2020年10月より放送をスタート、現在第2クールの物語が佳境を迎えているTVアニメ『呪術廻戦』(じゅじゅつかいせん)。この第2クールでOPテーマとなった楽曲が、弱冠20歳でデビューしたボーカリストのWho-yaを中心とするクリエイターズユニット・Who-ya Extended(フーヤ エクステンデッド)による「VIVID VICE」だ。「静」から「動」へのダイナミックな緩急がアニメーションとしても魅力たっぷりのOP、これにぴったりとリンクするロックサウンドと歌声。この「VIVID VICE」制作にかけた細部に至るまでのこだわり、そして未だ謎多きWho-ya Extendedというアーティストの正体を知るべく、今回はWho-ya本人を取材。TVアニメ化される以前より『呪術廻戦』の大ファンであり、「好きなキャラはパンダ先輩とナナミン(七海建人)」だという彼自身の作品愛、そして音作りへの意識の高さが明らかになるインタビューとなった。あくまで「顔を隠して活動している」つもりではないんです――Who-ya Extendedさんはプロフィールに「クリエイターズユニット」と銘打たれていますが、この実態がどういうものか気になっている読者も多いと思います。まずは、そのあたりの基本的なところからお話を聞かせてください。Who-ya まず、歌そのものは全部僕が歌っていますが、クリエイターズユニットとしては、僕が中心となりつつ、楽曲ごとに様々なプロフェッショナルの方の力を借りながら作品を作っています。作詞・作曲に関してはデビュー作のときからコライト(共作)のようなスタイルで制作を続けていて、今回のミニアルバム『VIVID VICE』に収められている4曲も、すべてその形をとっています。――Who-ya Extendedとしての音楽性の軸、大切にしている部分を言語化するとしたら?Who-ya うーん……今作に関して言えば、全曲通して「疾走感」や「スピード感」みたいなものは軸になっていると思います。仮にBPMそのものは速くない楽曲の場合も、聴いたときの耳ざわりとして、ある一定の疾走感を感じられるように作っていて、フレーズは8ビートなんだけど16分の刻みのニュアンスを入れてあるとか、ギターの音の切り方で裏拍を表現していたりとか。僕自身もそれを意識して歌っているところがあるので。――Who-yaさんは過去にも、デビュー作の「Q-vism」(2019年)でTVアニメ『PSYCHO-PASS サイコパス 3』のOPテーマを担当しました。アニメ作品に寄り添った楽曲制作について、どんな部分に醍醐味を感じますか?Who-ya 主題歌として、という観点で考えるなら……「アニメ自体を表している楽曲」というよりは、「自分たちの持っている世界観と、アニメが持っている世界観の一番交わっているところ」を曲にしたいとは考えています 。歌い方も、意識的にそうしているわけではないのですが、作品によって毎回変えていて。例えば「VIVID VICE」はバックの音が激しめなので、普通に考えるともっと激しく歌ってもおかしくない曲だと思うんですけど、今回の『呪術廻戦』という作品の持つ雰囲気から、「人間らしさ」というか、何かちょっと「俯瞰してものを見ている」ようなイメージで歌っていて。――ちなみにWho-yaさんはアーティストとして、いわゆる生身ではなく、イラストによるイメージ的なビジュアルを前面に出して活動している印象が強いです。そこにはどういったコンセプトや意図が込められているんでしょうか。Who-ya これは、「VIVID VICE」もそうですけど、曲の世界観とユニットの世界観を、キービジュアルというフィルターを通している感じです。デビュータイミングから『PSYCHO-PASS サイコパス』という素晴らしい作品のオープニングテーマを任せていただいたこともありつつ、純粋に「自分が作った世界観」と「楽曲」の二本柱でどこまで勝負できるのかを試してみたい気持ちがあったんです。その結果、生まれたのがキービジュアルというアイデアで。とはいえ、僕としては別に顔を隠していたつもりはないんです(笑)。虎杖悠仁の生き方とも共鳴している「VIVID VICE」のメッセージ――改めて、TVアニメ『呪術廻戦』第2クールのOPテーマとなった「VIVID VICE」についてお聞きします。楽曲の制作にあたって、最初の取っ掛かりになったのは?Who-ya まずは原作のマンガを読みながら楽曲の制作を始めました。『呪術廻戦』はTVアニメ化が決まる前から大好きで、単行本も集めていたので、今回のお話をいただいた時点の最新刊まで、特にTVアニメ第2クールで放送される京都姉妹校交流会の部分は重点的に読み返しましたね。そこからの言葉選びで、すごく意識したのが「視点」のことで……僕の勝手なイメージかもしれませんが、アニメのオープニングテーマって、主人公の視点で歌詞が書かれることが多いなと感じていて。