人気コミックのアニメ化作品が第2期をスタートさせた。そのOP主題歌を担当したのがZAQだ。
現世にさまよう悪霊たちをあの世へと送る、魔法律執行官とその助手の活躍を描いた『ムヒョとロージーの魔法律相談事務所』が持つダークファンタジーな作風に、ZAQ楽曲がまとう雰囲気は大きな調和を見せる。OP主題歌に加え、挑戦と少しの遊び心を含めたシングル収録のカップリングについて聞く。


頭のDメロから作り、先に楽曲構成まで
――まずは、TVアニメ『ムヒョとロージーの魔法律相談事務所』のOP主題歌という発注を受けたときにどのような要望が課されていたか教えていただけますか?

ZAQ ミステリアスでダークな雰囲気が『ムヒョロジ』の特徴なんですが、それに加えて、「週刊少年ジャンプ」の作品なんだけどヒーローソングっぽくはしてほしくない、ということでした。それからキーワードとして、「絆」といったところを描いてくださいとは言われました。あとはもうZAQさんにお任せ、という感じだったんですけど、私もロージーの成長は描きたくて。今回の「イノチノアカシ」では、ロージーがムヒョと一緒にいることに対する心の覚悟、そして自分自身の成長も含めたところでの絆の強さを描いています。
この2大要素がテーマなんですよね。だから、アニメの絵でも「強くなりたい」の部分がロージーにあてられていましたけど、Aメロはそのままロージーの気持ちを歌っていて、ムヒョといる自分に対する劣等感から始まっていますよね。そのあとサビで、僕は僕のままでいいから君と同じ道を歩き続けるんだ、っていう覚悟を持つところを書きました。

――ダークファンタジーと少年の成長物語はなかなか相反する要素ではあるかと思うのですが?

ZAQ そのために、不気味さを出そうという思いからBメロは作っています。“見える見える未練の連鎖たちが”から早口で進むところですけど、幽霊の気持ちになって歌っているんですよ。つまり敵側の感情なんですね。
キャラクター性を消し、声色を無機質にし、早口にすることで人間らしさを失わせて不気味さを出しているというか。そのうえで、曲の流れが不自然にならないように、エフェクティブな加工を入れたりしています。ロージーの感情からフッっと切り替わるように、ですね。

――歌い出しからインパクトが強くて、引き込まれる構成になっています。

ZAQ そうですね。以前に作った「カーストルーム」でも頭にDメロがきていて。
印象的なフックのつもりで、むしろあそこがサビだと思っていたくらいでした。要は「つかみ」なんですよね。今回もインパクトのあるメロディを置きたいと思っていて、同じ手法なんですよね。「カーストルーム」のときはエレピ(エレクトリックピアノ)でしたけど、今回はスラップベースというところが違っていて、めちゃくちゃかっこいいスラップベースと、それにまとわりつく早口のメロディで、インパクトとスタイリッシュさを表現して、つかみにしようと思いました。

――最初に思いついたのがこのDメロだったんですか?

ZAQ Dでしたね。“I know why 感じたんだ”だけ最初に作りました。
で、2番でも同じことをやろうと思って、2番のAメロ部分にもDを持ってきています。この曲は構成から作ったんですよ。Dを頭に、短い前奏を挟んで、A、B、サビ、D、A、B、サビ、という構成を最初に作って。分数も大体決めていました。

――それは、プロデューサーやディレクターとの相談もなく?

