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“絶望系アニソンシンガー”を標榜するReoNaの通算3作目となるニューアルバム『HEART』は、様々な“絶望”に寄り添うお歌と共に7年の道のりを歩んできた彼女にとってメルクマールとなる作品になった。「R.I.P.」「ガジュマル ~Heaven in the Rain~」「GG」「End of Days」といったアニメタイアップシングルに加え、ハヤシケイ(LIVE LAB.)、傘村トータ(LIVE LAB.)、堀江晶太、荒幡亮平、宮嶋淳子、Ryo’LEFTY’Miyata、映秀。
連載2回目、そんなReoNaの思いをロングインタビューでお届けする。
■【連載】ReoNa 3rdアルバム『HEART』リリース記念「リスアニ!’s Heart」
INTERVIEW & TEXT BY 北野 創
多彩なクリエイター陣がReoNaを通して表現した“ハート”
――前回のシングル「End of Days」の取材の最後におっしゃっていましたが、今回のニューアルバム『HEART』は、1stアルバム『unknown』、2ndアルバム『HUMAN』と合わせて三部作になるイメージで制作を進めたらしいですね。
ReoNa はい。前作の『HUMAN』は、そのアルバムに至るまでの道のりを振り返った時に、人と接することで生まれてくるものや“人間”について深く考えてきた数年だったことから『HUMAN』というタイトルにしたように、今回の『HEART』も、前作からの2~3年の間にReoNaはどんなお歌を紡ぎ、どんなことを考えて生きてきたのか?というところから始まりました。『アークナイツ』という作品との掛け算で初めて“怒り”をモチーフにした「R.I.P.」をはじめ、大事な人を失った悲しみを描いた「ガジュマル ~Heaven in the Rain~」も、“楽しんだもん勝ち”という心を描いた「GG」も、アニメとの出会いをきっかけにReoNaがその瞬間に考えていることを形にしてきた。その全部のお歌を受け止めることのできる器として、『HEART』という言葉が出てきました。
――『HEART』という言葉には、“心・心臓・愛情・核心”など色んな意味合いが含まれているので、その意味では間口の広いタイトルですよね。
ReoNa すごく広い言葉だからこそ、今お話した楽曲だけでなく、「Debris」や「オムライス」といったお歌に込められたひと口では語れない感情、時に揺らいで、時に穴が開いて、時に守って、時に傷つく、そんな気持ちを1つに収めるものとして『HEART』はぴったりだったように思います。
――もう1つ、ReoNaさんのデビュー曲「SWEET HURT」にも、綴りと意味合いは異なりますが「ハート(=HURT)」というワードが含まれています。それも少なからず意識したのでしょうか。
ReoNa 「SWEET HURT」というお歌からReoNaの歩みは始まって、その時には甘くて痛い愛のお歌、“痛み(=HURT)”という言葉でしかハートを表せなかったReoNaが、『unknown』『HUMAN』とリリースして、今回の『HEART』に辿り着く。その意味でも、今までの道のりの先にあった言葉だと思います。
――ReoNaさん自身は、自分自身のハートや心について、この7年間の歩みの中で、変化を感じていますか?
