――お二人が“Tom-H@ck featuring 大石昌良”名義で活動をスタートしたのが2013年。2015年に“OxT”となり、5年が経ちました。振り返るとキリがいいですね(笑)。
オーイシマサヨシ たしかに(笑)。
Tom-H@ck 言われてみればそうなりますね(笑)。
――8月末に発売された「リスアニ!」姉妹誌「LisOeuf♪ vol.8」では、結成15周年のGRANRODEOとキリのいい同士対談をしていただきました。その席でもGRANRODEOのお二人が、OxTを“とんでもないクリエイター同士のスーパーユニット”だとおっしゃっていたのが印象的で。
オーイシ いや~、そんなふうに言われてしまうと恐縮だし……スーパーユニットなんていうと、世界を救っちゃいそうじゃないですか(笑)。
Tom-H@ck そんな曲ばっかり歌ってますけどね(笑)。
オーイシ ヒーローソングとか。でも、「やってやるぞ!」っていう感じのユニットではないから、スーパーユニットなんて言われると、照れ臭くて。
Tom-H@ck 逆にね。なので、そういう自覚はまったくないんです。今は社長と平社員のユニットと公言してますし(苦笑)。
――たしかに、Tom-H@ckさんは所属事務所の社長としての顔もお持ちでした(笑)。そんなジョークも言えてしまう関係性に、ユニットとしての信頼感をすごく感じます。今の時期こそ改めて、お二人にとってOxTとは? を考えるいい機会でもあるのかなと思うのですが。
オーイシ なるほど。そういうことだと……ちょっとだけエモいことを言わせてもらうと、OxTは僕にとってなくてはならないユニットだなというのが、正直なところですね。完全に、自分のアイデンティティの柱を担ってる。その点は、2013年からずっと変わってないですね。この7年間、OxTと名前が変わってからの5年間も、お仕事の仕方が各々変わったとしても、僕らの間のスタンスは全然変わってない。OxTで歌えることはすごく嬉しいですし、OxTで曲が作れるのも嬉しい。
Tom-H@ck ありますね、僕もオーイシさんもたくさん。楽曲の方向性だけでもそうですし、二人の掛け合い的な見せ方もそう。エンタメ的なアプローチとして、社長と平社員ですよと言うのもそうですし(笑)。音楽面からパフォーマンス面まで、OxTでしかできないこと、やれないことはわんさかあるなというイメージですね。
オーイシ 肩に力を入れすぎずに活動できますしね、Tom-H@ckくんと一緒だと。
Tom-H@ck よくライブとかでは、「おじいちゃんになってもOxTをやりたいね」みたいなことも言うんですけど、ある程度の重みあるOxTという場所があるだけで、いろんな活動がうまくいく栄養素が採取できてるという逆転の発想もあるかもしれない。OxTがあるから、ほかの活動で存分に暴れられるし、OxTに戻ってきたときには、いい意味でそれぞれを発散できる。そういう意味で、すごく重要なユニットだなと思ってます。
オーイシ 実際に主題歌を歌わせていただける作品も、個人とOxTでは違いますしね。その一番手が『ダイヤのA』だったり。
Tom-H@ck オーイシさんとの出会いのきっかけでもありますからね、『ダイヤのA』は。
オーイシ 1stアルバム『Hello New World』の収録曲でも、例えば『プリンス・オブ・ストライド オルタナティブ』のオープニング曲「STRIDER’S HIGH」のような女性ファンの多い作品に飛び込んで行けたり、一連の『オーバーロード』シリーズの主題歌もOxTだからできる感覚というのはありますね。
Tom-H@ck OxTとソロ活動の違いをあえて言葉にするなら……お笑い芸人さんなんかに近いのかな? ピンのネタとコンビのネタや仕事では、テイストが全然違ってたりするじゃないですか。
オーイシ あと、男二人が集まることによって、部活感が出るというのも大きいかな。グループで一つの物事を成功させるところに、より美しさが生まれたり、カタルシスが生まれる。我々の音楽活動にも、そういう意味合いが付与されるのかなと思います。
――チームワークでお互いを補完しあうような?
