研鑽し続けた10年の歩みが生んだ、さらなる攻勢を予感させる一...の画像はこちら >>

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声優アーティスト・大橋彩香が8月6日に、『変革Delight』を日本人アーティスト初となるNemo Albumとしてリリース。自身のアーティストデビュー10周年当日の発売となる記念すべき本作は、初レギュラー作の主題歌を担当したFLOWがタイトルチューンを、「みんなDEどーもくん!」で4年以上共演し続けている大原ゆい子が「美味しいセレナーデ」を提供した、まさにこれまでの歩みを反映したメモリアルな一作となった。

今回はそんな新曲2曲の話題を中心に、これまでの活動も振り返りながら、大橋にたっぷり語ってもらった。

INTERVIEW & TEXT BY 須永兼次

「変革Delight」は、“戦いの年”に向けた強く鋭い姿が浮かぶ1曲

――新譜についてお聞きする前に、同じくアーティストデビュー10周年を記念して開催されたアジアツアー“Reflection”についてお聞かせください。ツアーを回るなかで、この10年間の活動の積み重ねが生きたように感じる瞬間はありましたか?

大橋彩香 メンタルも体力も、色々な経験を通じてたくましくなったんだなぁって感じました。というのも私、今までツアーのことを正直「しんどいもの」だと思って避けてきたところがあるんですよ。2017年にやった最初のツアー“OVERSTEP!!”がしんどすぎて、体調管理が上手くいかなかったイメージがあったので、今回も最初はちょっと不安だったんです。でも“Reflection”では、全然体調崩さなくて。

――同時期に、並行して“魂のフリーライブツアー”も行なわれていたのにもかかわらず?

大橋 そうなんです。ツアー自体も海外の会場も含まれていたりと割とカロリー高めだったのに、終始元気に回れていたんですよ。それは、特にメンタルがたくましくなったからかもしれないですね。私、メンタルから体調を崩すタイプなので。

――メンタル面では、7年前からどんな変化があったように思われていますか?

大橋 前よりもあまり失敗を気にしなくなりました。昔は失敗することが恐ろしすぎて、ミスったらその後の曲全部楽しくなくなっちゃうくらいで(笑)。だからミスしたら「どうしよう……」と萎縮してしまって、負の連鎖が起こる……という悪循環がよく起きていたんです。

でも最近では、言い方は悪いかもしれないですけど、「ミスもライブの醍醐味」みたいに割り切れるようになったというか。もちろんミスがないほうがいいんですけど、起きてしまったときにも上手く復活できるようになってきました。おかげで最近は「アレがダメだった……」じゃなくて、「あー、楽しかった!」という気持ちでライブを終われるようにもなっています。

――そんなツアーを経てリリースされるNemo Album『変革Delight』は、まったく表情の異なる2曲が収録されてはいますが、どちらも大橋さんの歩みを感じさせる作家陣によるものです。

大橋 どちらもすごくお世話になった方たちに制作していただきまして……今まで積み重ねてきたご縁あっての2曲だと思いますし、色んな曲を歌ってきたからこそ出せる今の表現を詰め込ませていただきました。

――ではまずタイトルチューン「変革Delight」についてお聞きしていきます。この曲をFLOWさんに依頼することになった、きっかけはどのようなものだったのでしょう?

大橋 10周年曲制作のタイミングで、イベントなどでFLOWさんと共演する機会がすごく増えまして。そのとき「いつか楽曲を作っていただけたら嬉しいです」みたいなお話もよくしていたので「……今なんじゃない?」と思って(笑)、お願いさせていただきました。

――FLOWさんは、声優としてのデビュー初期から非常に縁深い存在ですよね。

大橋 そうなんです。私の初レギュラー作品『エウレカセブンAO』や、私が女性主人公ボイスを担当している『コードギアス 反逆のルルーシュ ロストストーリーズ』の主題歌を担当されていますし、キャラクターとして曲をカバーさせていただいたこともあって……そんなふうにお世話になる機会の多かった方々に、大事な節目の楽曲を担当していただけて嬉しかったです。

――楽曲自体については、どのような希望を出されたんでしょうか?