ReoNa 感じますし、『HEART』というタイトルになったのは今回ですが、今までも色んな楽曲で“心”というものには向き合ってきたなと思っていて。「ANIMA」や「虹の彼方に」だったり、「ないない」もそうですし、自分と誰かの間にあるものでもあり、自分の中にあるものとしての“ハート”を考え続けてきた。だからこそ、これまでもこれからも変化していくものという印象があります。
――先ほどのお話によると、近年の様々な感情を描いたお歌を1つの器に収めるための言葉として『HEART』が導き出されたとのことですが、個人的にはアルバム全体を聴いた感想として、今までよりもポップで親しみやすい印象を受けました。その意味での『HEART』でもあるのかなと。
ReoNa ああ、本当ですか。でも、それは自然とそうなっていったんだと思います。今回は最終的にどんな色になるかまったく想像していなくて。というのも、今までの作品の場合は、まずクリエイターさんとReoNaチームでしっかりとお話したうえで楽曲を作ってもらうことが多かったのに対して、今回のアルバムの新曲は、各クリエイターさんがReoNaというスピーカーを使ってどんなお歌を歌って欲しいのか、皆さんに委ねる比重がすごく大きかったんです。「命という病」を書き下ろしてくださった堀江(晶太)さんを例に挙げると、最初に私たちのほうから「最近どんなことを考えていますか?」というのを聞いて。
――ReoNaさんの想いではなく、堀江さんの描きたいものをヒアリングするところから始まったわけですね。
ReoNa 堀江さんに作詞・作曲・編曲を全部お願いするのは「BIRTHDAY」以来だったのですが、今まで一緒にお歌を作ってきた足跡があるからこそできたことだと思います。それはハヤシケイ(LIVE LAB.)さんにせよ、傘村トータさんにせよ、レフティ(Ryo’LEFTY’Miyata)さんにせよ同じことで、ReoNaのハートだけでなく、関わってくださるクリエイターの皆さんのハートも携えて、アルバム制作ができたなと思っています。
――ここからは新曲のお話をお伺いしていきます。アルバム表題曲の「HEART」はハヤシケイさんが作詞・作曲、レフティさんが編曲を担当。開放的なバンドサウンド、痛みも愛おしさも“心”があるからこそ生まれることを描いた歌詞が、自然とハートを温めてくれるようなナンバーです。
ReoNa 今回のアルバムタイトルが『HEART』に決まった時、クリエイターさんたちに、“HEART”をテーマにしたお歌を作ってもらうところから始まりました。この曲に至るまでに、今回のアルバムには入らなかったまったく別のお歌がたくさん生まれたくらい、本当に難航したのですが、最終的にハヤシケイさんが、痛くも苦しくもあるけど、柔らかいところも尖ったところもある、このお歌を形にしてくださいました。私の中では、同じくハヤシケイさんが書いてくれた「HUMAN」(2ndアルバム『HUMAN』表題曲)と繋がるところがあって。
――というのは?
ReoNa 「HUMAN」は“人”との触れ合いについて書いた歌詞だと思うのですが、それは“心”を考えることと同じだと思うんです。きっと「HUMAN」や今までの他のお歌でハヤシケイさんが言葉に尽くせなかった想い、その先にある言いたかったことが、この「HEART」で描かれているように感じていて。楽曲のテンポ感や温かさ、キラキラした感じも含めて、今のReoNaだから歌えるものだと思いますし、ハヤシケイさんが描いてきたものの答えが1つある気がしています。
――心を指して“いっそこんなものなければ 辛いこともないのに 私は私をやめられないみたい”と歌っているように、ReoNaさんがこれまで表現してきた絶望ソングとしての側面があると同時に、サビでは“それでもあなたを想うと 柔らかな 柔らかな熱が灯る場所 Heart”と歌っていて。
ReoNa 多分、絶望を見つめ続けてきたからなんでしょうね。闇には光も付きものですし、この7年間の活動の中で、絶望にも色んなグラデーションがあることに気付いて。大きい絶望だけではなく、名前も付けられないような小さな日々の絶望にも寄り添いたい、と考えるようになった先に広がっていたのが、この「HEART」が持つ温かさなのかなと思います。
――結びの歌詞“こんなに痛くて こんなにも愛おしい場所 Heart”は「Sweet Hurt」への返答のようにも聴こえますし、個人的にはハヤシケイさんが作詞した「虹の彼方に」とのリンクも感じました。あの楽曲は“心の痛み”を知ったことによる絶望を描いていたので。
ReoNa まさに。「こんなに辛いことが起きるくらいなら、心なんて最初からなかったらよかったのに」っていう。本当にそうだなあと思います。でも、あの時のハヤシケイさんは、その思いを「虹の彼方に」置いてきたからこそ、きっとこのお歌では、心の痛みだけではなくて、愛おしく思える心もちゃんとここに持って来れたんだと思います。
――歌詞の話で言うと“まだ生きてる まだ生きてる”というフレーズも印象的で。この楽曲に限らず、今回のアルバムは全体的に“生きる”ということについても向き合っている曲が多い印象があります。
ReoNa そうですね。私にとっても“生きる”ということを考えてきた3年間だったと思うので。ただ、私の中では、この“まだ生きてる”は、直接的な生き死にということよりも、心が生きているかどうか、というイメージがすごく強くて。自分の心を押し殺すのは難しいことだと思うんです。「こんな気持ちを抱かなかったら楽なのに」とは思っても、心は自分の意思とは裏腹に息づいている。この“生きる”には、そういう心の動きが含まれているのかなと思っています。
――ReoNaさん自身は、どんな瞬間に心が生きていることを実感しますか?
