世界初?!のバーチャルシンガーとして、その抜群の歌唱力を武器に人気を集めるYuNiが、ネットの世界から飛び出して、自身初となるアニメ主題歌「ココロノック」をリリースした。話題作となった『宇崎ちゃんは遊びたい!』のEDテーマで甘酸っぱい乙女心を歌う彼女の、現在までの歩みを振り返りつつ、シングルに込められた様々な感情、そしてメジャーデビューへの想いまでたっぷりと聞いた。
――2018年からYouTubeを中心に歌手活動を行なってきたYuNiさんですが、元々歌を始めるきっかけはなんでしたか?
YuNi 歌は元々幼い頃から好きで、将来も歌をお仕事にしていきたいなと思っていました。そこからいろんな人たちとの出会いなどが重なって、YouTubeを始めることになったんですね。元々普通に喋っていても「変わった声してるね」って言われるんですけど、自分ではあまり変わってるって思ってなくて、歌声とのギャップがあるとも思ってなかったんですよ。でもこうして誰かに自分の歌を聴いてもらうようになって、そんなにギャップがあるタイプなんだって気づいて、じゃあそれを武器にしない手はないなと(笑)。
――そうしたYuNiさんの声が世界に発信されたのは2018年6月投稿の、坂本真綾「プラチナ」の歌ってみた動画でした。聞くところによると当時は歌の収録から動画アップまでご自身でやられていたそうで?
YuNi 当時は本当に環境が整っていなかったというか、いきなり初心者向けの機材をもらって、全部自分で調べて勉強しながらでした。自分でやっていてこれで合っているのかもわからないままやっていたので、当時の歌ってみたは恥ずかしくて聴けないんですよ(笑)。
――まさにゼロからスタートのYouTube配信だったんですね。
YuNi 最初は録ったままをそのまま出していたので、歌もごまかしが効かない状態というか、「とにかく音を外さないように」ってしか考えていなかったので、歌に感情が全然乗っていないというか、とにかく必死でした。コメントでも「もっと抑揚をつけて歌えばいいのに」って言われていたんですけど、そんな余裕もなかったんです(笑)。
――動画を投稿しながら録音技術も学んでいったと。
YuNi 「WHITE BREATH」(2018年8月)のあたりからMIXの技術を出せるようになってきて、そのあたりから気にし過ぎずリラックスして録音できるようになりました。
――ちなみに歌ってみた動画ではアニソンから歌謡曲まで様々なジャンルの楽曲をカバーしています。歌う曲のチョイスはどのように行なっているんですか?
YuNi 単純に自分がいいと思った曲を基本歌いたくて。年代も関係なく、有線やテレビとかで昔の曲が流れることがあるじゃないですか。そこで「あ、いいな」ってなったら、その瞬間にメモってあとで聴いてみるというのが習慣にあったので、そういう自分のプレイリストから曲を決めていきますね。。どちらかというと人に惚れ込むというより、曲に惚れ込むタイプなんじゃないかなと思います。
――そうした歌ってみたでの活動の一方で、2018年10月には初のオリジナル楽曲「透明声彩」をリリースします。改めてオリジナル楽曲を初めて歌ったときのお気持ちはいかがでしたか?
YuNi YouTubeでの活動をしていなかったらオリジナル楽曲に恵まれることはなかったんだなって今も思います。なので「透明声彩」はめちゃくちゃ思い入れの深い曲ではあるんですけど、それと同時に当時は自分の歌い方というものがわかっていなかったなとも思いますね。歌ってみただとオリジナルのアーティストさんというある意味お手本があって、その人のいいところを探しながら自分なりに歌うということをやっていたんですけど、そういうお手本がいないというのが初めてだったので、当時はまだ、いい曲を活かし切れていなかったなって。
――いわゆる自分らしい歌というものをまだ見つけられていなかったと。
YuNi 当時は自分のいちばん気持ちよく歌えるキーというものもわかっていなかったんですよ。
――そうした活動を続けるなかで、ついに初のアニメタイアップとなる「ココロノック」をリリースしました。この曲は人気作『宇崎ちゃんは遊びたい!』のEDテーマとなったわけですが、最初にアニソンを歌うと聞いたときの感想はいかがでしたか?