オーイシ それはありますね。実質、曲作りにおいても得意分野は違うので、お互いの個人活動とのバランスを見ながら担当分けはしていますし、編曲はTom-H@ckくんチームにお任せするというのが、決めごととしてあるんですよ。だから、勉強になることもすごく多い。
Tom-H@ck ほんとに?(笑)。
オーイシ ほんとですよ! 僕はバンドマンやシンガーソングライターとしての歴は長いけど、作家としてのクリエイター業は、Tom-H@ckくんよりはるかに後輩。学ぶことは多いですよ。
Tom-H@ck 僕もオーイシさんと一緒にやるようになって、いい影響を受けてますね。
オーイシ あははっ。なんかそうみたいです。昔のTom-H@ckくんを知っている方が、人相が別人のように柔らかくなったとおっしゃってるのを聞くと(笑)。
Tom-H@ck そうらしいです(笑)。あとは表舞台に出る人間としての立ち振る舞いですね。MCの話し運びだとか、映像の映り方だとか、オーイシさんを見習うことは多いです。あと、二人でいてすごくいいと思うのが、お互いに相手の悪いところを嫌みなくサラッと言えること。今でも覚えてるんですけど、映像コンテンツで「お互いの嫌なところ」を言い合う面白企画をやったんですね。僕は「いい匂いがする」と軽めの答えを言ったら、オーイシさんが「Tom-H@ckくんは最近、挨拶の声が小さい」と、サラッと厳しいことを言うんです。しかも、わざわざカメラの前でってことは……「改めろよ!」ということだなと(笑)。お互いそうで、僕もオーイシさんが言うことは素直に聞けるし、表には出ないことですけど、それもOxTだからできることだと思ってますね。
オーイシ お互いに知らないことは、ちゃんと聞き合いますしね。機材の話から、ソロでやるときのグッズの値段はどう決めたらいいですかね?……みたいな話まで(笑)。あと僕ら二人だけの会話が、けっこう礼儀正しいのもOxTっぽさですかね?
Tom-H@ck ありますね。
オーイシ 例えば、お仕事が終わるとたいてい毎回、「お疲れさまでした」とLINEし合ったり。
Tom-H@ck お互いが違う現場のときは、「制作終わりました」「お疲れ様です」とか「オーイシさん、イベント頑張ってください」と送ると……。
オーイシ 「ありがとうございます。またよろしくお願いします」みたいに返したり。だいたいずっと敬語ですけど (笑)。
――仲良しだけど馴れ合わない、絶妙な距離感を感じますね。長続きするカップル的な(笑)。
オーイシ あはは、なんでしょうね。一緒に住んでるけどベットルームは別、みたいな感じ?(笑)。
Tom-H@ck シェアハウス的な感じかな(笑)。それもお互いを人間としてもミュージシャンとしても尊敬し合えているからこそ、という気がしますね。
――そんなOxTの2ndアルバム『REUNION』がついにリリースです。フルアルバムは約2年ぶりになりますね。
オーイシ そろそろアルバム出しませんかという議題が出たのは半年以上前でしたけど、OxTの活動って、そんなに毎日続いているわけでもないので、もうアルバム出せるくらい曲が溜まってたんだ! あれ? けっこう動いてたんだなぁと、自分達でも感心するくらいでしたよね?
Tom-H@ck ふふふふ。
オーイシ 二人とも作家として自立してるから、それこそシェアハウスじゃないですけど、たまに会ってたまに作曲してたまに歌って……という感覚なので(苦笑)。
――今回はOxTの名を広めたヒット曲「UNION」が収録されていますし、アルバムのタイトルチューンでありリードナンバーとなる新曲が「REUNION」。その呼応にも、おおっ!と思いました。
オーイシ そもそも「UNION」のヒットがなければ、アルバム作ろうぜと、チームのテーブルに上がらなかったかもしれないんですよ。
Tom-H@ck そうですね。
オーイシ その意味でも、「UNION」と『SSSS.GRIDMAN』という作品は、僕らにとって大切なものになりました。
――大型アニソンフェスでも、「UNION」で会場が大沸きになった光景は何度もお見かけしました。
オーイシ おかげさまで、ポニーキャニオンさんのダウンロードランキングでも、オールジャンルで年間2位を記録したらしく……1位はOfficial髭男dismさんなんですけど。
Tom-H@ck ヒゲダンさんに並んだってことだけでもすごいことだよ。
オーイシ うーん、負けてるんで、並んではいないかな(笑)。
Tom-H@ck そこ、こだわります?(笑)。
オーイシ あはは、でも振り返ると「UNION」と『SSSS.GRIDMAN』の存在は、今も大きいですね。僕ら自身も、あの曲のおかげで付加価値を高めることができましたし、イベントに呼ばれる機会も多くなりましたし。
――そして先ほどの話に戻るんですが、リード曲の「REUNION」はタイトルだけでなく、音楽的にも「UNION」をかなり意識した楽曲に聞こえました。
Tom-H@ck まさにその通りなんですよ。じつはこの曲も、『SSSS.GRIDMAN』に深く関係がありまして。5月に予定されていて、コロナ禍で残念ながら中止になってしまった舞台『SSSS.GRIDMAN』のために書いたんです。「UNION」はオーイシさんの作詞・作曲でしたが、今回は僕が作曲者。ユニット間であのヒットをリスペクトしながらクリエイトした楽曲ですね。
オーイシ なので、コード進行もほぼ一緒。中でもサビは丸ごと同じですね。
Tom-H@ck メロディもあえて「UNION」と同じスケール(音階)を使っていて、「UNION」っぽいけど違う曲を着地点にしました。
オーイシ だから歌うのも面白かったですよ。セルフオマージュみたいで。
Tom-H@ck 今回作詞したhotaruにも「『UNION』を目指してね!」ということだけ伝えたので、歌詞のストーリー的な部分も「UNION」から続くものは、相当意識してくれてると思います。
オーイシ 逆に、僕が使わないような言葉も出てきますしね。同じ方向を向いても、視点が変わるとこんなに違う曲になるのかという驚きもあったし、2曲のリンクを辿る面白さもある。すごく新鮮に歌えましたね。
――お気に入りのフレーズはどこですか?