ReoNa うーん……心が生きていることを実感するのはすごく難しいと思うんです。「楽しいな」とか「嬉しいな」「ありがたいな」と思っても、それは感情の話なので、「わ、私の心、今喜んでる」とはなかなかな思いづらいというか。それに対して、悲しくなったり、傷つく言葉を見かけた時のほうが、心を意識しやすいし、自分の心が生きていることを実感できる気がします。自分のことのはずなのに、他人事のように「このままだと心が死んじゃう」と思ったりするのは、なんだか不思議だなって。
――「HEART」では心の痛みと愛おしさの両方が描かれていますが、ReoNaさんはどんな思いを込めてこの曲を歌ったのでしょうか。
ReoNa この「HEART」という楽曲は、完成に至るまでに何度も歌詞が変わって、その度にプリプロとしてお歌を入れさせていただいたのですが、最初は私も痛みの方にフォーカスして歌っていたところがあったんです。
――それは気持ちの面で?もしくは技術面で?
ReoNa どちらもだと思います。最初のデモの段階では、ハヤシケイさんの弾き語りで届いたのですが、すごく温かで、ハヤシケイさんのお歌もすごく素敵なんですよ。そのイメージがあったからこそ、自分が歌った時に「なんでこうならないんだろう」という苦しみは結構味わったかもしれないです。
――「HEART」のMVは、ReoNaさんがギター片手に放浪しながら誰もいない大自然の中でお歌を歌う、開放感に溢れた映像に仕上がっていますね。
ReoNa 前作の「End of Days」のMVはフルCGで監督が思う世界観を描いていただきましたが、今回は私が1人ぼっちでお歌を歌う、ある意味、原点に帰ってきたようなMVになりました。ギターケースを引きながら新緑の茂る山道を歩いたり、軽トラックの荷台や牧場に、いつもライブでお歌を一緒に届けてきた絨毯を敷いてお歌を歌って。マイクは普段レコーディングで使っているソユーズのレプリカを作ってもらいました。流石に本物を外には持ち出せなかったので。
――ソユーズのマイクは高級品ですものね。
ReoNa それと私が引いているギターケースは、実際に私が使っている私物で、神崎エルザの楽曲を歌わせていただくことが決まった時に、初めて買ったアコースティックギターのギターケースになります。
――ちなみに、アルバムの限定盤に付属のBlu-rayには、本楽曲のリリックビデオを収録。「HEART」と「オルタナティブ」をレコーディングしたロンドンのアビーロードスタジオでの様子を観ることができます。
ReoNa 本当にアビーロードスタジオでの風景そのままの映像になりました。実際に訪れたことで感じたものがすごく多くて。足を踏み入れた瞬間、聖域と言いますか、世界的な名曲がたくさん生み出された場所にいることの尊さみたいなものを感じて。レコーディングには、レフティさんとレフティさんのバンド、エンジニアのとしさん(渡辺敏広)、それとハヤシケイさんも一緒に行って。ハヤシケイさんは「HEART」のアコギを弾いてくれているのですが、今まで見たことないくらい活き活きしていました(笑)。やっぱりバンドマンの憧れの場所なんだなあと実感しました。
次ページ:“オルタナティブ”な存在だからこそ委ねられる想いとお歌
“オルタナティブ”な存在だからこそ委ねられる想いとお歌
――アルバムの2曲目は、先ほど話題に上がった堀江さん提供の「命という病」。エモコア的なサウンドメイクと壮大なコーラスパートに、“これが私という罰”といったインパクトの強い言葉が乗った鮮烈な1曲です。
