバーが集まってし、さらにいろんな部分を深堀して「こういう一面も武器になる」というところも増やしていきたいですね。
柴﨑 僕自身もPENGUIN RESEARCHの活動にワクワクしているし、いいライブができている自信もすごくあるんですよ。個人的には楽曲のスケール感を意識した演奏をしたくて。ライブハウスでもZeppでもそうですけど、広い景色を見せられようなプレイをしたいし、それをさらに磨いていきたいと思ってます。
●リリース情報PENGUIN RESEARCHニューシングル
「Fire and Fear」
7月24日発売
【通常盤(CD)】
品番:VVCL 2527
価格:¥1,320(税込)
【期間生産限定盤(CD+BD)】
品番:VVCL 2528-2529
価格:¥1,870(税込)
<CD>
M1.Fire and Fear(TVアニメ『杖と剣のウィストリア』オープニング主題歌)
作詞:堀江晶太 作曲:堀江晶太 編曲:堀江晶太、PENGUIN RESEARCH
M2.蝉人間
作詞:堀江晶太 作曲:堀江晶太 編曲:堀江晶太、PENGUIN RESEARCH
M3.who are you? who are you?(「太鼓の達人」WADIVE RECORD楽曲 堀江晶太 feat. 生田鷹司「who are you? who are you?」PENGUIN RESEARCH ver.)
作詞:堀江晶太 作曲:堀江晶太 編曲:堀江晶太、PENGUIN RESEARCH
M4.Fire and Fear -Instrumental-
M5.Fire and Fear -TV Size-
<BD>
「Fire and Fear -Music Video-」
「YATSUATARI -Live Movie-」
●ライブ情報
Penguin Go a Road 2024「無病息災」
開催中
7/26(金)GARDEN 新木場 FACTORY(東京都)OPEN 18:00 / START 19:00
チケット:立見 ¥5,500(税込)+ドリンク代
詳細はこちら
https://www.penguinresearch.jp/sp/live/archive/?51516
関連リンク
PENGUIN RESEARCH オフィシャルサイト
https://www.penguinresearch.jp/
TVアニメ『杖と剣のウィストリア』公式サイト
https://wistoria-anime.com/