「にじさんじ」所属のVTuberがアニメタイアップ楽曲でデュエットを披露！樋口楓、叶「Yummy Yummy」の制作の裏側に迫る

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それぞれが「にじさんじ」に所属する人気VTuberであり、「にじさんじ」内ユニット・七次元生徒会！などでの交流も知られる樋口楓と叶。ランティス所属のアーティストとしても活動する2人がTVアニメ『日本へようこそエルフさん。

INTERVIEW & TEXT BY 杉山 仁

個人活動とレーベルでの活動に感じる違いとは？

――お二人は共に「にじさんじ」所属で、ランティスのレーベルメイトでもあります。お互いのレーベルを通しての活動にどんな印象を持っていますか？

樋口楓　私から見るとレーベル外、個人で活動をされている時の叶さんはファンの方の「こういう曲を歌ってほしい」に応えているイメージがあったんです。対してランティスからリリースする曲は王道の王子様っぽく、自分の声をしっかり届けているようなイメージがあって。叶さんは出せる声の幅も広いと思うので、今後も色んな魅力が広がっていくんだろうなぁと思って見ていますね。

叶　やる音楽の方向性にすごく強いこだわりを持っているわけではないんですけど、確かに個人で制作しているものとレーベルで制作しているものではマインドが違うかもしれないです。ランティスで制作を続ける中で「自分はこういう音楽が好きで、こういう音楽は得意じゃない」ということもわかるようになってきていて。ランティスでの活動は一種の自分探しのようなものかなと思います。

――叶さんから見た樋口さんのレーベルでの活動はどんな印象ですか？

叶　僕は樋口さんが（ランティスで）活動をしているのを見てレーベルに入りたいと思ったんですよ。樋口さんをはじめレーベルに所属している人たちのパフォーマンスには格の違いを感じることが多く、それってレーベルアーティストとして自己表現をしっかりしているからこそなのかと感じていて。実際に僕も（レーベルに）入り、樋口さんと話をしていて感じるのは「ちゃんと自分がやりたいことをやれているんだな」ということです。

――レーベルでの活動と個人での活動に違いや、レーベルでの活動ならではの楽しさを感じることはありますか？

樋口　「にじさんじ」や個人で音楽活動をする時はやりとりが文面で終わることが多いんですけど、レーベルに入ると色んな分野のプロの方やランティスの担当者の方と直接話をすることが増えて。その会話のなかで今まで知らなかったことを知れたり、これまで見れなかった楽曲の制作過程を見れたりするのは個人での活動とは違いますね。おかげでより音楽に詳しくなれるし、より自分の楽曲に愛着が湧くのを感じるというか。「クリエイターさんってこんなに大変だったんだ」ということも知ることができて、それがいい経験になっているのかなと思います。

叶　僕の場合は音楽制作については知らないことだらけなので、レーベルでの活動を通してその過程を知れること自体が面白いんです。レコーディングが終わって（録音ブースの）真ん中の椅子に座わって完成音源を聴くと聴こえ方が全然違っていて驚いたり。僕はテイクを選ぶにあたっても「自分がこう歌いたい」ということよりも「客観的に見て良いものはどれか」ということを優先することが多く、聞かれない限りはテイク選びをお任せするんです。皆さんにテイクを選んでいただくなかで「自分はどういう見せ方をするのが良いとされているのか」ということを知れたのは印象的でした。

――お二人で音楽活動について話をすることもあるのでしょうか？

樋口　ありますね。プロデューサーさんのやりたいことがどういう感じなのか、自分がやりたいことは何なのか、その擦り合わせをどうしたらいいのかということを報告しあったりして。

叶　あと、「この日にアルバムが出るということはこの時期が忙しいんだろうな」ということもお互いにわかるので、そういう時期に七次元生徒会！の収録で会ったりすると「今めっちゃ忙しいんだよね」といった話をしたりもします。

――今回、そんなお二人が歌う楽曲「Yummy Yummy」がTVアニメ『日本へようこそエルフさん。

叶　何でなんでしょうね？（笑）。

樋口　（笑）。同じ「にじさんじ」出身のランティス所属なので「いつか一緒に何かやれたらいいかもね」という話はレーベルの方からも出ていたんです。そんななか『日本へようこそエルフさん。』のED主題歌を決めるにあたって男女デュエットの曲にしようという話になり、私たちのところに話が来たのではないかと。