ReoNa 先ほどお話した「BIRTHDAY」の時は、私が過去に思ってきたことを堀江さんに託して、お歌として出力くださった感じだったのが、今回は逆に堀江さんのハートや絶望を、ReoNaを通して出力してもらったような印象があって。ちゃんと両方に重なるものができたように思います。私としては、歌詞を受け取った時に走馬灯みたいだなと感じて。言葉1つ1つに対して突き詰めて感情を捉えるよりは、1つの文章ごと、ブロックごと、メロディと合わせた言葉ごとの場面や景色の連続みたいなお歌だなと思いました。
――ダイナミックに展開していく曲調に反して、ReoNaさんの歌声が感情を込めるというよりも訥々と述べるような印象があるのは、走馬灯的なイメージからきているのでしょうか。
ReoNa そうかもしれないです。ちなみにこの曲は、堀江さんもバッキングボーカルという形で初めて声を重ねてくださっていて。それも堀江さん自身が「自分の声を入れたい」と言ってくださったんです。他にも、堀江さんは今までご一緒した楽曲では、ReoNaに歌を委ねてくださって、私が打ち出したものに対して具体的なディレクションをすることはなかったのですが、この曲では“それでいいよね”の部分だけ、「この一瞬だけは優しい響きが欲しいです」とリクエストしてくださって。私も同じイメージを持っていたので、堀江さんと想いが重なった瞬間でした。たった一言かもしれないけど、ここでハッとしてくれる人が1人でもいたらいいなと思いながら歌いました。
――そして3曲目「オルタナティブ」はレフティさんが作詞・作曲・編曲を担当。以前に神崎エルザ starring ReoNa名義の楽曲「Girls Don’t Cry」でアレンジを手がけていましたが、楽曲提供で関わるのは今回が初です。
ReoNa なので、レフティさんとは楽曲の制作を始める前に、一度改めてお話する機会を設けさせていただいて。そこで、今回は単純に「ReoNaってこういう人だよね」という部分から楽曲を書いていただくのではなく、レフティさん自身のお話を聞いたうえで、ReoNaとレフティさんの共通項を探して、それを形にしてほしい、というお願いから制作がスタートしました。その中で音楽的に親和性があるものとして導き出された言葉が“オルタナティブ”で。
――ReoNaさんも本作収録の「GG」などで、グランジ~オルタナロックにも取り組んでいますものね。
ReoNa はい。レフティさん自身もオルタナティブバンドをやってらっしゃるので。でも、“オルタナティブ”って色んな意味に解釈できると思うんです。直訳すると“代替品”とか“代わり”という意味があるので、レフティさんは最初、音楽性の話として“オルタナティブ”という言葉を出してくださったんですけど、私はそれが生き方的な話にすごくリンクしてしまって。この曲の中に“たとえ 王道じゃ無くたって”という歌詞があるように、王道と言われる道を逸れて自分だけの道に進みたいけど、それが誰にも必要とされなかったら成り立たない。でも、みんなと同じ道を進むのは自分のやりたいことではないっていう、レフティさんの生き方自体にすごくシンパシーを感じて。その意味では、もしかしたらReoNaの音楽的な歩み自体も“オルタナティブ”だったということに、この曲を制作するなかで気づいたような気がします。
――なるほど。“絶望系アニソンシンガー”という看板自体、ある種、それまでのアニソンシンガー像のオルタナティブだったわけですものね。
ReoNa アニソンシンガー自体もオルタナティブな存在と言えるかもしれないですし、オルタナティブバンドは自分たちの楽曲に「オルタナティブ」とは付けないでしょうけど、ReoNaなら「オルタナティブ」という曲を歌えるよね、という話になって。なんだか“オルタナティブ”問答みたいになりましたけど(笑)。チームの間でも、「Let it Die」が出来た時に近い手応えを感じた、という話になりました。
