今年3月にリリースされた駒形友梨の3枚目のミニアルバム『a Day』は、朝から夕方までの、陽が昇って沈むまでの時間を描いたコンセプチュアルな作品となった。そしてこのたびリリースされた『Night Walk』はその『a Day』と対になるような、夜をコンセプトとしたミニアルバムとなった。
ムーディーでスタイリッシュなサウンドから、彼女の歌唱力をじっくり堪能できるバラードまで、夜に輝く駒形のアーティスト性が真価を発揮した傑作について、アルバム発売日に話を聞いた。

【動画】駒形友梨「Night Walk」ダイジェスト試聴

――このインタビューをしている本日に4thミニアルバム『NIght Walk』が発売されたわけですが、すでに手に入れたファンからの声は届いていますか?

駒形友梨 私、よくエゴサをするので、昨日からSNSで感想を読んでいるんですけど、みなさんそれぞれお気に入りの曲を呟いてくださって、すごくうれしいですね。

――本作は今年3月にリリースされた3rdミニアルバム『a Day』とともに2部作となっていますが、こうした2部作にするのは最初から決まっていたんですか?

駒形 まず今年の活動をどうしていこうかという話のなかで、ミニアルバムを2枚出すことは予定にあったんです。そこから最初のアルバムをどうするかという打ち合わせに入ったんですけど、これまですごく明るい曲が多いわけではなかったので、ライブもやることを想定してみんなで盛り上がれるような爽やかで明るい曲を作りたいねという話になって、せっかくだから昼間をフィーチャーしてコンセプトにしたらどうだろうという話から出来たのが『a Day』なんです。それにあわせて、私はもともと落ち着いた曲が好きなので夜バージョンも作りたいですという話になって、そこで昼と夜で2枚を対でという構成になりました。

――本来落ち着いたアプローチの楽曲がお好みでもあるので、『Night Walk』の方向性というのはすんなりまとまった?

駒形 そうですね。まず『a Day』のタイトルを決めつつも、もう一枚は『Night Walk』がいいんじゃないかというのは出ていて。普段アルバムのタイトルは制作期間中に決めることがほとんどですけど、『Night Walk』は『a Day』のときにすでに決まっていて、それぐらいアルバムのイメージや世界観はイメージできたいたんじゃないかなって思います。

――『a Day』は朝から陽が暮れるまでの時間を追ったコンセプトになっていて、『Night Walk』は陽が暮れた夜をフォーカスした作品となっています。この2作は世界観としても繋がっているんでしょうか?

駒形 『a Day』は私のイメージのなかではひとりの主人公の、起床から夕方までの時間の流れで曲を決めていったんですけど、『Night Walk』はひとりの人物というよりは夜のいろんなシーンというか、オムニバス的な感覚で曲が集められたんじゃないかなって思います。

――いわゆるさまざまな夜を切り取った群像劇的な作風であると。それだけにさまざまなアプローチの楽曲が収録されています。
しかもそれら、特にアルバム序盤にはアシッドジャズやソウルなど夜らしいアダルトな雰囲気のサウンドが印象的です。


駒形 もともと落ち着いたアダルトな曲が好きだったので、そこで今回は1曲目の表題曲を高橋 諒さんに書いていただきました。高橋さんとは前作の「On My Way」をはじめ何回かご一緒させていただいたんですが、高橋さんだったら夜をコンセプトにしたこのアルバムにぴったりの曲を書いてくれるはずだと思ってお願いしました。

――まさに冒頭のイントロからムーディーな、夜らしい雰囲気ですよね。

駒形 もう最初から(笑)。

――最初に聴いた印象はいかがでしたか?

駒形 なんていうんでしょう、「やっぱり好きなんじゃんこういう感じ!」みたいな(笑)。私自身も高橋さんはやはりこういうサウンドがお得意なんだなと再確認できたというか。前作で「On My Way」の編曲をしてくださったときも、制作期間の終盤で高橋さんから「アレンジを足しました」というのが上がってきたんですね。それを聴いたら、まさに夜みたいな素敵なものだったんですけど、「a Day」の雰囲気とはまた違っていて、「めちゃめちゃ素敵なんですけど、今回は昼間なんです~」っていう感じで泣く泣く採用できず(笑)。なので今回は、高橋さんに夜で好きにやっていただきたいという私の思いもあり。

――前作とはまた時間軸的にもガラッと変わったサウンドでしたが、歌ってみていかがでしたか?