でも「VIVID VICE」の歌詞は、誰か一人の視点というよりは、『呪術廻戦』の個性溢れるキャラクターたち、それぞれの視点を感じられるような歌詞にしたかったんです。――なるほど。Who-ya なので、この楽曲を発表して以降、ファンや色んな方から「登場する人物各々の視点で見ても通じる」というコメントをいただいたり、例えば「この曲は(禪院)真希さんの視点の曲だ」とか「真人(まひと)の視点の曲だ」「虎杖(悠仁)たち三人の視点の曲だよ」と言ってくれる人たちを見かけると、「わかってくれたか~!」と思って(笑)。あと、これは音作りにも通じる話なのですが、『呪術廻戦』は僕たちの日常とはちょっとかけ離れた世界の話に思えるけど、登場キャラたちが戦いや身近な人の死を乗り越えながら人間臭く成長していくところが、すごく魅力的に感じるんですよ。そういった葛藤、後悔、人間らしさといった部分をサウンド的にも表現したかったので、今回はデジタルサウンドではなく、生音にこだわって作りました。――作品の世界観に合わせた結果の生音だと。サウンドに関して言えば、イントロの1音目から非常にインパクトがありますよね。あの「ドゥーーーン……」という音が、すごく印象的で。Who-ya たしかに、僕たちが作る曲は、始まって5秒以内に必ず印象的な音が入ってる気がします。デビュー曲の「Q-vism」も歌始まりで、楽器の音が入る前のブレスの音もこだわっていて。次にリリースした「Synthetic Sympathy」もギターの超高音から始まりますし。曲が始まってから5秒までのインパクトはすごく大事だと日々感じているので、その結果なのかもしれないです。――ギターの重ね方とかも含めて、独特のサウンドセンスを感じます。歌詞の話でいうと、葛藤、後悔といった「負」の部分を感じさせつつも、そこから覚悟を決めていくような印象も受けました。色んな登場人物に重ねられるものを意識したともおっしゃっていましたが、このあたりはご自身に重ねられるテーマでもあったのでしょうか。Who-ya う~ん、どうなんだろう? 自分自身が実際に意識していたかはわからないけど……僕は今21歳なんですけど、『呪術廻戦』に登場するキャラクターも含め、同世代の人たちはみんな悩みが尽きないと思うんですよ。もちろん、どの年代の人たちにも悩みや葛藤はたくさんあると思いますけど、若さゆえの、育ちきっていないからこその葛藤みたいなものって、僕も作品を作っていく時や生きているなかでたくさん感じていて。なのでアニメのキャラの視点も交えつつではありますけど、自分に向けて歌ってるような部分もあるかもしれません。――というのは?Who-ya 歌うことで自分自身をちょっと鼓舞するというか。だからこそ、「葛藤」や「後悔」といった、ワード単体で捉えるとマイナスに聞こえるかもしれないものにあえてスポットを当てた、というコンセプトにはなっていますね。「VIVID VICE」というタイトルも、「鮮やかな罪、償い」といったマイナスの意味合いにも取れる言葉をあえて選んでいて。――このタイトルは印象的ですね。ほかにも歌詞に“善悪のボーダーライン”というフレーズがありますし、全体的に善悪の物差しを超えた覚悟のようなものが感じられます。Who-ya 僕は個人的に「善い・悪い」って結局、自分が決めればいいかなと思っていて。『呪術廻戦』で言えば、虎杖(悠仁)も特級呪物「両面宿儺の指」を食べたことで「秘匿死刑」が決定してしまうけど、自分としてはやりたいことがあって。その自分の考えた道に沿って生きたいからということで、覚悟をもって戦っていると思うんですよ。それって「話のスケールやベクトルは違えど、誰にでも当てはまるんじゃないか?」と思っていて。その意味でも「善悪を無視して突き進め!」って、自分にも向けて鼓舞しているんだと思います。制作スタジオであるMAPPAさんと制作チームの「目」の表現は天才だ!と思います――ここからはTVアニメ『呪術廻戦』でこの曲が流れる第2クールのオープニング映像について伺います。改めて、ご自身の楽曲にアニメーションが付いたオープニング映像をご覧になった感想はいかがでしたか?Who-ya いやぁ、もう本当に……初めて観たときは、五体投地したくなるぐらい、ありがとうございます!って感じでした(笑)。その後も、もう何回観たかわからないぐらいエンドレスで繰り返し観ています。この曲は「静」と「動」の緩急をすごく大切にしていて、歌い方も前半は意識的にテンション感をちょっと下げていて、そこからサビでドーンといく感じにしているんですよ。映像も、前半は五条(悟)先生が花束を持って歩いてるシーンだとか、ゆっくりしたタイム感なんだけど、サビに入った瞬間、花御(はなみ)との激しい戦闘シーンに切り替わって、タイム感がものすごく早くなる。その映像と楽曲が組み合わさったときのリンクが素晴らしくて。