大橋 10周年イヤーは結構「戦いの年だな」と思っているので、「『10周年を機にまたスタートラインに立って、革命を起こしてやろう!』みたいな、かっこ良くて強い楽曲がいいです!」とお願いさせていただいて。

あとは「ライブ映えして、初見の人でも乗れるような曲だと嬉しいです」というお話もさせていただきました。そうしたら、もう「まさに!」みたいな曲をいただけて……打ち合わせも15分くらいで終わったのに(笑)。

――そんなに早く(笑)。

大橋 打ち合わせはリモートで、KOHSHIさんとTAKEさんが参加してくださったんですけど、さっきみたいな希望をお伝えしたらすぐに「わかりました!」ってなって(笑)。デモもかなり早く上げていただいたんですよ。しかも3曲も。

――その短時間の打ち合わせから3曲も!?

大橋 はい。その中から、大橋サイドで満場一致で選ばせていただいたのが「変革Delight」の元になった曲だったんです。そこからも歌詞とかすべての工程が早くて……FLOWさんの仕事人ぶりを感じました。

――曲を受け取ったとき、特にどんな部分が印象的でしたか?

大橋 私、転調のある曲が元々好きなんですけど、特にお願いしていなかったのに最後に転調してキーが高くなるので「やったぁ!」と思いました(笑)。それに、間奏があまりなかったり1番と2番で構成が若干違っていたりと、展開が目まぐるしくて飽きさせない曲だなぁとも感じましたね。あとは……苦手なラップが入っていたのは予想外で(笑)。

でも色んなラップを歌ってきたなかで、ラップには作られる方のクセがすごく表れるのを感じていたので、「わー!FLOWさんのラップだぁ!」と嬉しくもなりました。

――そのラップ部分には、今回どのように取り組まれたのでしょうか。

大橋 私がラップをやらせていただくときって、例えば「Be My Friend!!!」みたいに漢字があることが多くて。「変革Delight」も四字熟語みたいな漢字がすごく多かったんです(笑)。だから今回もろれつも上手く回らなかったし、どう乗っていけばいいのかの感覚を掴むのがすごく難しくて。ボイトレのときにこの曲を持っていって、ラップのところだけかなり練習したんですよ。

――特訓のようなこともされたうえで、レコーディングに臨まれた。

大橋 はい。どうしても職業柄、言葉をきれいに言うクセがあるので、海外アーティストが日本語を歌ったときのラップのような感じにすると結構おしゃれになるのかなと思ったりして。なので、Kanata Okajimaさんに昔教わった「日本語をローマ字で書いて、『R』を英語の発音みたいにする」という方法を、今回も実践してみたりしました。

――それ以外の部分については、実際歌ってどんな感覚がありましたか?

大橋 これはすごく意外だったんですけど、キーの高さの割に疲労度の高さを感じたんです。最近は自分の中でキーを低く設定する傾向があるんですけど、気持ちのところで「前に前に」となる……戦場に出るようなイメージというか(笑)。

そんな強い気持ちを持った歌詞になっているので、気持ちの面ですごくエネルギーや熱を引き出してくれる楽曲なんだなというのはすごく感じました。

――歌声にいつも以上の強さや鋭さがあって、牙のようなものさえ感じていたので、お話を聞いてすごく納得してしまいました。

大橋 レコーディングに臨む意識は普段と大きな違いはなかったんですけど、もしかしたら「10周年曲」という称号みたいなものが無意識的に自分をピリッとさせたのかもしれませんし、やっぱりどこか覚悟を決めていたのかもしれないですね。あとはFLOWさんが作ってくださったからか、女性が歌う曲というよりはちょっと男性が歌う曲に寄っているような感じもあったので、「これから喧嘩しに行く」みたいな(笑)、擦れたところが見えるような表現になったのかな?という気もします。

――レコーディングには、FLOWさんはいらっしゃったんですか?