ZAQ まったくなかったですね。19枚も自分の曲を作っていると自分の曲の特徴とか、「このBPMだったら何分くらいに収まるだろうな」とかがわかるようになってくるんですよ。
今回は4分弱で終わらせたいと考えていました。たぶん、4分いくかいかないかぐらいが人の耳にちょうどいいので。

――ストレートに1番がそのままOP部分となっていますね。OP用に入れ替えることもままありますが。

ZAQ とりあえずTVサイズから作りましたし、いちばんおいしいところを聴かせたいんですよ。だから、OP部分にD、A、B、C、すべてを入れています(笑)。


――歌詞も、1番でロージーを描いていますね。

ZAQ そうですね。1番でロージーの成長を描いていて、そのなかでもサビがムヒョに対するロージーの気持ちです。2期の後半くらいで描かれてくるだろうところを、サビでちゃんと言わせてあげる、ということを意識しました。で、2番ではゴリョーとエビスのことを言っています。ライバルの「絆」ですね。“傷つけあって絆ができた 歪な縁 間違いすらも愛せたら 幸せなんだろうなあ”は、ゴリョーがエビスにぼろくそ言っていても絆はできていくということを言いたくて。

――ムヒョとロージーではないとは思いましたが、ゴリョーとエビスを描いていたんですね。ただ、その二人でもないと思える箇所があるんですが……。

ZAQ そこはね、ZAQです(笑)。“最初に聞く歌 最後に聞く歌 その価値がある そんな声でいたいと願う”は私、ZAQが生きる証。ここで入れなきゃただのあらすじになっちゃうんですよ(笑)。「『ムヒョロジ』ってこんな作品ですよ」みたいな曲になっちゃうので、ここしかないと思って入れちゃいました。

――ただのあらすじ曲と言われるとアレですが、アニソンとしてはそういうのも一つの形としてアリですよね。100%アニメのことだけ歌った曲というのも。

ZAQ でも私はシンガーソングライターなので(笑)。自分のことを言わなきゃいけないわけですよ。言わされている歌詞ではないので。いただいた作詞ではない以上、ちゃんと自分の気持ちも入れないと、っていうのが私のシンガーソングライター論なんですよね。

――どれくらい自分を織り込むかは毎回違うところだと思いますが、今回に関してはどういった判断でしたか? かなりZAQ成分は抑え目かとは思います。ムヒョロジの二人に加えて、ゴリョーとエビスも入っているので。

ZAQ そうですね、この曲に関してはたしかに薄味ですよね。でも、まずは『ムヒョロジ』のファンに喜んでもらわないと話にならないのでそこは書きたかったですし、ゴリョーとエビスは個人的に好きということで2番に入れたい気持ちがあったんですよ。あとやっぱり、書いているうちに、ロージーの気持ちになっちゃったところはあるんですよね。落ちサビの前にある“僕に何が 何ができる? その手を掴んだ”ってところはそうなんですけど、書いているうちにロージーの感情をどんどん入れたくなってきて、自分の気持ちとかがわりとどうでもよくなってきた部分がこの曲にはありました。1番では劣等感のあった人間が、曲が終わる頃にはすごく自信たっぷりになっていますよね(笑)。なので、頭とお尻を両立させるためにキャラクターのことをかなり盛り込んでいます、今回は。幽霊を見たこともない私が幽霊退治の気持ちなんてたぶんわからないと思うし、成立させるためには自分の色を薄める必要があった、というのが答えかな。パートナーとの絆を歌ったところでね、「私、いないからなぁ」ってなっちゃう(笑)。

――その自虐ネタ、好きですね(笑)。そうすると、今回の楽曲で苦しんだところは?

ZAQ 原作のメッセージ性が強いので、歌詞も詰まらなかったんですが、編曲の部分で迷ったところはあったかな。速いスラップベースをやりたいと思ったんですけど、ライブで表現できるのかな、とか。いちばん盛り上がるところってどこなんだろうなとか。実はこの曲、私の曲の中ではテンポ低いんですよ。150くらいなので。いつもはBPMが190とか200とか当たり前にあるんですけど。だから、こう(拳を振り上げて)盛り上がる曲ではなくて、こう(体を揺らし)ノる曲だと思うんですよね。そういう曲をライブでどの位置に持っていけばいいんだろうな、とか、作りながらいろいろ考えてました。

