【その他の画像・動画等を元記事で観る】
作曲家・澤野弘之の活動20周年を記念したライブイベント“澤野弘之 20th Anniversary Concert × Aniplex”が、9月23日、東京国際フォーラム ホールAにて開催された。これまでドラマ・映画・アニメーション・ゲームなど、様々なエンターテインメント作品の音楽を手がけてきた澤野だが、そのなかでもアニプレックスとは、2011年放送のTVアニメ『青の祓魔師』を皮切りに多くの作品で制作を共にし、数多くの名作を世に送り出してきた。
TEXT BY 北野 創
PHOTOGRAPHY BY 西槇太一
『青の祓魔師』や『ギルティクラウン』の名曲をオケ編成で続々披露!
澤野と言えば、ボーカルプロジェクトのSawanoHiroyuki[nZk]を含め、精力的にライブを行っているが、そのなかでも今回のように大編成のライブはひさびさだ。オーケストラは総勢25名から成る室屋光一郎ストリングスと藤田乙比古グループのホルン4管編成。バンドは飯室 博(Gt)、椿本匡賜(Gt)、田辺トシノ(Ba)、藤崎誠人(Dr.)、KOHTA YAMAMOTO(Synth)に澤野弘之(Pf)を加えたいつものメンバー。ステージには30名以上もの演奏者が常にいる状態で、生音だからこその迫力あるサウンドと、楽曲ごとに入れ代わり立ち代わり登場するゲストボーカリストたちの歌声、そしてスクリーンに投影されるアニメの映像が合わさることで、約2時間、最初から最後まで息つく暇もないほどのサウンドスケープが創出された。
会場が暗転し、客席から万雷の拍手が上がるなか、緊張感のあるオープニングSEと共に澤野弘之×アニプレックス作品の映像を使ったオープニングムービーが流れ、ライブへの没入感が一気に高まっていく。そしてステージ中央に黒いドレッシーな衣装を纏ったLaco(EOW)が登場すると、「eXORCiST」(TVアニメ『青の祓魔師』)をまるでオペラ歌手のように迫力のある高音で歌い上げて会場を圧倒。そして本日の主役・澤野弘之がステージに颯爽と登場してピアノの前に座ると、澤野ライブではオープニング曲としてよく披露されるラップ曲「Battle Scars」(『青の祓魔師 劇場版』)へ。ステージ前方に躍り出たLacoのパワフルなラップと楽器隊の壮大な演奏が、この後に続くライブに向けて弾みをつけていく。
そこから一転、エスニックな香りのするインスト曲「U & Cloud」(TVアニメ『青の祓魔師』)で音楽性の幅広さを示すと、ここで澤野がMCで改めて挨拶。「僕のMCが一つひとつの作品を台なしにするわけにはいかないので」と、以降はMCなしで音楽を届けることを宣言すると、続いてはTVアニメ『ギルティクラウン』のブロックに突入。SennaRinをボーカルに迎えた「βίος」では、サビでアニメの映像が流れるなか、チャントのようなコーラスと白く明滅する照明が神秘的なSF世界を描き出す。
その美しくも物悲しい余韻を断ち切るように、「斬LLLア生LL」の重厚なストリングスとものものしいリズムが立ち上がり、さらに「鬼龍G@キLL」へとメドレー形式で繋げてTVアニメ『キルラキル』の世界へ。ライトによって赤々と染まったステージが、血潮のように脈動する。纏 流子と鬼龍院皐月、永遠のライバルともいえる2人が対立するアニメのシーンも心を熱くさせる。そしてmizuki(UNIDOTS)が登場し「Blumenkranz」(TVアニメ『キルラキル』)を力強く歌唱。徐々にエモーショナルさを増していくような展開が心を静かに震わせる。
そのままmizukiがステージに残ると、澤野の弾くドラマチックなピアノの調べと共に「aLIEz」へ。SawanoHiroyuki[nZk]の1stシングル収録曲であり、TVアニメ『アルドノア・ゼロ』第1クールのエンディングを彩った、澤野弘之×mizukiを代表する1曲だ。近年もライブで披露される機会は多いが、やはり生のオーケストラの演奏が加わると迫力が違う。アニメの映像の効果も相まってより深みのある「aLIEz」に感じられた。さらにAimee Blackschlegerが登場すると、『アルドノア・ゼロ』の物語の後半を彩った「No differences」へ。オーディエンスもクラップして体を揺らせながら彼女のパワフルな歌声に応え、明け行く空の景色を映したスクリーン映像と共に心をひとつにしていく。
続いてはTVアニメ『七つの大罪』のコーナー。雄大かつ緊迫感の走る「銅鑼Gong4N」から自然の険しさと美しさを音で描き出したような「7角:the1」の劇伴曲メドレーが、会場にファンタジックな風を呼び込むなか、黒いハットを被った吟遊詩人のような風貌のmpiがステージに登場し、「Perfect Time」に突入。語りのようなA・Bメロから一気にエネルギーを放出するサビ、そして彼と逆サイドに登場したLacoとのツインボーカルに移行して一気に駆け抜けていく様が、スクリーンに映し出された七つの大罪たちの戦いのシーン、特にメリオダスとエリザベスの関係性を思わせて胸が熱くなる。