大橋 TAKEさんにディレクションしていただきました。ディレクションしていただくのは初めてだったので最初はすごく緊張していたんですけど、それを吹き飛ばしてくれるくらいアゲアゲなレコーディングで、楽しかったです(笑)。しかもテイクを組むのがとにかく早くて!普段は全部録ってからテイクを組んでいくんですけど、TAKEさんは3テイクくらい録ったところで頭の中で「このテイク組もう」と決まっているみたいで、録りながら組んじゃうんです。そういうところも含めて改めて「どこまでも仕事人だなぁ」とも感じましたし、そのスタイルがせっかちな私にもすごく合っていて、ノーストレスでレコーディングできました。

――そんなこの曲のMVは、どんなコンセプトを元に制作されたのでしょうか。

大橋 まず「スケールの大きい画を撮りたい」という企画書をいただいたんですよね。草原のような開けた場所で、旗や布をたなびかせている……みたいな。自分自身もそういう「革命」のようなイメージは持っていたので、すごくいい映像が撮れたと思っています。

――引きの画の壮大さも魅力でしたが、1サビ明けの旗を持って岩肌に足をかけているバックショットも非常にかっこ良かったです。

大橋 ジャンヌ・ダルクみたいなものをイメージしていたので(笑)、それを連想させるようなものもできて良かったです。ちょっと曇天だったのも、曲に合っていますしね。

――ただ、後半の劇場のシーンも含めて表情的にはシリアス一辺倒という感じでもないんですよね。

大橋 そうですね。私がシリアス苦手っていうのも少しあるんですけど(笑)。ちょっと楽しんでいる感じとかも込めながら撮影させていただきました。

――また、旗の色合いとチェック柄は「YES!!」を連想するものなので、デビューと今とを繋ぐ曲になったイメージもありました。

大橋 たしかに。あのときの衣装はピンクチェックでしたし……そういえば、「Give Me Five!!!!! ~Thanks my family♡~」のときも衣装の色が赤だったので、「周年曲は、赤なのかな?」っていう気もしますね(笑)。それに、『Reflection』の「Don’t need color」ではKanataさんが歌詞の中で私を赤に当てはめてくれていたので、もしかしたら最近はオーラが赤になってるのかもしれないです。自覚は全然ないんですけど(笑)。

食べ物への愛も詰まった、幸福度高い温かなナンバー「美味しいセレナーデ」

――そしてもう1つの収録曲「美味しいセレナーデ」は、作詞・作曲を大原ゆい子さんが手掛けられました。

大橋 ゆい子さんにはもう4年くらいお世話になっていて、いつか曲を提供していただきたいなと思っていたんです。元々10周年曲は「変革Delight」だけの予定だったんですけど、たまたまこのタイミングでTVアニメ『まぁるい彼女と残念な彼氏』(以下、『まるかの』)のEDテーマのお話をいただきまして。「今がゆい子さんにお願いするチャンスなのでは?」とお声がけさせていただいたら、結構スケジュールがギリギリだったのにもかかわらず快諾してくださって……『まるかの』というほっこりする作品とゆい子さんならではの温かな曲のマッチング度合いも良すぎましたし、担当していただけて嬉しかったです。

――制作にあたっては、どんなリクエストをされたのでしょうか?

大橋 『まるかの』は、主人公の女の子がめちゃくちゃご飯を食べる子で。相手側の男の子は、出会ったときは自分のトラウマから太っている子に嫌悪感を持っていたんですけど、だんだん「いっぱい食べてるところも好き」みたいに変わっていくんです。なので、そういう男性目線の「いっぱい食べる君が好き」という気持ちを歌詞に乗せてもらえたら、とお願いさせていただいて。かつ「大橋要素として、ペペロンチーノとミルクティを入れていただけたら」とお願いしたら、2番にすごくいい感じに……(笑)。

――すごく近くにありますね(笑)。

大橋 「こんな近距離で入れてくれるんだ」ってびっくりしました(笑)。多分エンディングで流れる1番を若干アニメ寄りにして、2番以降で大橋要素を濃いめにしてくれたんですかね? たしかに『まるかの』には、ペペロンチーノよりも1番の歌詞に出てくるコロッケのほうが似合うと思うので。