――サビもみんなで歌えるテンポではありますよね、ギリギリ。

ZAQ そうです、ギリギリ(笑)。

――かなりキャッチーなメロディですし。

ZAQ そう、無理やりキャッチーに持っていってるところはあります(笑)。

――無理やりなのかどうかは読めなかったですが(笑)、ただ、次々と展開していきますね。歌い出し、幽霊のBメロを経てのこのサビなので。

ZAQ そうそうそう。展開はめっちゃいろいろ入れ込んじゃいました。ただ、ここまで早口のロックっていうのを今まで作ったことなかったので、それは自分の中での挑戦ではありました。それに、4つ打ちとまではいかないけどダンサブルな何かがほしいとは思っていて、いい感じのグルーヴを意識して頑張りましたね。

――4つ打ちではないけれどもノリのいい曲、に仕上げていますね。

ZAQ そうなんですよ。どちらかというと歌詞も響きを重視したところがありました。このグルーヴに合う歌詞、詞の響き方ですね。“君が生きてく意味”で韻を踏んでみるとか、その言葉の繋げ方は難しかったかな。最初のラップも、“感じたんだ”とか“踏んでんじゃない地団駄”とかはそうですね。

――言葉の繰り返しもいくつか使っていますし。“暗い暗い”とか“君は君”とか。リズムというか回転を良くしているような。

ZAQ そうですね。“僕に何が 何ができる”とか。そういうところでもノリを見せている感じがあります。



Dメロを永遠に回していたい気持ちでした
――冒頭のスラップについてですが、Twitterで募集されていましたよね、「スラップ奏法がえぐいベーシスト、どなたか知ってたら教えてください」って。

ZAQ あのTweetを書いたのは、ワンコーラスデモが通ったときなんですよ。

――Dメロのところがデモだったんですか?

ZAQ そうそうそう、Dメロの「I know why 感じたんだ」はいきなりスラップベースで始まる、というかっこよさを狙っていて、その1小節を聴いただけでスタイリッシュな曲だと分かる、そんなかっこいいスラップベースを弾ける人がいいと思っていました。でも、100%スラップにしようと決めたのは、そのワンコーラスデモで制作サイドからOKをもらったときなんですね。で、あれをつぶやいたんです。

――スラップを想像しながらDメロを作って、通ったから「よっしゃできるぞ」みたいな気持ちになったということですね。

ZAQ そうですそうです。「よっしゃできるぞ」「じゃあミュージシャン誰にしよう」ですね(笑)。

――で、結果IKUOさんになったわけなんですが、本当にTwitter経由で決まったんですか?

ZAQ いや、ほんっとにTwitterです。アルバムで弾いてもらったことのある山崎(英明)さんってベーシストの方から、「IKUOさんですねぇー。」ってリプライが来たんですよ。IKUOさんの名前は知ってましたけど弾いてもらったことなくて。ドキドキしながらお願いしました。

――お願いする前はどんなイメージでしたか?

ZAQ T.M.Revolutionとかでゴリゴリのロックやっているイメージでした。

――Acid Black Cherryとか。

ZAQ だから、スラップベースのイメージはなかったんですよね。

――それが実際に弾いてもらってはいかがでしたか? きっと、バチバチのスラップで埋めてください、とお任せしたかとは思いますが。

ZAQ そう、バチバチのスラップで。コードは1個なので自由にやってください、とお伝えしたら、ワンテイク目から完璧なのを出してきて、「え? そんなにやれるもの?」と思いました(笑)。ドラムをお願いした鈴木浩之さんもすごくかっこよかったので、二人のセッションを聴いているだけでめっちゃ幸せでした。Dメロを永遠に回していたい気持ちでしたね(笑)。ギターの和賀(裕希)くんは「……」って感じになりますけど(笑)。

――IKUOさんが決まってからの鈴木さん、和賀さんという流れだったんですか?

