アーティスト・岬 なこの新たな挑戦!初アコースティックライブ...の画像はこちら >>

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ラブライブ!スーパースター!!』の嵐 千砂都役でLiella!のメンバーとしても活躍する声優の岬 なこが、弦カルテットを含む全編アコースティック編成によるソロライブ“NAKO MISAKI Acoustic LIVE”を、9月21日、千葉・森のホール21大ホールで開催した。今年7月には2ndシングル「ちいさな蕾」をリリースし、ますます活躍の場を広げているアーティスト・岬 なこの新たな挑戦。

昼夜2公演行われた本ライブのうち、夜公演の模様をレポートする。

TEXT BY 北野 創
PHOTOGRAPHY BY 江藤はんな(SHERPA+)

アコースティックアレンジで新しく色づく楽曲たち

2023年7月5日(なこの日)にソロデビューして以来、ワンマンライブだけでなく“リスアニ!LIVE 2024”など大きなステージも経験してきた彼女。
それらを観たことのある人ならばご存じだと思うが、岬 なこはライブがすこぶる良い。
歌唱力・表現力・パフォーマンス力といった基礎ステータスの高さのみならず、その場その時だけの感情や空気感をすくい取り、ステージに昇華する能力に長けているため、音源で馴染み深い楽曲も常に新鮮に聴こえるし、瞬間瞬間が見逃せないライブになるのだ。

そんな彼女が行う初めてのアコースティックライブ。当然、どの楽曲も本公演のための特別なアレンジで演奏されるうえに、会場はクラシックのコンサートにも対応できる優れた音響設備を整えたホール施設とあれば、スペシャルなライブにならないわけがない。
ステージには、黒須克彦(Ba./バンドマスター)、アンジェロ(Gt.)、西村奈央(Key.)、谷崎 舞(1st Vl.)、白澤美佳(2nd Vl.)、大嶋世菜(Va.)、宮尾 悠(Vc.)が並び、ヴィオラの独奏から順にチェロ、バイオリン、アコースティックギター、ピアノと演奏が加わって豊かなアンサンブルが形成されていくなか、純白のドレス衣装を纏った岬が登場してステージ中央まで歩み出て、静かにお辞儀をしてライブの幕が開ける。

1曲目は最新シングルの表題曲「ちいさな蕾」。TVアニメ『魔導具師ダリヤはうつむかない』のOPテーマとなる本楽曲は、もとよりストリングスをフィーチャーした美麗なミディアムナンバーであるため、弦カルテットが参加したこの日のライブにはぴったりのセレクトだ。
なおかつ今回はドラムやパーカッションなどの打楽器がいない編成ということもあって、よりメロディの美しさに耳がいく。岬は優しく語りかけるようなアプローチで伸びやかに楽曲を表現していき、ラスサビでは力強さを増したニュアンスで、聴き手の背中を押すように、そしてこの特別なライブの成功に向けて弾みをつけるように、清々しく歌い切った。

続いては「Light Me Up!」。岬は西村のほうを向いて、2人で息を合わせて歌始まりのパートをばっちりキメてみせる。

原曲はキャッチーなダンスポップといった趣だが、リズミカルな印象はそのままに、弦楽器のバッキングが加わることで優美さとスケール感が増し、岬も音楽に体を預け、その身を揺らせながら、楽しそうに歌を紡いでいく。
ステージ後方に広がるエメラルドグリーンの背景も相まって、まるで大草原で歌っているかのようだ。

MCでは衣装をアピールしつつ、関西弁を交えながらマイペースに進行。
バンドメンバーについても触れ、第1バイオリンの谷崎が「ちいさな蕾」と「あいらぶゅー」の音源にも演奏で参加していることを紹介していた。
そして「少しでも心が楽になるような歌を届けられたらと思っていますので、浸りながらスヤスヤ寝ていただいても全然大丈夫です」と伝えると、ピアノ、アコギ、ベースのグルーヴ感溢れる演奏にストリングスの優雅な響きがフィリ―ソウルっぽく絡む「銀のシュプール」でライブを再開。
そこからパープルやオレンジ色のライトがシックな雰囲気を演出した「スイートサイン」に繋げる。グッと大人っぽさを増した歌声も格別だ。

岬の「1、2、3、4」という優しい声音のカウントから始まった「ワタシFLAVOR」では、休日のクッキングを題材にした歌詞の内容にもマッチした、爽やかでリラクシンな音空間を展開。
エレピの音色も心地良い。続く「街角カレイドスコープ」で岬は星型のタンバリンを手にしてリズムを取りながら歌唱。
客席もクラップして同じリズムに乗りながら、“お揃いの歩幅で”楽しい時間を作り上げていく。
原曲にはないピアノのしっとりとした前奏から始まった「あいらぶゅー」では、途中でバンドメンバーの紹介を挿みつつ、弦楽器のロマンチックな生演奏に伴って岬のボーカルも一層心のこもったものに。

出会えたことへの感謝の気持ちを、より親しみを込めて届けてくれた。

“明日の僕へ”から“明日の君へ”

「ここからはしっとりめの歌をお届けしようかなと思います。メッセージ性の強い曲がたくさんありますので、ぜひとも、目を閉じてでもいいし、ゆっくりと心を傾けて聴いてください」。
そんな言葉に続けて歌われたのは「つぎはぎの世界」。彼女の楽曲のなかでもとりわけ感傷的な色が強く、ニュアンス豊かな表現が目立つナンバーだ。
岬とキーボードの西村にピンスポットが当てられ、ステージの各所に置かれたLEDライトがブルーに灯るなか、岬はピアノの伴奏のみをバックに、最初のワンコーラスを情感たっぷりに歌う。2番以降からはストリングスの演奏が加わり、彼女の歌声もよりエモーショナルに染まっていく。
最後の静かに消え入っていくような岬の姿を含め、楽曲の世界観を鮮烈に表現した名演だった。