――そして4曲目の「芥」は、傘村トータさんが書き下ろしたナンバー。FCイベント「ふあんくらぶ presents ReoNa Acoustic Concert Tour“ふあんぷらぐど2025”」で先んじて披露していましたが、音源版は島田昌典さんの編曲により宇宙を漂うような壮大さが加わっています。
ReoNa 実はこのお歌は、アルバムの話が始まる前からあったもので、絶対にこのアルバムに収録したいと思ってました。「芥」というのは、いわゆる塵芥(ちりあくた)のことで、すごくちっぽけで取るに足らないもの、という意味合いがあるんです。ReoNaはそういうゴミや塵のようなものにも向き合い続けてきた数年間だったと思うんです。ゴミって、つい数日前まで人の生活の中にあったものが、ゴミ袋に入った瞬間、ゴミに変わっていく。それって100%使う側の都合、人間の都合だと思うんです。
――なるほど、確かに。
ReoNa それが逆にすごく人間的なものだと思うし、生きていくうえでゴミを出さない人は絶対にいない。そんなゴミと言われるものに何かを重ねてしまったり、例えば「GG」では“ゴミのように 美しく”と表現したり、「Debris」ではゴミ屑みたいな命燃やしてくすぶったままでも生きていこうと歌ってきた。奇しくも、その果てで辿り着いたようなお歌だと思います。
――歌詞に“宇宙から見れば 人間も花も 僕も 星も芥”とあるように、宇宙規模で考えるとすべてがちっぽけで無意味かもしれないけど、そう感じた時に見えてくるものもある。“僕は独りだ”という言葉が刺さります。
ReoNa それこそ傘村トータ氏が書いてくださった「Someday」の先にあると思いますし、神崎エルザの「ALONE」で「僕たちはみんな1人なんだから、それってすごく自由じゃない?」と歌ってきたのに対して、この曲も孤独への寄り添いとう意味で通じる部分があると思います。このお歌、短いフレーズだけを切り取ると、苦しい瞬間や絶望が息づいているように思うのですが、それがなぜだか、自分や誰かを責めたりする形になっていないんですよね。武器でもないし、盾でもない。本当に傘のようなお歌だと思います。
――“塵のように 芥のように いつか僕等もきらきら光れ”という歌詞も、願いのようでもあるし、不思議な距離感がありますよね。
ReoNa そうなんです。己を吐露しているわけでも、誰かを励ましているわけでもなく。きっと、傘村トータ氏自身が、ふっと、そんな瞬間があったのかなと思っていて。多分その時の気持ちを模写するように書いたから、こもった魔力なのかなって、思います。
――島田さんのアレンジにはどんな印象をお持ちですか?
ReoNa 最初に傘村トータ氏が作ってくれた音源から、光に当てられて砂がキラキラしてるみたいな、まばたくような音色になっていて、私の歌い方もアコースティックライブの時とは違っていると思います。実はこの曲のレコーディングの時、私は喉の調子が100%ではなかったのですが、島田さんがお歌を録ってくださって、いざ歌ってみたら、ちゃんと歌うことができたんです。島田さんはどのテイクを使うか時間をかけて丁寧に選んでくださって、傘村トータ氏も「こんな声で歌ってもらえるとは思ってなかった。ありがとう」と言ってくれて。自分としてはブースに入るまで悔しい気持ちもありましたけど、このアルバムの中で一番自分の手を離れたお歌を歌うことができたので、島田さんと傘村トータ氏と一緒に描けた「芥」だったなと思います。
次ページ:“心”を見つめ続けた先で気づいた、『HEART』という器の大きさ
“心”を見つめ続けた先で気づいた、『HEART』という器の大きさ
――アルバムの9曲目「かたっぽの靴下」は、初顔合わせとなるシンガーソングライターの映秀。さんが詞曲を提供。どんなふうに制作を進めていきましたか?