ZAQ そうですね。レコーディングをしようと思ったとき、田淵(智也)さんに「軽快なロックを叩けるドラマーを探してるんです」「新しい風を入れたいので、最近オススメのドラマーさんいらっしゃいませんか」って言ったら、鈴木浩之さんとかゆーまおさんとかいろいろ紹介してくださって。ゆーまおさんは前に1回お願いしたことがあったので、今回は鈴木さんにお願いしてみようと思いました。で、IKUOさんも鈴木さんもはじめましてなわけですよ。しかも人の紹介だし(笑)。それに、ギタリストは私が一番注文をつけちゃうところなので、自分でしっかりとコミュニケーションを取れる方がいいと考えました。和賀くんって、fhanaで弾く分にはすごくクリーンなイメージですけど、ガシガシ系もやるだろうと思ったし、エモーショナルな美しいギター要素が入ってもいいかと思っての選択でした。ドラムの演奏がめちゃくちゃ熱かったので、ギターもそれに追従するような感じでお願いしましたね。でもやっぱり、コミュニケーションが取れる方が良かったんですよね、ギターは。

――和賀さんはエフェクトにも凝る方ですし、シューゲイザーとかも好きですし。

ZAQ そうそう。だから、ギターソロとかは結構エフェクティブに攻めてもらいました。ZAQの曲で和賀くんにお願いするときは大体ゴリゴリ系ですしね(笑)。

――注文が多いと仰いましたが、そのあたりの作り込みについても教えていただけますか?

ZAQ 今回のギターは、ハモリやユニゾンといったところでの注文が多かったですね。「リフはここで入れてくれ」とか「4小節目にオシャレなおかずをつけてくれ」とか。

――では、ギターで整えてもらうようなところも?

ZAQ ありましたね。私はキーボード弾きなので、ウワモノというかメロディにはうるさいんですよ。音がしっかりしているものにいちゃもんをつけたがるんですよね、私が(笑)。

――自分のフィールドに関わるところだから、ということですね。

ZAQ そうそう。だから、「こことここはぶつかってほしくないから休んでください」とかギターには言っちゃうんですよ。ボトム系は、ミュージシャンの腕を信じて、「自由にどうぞ!」なんですけど(笑)。

――そこに乗せる歌についてはどういった意識がありましたか?

ZAQ でも、作っている段階で「こう歌いたい」というイメージはあって、そこはデモで完成しているところがあるので。完成形をイメージしてのレコーディングでした。ちょっと変えたところとかはありますけど。

――レコーディング中に変えたところですか?

ZAQ そうですね。Dメロは最初、ラジオボイスっぽくしようと思っていたんですけど、エフェクティブにしたらスラップが死んでしまうんじゃないかと思って、あえてナチュラルにしました。

――逆に、幽霊の立場で歌ったところはどんな加工を施しましたか?

ZAQ あそこは加工というか、1行目と3行目を歌ったあとで2行目と4行目を歌っているんです。だから「見える見える未練の連鎖が 君は君を生きて生き抜いて」でクロスしているんですよ。で、声にEQをかけて、ガツッと上を出して、エフェクティブに聴こえるようにしました。あと、実はあれ、めちゃくちゃ口を大きく開けているんですよ。音が粒立つように「見」「え」「る」「見」「え」「る」みたいに。歌っている図はかっこ悪いですけど(笑)、そうやって一個一個の音が立つとボカロっぽくなるんですよね。

――歌で苦労したところがあれば教えてもらえますか?

ZAQ 早口のところはめちゃくちゃ難しくて、「涙涙」は全然言えませんでした。ナ行とマ行を続ける難しさを感じましたね。「なみなみ」とか「まにまに」とかもそうですけど、マ行は苦手です。全然いいのが録れなくて、「涙涙」は30回くらい録っていると思いますよ。ボカロにしちゃえば良かった(笑)。

――でも、「シンガー」ソングライターですから。

ZAQ そう、意地でしたね(笑)。

――新しい風を吹き込んだ楽曲ですが、完成した今、どういった発見を得た感覚がありますか?

