小中学生時代には、さくら学院のメンバーとして活躍、同グループを卒業後は、女優・声優として「IDOL舞SHOW」「きんだーてれび きん☆モニ」などのコンテンツに参加してきた堀内まり菜が、2021年3月10日に1stアルバム『ナノ・ストーリー』でソロデビューする。全曲自ら作詞・作曲に携わった同アルバムのリリースに先駆け、この1月に初のオリジナル楽曲「ナノ・ハナ」を届け、2月12日には「空っぽの私」を先行配信する彼女に、アーティスト活動や音楽に対する想いを聞いた。


なお、2月9日発売の雑誌「リスアニ!Vol.43」では、1stアルバムについてのインタビュー記事を掲載!ぜひ併せてチェックしてほしい。

――堀内さんは子供の頃から芸能活動を行ってきたわけですが、いつ頃から音楽活動をしたいと考えていたのですか?

堀内まり菜 昔から歌は好きだったのですが、特に小中学生の頃に所属していたさくら学院の楽曲は、歌詞が私たちのリアルな心情を表現していたので、歌が自分の気持ちを伝える手段としてあって。その当時から「私は歌がうたいたいんだな」と思いながら過ごしていたんですけど、音楽活動をしたいと確信したのは高校生の頃。さくら学院を卒業して、「この先、何を目指していこう?」と考えたときに、歌で何かを伝えたいと決心しました。

――高校時代に何かきっかけになる出来事があったのですか?

堀内 さくら学院を卒業して、一度まっさらな状態になったときに、いろんな舞台やライブを観に行くなかでロックに出会ったり、GLAYさんの「疾走れ!ミライ」のMVに出演させていただいたり、自分はやっぱり音楽が好きと再確認することが何度もあったんです。それで今度は自分の言葉で歌を作りたいと思うようになって、ギターを始めたり、路上ライブをするために歌詞を書き溜めたりして。高校の3年間で音楽への想いが募っていきました。

――元々エレクトーンやピアノの経験もあったんですよね。

堀内 2歳ぐらいからエレクトーンを習い始めて、そこからピアノをさくら学院に入るまで習っていました。ギターはGLAYさんに出会ってから始めて、音楽教室で基本的なことは習いました。グループレッスンでボン・ジョヴィさんの楽曲を練習して、みんなで発表会に出たこともあります(笑)。

――音楽はどんなジャンルやアーティストが好きですか?

堀内 子供の頃からディズニーやミュージカルの曲、それとアイドルが好きで、モーニング娘。
さんのコンサートにはよく行っていました。高校に入ってからはロック系のフェスにも行くようになって、一番好きなバンドはUNISON SQUARE GARDENさん。特に「シャンデリア・ワルツ」は刺さりまくりです(笑)。高校生のときに初めて一人でライブハウスまで観に行って、スタンディングの前から二列目でつぶされそうになりながら、めっちゃノッて楽しんだのが印象に残っています。「音楽って楽しい!」と思って。

――色々な音楽に触れるなかで、自分のやりたい音楽のビジョンが見えてきたのでは?

堀内 LiSAさんの楽曲も大好きで、一人でなりきって歌ったりしていたんですけど、客観的に見ると、私はそこまでロックな人間ではないので違うかなと思って(苦笑)。ロックもやってみたい気持ちはありますけど、今は私の中にある世界を表現したいので、それこそ夢や妄想で見たお話とか、ファンタジー寄りの絵本みたいにワクワクする世界を表現できればと思っています。

――たしかに堀内さんの楽曲を聴くと「自分らしさ」を大切にしているように感じます。

堀内 私は以前に「10代の頃の自分に戻れたらいいのに……」ともがいていた時期があったんですけど、いろんな役者さんや声優さんと出会うなかで、その人にしかできない表現、その人らしさがすごく輝いて見えることが多くて。それがきっかけで、「何かになる」ではなくて「自分になる」というか、結局自分は自分にしかなれないし、弱音とか毒を吐いてもいいんだなって思えるようになったんです。自分で皮をどんどん剥がしていくというか、本来の自分自身、ありのままをぶつけるエネルギーだとか、楽しむ意味をすごく感じて。

――そんな堀内さんの想いが詰まったデビューアルバム『ナノ・ストーリー』(3月10日リリース)より、1月7日に先行配信された楽曲が「ナノ・ハナ」。
オーケストラサウンドを取り入れた、ファンタジックで柔らかな雰囲気のバラードです。