YuNi 本当に信じられなくて!(笑)。なんならアニメの1話が放送されたときも、本当にエンディングまで流れるのか不安で不安で。1話はスタッフさんとミーティングしているときに観ていたので、「本当に流れなかったらどうしよう……ツイッターでもあんなに『今日だよ!』って言っていたのに……」って(笑)。
――わははは、実際に歌が流れるまで不安だったと(笑)。実際にご自身の歌がエンディングで流れたときのお気持ちは?
YuNi 自分の歌がエンディングの映像と一緒に流れて、YuNiって名前が出たときは、「自分の声ってこう聴こえるんだ……」って思いました。制作中に何度も聴いていたのに、テレビからはまた違う感じに聴こえて。
――初めて自分の歌がテレビから流れると、まるで自分じゃないみたいと思うことは多いみたいですね。
YuNi そうですそうです。第三者の立ち位置で聴いた、みたいな(笑)。
――ちなみに「宇崎ちゃん」はご覧になった感想はいかがでしたか?
YuNi 作品的には宇崎ちゃんのウザ可愛さがテーマじゃないですか。でも私からすると”可愛い”しかないんですよ。最初は”ウザい”が強いのかなって思っていて、「ココロノック」ではそこに隠された乙女心を歌おうというテーマがあったんですけど、アニメを観ていても宇崎ちゃんの乙女心がダダ漏れしていて、その気持ちがエンディングに出せたんだなって思うと、曲が作品とも合っていてよかったなって思いました。
――たしかに宇崎ちゃんの恋に不器用なところはよく出ていますよね。
YuNi 最初はもっとコメディ寄りかと思っていたんですけど、ラブやんけ!って(笑)。
――そんな「ココロノック」を手がけるのは、「透明声彩」からYuNiさんの楽曲を多く手がけるシンガーソングライターのYUC’eさんです。改めてYuNiさんにとってはどんな存在ですか?
YuNi YUC’eさんと最初に会ったのは「透明声彩」からなんですけど、そこからお友達になってよく遊ぶ仲でもあるのでいちばん緊張しないですし、たくさん曲を作っていただいているので、何を求めているのかもわかっている気がします。YUC’eさんの曲を聴くたびに、まるで宝石とかシャボン玉とかビー玉とか、コロコロした綺麗なものを想像していて、今回も「やっぱりYUC’e氏だな!」っていう宝石みたいなものが来たと感じました。
――そうした信頼の置けるYUC’eさんの楽曲だけに、YuNiさんも自分の力を最大限発揮できたのでは?