――サビの部分には印象的な掛け合いがあったりして、2人で歌うことの意味を活かした楽曲になっていますよね。最初に曲を聴いた時の感想はいかがでしたか？

叶　まずは、「美味しそうだな」っていう（笑）。

樋口　ははははは。

叶　サビも含めて、掛け合いをしたりハモリをしたりと一緒に歌っている雰囲気が魅力になっている曲で、1人だったら歌えない、2人で歌うからこその意味を活かしたものになっていますよね。

樋口　テンポ感が楽しい曲という印象もあり、初めて聴いた時は「これは（歌が入ったら）どんな感じに仕上がるんだろう？」と楽しみになりました。

――歌う際に特に工夫したことがあれば教えてください。

樋口　Bメロの“心は躍るよ”の部分では跳ねるような雰囲気で、2人の歌い方を合わせるように工夫しました。私は普段はハキハキと言葉を切って歌うタイプで、叶さんは音をつなげる歌い方をするんです。そんなお互いの歌い方を混ぜるように意識した感じでした。

叶　僕は最初の“How デリシャス！”の部分がすごく難しくて本当に苦労し、録り終わった後も「あれで良かったのだろうか」とかなり不安になりました。でも、完成した曲を聴いてやっと安心できたというか。この曲ってハモリも多いので歌っているメロディが樋口さんと僕とで違って、収録時に不安になることもあったんですよ。でも、2人の声が合わさったものを聴いたら素晴らしい仕上がりになっていて「良かった」と思いましたね。

――タイアップ作品に寄り添うために考えたことはありますか？

樋口　収録の段階では「日本にやってきたエルフのマリーちゃんが、日本の文化を学んで四季やご飯を楽しんだりする作品」と言う概要を聞かされていたので、日本に来た「楽しさ」が伝わるように歌いました。

叶　実際に日本食が初めてだったら「食べてみたい！」と思えるものがたくさんあって日本にいるのが楽しくて仕方ないと思うんですよね。そういうことを想像しながら歌っていきました。

――お互いの歌声を聴いての印象もお聞きしたいです。

樋口　レコーディングは私が先だったので、叶さんの歌声を初めて聴いたのは完成版をいただいたあとだったんですよ。

叶　僕はあとで録らせてもらったので、楓さんの歌を聴きながら収録できたのがすごく楽しかったです。歌声が力強くてとても安心感がありました。

――曲の中で気に入っている箇所はありますか？

叶　やっぱりサビは聴いていてすごく気持ちいいですよね。

樋口　歌詞の中にちゃんと“いただきます。”と“ごちそうさまです！”が入っているのもいいなぁと思いますね。「本当に美味しかった」という気持ちがタイアップ作品ともリンクしてるなって。

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「家猫」と「野良猫」をテーマに制作されたカップリング曲

――カップリング曲としてお互いのソロ曲「あのね、ぼくね。」と「愛My距離感」も収録されています。それぞれの楽曲の方向性はどんなふうに決まっていったのでしょうか？

樋口　同じCDにそれぞれのソロ曲も収録されるという話になった時に、何か同じテーマがあったほうがいいんじゃないかという話になったんです。そこで作曲をお願いする前に作詞家のrinoさんに来ていただいてミーティングをしたんですけど、その時お互いに最近興味があるものとして「猫」というキーワードが出てきて。でも2曲が似たり寄ったりの雰囲気になるともったいないので「家猫」と「野良猫」、同じ猫でも真逆のテーマで曲を作ろうという話になりました。

――最初に大きなテーマを決めたんですね。

樋口　すんなりでした。それこそ七次元生徒会！のメンバーでも猫を飼っている人が多くて、猫の話をちょうどしていた時期だったんですよ。

叶　僕は猫を飼ってはいないんですけど、飼っている人の話を聞いていて「いいなぁ」と感じ、飼いたいという話もしていて。

樋口　叶さんの猫飼いたい欲がMAXな時期でしたね（笑）。確か当時の叶さんは猫の品種とかにも詳しくなっていて。そういう意味でもいいタイミングだったのかなと思います。でも逆に「同じテーマにしましょう」と決まるまでにはかなり時間がかかったんですよ。最初はお互いに真逆のテーマの曲にしようと思っていて「アコースティックとデジタル」とか、「2Dと3D」とか、「2次元と3次元」とか色々と案を考えていたんですよね。