堀内 これが初めて自分で作詞作曲した曲になります。ストーリー的には、今お話ししたもがいていたときの自分に近くて、自分の夢の中では未来の輝きを纏った「菜の花」が綺麗に咲いているんだけど、現実になると枯れているっていう。諦めたくないんだけど、今の自分では覚悟が足りないし、あの頃には戻れないし、踏み切る気力もどこかにいってしまった、燃え尽き症候群みたいな感じです(笑)。未来にいったり、絶望にいったり、めちゃめちゃ揺らいでいる気持ちを書いた曲です。

――“わかってる…でも飛べない”など、1番の歌詞は不安で逡巡している感じですが、そこから徐々に前を向いていくような構成になっていますね。

堀内 後半に“キセキは起こせるって まだ言えないけど”という歌詞があるんですけど、まずは信じることから始めようっていうことを歌いたくて。まず自分が「菜の花」の輝く夢の世界を信じて、一歩踏み込むことで、世界は変わっていくよっていう。

――ただ、歌詞の最後は“ココロを信じられたらいいな”で締められるので、この歌の主人公はまだ自分を信じきってはいないんですよね。その意味では、第一歩を踏み出したばかりの、まさに始まりの歌でもある。

堀内 この曲はアルバムの1曲目でもあって、アルバムはここから壮大な冒険をしていく内容なんです(笑)。アルバムの最後の曲を聴いたときに、「ナノ・ハナ」から始まったストーリーすべてを俯瞰的に見ているような作りにしているので、「ナノ・ハナ」は大事な曲になります。


――そのアルバムの構想は、この曲を作ったときからあったのですか?

堀内 自分の中には最初からありました。私の名前にある「菜」を重ねた「菜の花さん」というお花が、1曲1曲の虹を渡りながら冒険をして、最終的に渡り切った地点でさらに一歩を踏み出す、というイメージがあったんですけど……。

――ですけど?

堀内 その渡った先が本当のゴールではなくて、ぐるっと一周して最初のスタート地点にまた戻ってくるっていう。結局ここ(「ナノ・ハナ」)が一番落ち着くなあって言う感じになりました(笑)。

――アルバム全体で物語仕立てになっているわけですね。たしかに2月12日に先行配信される楽曲「空っぽの私」も、「ナノ・ハナ」の延長線上にある気持ちが描かれているように感じました。

堀内 まさに続いています。「ナノ・ハナ」ではまだ気弱で一歩を踏み出せないでいたけど、次の「ヴァイオリン幻想曲」では音楽の楽しさを表現したくて、ヴァイオリンの妖精さんと主人公の私が二人で一緒に音楽で会話しているイメージで。そこで話しているうちに自分の核心に迫っていって、「本当はこういうことが言いたかった」という自分に出会って、星に向かって「どうしたらいいの?」と願うのが、「ねぇ星よ」という曲なんです。で、結局答えは出ないけど、気持ちを吐き出すことで自分が空っぽであることに気付いて、「だったら空っぽのまま飛び出せたらいいよね?」と、「ナノ・ハナ」のときよりも前に進み出した一曲が、「空っぽの私」になります。

――“空っぽ”という言葉は「ナノ・ハナ」の歌詞にもありましたが(“ほんとうの自分に出逢いたい 空っぽだったとしても”)、これは堀内さんにとって重要なワードなのかなと思って。

堀内 結構重要だと思います。
それこそ「こういう自分でいなくちゃ」と思い込んでいた部分を失くす意味でもあるし。以前は「空っぽ」が怖かったから、「私はこうあるべき」っていう自分を勝手に作り上げていたけど、それがないほうが実は楽だし、「空っぽの私」が今の本当の私だと気づいたので、今はそれがお気に入りというか。

――「空っぽ」という言葉はネガティブなニュアンスで使われがちですけど、ここでいう「空っぽの私」は、外からのイメージや誰かの価値観に染められたものではない、ありのままの自分だとか、まっさらで可能性に満ちた自分ということなんですね。

堀内 そこに気づいていただけて嬉しいです……! 今回一緒に楽曲を作っていただいている、シンガーソングライターの新津由衣さんとも、「空っぽとは言っているけど、自分が気づいていないだけで、本当はちゃんと自分があるということだよね」というお話をして。

――それで言うと、歌詞に“空っぽのメロディーは“ほんとう”を歌ってる”というフレーズがありますけど、これはどんな意味合いなのでしょうか?