YuNi デビュー曲から一緒にやらせていただいているので、「ココロノック」では自分の歌い方も反映されてきて、より自分らしさが入ってきたかなって感じます。それとこれまでと違うのは、今回は自分の曲でもあるけどタイアップでもあったので、誰が主役で誰の気持ちを歌うかがはっきりしていたんですよ。そこはすごく意識しました。
――また中盤のコーラスがたっぷり入るインストパートも素敵ですよね。
YuNi 綺麗ですよねえ~。でも最初はあのパートにコーラス部分は入っていなかったんですよ。レコーディングの前日にYUC’e氏から、「実はあの間奏にコーラスを足したので当日聴いてもらうことになるからよろしくね」ってLINEが来まして。実際現場で聴いたらめっちゃきれいで、YUC’e氏には「マリアさまが見てるみたいでいいね」って(笑)。このコーラスで一気に色がついたというか、コーラスだけでこんなに変わるんだってびっくりしました。
――そうしたアレンジが可愛いだけではない、YuNiさんの楽曲らしさとして出ているのかなと。
YuNi あと、2番に入ってもサビに行かずに景色が変わってコーラスパートに入っていくところも新しくてお気に入りですね。でもそこはテレビでは流れないので悔しくもあり……(笑)。
――そうした構成はぜひフルバージョンで楽しんでほしいと。
YuNi そうですそうです。
――またカップリングの「フィルモノローグ」はSakuさんによるハードでメロディアスな1曲になりました。
YuNi Sakuさんは昔からのお友達で、その繋がりで今回書いていただくことになったんですけど、「フィルモノローグ」の歌詞はYouTubeを始める前の私の実体験というか、そのときの気持ちが歌詞になっています。お友達だからこそ当時の私の気持ちを忠実に書いていただいた歌詞だなと思いますね。
――その歌詞ですが、比較的重たい感情が乗ったものになっていますね。
YuNi そうですね。私も過去に挫折を経験して、それが全部に歌詞に込められています。歌っていてもまるで過去の自分が歌っているというか、当時のことがフラッシュバックするんですよ。そういう自分自身を初めて歌詞にしていただいた、思い入れの深い曲になりましたね。
――その挫折というのは、サビでの”選ばれなかった 日々が”というフレーズにも表れていると思います。
YuNi 本当にまんまという、悔しい気持ちが歌詞に入っている感じですね。
――そうした赤裸々な感情を出した楽曲だけに、YuNiさんの歌唱もタメの効いたエモーショナルなものになっていますね。
YuNi ありがたい……!最初はテンポがもうちょっと速かったんですよね。ただスタッフさんからもうちょっとテンポを落とした方が私の感情が出やすいと言ってくださって、今の形になっています。
――そうしたヘヴィな内容でも、それを乗り越えた今だから歌えるという、前向きさも感じさせますよね。
YuNi そうですね。Sakuさんとも「やっと一緒に作品を作れたね」と話していました。この曲のように、今夢に向かっているけどうまくいかなかったりとか、挑戦しても選んでもらえなかったとか経験している方もいると思うんですよ。そういう方に寄り添えるような曲になれたらいいなって思いますね。自分自身への曲でもあるし、今頑張っている人のための曲になれたらいいな。私自身が「フィルモノローグ」みたいな歩み方をしてでも今があるという、それが励ましになればと思います。
――さて、そうしたシングルをリリースしたあとは、今冬を予定しているアルバムリリースによるメジャーデビューが待っています。
YuNi 私は今も疑っていますけどね!(笑)。
――わははは、そこも疑心暗鬼になっていると(笑)。
YuNi 本当に疑い深い性格なんですよ(笑)。でも去年、メジャーデビューのお話をいただいたときって、私的につらい時期でもあったんですよ。いろいろあって、それこそ動画をまったく出せなくて、でもそれを具体的に話せないので、ファンの方にも「YuNiちゃんYouTubeから離れちゃったのかな」って不安にさせてしまって……。そこで見えたひと筋の光が、トイズファクトリーさんだったんですよね。そのときは本当にびっくりしましたけど、ほっとしたというのが強かったですね。地道に悪いことせずに生きてきてよかったなと(笑)。
――一方でメジャーで、しかもレーベルとしては初のバーチャルシンガーということもありますが、それに対してはどう思いましたか?
YuNi バーチャルの方がいないレーベルさんというのは、むしろ嬉しかったことです。自分が初めてだからどうというわけではないんですけど、初めてだから一緒にイチから作っていけるなと思ったし、ここでなら自分たちでやりたいことを作っていける、そういう活動の幅が広がったのが大きかったですね。今までは自分たちだけじゃできなかったことができるんだっていうところが強かったですね。
――たしかにバーチャルシンガーがさらに進出する、そのパイオニアになるわけですからね。
YuNi そうなっていきたいなって思いますし、同時にもっと新しいことをしていきたいという気持ちも強いですね。バーチャルが盛り上がっているなかで、なおさら自分だけにしかできない何か新しいものを作っていきたいという気持ちが、これからについては大きいかもしれないです。
――その大きな試金石となるのがメジャーデビューアルバムだと思いますが、制作はいかがですか?