次の「群青セツナ」は全編アコースティックギターの伴奏のみで歌唱。どこか切なさを帯びたアコギの調べが、歌と寄り添うように歩みを進めていく。
心に真っ直ぐ突き刺さってくるような、センチメンタルだけど確かな意志を感じさせる歌声。抑揚豊かで、その声だけでもストーリーが浮かび上がってくるような不思議な力がある。
そしてボカロPのナノウが楽曲提供した「HURRAY!」はピアノと1対1で表現。


原曲はギターロック系のバンドサウンドだったが、この日はバラードのようにドラマチックなアプローチに。
語尾の力強いニュアンスなどに、いつも以上に気持ちが入っているのが伝わってくるが、何より驚かされたのがラストのフレーズ。
本来は“明日の僕へ”と歌う箇所を、彼女は左手を客席に向けて真っ直ぐに突き出しながら“明日の君へ”と歌ったのだ。
自分自身を鼓舞する歌から“君”を応援する歌へ。この変化は、今後の彼女のアーティスト活動においても、大きな意味を持つことになりそうだ。

そんなしっとりめのナンバー3連発に続いては、彼女が最初に発表したオリジナル曲「ソラトレイト」で一気に開放感溢れる光の世界へ。
アコギとストリングスの躍動感ある演奏に乗せて、爽快な歌声をホールいっぱいに響き渡らせる。本楽曲の最初と最後に置かれた象徴的なフレーズ“Blue verse 君と 優しい明日へ”も、前曲「HURRAY!」での“明日の君へ”という歌詞の変化を踏まえて聴くと、これまで以上に彼女自身が歩み寄ってくれているように感じられて、また新鮮な気持ちで受け止められる「ソラトレイト」になっていた。

その後のMCで「アコースティックライブを通して自分の楽曲がもっともっと好きになりました」「色んな角度からの楽しみ方があることにたくさん気付くことができた」と語る岬。
最初の頃は歌に苦手意識を持っていたという彼女だが、今は自分が歌う楽曲や歌に対して愛着を感じるようになったという。
「自分のことをいちばんよしよししてあげて、“できるよ”と言ってあげられるのは、やっぱり自分だと思うので、そんなときに私の楽曲は寄り添える存在になれたらいいなと思っています」と、改めて自分が届けたい音楽、アーティスト活動に対する素直な思いをファンに伝えた。

ここで岬の“ラップをやってみたい”という想いが反映された、ラジオ番組仕立てのゆるふわラップ曲「もしもし.com」を披露。


ストリングスの優雅なサウンドがリラックスムードを引き立てる。そしてライブ本編のラストを飾ったのは「morning morning」。
原曲よりもテンポを落としたバラード風のアレンジに仕立てられ、ゆったり奏でられる弦楽器、サビで夜明けの空のように色づいていくライト演出も相まって、ここからまた新しい朝が始まることを予感させてくれる。
ラストはまばゆい光の中で“手をつないで 一緒にいこう”と、微笑むように歌って締め括った。

アンコールは「Dancing! Singing! Feeling!」からスタート。まずはバンドメンバーが登場し、黒須のカウントを合図にジャジーな合奏が始まると、ライブグッズの黒いポロシャツに着替えた岬が登場し、楽曲へ。元々はアップテンポなダンスナンバーとして知られるが、匂い立つようなメロディとクールな演奏、緑や赤の鮮やかなライト演出が、大人の夜の世界観を作り出す。岬も艶やかな歌声でファンを魅了した。

その後のMCで、ライブグッズを紹介しながら軽快なトークでファンとの交流を深めるも、ついにお別れの時間に。
「最後はかわいらしい曲で締めようかなと思います」ということで、この日のクロージングナンバーに選ばれたのは「恋のカウント1・2・3」。
LEDライトが岬のフェイバリットカラーである黄色に点灯し、ビームライトが会場に鮮やかな紋様を描き出すなか、岬は愛らしい手ぶりや身振りを交えながらラブリーな歌を会場いっぱいに広げる。バンドと弦カルテットの麗しい演奏、幸せそうにクラップするファン。


ラスサビの“逢えなかった君が今 目の前にいるよ”というフレーズで岬は客席のあちこちに手を向けて、その場に集った一人一人の“君”に愛に溢れた歌を届けて、初めてのアコースティックライブを完走した。

ライブを観終えて改めて感じたのは、岬の甘さと繊細さを併せ持った声質、感情の機微に富んだ表現力豊かな歌声は、アコースティック楽器の柔らかな響きとの相性が抜群に良いということだ。それは、彼女の楽曲が持つ親しみや温かさに満ちた世界観にも当てはまる。
ぜひ今後も機会があればアコースティックライブを続けてほしいところだ。

■岬なこ NAKO MISAKI Acoustic LIVE
2024.09.21@千葉・森のホール21 大ホール
<セットリスト>
M1.ちいさな蕾
M2.Light Me Up!
M3.銀のシュプール
M4.スイートサイン
M5.ワタシFLAVOR
M6.街角カレイドスコープ
M7.あいらぶゅー
M8.つぎはぎの世界
M9.群青セツナ
M10.HURRAY!
M11.ソラトレイト
M12.もしもし.com
M13.morning morning
EN1.Dancing! Singing! Feeling!
EN2.恋のカウント1・2・3

●関連リンク

岬 なこ オフィシャルサイト
https://lantis.jp/misakinako/

岬 なこ 公式X
https://x.com/MisakiNako_

岬 なこ オフィシャルYouTubeチャンネル

「リスパレ!」オフィシャルサイト
https://funky802.com/lispale/

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