堀内 “空っぽのメロディー”は自分のためにあるメロディということで、誰かのために歌うのではなく、自分のために歌うことが“ほんとう”というか。

――この曲の歌詞に“いつも笑っていたいから 自分のために歌うんだ”とありますが、まさにそういう気持ちの表れでもあると。

堀内 そうですね。昔は「辛い時も明るく笑顔で」というのが自分にとっての“ほんとう”だったんですけど、さくら学院の頃に歌っていた曲を今聴くと、「なんでここは笑顔で歌ってたんだろう?」と思うときもあって。もちろん当時はそのときの自分としてちゃんと向き合って歌っていたんですけど、もっと怒っていてもいいし、暴れちゃってもよかったのになあと思うことがあって。だから、今歌える私の“ほんとう”は、別に怒っていても、ふてくされててもいいよっていう。

――さくら学院では作詞家・作曲家さんの書いた楽曲に乗せて自分の気持ちを歌ったり、あるいは「ライブレボルト」や「IDOL舞SHOW」といった作品では、キャラクターとして歌をうたってきたわけですが、今回のように自分で作詞作曲した楽曲を自分で歌う場合、今までと心持ちに変化はありましたか?

堀内 キャラクターで歌うときは、ライブも含めて全部物語だと思っているので、全然違うんですけど……でも、この間、初めてソロでライブイベント(“Lantis & Purple One Star New Generation LIVE 2020”)に出演したときは、スイッチが違ったというか。役になるときは、その役としてのライブの景色の見え方があるけど、自分としてステージに立つときは、子どもの頃の自分になるというか……なんだろう? 全部忘れるというか、童心に帰るみたいな。
今、自分で言って気づいたことですけど。

――面白いですね。ステージで表現するときは、既成の価値観に捉われることなく自分の感性のままに生きていた、子どもの頃の感覚に立ち戻って歌うっていう。

堀内 「立ち戻る」という言葉がまさにその通りだと思います。本当の言葉だからそれをただ歌うだけというか、変に手を振ったり、アピールとかもいらないかなと思っていて。私もそのときが初めてのステージだったので、まだわからないことがありますけど。

――今までのお話から察するに、堀内さんは今の自分自身の素直な感情を表現したい気持ちが強いんですね。それを音楽で形にできている実感はありますか?

堀内 実感はまだないですけど、ちょっとずつ見えてきた感じはあって。レコーディングでも、昔は歌声が詰まっているというか、天井が狭い感じがしていたのですが、そこをもっと開放して、力も入れず、ただ声が出ている状態、素の声で全部を解放してパーンって出ているような歌い方にしていきました。音源を聴くと自分でも「前よりもちょっとは開いてるかも」と発見することがあって、少しずつ「こういうことかな?」と感じています。

――最後に、今後どんなアーティストになっていきたいかをお聞かせください。

堀内 それこそ現実のしがらみや「こうであるべき!」っていう部分を忘れられる、無心で楽しめる歌をうたっていきたいです。
妄想の世界に思いっきり飛び込んじゃう、音楽のディズニーランドというか、ホリウチーランドみたいな(笑)。みんなの背中に羽が生えてくるみたいな音楽を歌いたいし、ライブでも楽しいアトラクションやショーみたいな空間を作っていけたらと思います。

INTERVIEW & TEXT BY 北野 創(リスアニ!)

●リリース情報
デビューアルバム
『ナノ・ストーリー』
2021年3月10日発売

【初回限定盤】

品番:LACA-35856
価格:¥5,000+税
初回限定特典:フォトブック付き豪華仕様

【通常盤】

品番:LACA-15856
価格:¥3,000+税

<CD>
M1. ナノ・ハナ
作詞・作曲:堀内まり菜、新津由衣 編曲:河野 伸
M2.ヴァイオリン幻想曲
作詞・作曲:堀内まり菜、新津由衣 編曲:河野 伸
M3. ねぇ星よ
作詞・作曲:堀内まり菜、新津由衣 編曲:ha-j
M4. 空っぽの私
作詞・作曲:堀内まり菜、新津由衣 編曲 :河野 伸
M5. ふう(instrumental)
M6. 優しい人
作詞・作曲:堀内まり菜、新津由衣
M7. ココロインク
作詞・作曲:堀内まり菜、新津由衣
M8.Welcome to Nanoland
作詞・作曲:堀内まり菜、新津由衣 編曲:ha-j
M9.Midnight Rail
作詞・作曲:堀内まり菜、新津由衣 編曲:ha-j
M10. わあ (instrumental)
M11. 菜心歌
作詞・作曲:堀内まり菜、新津由衣 編曲:河野 伸
M12. ユメ日記
作詞・作曲:堀内まり菜、新津由衣 編曲:ha-j


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