YuNi 今は10月にライブを控えているので、そっちに全集中しています。それが終わってからアルバムにしっかり向かっていくのかなと思います。
――10月24日に開催される3rd VR Live「eternal journey」ですね。今回はどんなステージになりそうですか?
YuNi 昨今の情勢もあって、みんなストレスというものも溜まっていると思うし、極力家にいないといけない時期でもあるので、今回はその場にいて楽しいというのを味わってほしいなと思っています。自分たちで言っているのは”アトラクションライブ”というか、VRという特性を活かしてリアルライブではできないことをVRでやる、という。いちアトラクションとして楽しんでいただけるようなライブをやりたいと思って、今は演出など細かいところを詰めている最中ですね。多分今回は歌を聴かせるだけじゃないライブになるんじゃないかと思います!
――「ココロノック」からライブ、そしてメジャーデビューアルバムと、昨年落ち込んでいたところから一気に勢いを取り戻す2020年、2021年になりそうですね。
YuNi そうなってほしいなあ~(笑)。
――そうしたワクワクするような未来を、YuNiさんはどう過ごしていきたいと思いますか?
YuNi 今まではバーチャルという、リアルではできないことをやっていきたいと言ってきました。これからはバーチャルにしかできないことはもちろん、ある意味バーチャルにもできないことというか、リアルやバーチャルの枠組みを超えるものを見つけていきたいなと。目標は大きく、バーチャルという域も超えるような存在をめざしていきたいと思います!
INTERVIEW & TEXT BY 澄川龍一
●リリース情報
TVアニメ『宇崎ちゃんは遊びたい!』EDテーマ
「ココロノック」
9月30日発売
<CD>
M1:ココロノック
作詞・作曲・編曲:YUC’e
M2:フィルモノローグ
作詞・作曲・編曲:Saku
M3:ココロノック(instrumental)
●ライブ情報
YuNi 3rd VR Live 「eternal journey」
10月24日(土)19:00~
――2018年からYouTubeを中心に歌手活動を行なってきたYuNiさんですが、元々歌を始めるきっかけはなんでしたか?
YuNi 歌は元々幼い頃から好きで、将来も歌をお仕事にしていきたいなと思っていました。そこからいろんな人たちとの出会いなどが重なって、YouTubeを始めることになったんですね。元々普通に喋っていても「変わった声してるね」って言われるんですけど、自分ではあまり変わってるって思ってなくて、歌声とのギャップがあるとも思ってなかったんですよ。でもこうして誰かに自分の歌を聴いてもらうようになって、そんなにギャップがあるタイプなんだって気づいて、じゃあそれを武器にしない手はないなと(笑)。
――そうしたYuNiさんの声が世界に発信されたのは2018年6月投稿の、坂本真綾「プラチナ」の歌ってみた動画でした。聞くところによると当時は歌の収録から動画アップまでご自身でやられていたそうで?
YuNi 当時は本当に環境が整っていなかったというか、いきなり初心者向けの機材をもらって、全部自分で調べて勉強しながらでした。自分でやっていてこれで合っているのかもわからないままやっていたので、当時の歌ってみたは恥ずかしくて聴けないんですよ(笑)。
――まさにゼロからスタートのYouTube配信だったんですね。
YuNi 最初は録ったままをそのまま出していたので、歌もごまかしが効かない状態というか、「とにかく音を外さないように」ってしか考えていなかったので、歌に感情が全然乗っていないというか、とにかく必死でした。コメントでも「もっと抑揚をつけて歌えばいいのに」って言われていたんですけど、そんな余裕もなかったんです(笑)。
――動画を投稿しながら録音技術も学んでいったと。
YuNi 「WHITE BREATH」(2018年8月)のあたりからMIXの技術を出せるようになってきて、そのあたりから気にし過ぎずリラックスして録音できるようになりました。
――ちなみに歌ってみた動画ではアニソンから歌謡曲まで様々なジャンルの楽曲をカバーしています。歌う曲のチョイスはどのように行なっているんですか?