僕らが楽曲で表現したかった緩急の部分を、映像でも再現していただいたことにすごく感動しました。――そんなオープニング映像の中でも、「特にここはかっこ良かった!」と感じたカットは?Who-ya 悩むなあ……。これは完全に個人的な意見になりますが、第1クール目のオープニングも含めて、MAPPAさんと制作チームの「目」の表現が天才的だと思うんですよね。なので、両面宿儺の出てくる目のカットと、あとはやっぱり五条先生の目のアップは、特に価値ある描写だと思いました。――たしかに目の表現にはこだわりを感じます。あと、終盤のカットで楽巌寺嘉伸が弾くギターの手元が映って、楽曲のギターサウンドとシンクロする「音ハメ」の部分も印象的でした。Who-ya あれは最初観たとき、ビックリしましたね。「学長、いつから(Who-ya Extendedの)メンバーになったんだ!?」と思って(笑)。でもあのカットは、前半の物静かな感じやその後のバトル感も含め、終始シリアスなオープニングアニメなのかな?と思わせていたところで、最後にちょっとユーモアもある構成になっていて、『呪術廻戦』らしいギャップがすごく面白いなと思いました。――たしかに(笑)。それでは最後に、今回の「VIVID VICE」はご自身にとってどんな楽曲になったか、『呪術廻戦』のファンからの反響などを踏まえた今の実感をお聞かせください。Who-ya 本当に国内外を問わずたくさんの方が聴いてくださって、TwitterやYouTubeなどを通じてものすごい量の感想をいただいているんですよ。楽曲は「僕たちなりの解釈はこうです」と提示しているものですが、それを受け取った人たちが、逆に「私たちはこう解釈しました」というのを返してくれて。ありがたいことに、その母数がどんどん増えていて……海外の方からもコメントもいただくので、わからないなりに頑張って翻訳アプリで読み取っています。そう考えると、『呪術廻戦』というアニメ自体の素晴らしさを改めて感じましたし、タイトルに掛けて言えば、僕たちが想像していた以上に色んな「色」が楽曲につけられたと思います。それぞれがこの曲から感じた「色」の感想をくれるのが、すごくありがたいですね。INTERVIEW & TEXT BY 北野 創(リスアニ!)●リリース情報Who-ya Extended「VIVID VICE」発売中【初回生産限定盤(CD+DVD)】品番:SECL 2647-8価格:¥1,500+税※三方背スリーブ仕様【通常盤】品番:SECL 2649価格:¥1,250+税<CD>01. VIVID VICE02. The master mind03. VIVID BANG04. Enough Is Enough05. VIVID VICE (Instrumental)<DVD>VIVID VICE MUSIC VIDEO【期間生産限定盤(CD+DVD アニメジャケット盤)】品番:SECL 2650-1価格:¥1,500+税※描き下ろしアニメジャケット デジパック仕様<CD>01. VIVID VICE02. The master mind03. VIVID BANG04. Enough Is Enough05. VIVID VICE TV size06. VIVID VICE (Instrumental)<DVD>TVアニメ「呪術廻戦」第2クール ノンクレジットオープニングムービー●作品情報TVアニメ『呪術廻戦』毎週金曜日深夜1時25分よりMBS/TBS系全国28局ネット“スーパーアニメイズム”枠にて放送中【STAFF】原作:芥見下々(集英社「週刊少年ジャンプ」連載)監督:朴 性厚シリーズ構成・脚本:瀬古浩司キャラクターデザイン:平松禎史副監督:梅本 唯美術監督:金 廷連色彩設計:鎌田千賀子CGIプロデューサー:淡輪雄介3DCGディレクター:兼田美希・木村謙太郎撮影監督:伊藤哲平編集:柳 圭介音楽:堤 博明・照井順政・桶狭間ありさ音響監督:藤田亜紀子音響制作:dugout制作:MAPPA第2クールOPテーマ:Who-ya Extended「VIVID VICE」(SMEレコーズ)第2クールEDテーマ:Co shu Nie「give it back」(ソニー・ミュージックアソシエイテッドレコーズ)【CAST】虎杖悠仁:榎木淳弥伏黒 恵:内田雄馬釘崎野薔薇:瀬戸麻沙美禪院真希:小松未可子狗巻 棘:内山昂輝パンダ:関 智一七海建人:津田健次郎伊地知潔高:岩田光央家入硝子:遠藤 綾夜蛾正道:黒田崇矢五条 悟:中村悠一東堂 葵:木村 昴禪院真依:井上麻里奈三輪 霞:赤崎千夏楽巌寺嘉伸:麦人吉野順平:山谷祥生夏油 傑:櫻井孝宏漏瑚:千葉 繁花御:田中敦子真人:島崎信長両面宿儺:諏訪部順一※赤崎千夏の「崎」はたつさきが正式名称※島崎信長の「崎」はたつさきが正式名称(C)芥見下々/集英社・呪術廻戦製作委員会関連リンクTVアニメ『呪術廻戦』公式サイトWho-ya Extended公式サイト