駒形 歌ってきた楽曲がキャラソンなど、明るい元気なアプローチが多くて、そこから私のアーティスト活動ではそうじゃない楽曲にも挑戦させてもらってきたんですけど、そのなかでも「Night Walk」はより大人っぽくて。曲の雰囲気とかパワーに背中を押してもらって、気張らないで思いのまま歌っていいんだなと挑戦させていただいた感覚がありますね。


――もともと駒形さんの声の成分としても高音が印象的ですが、こうしたどっしりとしたサウンドにも非常によく合うと感じます。

駒形 うれしい! よく友達に、私の曲って高くて歌えないって言われるんですけど(笑)、「Night Walk」はきっと歌えるんじゃないかなと。声優の仕事を始める前は、カラオケに行ってもこういう曲が自分に合うなって思っていたんですよね。こういう曲はみなさんの耳に触れる機会はなかったと思うんですけど、私はわりとホームというか、落ち着けるゾーンかなという意識はありますね。

――ちなみに当時はどんな曲を歌っていたんですか?

駒形 坂本真綾さんが大好きで、そのなかでも「プラチナ」や「トライアングラー」とかよりはアルバムに入っているような曲とかをよく歌っていました。あとは学生のときは中島美嘉さんとか、テレサ・テンさんなど歌謡曲も歌っていましたし、あと一青窈さんやCoccoさんも好きで、そういう曲が多かったかな。それと小学校のときは林原めぐみさんが好きで、林原さんって明るい声のトーンの方だと思うんですけど、そこが私のなかにも引き出しとしてあるのかなってちょっと思いますね。

――続いての「empty」は駒形さんが作詞を担当しています。

駒形 最初のアルバムでの作詞は1曲で、それからは2曲ずつ作詞をさせていただいているので、今回も2曲作詞するのかなって思って制作に臨みましたね。

――エレピが印象的なソウルミュージックに仕上がっていますが、意外とメロディはトリッキーで、そこに詞を当てるのも簡単ではないのかなと。

駒形 そうなんですよ! 曲を最初に聴いたときはおしゃれでかっこいいなあと思ったんですけど、いざ歌うと難しくて、上下の高低差だったり、展開も変わっているので。矢野(達也)さんはトリッキーな曲を書かれるなあと思って、作詞には結構時間を割きましたね。


――非常にクールなイメージの作風になっていますが、作詞でイメージされたものは?

駒形 最初に曲だけを聴いたときに、ネオンや夜景がある人混みのなかの自分、みたいなイメージがあったのと、今までは基本自分が普段思っていることを絡めながら、自分の価値観や自分の目線を詞にしていたんですけど、今回はそのときちょうど観ていた作品と曲が自分のなかで繋がるものがあったので、作品にインスピレーションを受けて主人公の女の子の設定を決めて、その子を通した見方で詞を描くという自分では新しいアプローチで書くことができました。最初は空っぽで何もない心に、曲が進むにつれてその子の気持ちに変化が出て、空っぽの心の中に何かが入っていくみたいな、そういう変化を曲のなかで書けたらなと思って。

――そして続いての「オービタル」から風景に変化が出てきます。非常にトリッキーな、今っぽいサウンドになりましたね。

駒形 私からこういう曲を歌いたいっていうリクエストを打ち合わせのときにさせていただきました。ちょっとボカロっぽいというか、今まで言葉や歌詞を大事に歌ってきたんですけど、言葉の意味だけを表すのではなく歌詞すらも楽器として表現するような。私もボカロは世代で、カラオケで歌ったり文化祭でやったり自分の引き出しとしてあるものだったので、挑戦してみたいなっていう気持ちがありました。ただ、最初矢野さんに1コーラスだけ作ってもらったんですけど、この時点でこれぐらいだったらライブで歌えるかなっていうギリギリの難易度だったのが、矢野さんって楽しくなると盛り上がっちゃう人なので(笑)、すごく気合いを入れて作ってくださったんですが、後半が息できない! となり今の私の実力では歌えないというのでちょっと前のバージョンに戻してもらいました。

――たしかにどんどん言葉を叩きつけるような、ここでの駒形さんのボーカルもまた新鮮でしたね。

駒形 今までだったら高いところもファルセットを混ぜたりしていたのも、矢野さんから「いや、ここは地声であえて苦しそうに歌ってください」とか、この曲だからこそのアプローチや旨みを求められて、そこも普段のレコーディングとは違うアプローチで、苦戦しながらやった記憶がありますね。