ReoNa 他の新曲は各クリエイターの方にかなり委ねた側面がありましたが、映秀。さんはこのアルバムで初めて制作をご一緒する方だったので、今回で一番やり取りを重ねて作り上げたお歌になります。映秀。さん自身もアーティスト活動をされていて、ご自身の想いや伝えたいことを持っている方だと思うので、最初の打ち合わせの時点でそれを自由に出してもらっていいことをお伝えして。特に歌詞は「私、最近こんなことを思ってるんですけどどう思います?」みたいな何気ない会話を含め、何度もやり取りして書いていただきました。
――満たされない想いや心の空白を「かたっぽの靴下」に例えるモチーフがかわいらしいですよね。
ReoNa いいですよね。靴下がかたっぽ見つからないことは、ほとんどの人が経験したことがあると思うんですよ。「あれ?なんで右しかないんだろう」みたいな(笑)。そういう日常のよくあること、いつの間にか失くしてしまったかたっぽの靴下に心を重ねたお歌になっています。
――片方が見つからなくて不揃いの靴下が、いつの間にか愛おしく感じるという。
ReoNa そういうのを「悪くないかな」と歌えるのも、映秀。さんと共通する部分があったからなんだと思います。優しい感じの曲調もそうですし、映秀。さんのメロディと言葉がハマった時の気持ち良さがすごく感じられるお歌だと感じていて。歌う時も独り言と話しかけている中間みたいな感じを意識しました。今まで意外とこういう曲調はなかったので、まだ踏み出していない道を見つけた感覚があります。
――そしてアルバムの12曲目に置かれたのは、傘村トータさんが作詞・作曲、宮野幸子(SHANGRI-LA INC.)さんが編曲を担当したバラード「生命換装」。先日放送されたTVアニメ『アークナイツ【焔燼曙明/RISE FROM EMBER】』最終話の特殊EDテーマとしてサプライズでオンエアされて話題となりました。
ReoNa おかげさまで『アークナイツ』という作品との旅路も長くなってきたなかで、元々原作ゲームのユーザーだった私としては、今回のアニメの最終話がどんなシーンで締め括られるかを想像できていたので、絶対にこのシーンに似つかわしくないものにはしたくない、という一ファンとしての強い想いがありました。そこで傘村トータ氏はもちろん、編曲の宮野さんにも私から直接お話をさせてもらって。
――どんなイメージを伝えたのでしょうか?
ReoNa 一応、1つの大団円なのですが、その結末に辿り着くまでには、命を落としてしまった人、守り切れなかった人、色んな想いを抱えた人たちがいて。ロドスとレユニオン、和解はできなかったけど、戦いの終わりを迎えることができたなかで、そこに辿り着くことができなかった人たちと、そこから先の未来を歩んでいく人たち、その希望と絶望が同時に存在している場所に寄り添えるお歌にしたくて、想いを伝えました。『アークナイツ』チーム自体の思いもすごく強いので、傘村トータ氏も何度も書き直して試行錯誤をしたなかで完成したのが、このお歌になります。
――ピアノとストリングスの描き出す光景は夜明けのような美しさで、アニメ最終話のサブタイトル「黎明 Dawn」を彷彿させるものでした。
ReoNa 宮野さんは色々な作品の劇伴も制作されている方なので、やっぱり物語や映像と合わせて展開していく音楽の紡ぎ方はさすがだなと感じました。歌詞にも“私の守りたいものと あなたの守りたいものは もともとひとつの 光だったのに”とあるように、あの世界に生きる誰をも取りこぼさないように包んでくれるお歌になった気がしていて。私も誰1人取りこぼさず寄り添う思いで歌うことができました。
――そしてボーナストラックの「SWEET HURT -Naked–」を除き、今回のアルバムを締め括るのが、ReoNaさんのライブのバンドマスターを長らく務めている荒幡亮平さんが作曲・編曲、宮嶋淳子さんが作詞を手がけた「コ・コ・ロ」。ご夫婦でもあるお二人がReoNaさんに楽曲提供するのは「一番星」以来となります。
ReoNa 「一番星」の時に荒幡さんと色々お話したのですが、結構「あ、わかる」みたいな共通項があったんです。なおかつ私のすべてのワンマンライブを共に歩んできているので、ReoNaの道のりをちゃんと知ってくださっている。そして宮嶋さんは「一番星」で初めてご一緒したのですが、嬉しい恥ずかしい話なんですけど、荒幡家の中でReoNaの話題を出してくださることがたまにあるみたいで……晩酌しながら「ReoNaちゃんにはこういうカバー曲が合うかもね」みたいな(笑)。そんなお二人が『HEART』というテーマに向けて書いてくださった曲だからこそ、“心”を“あなた”に見立てたお歌になったんだと思います。
――おっしゃるとおり“心”を擬人化して描いたような曲ですが、自分自身の“心”との付き合い方について歌った曲のようにも感じていて。ReoNaさんは今、自分の“心”と上手く付き合えていますか?