叶　すごく色々な案を出しましたね。「月と太陽」とか。

樋口　「炎と水」とか、「天使と悪魔」とか。

――どんどんテーマが壮大に……（笑）。

樋口　それで収集がつかなくなったというか……。それにお互いの曲を初めて聴いてくれる人もいると思ったので、わかりやすいテーマがいいなと思って「猫」に決まりました。私は叶さんと相談する前に「家猫」について歌うモードになってしまい……。自然に叶さんが「野良猫」について歌うことになりましたね。

叶　僕が好きな猫は自由気ままなタイプだったので、「野良猫」のほうを担当させてもらえてありがたかったですよ。

樋口　作詞を担当したrinoさんも猫を飼われているので、「猫あるある」を盛り込んで作詞してくれました。ミーティングの時もリモートの画面にrinoさんが飼っている猫のしっぽがずっと見えていたりして（笑）。自分の思う猫像をしっかりとお伝えし、実際に写真を見てもらったり飼っている中でのエピソードをお話したりして作詞をしてもらいました。「あのね、ぼくね。」の作曲は普段私の個人曲をプロデュースしてくれている光増（ハジメ）さんにお願いしたので、普段から話をしているペット談義からもイメージを膨らませて曲を作ってくれているんです。私が宅録したうちの猫の肉声もちりばめてもらったりして。

――あの鳴き声は樋口さんの家の猫だったんですね！

樋口　そうなんです。猫ってなかなか鳴いてくれないので録るのは大変でしたけど……（笑）。

――歌う際に意識したことはありますか？

樋口　この曲は、「みんなのうた」のような雰囲気もあると思ったので、いい意味で子供向けの曲っぽくというか、「楽しくみんなと一緒に歌えるような曲」を目指して歌いました。

叶　家猫って甘え慣れていると思うんですけど、そういう部分が伝わる曲だなぁと思って聴かせてもらいました。猫に対しての愛を感じる曲ですよね。

――叶さんのソロ楽曲「愛My距離感」はどのように作ったのでしょう？

叶　猫は飼っていないものの猫自体は好きなので、「猫って自由気ままなイメージがあるよな」と妄想を膨らませつつ、自分の理想像を元に曲にしてもらいました。すごく気に入る曲になったんですけど、ラップパートの収録が大変で（笑）。ラップって感情的な部分を伝えやすいので、そこは意識しながら歌っていました。

――途中のガヤパートが登場しますが、こちらはどのように収録したのでしょう？

叶　レコーディング現場にいた色んな人に声を入れてもらいました。僕、ブースに入って「こんなふうにしてください」ってディレクションをしたんですよ。とはいえ、音楽に関する本格的なことは分からないので、エンジニアさんが言ってることを復唱しただけなんですけど……（笑）。

――樋口さんに本楽曲を聴いた印象もお聞きしたいです。

樋口　「あのね、ぼくね。」が「家猫」をテーマにした温かい雰囲気の曲だったので、真逆の「愛My距離感」は冷たい曲になるのではないかと思っていたのですが、そんなことはなくて。猫が持つツンデレな部分のデレの部分が「あのね、ぼくね。」、ツンの部分が「愛My距離感」、そういう対比になっているんだと気付かされました。私自身は家猫に慣れちゃいましたけど、確かに小さなころに道端で見た野良猫はこんなふうに自由気ままで、でも甘える時はちょこっと出てきたなということを思い出しました。

――今回初回限定盤ジャケットに描かれている猫にもこだわりがあるそうですね。

樋口　そうなんです。ここに描かれている猫は自分が飼っている家猫に似せたいと思い、「ここはこの色で」というふうに色々とお願いをして描いてもらったんですよ。

叶　僕の場合はいつも抱えている猫のぬいぐるみのロトを実際の猫として描いてもらっています。いや、ロトも元々は猫（猫のぬいぐるみに憑依した猫又）ではあるんですけどね……。

――お二人とも音楽活動も長くなってきていますが、ランティスでの活動は自分にとってどんな場所になってきていますか？

樋口　普段の配信で言うのはこっぱずかしいこととか、モヤモヤした気持ちをはじめとした「実はこの時こういう気持ちでした」という自分の内面を引き出してくれるのがランティスさんだなと思っています。VTuberが個人で出す曲ってキャラソンっぽくなりがちなんですけど、そこに客観的な視点を入れて仕立て上げてくれるのですごく助かっていますね。