薄暗くなったステージに夜の帳が降り、神秘的でどこか不穏なシンセ音から立ち上がったのは、TVアニメ『甲鉄城のカバネリ』の世界。オーケストラの重々しいサウンドが「KABANERIOFTHEIRONFORTRESS」の美しくも過酷な運命を感じさせるメロディを奏でると、楽曲の後半でスパンコールが煌めく衣装を着たElianaがステージに登場。あらゆる不安も不浄も吹き飛ばすエネルギッシュなボーカルを会場中に響き渡らせる。その壮大なオーケストラの世界から一転、バンドによる演奏で熱くロックに迫ったのが「Through My Blood」。引き続きElianaが朗々とした声で歌い上げ、血塗られた運命に立ち向かう『カバネリ』の登場人物たちの心情を代弁した。
『Fate/strange Fake』からの未発表音源もいち早く披露!
ここまでアニメ作品の楽曲中心だったが、澤野とアニプレックスの座組みで忘れてはならないのが、日本と台湾の共同制作によるTV人形劇『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』シリーズ。TVシリーズは4期を数え、劇場作品も公開された人気作だが、普段の澤野のライブで関連曲が演奏される機会はそう多くはない。だが、今回は作品ファンにはお馴染みのメインテーマ「thunderBOLTfantasy」を、オリジナル音源と同じmpiにBenjaminが加わったツインボーカル編成で披露。オケの演奏と合わさってより熱く勇壮になった楽曲が天を突く。
ここでTVアニメ『青の祓魔師 京都不浄王篇』のアニメーション映像が流れ始め、重々しく幻想的な「BLUe-eXOSUiTe-toKYOto-弌」から美しく凛々しいクライマックスへと誘う「BLUe-eXOSUiTe-toKYOto-志」のメドレーが、奥村兄弟の宿命の重さ、それに抗って夜明けを目指そうとする絆の尊さを描写。
アニメの放送終了から5年経った今も根強い人気を誇るTVアニメ『86―エイティシックス―』のブロックでは、まずLacoがステージに現れて人気の高いボーカル曲「THE ANSWER」を歌唱。彼女が歌うオリジナル音源以上に気持ちの乗ったアグレッシブなボーカル、バンドの熱を帯びた演奏と澤野のリリカルなピアノの対比がエモーショナルな感情を引き出す。そしてmizukiが登場すると、SawanoHiroyuki[nZk]名義による第1クールのEDテーマ「Avid」へ。胸が押しつぶされそうになるほどの哀しみを湛えたメロディ、mizukiの感情豊かな歌声と楽器陣の重厚で美しい演奏、スクリーンに投影されるアニメの映像が会場を感動で満たしていく。
その切ない風景を心湧きたつ景色に塗り替えたのが映画『プロメア』の音楽。Benjaminとmpiがステージに並び立つと「PROMARETHEME」を力強い二重唱で届け、最後はガロとリオがグーパンを合わせるシーンで締め。代わってXAIがステージに登場すると、灰のように揺らめく美しくも幻想的な調べに乗せて「ΛSHES」を歌唱。時にフェイクを挿みながら華麗で力強い歌を聴かせる。
再びXAIがステージに登場して歌ったのは、TVアニメ『群青のファンファーレ』より雄大なバラード「Roads to Ride」。先ほどのどこか幽玄めいた歌声とは異なり、生命力と包容力を感じさせるボーカルが会場中に広がって、希望の暁を描写する。そんな美麗な景色から一転、オーケストラが「SymphonicSuite-Lv.2」の濃厚な音を奏で始めると、TVアニメ『俺だけレベルアップな件』の世界へ。そこからさらに重たく暗鬱としたボーカル曲「H∅WL」に繋げると、ステージに登場したAimee Blackschlegerがパンチの効いたボーカルで聴く者を闇落ちさせる。そしてスクリーンに十字の光が浮かぶなか、XAIが神聖さと闇の両方を湛えた人気曲「DARK ARIA」を歌唱すると、続けてSennaRinが安寧と救済を感じさせる「REVIVƎЯ」を披露。バックにはアニメで同楽曲が流れたのと同じシーンだけでなく、人々の命を感じさせる印象的なカットが流れ、SennaRinの歌がまるで鎮魂のように響いた。