――そうしてできた楽曲から、作品との相性の良さを強く感じられたわけですね。

大橋 はい。まるで絵が浮かぶようでしたし、ここ最近で一番幸福値が高い曲になったように思います。あと、自分も食べるのが大好きなうえにぷくぷくしてダイエットを繰り返すような経験もあったりするので、「ちょっとぷっくりした私も受け入れていただけませんか?」みたいな気持ちも入れられる、自分を許してもらえる曲にもなった気がします。歌詞を見たときに「ちょっと食べ過ぎちゃう私を、ゆい子さんが全肯定してくれてる!」って思いましたもん(笑)。それに、ゆい子さんも食べるのがすごい好きなんですよ。遠征すると一緒にすごく食べますし、リハの前にもよくお弁当の話をしたりするので……(笑)。そういうのもあって、食べ物へのLoveがすごく詰まった1曲になっているんじゃないでしょうか?

――この曲のレコーディングには、大原さんはいらっしゃったんですか?

大橋 はい。ディレクションはゆい子さんとよくご一緒されているプロデューサーさんにしていただいたんですけど、ゆい子さんもいらしてくださいました。ただ、この曲を作ってくれた“先生”のはずなのに、「かわいい……」とか「とてもいい……」みたいなことしか言わないんですよ!(笑)

――ベタ褒めじゃないですか(笑)。そんなレコーディングのなかで大橋さんは、曲の良さを一番引き出すために何を大事にされたのでしょうか。

大橋 今回は「一歩間違えるとキャラソンっぽく聴こえるので、もう少しアーティストっぽく」という指摘をいただいたりもして、ニュアンスの入れ方やさじ加減に悩んだ部分もあったんです。だからかわいすぎないように、声も地に近い感じにして。でも単に地に近いだけだと歌い方がすごく冷たくなりがちなので、温かさとナチュラルさを意識して、あとは年齢感もちょっと上げた感じで歌いましたね。主人公も社会人ということもあって、「社会人としての恋愛をしている」というところも意識しながらレコーディングしていきました。

――さて、アーティストデビュー10周年を迎えた後も、ファンの皆さんは活動をすごく楽しみにしていると思います。大橋さんの中で今後実現させたいことを今挙げるとしたら、どんなことですか?

大橋 結構前から頭にあることなんですけど、いつかドラムでもレコーディングをしてみたいですね。まだやったことがないので、カップリング曲とかであまり難しくないストレートな楽曲のときとかに……(笑)。コンテンツとかライブの場で演奏したことはありますけど、音源としてレコーディングしたものを残したことがまだないですし、CDのレコーディングだと音色もお化粧したりすると思うので、自分の叩いた音がプロの手腕によってどのように整えられてCDに乗っていくのかにもすごく興味があります。

――そしてその音源をもとに、歌のレコーディングも行なわれるわけですよね。

大橋 ちょっと不思議ですよね(笑)。で、ブックレットの最後のページを見たら「Drums:Ayaka Ohashi」って書いてある、みたいな……本当に不思議だぁ。

――それが実現したら、ファンとしてはインストを聴く楽しみがいつも以上に増すと思います。

大橋 たしかに。最近オフボーカルがCDに入ることって減っていますけど、もしドラムを担当できたらインストでも皆さんにも喜んでもらえるかもしれないので、ぜひ挑戦してみたいです!

●リリース情報
NEMOアルバム
「変革Delight/美味しいセレナーデ」
発売中

【通常盤】

¥3,300(税込)

<収録曲>
01. 変革Delight
作詞:KOHSHI(FLOW) 作曲:TAKE(FLOW) 編曲:FLOW
02. 美味しいセレナーデ
作詞・作曲:⼤原ゆい⼦ 編曲:吉⽥穣
03. 変革Delight(Off Vocal)
04. 美味しいセレナーデ(Off Vocal)

関連リンク

大橋彩香 オフィシャルサイト
https://ohashiayaka.com/

大橋彩香 オフィシャルX
https://x.com/AyakaOhashi

大橋彩香 オフィシャルYouTube
https://www.youtube.com/channel/UCjolqYHzBjZVo1TUVf-AMeg

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