――これが今後のライブでどんなパフォーマンスとなるのか……。

駒形 私も歌えるのかな? っていまだに思います(笑)。
ファンの方からも「オービタル」が好きっていう声が多いですね。

――そしてアルバムも後半に入り、非常にキャッチーな「Love is Action!」へ。こちらはBURNOUT SYNDROMESの熊谷和海さんによる楽曲です。

駒形 熊谷さんとは番組を通して知り合いまして、私が歌っているキャラソン

を好きで聴いてくださっていて、そこからもし私のアーティスト活動でも機会があれば曲を作りたいとおっしゃっていただいて。早速次のアルバムの制作が始まるときにお願いしました。打ち合わせの際に夜がテーマのアルバムなので、夜は意識していただきたいんですけどあとはお任せしますというオーダーだったんです。その時点で熊谷さんのなかでテーマは決まっていたみたいです。「Love Is Action(愛は行動)」というオードリー・ヘップバーンの名言があって、私のファンの方っておとなしくて礼儀正しい方が多いんですけど、熊谷さんもそれを知っていただいていて、真面目で礼儀正しいというのはいいことなんですけど、もう一歩踏み出す勇気だったりとか、そういうのも大事なんだよって駒形さんからみんなに発信することに意味があるんじゃないかと、すごく考えてくださっていて。

――歌詞にはさまざまな映画のタイトルが散りばめられていますね。

駒形 打ち合わせのときに熊谷さんから「駒形さん好きな映画ありますか?」って聞かれて何本かお伝えしたんですけど、そのなかに「セックス・アンド・ザ・シティ」があって。歌詞にはほかにも「ジュマンジ」とかあって、それは熊谷さんのアイディアなんですが私も大好きで、自分が好きな映画のタイトルが歌詞に入るとは思っていなかったので、その発想に驚きつつ、そういう遊びの幅も含めてやっぱりすごいなあと、すごく勉強になりました。曲としても今までの私の曲にはないタイプというか、ひと筋縄ではいかない曲でしたね。


――続いては駒形さんの歌声を堪能できるバラード「真珠星」です。

駒形 バラード大好きなのですごくうれしいですし楽しいです。私から三好(啓太)さんに曲をお願いしたいといったんですけど、私は歌っていないんですが三好さんが書かれたキャラソンが大好きで三好さん最高! と思っていたんです。それから『プリキュア』で初めて三好さんが書かれた曲を歌った縁があって、歳も近くて坂本真綾さんも好きという共通点も多くて、いつかご一緒したいですねっていう話をしていたので、今回「バラード書いてください」ってお願いしました。最初は「真珠星」って何か知らなかったんですけど、私が乙女座で、乙女座の星にスピカとも呼ばれる真珠星という星があるらしいんです。そんな粋なことをしてくださっていたのに、途中まで気づかなかったんですけど、その話を聞いてこの曲がより好きになりましたね。

――そしてしっとりとしたアコースティカルな楽曲「insomnia」。こちらでも駒形さんが作詞をされています。

駒形 今回2曲、歌詞を書くうえで「empty」は私じゃない別の人物を立てて詞を書いたので、もう一曲は私の気持ちを書き殴ろうと思って書き始めました。私、小さい頃から本当に寝つきが悪くて眠れなくて余計なことを考えているのか余計なことを考えているから寝つけないのかわからなくなるんです。ずっと余計なことを考えていて、気持ちも落ち込んじゃうし。そういう人って私だけじゃなくて、私のファンにもいっぱいいるんだろうな、そういうタイプの人が多いんだろうなって思って。
ひとりじゃないし、私より大変な人もいるかもしれないけど、少しでも共感してくれたらうれしいし、この曲が何かきっかけになったらいいなと思って書いてみました。

――「empty」とはまた違う、そういったストレートな表現がグッとくる楽曲になりましたね。

駒形 今までは自分を出さなきゃかけなかったですけど、出すのも恥ずかしいし、どこまでやっていいものかというのはあって。今回はそんなの気にしないで書いてストレス発散して、アウトプットしていきましたね。ただ、たくさん考えて言葉を選んでいかないといけないので、暗い言葉をたくさん考えるとやっぱり落ち込みやすくて。ちょっとズーンとなりながら、「つら!」って思いながら書いていましたね。

――そうしたいろいろ考えがちな眠れない夜を描きつつ、そこかしこにポジティブなワードが見えたりするところもリアルだし、駒形さんの心情なのかなと。

駒形 面倒くさそうな女ですよね……(笑)。でも聴いてくれる人にも意味のないことばかり考えて自己嫌悪になったりしてほしくないなと思って。自分もそうならなくていいんだよっていう意味も込めて、”無意味なことこそに幸せは隠れているの?”って入れたんです。もしかしたらその時間に意味はあるという含みは入れたくて、それがこの曲では大事なのかなって思います。

――そうした悩んだ末に訪れるのが、アルバム最後の曲となる「Good Night」。曲調的にもすでにいい夢を見ているのかなと(笑)。

駒形 睡眠導入にもぴったりな曲ですね(笑)。

――『a Day』の1曲目「a Day~and the light comes~」もそうでしたが、ここでの駒形さんのスキャットやコーラスワークが印象的な一曲です。