そしてSennaRinがそのままステージに残り、澤野がプロデュース/楽曲提供した彼女の楽曲「KONTINUUM」(アニメ『TO BE HERO X』EDテーマ)へ。先ほどのホーリーな歌い口とは異なる、激情を宿した力強いボーカルが、赤と青を対照的に用いたライト演出と共に『TO BE HERO X』の世界観を表現する。そこからストリングスの輝きに満ちた音色で新たに幕を開けたのが、2026年1月よりTVアニメの放送がスタートする『Fate/strange Fake』の楽曲世界。先に公開されたアニメ『Fate/strange Fake -Whispers of Dawn-』よりメインテーマ「STRANGEFAKE」、そしてBenjaminが歌うメタルラップ調の「BITE DOWN」を立て続け、緩急の効いた演奏に会場は熱狂で応える。
ここまでほぼノンストップで駆け抜けた澤野と演奏陣だが、早くもライブ本編ラストの楽曲に。
その後、会場からのアンコールの拍手に応え、澤野とバンドメンバーが再びステージに上がってスタンバイすると、まるで心音のような不穏なリズムが流れ出し、この日の出演は告知されていなかったNewspeakのボーカル・ Reiが特別ゲストとして登場。彼が歌唱を担当するSawanoHiroyuki[nZk]の最新曲「INERTIA」(アニメ『TO BE HERO X』OPテーマ)を披露する。会場中が手拍子して盛り上がるなか、Reiのタフで逞しいボーカルとバンドによるダークかつ勇ましい演奏が、ライブのラストをヒロイックに締め括った。
澤野が初めてアニプレックスとタッグを組んだ『青の祓魔師』から、来年にアニメの放送がスタートする最新作『Fate/strange Fake』まで、ほぼ時系列順で楽曲を届けることで、アニプレックス作品におけるこれまでの歩みと今後の新たな展開を示した今回のライブ。近年は劇伴作家による音楽コンサートも増えて盛り上がりを見せるなかで、作曲家活動20周年を迎えた澤野にとっても意義深いライブになったのは間違いない。残念ながら会場に足を運ぶことのできなかった人は、Stagecrowdにて10月20日より有料配信が決定しているので、ぜひチェックしてほしい。
“澤野弘之 20th Anniversary Concert × Aniplex”
9月23日(火・祝)東京国際フォーラム ホールA
<セットリスト>
01. eXORCiST~Battle Scars(Vo. Laco)
02. U & Cloud
03. βίος(Vo. SennaRin)
04. Release My Soul(Vo. Aimee Blackschleger)
05. 新LLLア生LL~鬼能G@キLL
06. Blumenkranz(Vo. mizuki)
07. aLIEz(Vo. mizuki)
08. No differences(Vo. Aimee Blackschleger)
09. 銅鑼Gong4N~7角:the1
10. Perfect Time(Vo. mpi & Laco)
11. KABANERIOFTHEIRONFORTRESS(Vo. Eliana)
12. Through My Blood(Vo. Eliana)
13. thunderBOLTfantasy(Vo. Benjamin & mpi)
14. BLUe-eXOSUiTe-toKYOto-弌~BLUe-eXOSUiTe-toKYOto-志
15. rE:CRe@TORS~AL:Lu(Vo. Eliana)
16. THE ANSWER(Vo. Laco)
17. Avid(Vo. mizuki)
18. PROMARETHEME(Vo. Benjamin & mpi)
19. ΛSHES~PRO//MARE(Vo. XAI)
20. Roads to Ride(Vo. XAI)
21. SymphonicSuite-Lv.2~H∅WL(Vo. Aimee Blackschleger)
22. DARK ARIA~REVIVƎЯ(Vo. XAI/Vo.SennaRin)
23. KONTINUUM(Vo. SennaRin)
24. STRANGEFAKE~BITE DOWN(Vo. Benjamin)
25. FsF-sABer~red(Vo. Laco)
26. INERTIA(Vo. Rei)
『澤野弘之 20th Anniversary Concert × Aniplex』有料配信
9/23(火・祝)に開催された『澤野弘之 20th Anniversary Concert × Aniplex』がStagecrowdにて10月20日(月)に配信
視聴チケット購入
https://stagecrowd.live/SawanoHiroyuki_20th-Anniversary/
販売期間 2025年9月23日(火)19:00~2025年10月27日(月)20:00まで
関連リンク
澤野弘之オフィシャルサイト
http://www.sawanohiroyuki.com/