【エッセイ連載】「伊藤美来のmoi!」第17回:いとう家ピノ...の画像はこちら >>

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声優アーティスト・伊藤美来が日常で感じたことを切り取り、私らしく文章にしていくエッセイ連載「伊藤美来のmoi!」。

「初めましての方や応援してくれている方にも、表面的な私だけではなく自分の頭の中を見てもらう気持ちで書いていきたい。

“伊藤美来”がどんな人間か知ってほしい」。
そんなオモイを込めて言葉を綴っていきます。

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私の家族にはピノという名のトイプードルがいる。目に入れても痛くないほど可愛いとはこのこと。人は大好きだけど犬同士のコミュニケーションは苦手な女の子。家族みんなを癒し、生きる元気を与えてくれる子。そんなピノと私はどうやって家族になったのか。

伊藤家は犬とはまったく無縁の家族だった。正直誰も犬を飼うことに興味もなかった。学校へ行くときに散歩をしている犬を見かけることはあったが、触らせてくださいなんて言ったこともないし、「あ、散歩してるー」くらいにしか思わなかった。ただ別に嫌いというわけでもない。けれど、私はあまり犬に好かれるタイプじゃなかった。

触る犬がみんな、なんかちょっと嫌そうというか居心地が悪そうなだった、気のせいかもしれないけれど。そして伊藤家が犬を飼わない最大の理由は、母が犬が苦手だったからだ。あと弟(長男)も。母の犬嫌いはよく聞いていた。昔、父のサーフィンで海に行ったとき、駐車場で1人お弁当を食べていたところ黒くて大きな犬に絡まれたんだとか。すぐに人が来て怪我をすることはなかったらしいが、その事件がトラウマらしい。長男はそもそも猫アレルギーがあり、犬は本来平気なのだがもふもふ動物が怖いそう。父も次男も嫌いではないが一度も犬と生活したことはなく、私と同じく興味が薄かった。さて、そんな伊藤家がなぜピノを飼うことになったのかというと……私が出会ってしまったからである。

ちょうどコロナが明け始め、世間も仕事が始まりつつあった頃。私はとても荒んでいた。いつまたこんな悲しく苦しい出来事があるかわからない、恐怖と隣り合わせの世界に絶望していた。

少しでも気を紛らわせようと、よく動画を見て現実逃避をしていた。そのなかでハマっていたのがトイプードルの兄妹の動画。最初は「そんな犬との生活をわざわざ動画にしなくても……」と斜に構えていたが、観始めるとニヤニヤが止まらない。犬ってこんなにも表情豊かで、愛情表現に長けているのか。何を考えてるのか素人の私でもなんとなくわかる。きっと大変なことも多いだろうが、その動画には飼い主さんも含めて幸せしか存在していなかった。初めて私に「犬と一緒に暮らしてみたい」という願望が生まれた。それからは家で飼えないとわかってはいるものの、頻繁にネットでブリーダーのサイトを開き、ワンちゃんとの生活を夢見ていた。妄想するくらいいいだろうとほぼ毎日観ていたそのサイトに、ひときわキュルンキュルンなトイプードルが現れた。それがピノ。小さくて丸くてぬいぐるみかのようにふわふわ。この子に会いたい!どうしても会いたい。
いや……どうせウチは飼えないし、会ったら絶対に家族にしたくなるのはわかってる。でも伊藤家の人間が賛成するとは思えない。いつかもっといいタイミングが来るかも。諦めないと……そう思えば思うほど会いたくなる。だってその”いつか”っていつ来るわけ?そのときにはもうこの子はいない。それはいやだ!これは恋だ。この子は女の子だけど、私はこの子に会いたくてしょうがない。しかもいつまた急な変化が訪れるかわからないこの時代。今、目の前にある出会いを疎かにしてはいけない。よし、この子を迎える気持ちで完璧な準備とシミュレーションをしておこう。懸念点は全部洗い出して解決し、命を迎える心構えを持ったうえで家族に相談。その後みんなで会いに行こう。
自分の意思を固めるため、そして絶対会いたいという気持ちも込めて、すぐにブリーダーさんに連絡した。私のスケジュールもあり少し先になってしまったが約束を取り付けることができた。

面会当日。日差しが強く蒸し暑い日だった。家族総出で(長男以外)その子がいる場所まで車で向かう。全員が初めてのことに車内にも緊張が走っていた。特に母から。ブリーダーさんの施設に着くと、すぐに見つけた。その子は私が想像していたよりも小さく、とてもおとなしかった。犬嫌いの母も抱っこして「小さい……」と何かを噛み締めていた。ブリーダーさん曰く、この子に会いたいと来た人が私の前に何組か来ていたらしい。なぜこの子がまだここにいるのか聞くと「一番早くに連絡をくれた伊藤さんにはちゃんと会ってもらいたいと思って」と……。

あのとき、決断を諦めなくて本当によかった。待っててくれたんだね。一緒に帰ろうね、私が幸せにするからね。帰りの車内では、母はまだ家族に迎える自信がないようだったがここは多少の強引さも必要だと思い、さっきあの子にあったときの感想を言い続け、「みくが世話するなら」とお迎えの許しを得た。

今となっては犬嫌いだった母は、ピノの毛繕いなどのお世話全般を笑顔で担当している。伊藤家では今まで流れたことのなかった動物番組が毎週録画されていたのには驚いた。父は毎朝お散歩に行き、ピノの朝ごはんを作っている。弟たちもこんな顔するの?というくらい毎日デレデレだ。私はというと、ピノが不自由なく暮らせるように外でお仕事頑張っている!ピノがうちに来てからいろんなことが変わったけど、すべてが愛おしい思い出だ。ピノもあっという間に年を重ねてきた。最後の最後までピノには幸せでいてもらわなければならない。あーこの家の子で楽しい犬生だったなぁと、ピノの自慢の飼い主になることが目標だ。

今日もご機嫌なピノ。たまには私の買ってきたお洋服、嫌がらずに着てね。

▼ピノトリミングまるまるバージョン◎

関連リンク

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