オーイシ “ただの友情なんてよりも 遥かに強くて そう、挑むための絆”は、エモかったですね~。まるで僕らOxTのドキュメントのようで。
――まさに先ほどお話いただいていた、OxTにおけるオーイシさんとTom-H@ckさんの信頼関係と絆に通じますよね。
オーイシ そうなんです。すごくリアリティが入ってて、僕もここはつい熱く歌っちゃいました(笑)。
――もう1曲『REUNION』には、『SSSS.GRIDMAN』の原作『電光超人グリッドマン』のEDテーマだった「もっと君を知れば」カバーも収録されています。
オーイシ これもじつは、今年開催予定だった『SSSS.GRIDMAN』関連イベントで披露しようと準備していた楽曲で。オケもすでに制作済みだったので、ここでぜひ皆さんに聴いていただこうと思ったんです。去年参加させていただいた「スーパーヒーロー魂2019“夏の陣”」で、オリジナルを歌われている坂井紀雄さんの生歌にも改めて感動しましたし、今回のレコーディングでも、原曲のニュアンスを大切に歌わせていただきました。
――作品単位ですと、『REUNION』には『ダイヤのA』関連の楽曲も多数収録されています。「ゴールデンアフタースクール」と「Everlasting Dream」といった『ダイヤのA actII』のEDテーマはもちろんですが、舞台版『ダイヤのA The LIVE』シリーズの楽曲も多いですね。
Tom-H@ck そうなんです。『REUNION』のために、アレンジやミックスを変えた曲もあって、「Be the Best! Be the Blue!」のように、KanadeYUKにアレンジを全部変えてもらって、ヘヴィさを増したOxTらしいロック調になった曲もありますし。
オーイシ なかでも、舞台版で使われていて、今回バラードバージョンとなった「Tears of a Genius」は、僕、お気に入りですね。ボーカルトラックはオリジナルのままなんですが、うたたね歌菜ちゃんがリアレンジしてくれて。
Tom-H@ck このアレンジのほうが、オーイシさんの歌がうまく聴こえるんですよ(笑)。オケの音数が少なくなっているので、歌のニュアンスがもっと聴こえてくる。感情的に歌っているところとか、すごく心に響くんです。
オーイシ 引き算の美学がここにありますね。何回も聴き込んじゃいました。
――そして、『ダイヤのA 』ファンにぜひお薦めしたいのが、オーイシさんとTom-H@ckさんそれぞれが楽曲提供された『ダイヤのA actII』主題歌2曲のOxTバージョンです。変わり種のセルフカバーといいますか……。
Tom-H@ck そうですね。オーイシさんにはセルフカバーアルバム『仮歌』シリーズがありますけど、OxTは初チャレンジでしたね。
オーイシ でも、オリジナルとオケが同じで僕が歌い直している『仮歌』とは違って、こっちはアレンジも歌も完全に新規。本当にOxTがカバーしました!という感覚が新しいし、やっててすごく楽しかったです。
――その2曲が、Tom-H@ckさんが作曲・編曲に関わられた内田真礼さんの「鼓動エスカレーション」と、大石昌良名義で作曲・編曲された三森すずこさんの「チャンス!」です。
オーイシ 「チャンス!」はですねぇ、僕自身、歌えるチャンスを狙ってました(笑)。お気に入りなんですよ、この曲。三森さんバージョンは、ブラスバンド演奏をサンプリングして曲を作っていったんですが、今回はアレンジチームにそこは伝えていないので、よりロック的なアプローチになっていて、気持ちよく歌えましたね。
――そして「鼓動エスカレーション」のほうは、アレンジャーのクレジットにシンガーソングライターのZAQさんのお名前が!