ZAQ この曲ができたのは去年なんですけど、1年経っても大好きだし、「すごくかっこいいことやったな」って自分でも思っています。ずっと新鮮に聴ける曲なんですよ。だから手応えはありますね、自分の中で。IKUOさんと出会えたし、鈴木さんとは別のプロジェクトでもご一緒できたし。そういった縁が生まれた楽曲でもあると思います。IKUOさんも「ライブ、一緒にやってくれないかな」とは思っています(笑)。


ここにもこんなに引きずっている人がいるよ
――カップリングの「Closed Ovation」は完成したばかりということですね。Twitterでは「この数ヵ月でいちばん体調悪い」とつぶやいていらっしゃいましたが、その最中にできたということでしょうか?

ZAQ そうそうそう。ちょうどそのときに作っていたやつですよ。

――では産みの苦しみがすごいですね。

ZAQ 産みの苦しみというか、単純にこのご時世に負けていました。地球の重力に負けていました。

――ただ、これこそグルービーというか、お洒落な曲をカップリングに持ってきましたね。

ZAQ でも、めっちゃコロナの歌ですからね(笑)。

――渇望の歌ですよね。

ZAQ そうなんですよ。「何か、突き動かされる感情がほしい!」って歌ですね。

――カップリングにこういう曲を作ろうと思ったきっかけはあったんですか?

ZAQ カップリング曲を作ろうとなったとき、こういう現代っぽい曲にしたいと思ったんですけど……。Suchmosがバーンと流行ったあたりからJ-Rockの流れが変わってきたじゃないですか。King GnuだったりOfficial髭男dismだったり。オラオラオラ! ってやつではない、ちょっとオシャレでちょっとストイックな感じのロックに。それを自分でもやれないかと思ったんですね。でも、私がやるとやっぱりちょっとJazzyになっちゃいました。サビの、素っ頓狂なメロディラインとかオクターブ下でユニゾンするとか、サビのメロディが変わっている曲をやる、という目標は達成できたんですけど。だから、メロディができるのは結構早かったですよ。でも、こういうのは好きなんですよ。ずっと作っていたいですもん、インストで(笑)。

――メロディも雰囲気も素敵ですし、こういうグルーヴ感はZAQさんらしいと思います。むしろ得意なジャンルだと思っていました。

ZAQ ありがとうございます。エレピとかピアノでポロンポロンやるのはZAQっぽいかな、というのはすごく感じます。こういう曲がアニソンで使われたらいいんですけどね。それこそOPテーマでこういうのがやりたいです(笑)。

――では、歌詞部分がコロナの影響を受けたということでしょうか?

ZAQ メロディはコロナが流行った直後くらいに作ったんですけど、歌詞が何も出てこなくて……。コロナにやられて私は重力に負けていたので。

――『ガンダム』みたいなことを仰いますね。地球の重力に囚われている人々、みたいな。

ZAQ 『ガンダム』(笑)。そう、4月、5月は、地球の重力に囚われてしまったんですよ。で、全然ダメだったときに書いたので、「全然ダメだ」って歌詞にしました(笑)。

――「ヒーローになりたい少年」ですからね。

ZAQ そうそうそう。だってどうせ皆、私のこと忘れてくんでしょ? っていうやさぐれてた自分を書きました。

――そんなに落ちていたんですか?