ReoNa 私、本当に制御できないんですよね。自分の中でコントロールできない心の動きって、私の中では、小さい頃に満たされなかったものに対して大人になってから執着するからだと感じていて。そういう、自分の中にある傷ついた心や柔らかい部分みたいなものを、この曲を初めて受け取った時にイメージしたんです。自分では制御できない、絆創膏の貼りようもない古傷かもしれないけど、取り換えることやり直すこともできない。だから共に生きていこうっていう、すごく温かいお歌だと思います。
――シャッフル系のソウルフルで晴れやかな曲調を含め、すごくハートウォーミングな曲だと思います。レコーディングではどんな気持ちで歌いましたか?
ReoNa この曲の主人公が、なかなか見つけてもらえないかくれんぼでやっと最後に見つけてもらった瞬間の安心感、みたいなイメージはありました。ちなみに終盤の“ラララ ラララ…”というコーラスは荒幡さんの希望でバンドメンバーに歌ってもらいました。私はアルバム全体のバランスはあまり考えていなかったのですが、この曲があることによって『HEART』の器の大きさ、心の枠みたいなものをぐんと広げてくれた感じがして。荒幡夫婦からのお手紙みたいな印象があります。
――アルバムが完成した今、どんな手応えを感じていますか?
ReoNa このアルバムの制作に取り組む中で、心やハートについてたくさん考えましたけど、結果、一言では言い表せられないし、いまだにわからないものだなと感じていて。でも、わからないことがわかったし、そんなアルバムを私1人だけの結論や結果ではなく、関わってくださったクリエイターの皆さん全員のハートとして完成できて良かったです。
――最後に、11月からスタートするホールツアー「ReoNa ONE-MAN Concert Tour 2025 “HEART”」に向けての意気込みをお聞かせください。
ReoNa 絶望系アニソンシンガーとして歩んできた今までを軸足に置きつつ、ReoNaだけではできなかった一歩を、誰かと一緒に、色んな方向に踏み出したからこそできた、本当に『HEART』という言葉どおり、温かくて、優しくて、痛くて、冷たくて、色んな温度感や感情が詰まったアルバムになりました。このお歌がライブでどうなるのか、ぜひ会場まで見届けに来ていただきたいですし、私自身もこのお歌を同じ空間で受け取ってもらえることがすごく楽しみです。
●リリース情報ReoNa 3rdアルバム
『HEART』
2025年10月8日発売
【完全数量生産限定盤(CD+BD)】
品番:VVCL-2756~2757
価格:¥8,800(税込)
<BD>
『ReoNa ONE-MAN Live Tour 2025 “SQUAD JAM”』
-Live at KT Zepp Yokohama 2025.3.29-
1.GG
2.JAMMER
3.ANIMA
4.VITA
5.R.I.P.