YuNi 単純に自分がいいと思った曲を基本歌いたくて。年代も関係なく、有線やテレビとかで昔の曲が流れることがあるじゃないですか。そこで「あ、いいな」ってなったら、その瞬間にメモってあとで聴いてみるというのが習慣にあったので、そういう自分のプレイリストから曲を決めていきますね。。どちらかというと人に惚れ込むというより、曲に惚れ込むタイプなんじゃないかなと思います。
――そうした歌ってみたでの活動の一方で、2018年10月には初のオリジナル楽曲「透明声彩」をリリースします。改めてオリジナル楽曲を初めて歌ったときのお気持ちはいかがでしたか?
YuNi YouTubeでの活動をしていなかったらオリジナル楽曲に恵まれることはなかったんだなって今も思います。なので「透明声彩」はめちゃくちゃ思い入れの深い曲ではあるんですけど、それと同時に当時は自分の歌い方というものがわかっていなかったなとも思いますね。歌ってみただとオリジナルのアーティストさんというある意味お手本があって、その人のいいところを探しながら自分なりに歌うということをやっていたんですけど、そういうお手本がいないというのが初めてだったので、当時はまだ、いい曲を活かし切れていなかったなって。
――いわゆる自分らしい歌というものをまだ見つけられていなかったと。
YuNi 当時は自分のいちばん気持ちよく歌えるキーというものもわかっていなかったんですよ。
そこからだんだん自分の歌い方のクセやいいところというのがわかってきて、それをオリジナル曲で出せるようになったんですね。「透明声彩」もやっと自分の曲というものに、これからなっていくのかなって思います。
――そうした活動を続けるなかで、ついに初のアニメタイアップとなる「ココロノック」をリリースしました。この曲は人気作『宇崎ちゃんは遊びたい!』のEDテーマとなったわけですが、最初にアニソンを歌うと聞いたときの感想はいかがでしたか?
YuNi 本当に信じられなくて!(笑)。なんならアニメの1話が放送されたときも、本当にエンディングまで流れるのか不安で不安で。1話はスタッフさんとミーティングしているときに観ていたので、「本当に流れなかったらどうしよう……ツイッターでもあんなに『今日だよ!』って言っていたのに……」って(笑)。
――わははは、実際に歌が流れるまで不安だったと(笑)。実際にご自身の歌がエンディングで流れたときのお気持ちは?
YuNi 自分の歌がエンディングの映像と一緒に流れて、YuNiって名前が出たときは、「自分の声ってこう聴こえるんだ……」って思いました。制作中に何度も聴いていたのに、テレビからはまた違う感じに聴こえて。
――初めて自分の歌がテレビから流れると、まるで自分じゃないみたいと思うことは多いみたいですね。
YuNi そうですそうです。第三者の立ち位置で聴いた、みたいな(笑)。
ちょっと不思議な感覚になりましたね。
――ちなみに「宇崎ちゃん」はご覧になった感想はいかがでしたか?
YuNi 作品的には宇崎ちゃんのウザ可愛さがテーマじゃないですか。でも私からすると”可愛い”しかないんですよ。最初は”ウザい”が強いのかなって思っていて、「ココロノック」ではそこに隠された乙女心を歌おうというテーマがあったんですけど、アニメを観ていても宇崎ちゃんの乙女心がダダ漏れしていて、その気持ちがエンディングに出せたんだなって思うと、曲が作品とも合っていてよかったなって思いました。
――たしかに宇崎ちゃんの恋に不器用なところはよく出ていますよね。
YuNi 最初はもっとコメディ寄りかと思っていたんですけど、ラブやんけ!って(笑)。
――そんな「ココロノック」を手がけるのは、「透明声彩」からYuNiさんの楽曲を多く手がけるシンガーソングライターのYUC’eさんです。改めてYuNiさんにとってはどんな存在ですか?