ZAQ 落ちていました、めちゃめちゃ。最近ちょっと盛り上がってきましたけど。

――そんな中で何か楽しい思い出はありませんか? レコーディングとか。

ZAQ レコーディングは、ハモを全然決めずに向かったら、最後の最後でのフェイクとか、そういうアドリブな部分が生まれましたね。ディレクターさんがずっと一緒にやっていただいている方なのでコミュニケーションもスムーズで。レコーディングはすんなりといったかなーっていう感じですね。

――「イノチノアカシ」でもお聞きしたので、こちらでもプレイヤーについてお聞きしていいでしょうか? アコースティックな楽曲ですし。

ZAQ こちらはギターとベースだけを生で録っています。ベースはいつもやっていただいてる田辺トシノさんで。オシャレな音やミドルテンポのベースをやってもらうときは絶対田辺さんですね。それから、今回はアコギが主役みたいなところがあったので、オシャレなアコギが弾ける佐々木”コジロー”貴之さんにお願いしました。

――「イノチノアカシ」と違って、こういう曲では勝手知ったる人たちと気持ちを合わせた感じでしょうか?

ZAQ そうですね。あ、あとパーカッションも生で録ってました。トライアングルとかシェイカーとかウィンドチャイムとかジャンベですね。ジャンベは生まれて初めて録ったんですよ。TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUNDのサポートなどをされているよしうらけんじさんにお願いしました。

――アコースティックなこの曲もライブで聴きたくなる曲ですね。

ZAQ やらないです(笑)。

――なぜですか?

ZAQ 歌えないです(笑)。

――なぜでしょう?

ZAQ コロナ禍で落ち込んでいる自分を閉じ込めたかった曲なんですよ。完結させたかった。なのでこの子は外に出てはいけない子なんです。売るけど(笑)。

――(笑)。売ってもライブでやるのはダメですか?

ZAQ そう、ライブで歌う曲じゃないんです。「喝采」がほしいとか歌っときながらですけど(笑)。

――コロナ禍でまだ鬱々とした気持ちを引きずっている人たちに聴いてもらう曲ではないんですか?

ZAQ そうなんですよ。だから、引きずっている人たちに、「君は引きずっているね。ここにも、こんなに引きずっている曲があるよ」という同情の歌なんです(笑)。アーティストって結構「元気出していこー」とか「また会おうね」とかそういう歌を書きがちじゃないですか、特にこの業界って。だけど私はそうじゃなくて、切れかけたメンタルの、本当に落ち込んでいる人に寄り添う歌にしました。ライブで「盛り上がるぜー!」という曲ではないのでたぶん歌わないです。

――盛り上がるだけがライブではないと思うので、コロナ禍で欝々とした方に届けていただければ。オンラインライブとかで。

ZAQ そうですね。そのくらいだったらできるかな。

――このカップリング曲も、そしてシングルのリリース自体もコロナ禍の影響を受けてました。完成した今、ご自身としては今回のシングルを振り返るとどのように見ていますか?

ZAQ 「イノチノアカシ」を作ったのが1年前の話なので、去年のモチベーションで作った曲が今の時勢に合うかという不安はすごくありましたね。ただ、アニメに沿った曲ができましたし、「イノチノアカシ」を聴いて元気が出たという人がいてくれたならすごく嬉しいです。ライブですごく盛り上がる曲だとは思いますし、このA面に関してはね(笑)。だから、ぜひ皆に会いたい、という表明の曲にもなったんじゃないかとは思います。

――表題曲で元気を与えつつ、カップリングで癒しつつ、な1枚ですね。

ZAQ いや、癒やしはしない。同情するはず(笑)。

――良いメロディは人を癒やすと思いますよ。

ZAQ そうなんですよ! メロディがいいんですよ、私の曲は。メロディ最高だから。

――そういうことですね(笑)。

ZAQ そう、そういうことです。って偉そうな(笑)。

INTERVIEW & TEXT BY 清水耕司(セブンデイズウォー)

●リリース情報
「イノチノアカシ」
8月19日発売

価格:¥1,200(+税)
品番:LACM-24012

01. イノチノアカシ
02. Closed Ovation
03. イノチノアカシ(Off Vocal)
04. Closed Ovation(Off Vocal)

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