駒形 スキャットや歌詞のない歌というものに挑戦したのが自分のアーティスト活動からだったので、やっぱりまだ難しいなっていう思いが大きいですね。主線を歌うのはすごい好きで、ちょっとした自信もあるんですけど、こうしたハモやコーラスはまだ戸惑う部分があったりして、苦戦しながら歌ったり、どれぐらい力を入れるのか、逆にどれぐらい力を抜くのかが難しくて、いろいろ考えながらレコーディングした印象ですね。

――本作では表題曲でもそうですが、要所要所に入る駒形さんのコーラスというものはいいアクセントになっていて、それは今後も含めて重要なチャームになるんじゃないかと思いますね。

駒形 本当ですか? うれしい! もともとそういう楽曲が好きなので、一緒にやってくださるチームも駒形さんの楽曲はそういうアプローチでやっていきましょうという話で。コーラスは多めに入れているんですけど、そのなかで私もちょっとずつ勉強している最中ですね。矢野さんに鍛えられている気がするので、少しずつですが上達できているんじゃないかなと思うんですけど、今はまだ「ここはこうやったらよかったんじゃないか」という反省もあるので、そこはこれから成長していけたらなって思います。

――そうした『a Day』も含めてコンセプチュアルな作品を2枚出した2020年ですが、イベントができない状況も続くなか、今年の活動をどう考えていますか?

駒形 やっぱりリリイベやライブをして、みなさんの前で歌うからこそ、レコーディングでは気づけなかったことがあると思うんですけど、そういった生まれたばかりのものをみんなで育てていくという作業ができない現状は寂しいと思います。でもこれはこれでひとつの作品としてみなさんのなかでどう感じてもらえるのかという時間もまた大切だと思うので……やっぱりライブはやりたいですけどね。なんらかの形で少しずつでもやっていけたらいいなと思います。ファンの方から「CDで聴くとこの曲が好きだけど、ライブで聴くとこの曲も好きだった」という声をいただくような、あれをやりたいっていう思いがあります。

――一方で充実した作品を生み出した成果はありますから、2021年以降の音楽制作というものにもモチベーションは高まっているのでは?

駒形 そうですね。今までコンセプトやテーマを絞って作るミニアルバムが多かったので、次はもうそういうのを気にせずに曲を書いていただいて集めるというのもやってみたいです。「もうこの曲とこの曲最高! この曲絶対入れたい!」っていうものを軸に、そこからアルバムを作るんだったらどういう曲が一緒にあったらいいだろう、とか、そういう作り方もしてみたいですね。

INTERVIEW & TEXT BY 澄川龍一



●リリース情報
『Night Walk』

価格:¥2,500+税
品番:TECI-1714

<CD>
1. Night Walk
作詞:叶人/作曲・編曲:高橋諒
2. empty
作詞:駒形友梨/作曲・編曲:矢野達也
3. オービタル
作詞・作曲・編曲:矢野達也
4. Love is Action!
作詞・作曲:熊谷和海/編曲:熊谷和海・岸田勇気
5. 真珠星
作詞・作曲・編曲:三好啓太
6. insomnia
作詞:駒形友梨 作曲・編曲:秋浦智裕
7. Good Night
作曲・編曲:栗子洋平 ※Instrumental

【アニメイト限定盤】
品番:TEI-150

ゲーマーズ限定盤】
品番:TEI-151

【とらのあな限定盤】
品番:TEI-152

限定盤:各¥3,520+税

内容:ミニアルバム「Night Walk」+特典CD
特典CDは「Night Walk」収録の7曲のinst.ver.と、各限定盤それぞれに異なる「Night Walk」収録楽曲のvocal only ver.1曲の全8トラックを収録。

オリジナル特典
※追加特典、オリジナル特典絵柄、対象店舗は後日お知らせいたします。

アニメイト:複製コメント入りL判ブロマイド(アニメイトVer.)
ゲーマーズ:複製コメント入りL判ブロマイド(ゲーマーズVer.)
とらのあな:複製コメント入りL判ブロマイド(とらのあなVer.)
ソフマップ:複製コメント入りL判ブロマイド(ソフマップVer.)
タワーレコード:複製コメント入りL版ブロマイド(タワーレコードver.)
HMV:複製コメント入りL版ブロマイド(HMV ver.)
ヨドバシカメラ:複製コメント入りL版ブロマイド(ヨドバシカメラ ver.)
全国対象店:複製コメント入りL版ブロマイド(全国対象店Ver.)

関連リンク
駒形友梨 / TEICHIKU ENTERTAINMENT HP
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