6.生命線
7.Runaway
8.By myself
9.Game of Love
10.Girls Don’t Cry
11.Oh UnHappy Day
12.Toxic
13.Disorder
14.Independence
15.革命
16.Dancer in the Discord
17.ハレルヤ
18.YOU
19.Debris
『Music Video』
1.HEART -Music Video-
2.R.I.P. -Music Video-
3.ガジュマル ~Heaven in the Rain~ -Music Video-
4.オムライス -Music Video-
5.GG -Music Video-
6.Debris -Music Video-
7.End of Days -Music Video-
8.HEART -Lyric Video(London’s Heart)-
【初回生産限定盤(CD+BD)】
品番:VVCL-2758~2759
価格:¥4,400(税込)
<BD>
『Music Video』
1.HEART -Music Video-
2.R.I.P. -Music Video-
3.ガジュマル ~Heaven in the Rain~ -Music Video-
4.オムライス -Music Video-
5.GG -Music Video-
6.Debris -Music Video-
7.End of Days -Music Video-
8.HEART -Lyric Video(London’s Heart)-
【通常盤(CD)】
品番:VVCL-2760
価格:¥3,300(税込)
<CD>
1.HEART
作詞・作曲:ハヤシケイ(LIVE LAB.) 編曲:Ryo’LEFTY’Miyata
2.命という病
作詞・作曲・編曲:堀江晶太 Backing Vocal: 堀江晶太
3.オルタナティブ
作詞:Ryo’LEFTY’Miyata 作曲・編曲:Ryo’LEFTY’Miyata、TETSUYUKI、Haruka Kikuchi
4.芥
作詞・作曲:傘村トータ(LIVE LAB.) 編曲:島田昌典
5.GG(アニメ『ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンラインII』OPテーマ)
作詞:rui(fade)、ハヤシケイ(LIVE LAB.)、ReoNa 作曲:rui(fade) 編曲:rui(fade)、⽑蟹(LIVE LAB.)、Sugi from coldrain
6.Debris(ゲーム『SYNDUALITY Echo of Ada』テーマソング)
作詞:ハヤシケイ(LIVE LAB.) 作曲:毛蟹(LIVE LAB.) 編曲:堀江晶太 弦編曲:宮野幸子(SHANGRI-LA INC.)
7.ガジュマル ~Heaven in the Rain~(TVアニメ『シャングリラ・フロンティア』EDテーマ)
作詞:ReoNa、ハヤシケイ(LIVE LAB.) 作曲:毛蟹(LIVE LAB.) 編曲:Pan(LIVE LAB.)、宮野幸子(SHANGRI-LA INC.) 弦編曲:宮野幸子(SHANGRI-LA INC.)
8.R.I.P. (TVアニメ『アークナイツ【冬隠帰路/PERISH IN FROST】』EDテーマ)
作詞:ハヤシケイ(LIVE LAB.) 作曲・編曲:毛蟹(LIVE LAB.) ブラスアレンジ:宮野幸子(SHANGRI-LA INC.)
9.かたっぽの靴下
作詞・作曲:映秀。 編曲:kajiya
10.オムライス
作詞・作曲:傘村トータ(LIVE LAB.) 編曲:荒幡亮平
11.End of Days (TVアニメ『アークナイツ【焔燼曙明/RISE FROM EMBER】』OPテーマ)
作詞:ハヤシケイ(LIVE LAB.) 作曲:rui(fade)編曲:堀江晶太 弦編曲:宮野幸子(SHANGRI-LA INC.)
12.生命換装(TVアニメ『アークナイツ【焔燼曙明/RISE FROM EMBER】』最終話EDテーマ)
作詞・作曲:傘村トータ(LIVE LAB.) 編曲:宮野幸子(SHANGRI-LA INC.)
13.コ・コ・ロ
作詞:宮嶋淳子 作曲・編曲:荒幡亮平
Bonus Track. SWEET HURT -Naked-
作詞・作曲:ハヤシケイ(LIVE LAB.) 編曲:山口隆志
●ライブ情報
ReoNa ONE-MAN Concert Tour 2025 “HEART(ハート)”
11/21(金) 戸田市文化会館(埼玉) OPEN 17:30 / START 18:30
11/24(月・祝) フェニーチェ堺 大ホール(大阪) OPEN 17:00 / START 18:00
12/5(金) 福岡国際会議場(福岡) OPEN 18:00 / START 19:00
12/20(土) サッポロファクトリーホール(北海道) OPEN 17:00 / START 18:00
12/22(月) 昭和女子大学人見記念講堂(東京) OPEN 17:30 / START 18:30
12/27(土) 愛知県芸術劇場 大ホール(愛知) OPEN 17:00 / START 18:00
全席指定 ¥8,400(税込)
※6歳以上チケット必要
※未就学児童入場不可
関連リンク
ReoNa オフィシャルサイト
https://www.reona-reona.com/
ReoNaオフィシャルX
https://x.com/xoxleoxox
ReoNaオフィシャルX(スタッフ)
https://x.com/ReoNaStaff
ReoNaオフィシャルYouTube
https://www.youtube.com/channel/UCyUhtF50BuUjr2jOhxF3IjQ