Tom-H@ck はい。ZAQちゃんは最近、クリエイターとしても勉強の場が欲しいと言っていたんですね。彼女は内田真礼ちゃんとも仲良し。共通点もある曲なので、お願いした感じです。もちろんできあがったものに関しては、こちらからも要望を出しましたけど、「自分のやりたいアレンジをやってみて」と。ZAQちゃんにとっても、よく知っているオーイシさんと僕がいる場でアレンジャーとしての力をお披露目する場があるといいかな?と。
――ピアノが効いているあたりも、ZAQさんらしさが出たアレンジになっていますよね。
Tom-H@ck ハーモナイズもZAQちゃんらしい。
オーイシ たしかに!
Tom-H@ck ZAQちゃんのクリエイティブを見てて毎回思ってたことを、今回確信したんですけど……ZAQちゃんはそこに四角があったらより強い四角にするし、三角なら三角の積み木をガンと積み上げてくる感覚があるんですよね。
オーイシ 性格がそうなんだろうね。真面目で勤勉。
Tom-H@ck その素敵な真面目さが、この楽曲にもよく表れていると思いますね。
オーイシ 歌は最高に難しかったですけどね。真礼ちゃんの歌は“かわいい”の完成型だったので、僕は力強さというか、ロックボーカルな感じで、男っぽさを出して頑張りました(笑)。
――とくに難しかったのは?
オーイシ ZAQちゃんがアレンジしてくれたコーラスのラインですね。ラストのサビにかけてコードが変化する……ジャズテンションぽい感じで、いわゆるミュージカル調なコード展開をするんですね。コードにものすごく律義にコーラスを入れているところが複雑で、レコーディングにもちょっと時間かかった印象ですね。
――といいつつも、原曲の持つ可愛らしさは、今回のボーカルからも感じられました。オーイシさんのキュートさが。
オーイシ あれぇ? 出てました?
――出てました♪
オーイシ そっかー、隠したつもりだったんだけどなぁ!(笑)。
Tom-H@ck なんなんですか、その出来上がった話の流れは!(笑)。
オーイシ まぁまぁ(笑)。でもこうして『REUNION』の楽曲を辿ってみると、『ダイヤのA』のすごさというのも実感しますね。僕にとっても、おそらくいちばん多く主題歌を書かせていただいている作品ですし、OxTの出発点でもある。一つの場所を掘り続けると深さも生まれるので、新しく見つかる言葉だったり、シチュエーションがあって。『ダイヤのA』に関わるたびに、毎回、発見をさせてもらっている気がしますね。
――『SSSS.GRIDMAN』と『ダイヤのA』。今のOxTを語る上では欠かせない2作品が彩る『REUNION』は、アニソンファンのマストアイテムになりそうです。
オーイシ 今回はとくにそうかも知れないですね。初回限定盤特典のDVDには、去年やった「OxTの日 2019 IN TOKYO」のライブ映像が収録されてるんですけど、「ベスト盤かしら?」と思うくらいの内容ですから。
Tom-H@ck 本当にね。これだけでも買う価値があるんじゃないかな。
オーイシ 別売りにするべきだった!(笑) というくらい、アルバムとDVDを両方楽しんでいただけたら、ほぼOxTのすべてがわかってしまいますので!
Tom-H@ck 今年は残念ながらワンマンライブのほうも一旦、スケジュールの見直しをさせていただいていますが、10月にはイベントライブ「P’s LIVE! -Boys Side-」への出演予定もありますし……皆さんの前にOxTとして顔を揃える機会は、ぜひ作っていきたいですね。
INTERVIEW & TEXT BY 阿部美香
●リリース情報
NEW ALBUM
『REUNION』
9月10日発売
【初回限定盤(CD+DVD)】
価格:¥4,500+税
※三方背スリーブケース仕様
【通常盤(CD ONLY)】
価格:¥3,000+税
<CD>
M1.Overture
M2.UNION
M3.鼓動エスカレーション(OxT ver.)
M4.チャンス!(OxT ver.)
M5.Tears of a Genius (Ballad ver)
M6.O vs T #2
M7.Number One(New Mix Ver.)
M8.Be the Best! Be the Blue! (Album ver.)
M9.HOME GROUND
M10.REUNION
M11.もっと君を知れば
M12.ゴールデンアフタースクール
M13.Everlasting Dream
<DVD>
OxTの日 2019 IN TOKYO
1.Go EXCEED!!
2.トークパート
3.Clattanoia
4.GO CRY GO
5.STRIDER’S HIGH
6.ゴールデンアフタースクール
7.UNION
8.O vs T
9.君じゃなきゃダメみたい
関連リンク
『REUNION』特設サイトOxTオフィシャルサイト