YuNi YUC’eさんと最初に会ったのは「透明声彩」からなんですけど、そこからお友達になってよく遊ぶ仲でもあるのでいちばん緊張しないですし、たくさん曲を作っていただいているので、何を求めているのかもわかっている気がします。YUC’eさんの曲を聴くたびに、まるで宝石とかシャボン玉とかビー玉とか、コロコロした綺麗なものを想像していて、今回も「やっぱりYUC’e氏だな!」っていう宝石みたいなものが来たと感じました。
――そうした信頼の置けるYUC’eさんの楽曲だけに、YuNiさんも自分の力を最大限発揮できたのでは?
YuNi デビュー曲から一緒にやらせていただいているので、「ココロノック」では自分の歌い方も反映されてきて、より自分らしさが入ってきたかなって感じます。それとこれまでと違うのは、今回は自分の曲でもあるけどタイアップでもあったので、誰が主役で誰の気持ちを歌うかがはっきりしていたんですよ。そこはすごく意識しました。
サビの最後に「なんてね」とあるんですけど、いつもはふざけちゃう宇崎ちゃんがここで乙女心を見せるという気持ちで、このニュアンスは何度も録り直しました。
――また中盤のコーラスがたっぷり入るインストパートも素敵ですよね。
YuNi 綺麗ですよねえ~。でも最初はあのパートにコーラス部分は入っていなかったんですよ。レコーディングの前日にYUC’e氏から、「実はあの間奏にコーラスを足したので当日聴いてもらうことになるからよろしくね」ってLINEが来まして。実際現場で聴いたらめっちゃきれいで、YUC’e氏には「マリアさまが見てるみたいでいいね」って(笑)。このコーラスで一気に色がついたというか、コーラスだけでこんなに変わるんだってびっくりしました。
――そうしたアレンジが可愛いだけではない、YuNiさんの楽曲らしさとして出ているのかなと。
YuNi あと、2番に入ってもサビに行かずに景色が変わってコーラスパートに入っていくところも新しくてお気に入りですね。でもそこはテレビでは流れないので悔しくもあり……(笑)。
――そうした構成はぜひフルバージョンで楽しんでほしいと。
YuNi そうですそうです。
フルでも聴いてほしいって強く思った楽曲ですね。
――またカップリングの「フィルモノローグ」はSakuさんによるハードでメロディアスな1曲になりました。
YuNi Sakuさんは昔からのお友達で、その繋がりで今回書いていただくことになったんですけど、「フィルモノローグ」の歌詞はYouTubeを始める前の私の実体験というか、そのときの気持ちが歌詞になっています。お友達だからこそ当時の私の気持ちを忠実に書いていただいた歌詞だなと思いますね。
――その歌詞ですが、比較的重たい感情が乗ったものになっていますね。
YuNi そうですね。私も過去に挫折を経験して、それが全部に歌詞に込められています。歌っていてもまるで過去の自分が歌っているというか、当時のことがフラッシュバックするんですよ。そういう自分自身を初めて歌詞にしていただいた、思い入れの深い曲になりましたね。
――その挫折というのは、サビでの”選ばれなかった 日々が”というフレーズにも表れていると思います。
YuNi 本当にまんまという、悔しい気持ちが歌詞に入っている感じですね。
――そうした赤裸々な感情を出した楽曲だけに、YuNiさんの歌唱もタメの効いたエモーショナルなものになっていますね。
YuNi ありがたい……!最初はテンポがもうちょっと速かったんですよね。ただスタッフさんからもうちょっとテンポを落とした方が私の感情が出やすいと言ってくださって、今の形になっています。
――そうしたヘヴィな内容でも、それを乗り越えた今だから歌えるという、前向きさも感じさせますよね。
YuNi そうですね。Sakuさんとも「やっと一緒に作品を作れたね」と話していました。この曲のように、今夢に向かっているけどうまくいかなかったりとか、挑戦しても選んでもらえなかったとか経験している方もいると思うんですよ。そういう方に寄り添えるような曲になれたらいいなって思いますね。自分自身への曲でもあるし、今頑張っている人のための曲になれたらいいな。私自身が「フィルモノローグ」みたいな歩み方をしてでも今があるという、それが励ましになればと思います。
――さて、そうしたシングルをリリースしたあとは、今冬を予定しているアルバムリリースによるメジャーデビューが待っています。
YuNi 私は今も疑っていますけどね!(笑)。
――わははは、そこも疑心暗鬼になっていると(笑)。
YuNi 本当に疑い深い性格なんですよ(笑)。でも去年、メジャーデビューのお話をいただいたときって、私的につらい時期でもあったんですよ。いろいろあって、それこそ動画をまったく出せなくて、でもそれを具体的に話せないので、ファンの方にも「YuNiちゃんYouTubeから離れちゃったのかな」って不安にさせてしまって……。そこで見えたひと筋の光が、トイズファクトリーさんだったんですよね。そのときは本当にびっくりしましたけど、ほっとしたというのが強かったですね。地道に悪いことせずに生きてきてよかったなと(笑)。
――一方でメジャーで、しかもレーベルとしては初のバーチャルシンガーということもありますが、それに対してはどう思いましたか?