――確かに、樋口さんの楽曲を通して意外な一面が知れたリスナーさんも多いような気がします。叶さんはどうでしょう？

叶　僕の場合、全体の活動の割合で見ると音楽活動ってすごく少ないんですよね。

――ゲーム配信がメインというイメージですね。

叶　そうなんです。だからゲーム配信はだらけて好き勝手やっているんですけど、ランティスでの音楽活動ではちょっと普段とは違う姿が見せられるのかなと思っています。オンとオフがあるとしたら、音楽活動は「オン」が見せられる場所というか。普段の配信は家でだらけているような感覚で見てもらって、CDや楽曲がリリースされた時は「頑張って働いてきたんだな」と思って楽しんでくれたらいいなと思っています。

――叶さんにとっての音楽活動はハレの舞台のような場所なんですね。

叶　本当にその通りですね。

――音楽活動を続ける中で変わってきたことはありますか？

叶　続けるうちに自分探しをこじらせてきていて「これはいい」「これは嫌だ」が出てきてわがままになってきているかもしれないです（笑）。最初は「楽しくなくちゃいけない」「こうあるべきだ」と考えすぎていたところがあったんですけど、最近はそれをわざとはずしたりもしていて。「好きなように表現していい」「他人が理解できなくてもいい」と思えるようになりました。

――ランティスからデビューした当初は明るい楽曲が多い印象でしたが、続けていくうちにそうではない表現も増えていますよね。

叶　そうですね。当時の明るい曲にももちろん愛着があるんですけど、実際の自分とは遠すぎるのであまり多過ぎると大変なんです（笑）。そういう意味でも色んな曲ができるようになってきているのかなと思います。

樋口　私の場合は最初にもちょっと話しましたけど、音楽好きというのが根っこにあるんですよ。そのうえで音楽活動を続ける過程で「この曲はこんなふうに録ってるんだ」とか制作面に意識が行くようになって。昔はただ気持ち良く聴いていた歌が「こういうふうにできてるんだな」「こういう工夫がされているんだな」と分解して理解できるようになってきました。結果自分がやりたいことを伝える時も具体的に提案できるようになってきたと思います。そういう意味では音楽力が増してきているのかなって。

――樋口さんはロックのイメージが強かった初期から始まって、楽曲を出すごとに色んなジャンルや方向性の楽曲が増えているのが印象的です。

樋口　自分としてはもちろんロックが歌いやすいんですけど、普通の生活をしていたら経験できない「レーベルに所属させてもらう」ということに挑戦できているんだから、チャレンジングな曲も歌っていきたいと思っていて。最近はあえてロックから外れた曲も作ってもらったりしていますね。

――最後になりましたが、次に2人で一緒にオリジナル曲を歌う機会があったらやってみたいことを教えてもらいたいです。

叶　かっこいい曲をやってみたいですね。パワーがありそうなやつ！（歌声に）パワーがない僕が言うのもあれですけど（笑）。

樋口　逆に、ブリッブリにかわいい曲でも面白そう。樋口楓ソロじゃ絶対歌わないような曲でも「2人でやるならやってみようかな」となると思えるので。

――叶さんならかわいい曲でも魅力的にやってくれそうなイメージもありますし。

叶　はい、できます（笑）。僕は1人だったらロックを絶対やらないと思うので、引っ張ってもらってロックを歌うのもありかもしれない。

樋口　ロックなら私がガナりを入れて、かわいい曲なら叶さんにセリフを入れてもらう……！

叶　いいですね（笑）。2人だからこそできる新しいことに挑戦してみたいです。

【初回限定盤】

品番：LACM-34649
価格：1,980円（税込）

＜付属物＞
・yatoyato氏描き下ろしイラスト使用ジャケット
・三方背ケース
・ジャケットイラストを使用したトレーディングカード
・表題曲「Yummy Yummy」MVの絵コンテやイラストを収録した小冊子

【通常盤】

品番：LACM-24649
価格：1,430円（税込）

＜CD＞
01. Yummy Yummy / 樋口楓、叶(TVアニメ『日本へようこそエルフさん。』エンディング主題歌)
作詞・作曲：山田智和・ Yo-SK　編曲：白戸佑輔
02. あのね、ぼくね。/ 樋口楓
作詞：rino　作曲・編曲 : 光増ハジメ(FirstCall)
03. 愛My距離感 / 叶
作詞：rino　作曲・編曲：星銀乃丈
04. Yummy Yummy(Instrumental)
05. あのね、ぼくね。(Instrumental)
06. 愛My距離感(Instrumental)

©Bandai Namco Music Live Inc. ©ANYCOLOR, Inc.

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樋口楓
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