YuNi バーチャルの方がいないレーベルさんというのは、むしろ嬉しかったことです。自分が初めてだからどうというわけではないんですけど、初めてだから一緒にイチから作っていけるなと思ったし、ここでなら自分たちでやりたいことを作っていける、そういう活動の幅が広がったのが大きかったですね。今までは自分たちだけじゃできなかったことができるんだっていうところが強かったですね。
――たしかにバーチャルシンガーがさらに進出する、そのパイオニアになるわけですからね。
YuNi そうなっていきたいなって思いますし、同時にもっと新しいことをしていきたいという気持ちも強いですね。バーチャルが盛り上がっているなかで、なおさら自分だけにしかできない何か新しいものを作っていきたいという気持ちが、これからについては大きいかもしれないです。
――その大きな試金石となるのがメジャーデビューアルバムだと思いますが、制作はいかがですか?
YuNi 今は10月にライブを控えているので、そっちに全集中しています。それが終わってからアルバムにしっかり向かっていくのかなと思います。
――10月24日に開催される3rd VR Live「eternal journey」ですね。今回はどんなステージになりそうですか?
YuNi 昨今の情勢もあって、みんなストレスというものも溜まっていると思うし、極力家にいないといけない時期でもあるので、今回はその場にいて楽しいというのを味わってほしいなと思っています。自分たちで言っているのは”アトラクションライブ”というか、VRという特性を活かしてリアルライブではできないことをVRでやる、という。いちアトラクションとして楽しんでいただけるようなライブをやりたいと思って、今は演出など細かいところを詰めている最中ですね。多分今回は歌を聴かせるだけじゃないライブになるんじゃないかと思います!
――「ココロノック」からライブ、そしてメジャーデビューアルバムと、昨年落ち込んでいたところから一気に勢いを取り戻す2020年、2021年になりそうですね。
YuNi そうなってほしいなあ~(笑)。
――そうしたワクワクするような未来を、YuNiさんはどう過ごしていきたいと思いますか?
YuNi 今まではバーチャルという、リアルではできないことをやっていきたいと言ってきました。これからはバーチャルにしかできないことはもちろん、ある意味バーチャルにもできないことというか、リアルやバーチャルの枠組みを超えるものを見つけていきたいなと。目標は大きく、バーチャルという域も超えるような存在をめざしていきたいと思います!
INTERVIEW & TEXT BY 澄川龍一
●リリース情報
TVアニメ『宇崎ちゃんは遊びたい!』EDテーマ
「ココロノック」
9月30日発売
<CD>
M1:ココロノック
作詞・作曲・編曲:YUC’e
M2:フィルモノローグ
作詞・作曲・編曲:Saku
M3:ココロノック(instrumental)
●ライブ情報
YuNi 3rd VR Live 「eternal journey」
10月24日(土)19:00~
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