「アイドルマスター シャイニーカラーズ」のライブイベント“THE IDOLM@STER SHINY COLORS 3rdLIVE TOUR PIECE ON PLANET / TOKYO” DAY2が2021年4月25日、オンライン配信で開催された。会場はDAY1と同じ東京ガーデンシアターだ。


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DAY2にはイルミネーションスターズより櫻木真乃役の関根 瞳、八宮めぐる役の峯田茉優、アンティーカより月岡恋鐘役の礒部花凜、田中摩美々役の菅沼千紗、白瀬咲耶役の八巻アンナ、三峰結華役の成海瑠奈、幽谷霧子役の結名美月、放課後クライマックスガールズより小宮果穂役の河野ひより、西城樹里役の永井真里子、杜野凛世役の丸岡和佳奈、有栖川夏葉役の涼本あきほ、アルストロメリアより大崎甘奈役の黒木ほの香、大崎甜花役の前川涼子、ストレイライトより芹沢あさひ役の田中有紀、黛 冬優子役の幸村恵理、和泉愛依役の北原沙弥香、ノクチルより浅倉 透役の和久井 優、樋口円香役の土屋李央、福丸小糸役の田嶌紗蘭、市川雛菜役の岡咲美保が出演。アンコールにはDAY1に続き、新ユニット・SHHisより七草にちか役の紫月杏朱彩、緋田美琴役の山根 綺が登場した。

あまり楽しい話ではないが、後の記録のために書いておこう。ライブ直前となるDAY1の前日(2021年4月23日)に、新型コロナウイルスによる緊急事態宣言が東京を含む4都府県を対象に発令された。都内での大規模イベントは“4月25日より”原則無観客での開催が強く要請された。DAY1は紙一重の差で予定通り実施できたが、DAY2は前日の段階で無観客配信への切り替えが発表された。現地チケットを手に楽しみにしていたプロデューサーたちはもちろん、長い雌伏の時間の間、現地ライブツアーに向けた準備を重ねてきた関係者にとっても断腸の思いだろう。DAY2の開演は予定より遅れることになったが、本来予定されていた構成通りにライブを行なうと発表された時にはほっとした。

救いと言っていいのかはわからないが、昨年11月に開催されたオンライン配信ライブ(番組)「THE IDOLM@STER SHINY COLORS MUSIC DAWN」の制作や、これまでの公演でオンライン配信を強く意識したライブを作ってきたことで、「シャイニーカラーズ」ライブチームには映像配信ライブに関するノウハウが蓄積されている。あらゆる可能性に備えてきた日々がなければ、突然の決定でこれだけのクオリティの配信ライブに切り替えることはできなかっただろう。

開演前映像では、283プロダクションの天井努社長と、事務員七草はづきによる挨拶が行われた。天井社長がツアーの折り返しをねぎらったり、はづきさんが社長のものまねをしたりの内容だったが、諸注意の中で「今回のライブはオンライン配信での開催となります」とDAY1とは違うフレーズが入ってきたことには驚かされた。


これまでの公演でも演者がカメラ位置と、その向こうにいるプロデューサーの存在をしっかりと意識しながらパフォーマンスを行なってきたこともあり、ライブ本編は大きな違和感なく楽しむことができた。AR演出もその一助となっており、カメラが引いた映像になると、客席では仮想のサイリウムが揺れていた。「MUSIC DAWN」では各座席に遠隔操作ライトを据えつける最新かつアナログな仕掛けだっただけに、これは新しい見せ方だ。

無観客を強く意識したのはやはりMCの時間だ。DAY1まで存在したプロデューサーたちの拍手によるレスポンスがどれほど心強かったかがよくわかる。誰もが不安な状況の中、開演を待ってくれたプロデューサーたちに感謝し、「私たちは元気いっぱいで頑張りますのでどうぞよろしくお願いします!」と笑顔で宣言した関根の姿が本当に頼もしい。最初の挨拶タイムでは挨拶を終えたユニットから準備のためにステージを降りていくのだが、最後にノクチルだけが残って共演ユニットの反応や息遣いが消えると、反響音がより大きく響いて、広い宇宙で4人っぽっちのように錯覚する。フリートークがはじまると声を張ってテンションを上げていく4人。キューブスクリーンに表示される全国のプロデューサーたちのコメントに歓声を上げながら、ノクチルは仲間たちの準備の時間を見事に支えてみせた。

ここからは、東京公演DAY2ならではと感じた要素を中心にレポートしていく。

無観客という特殊な環境で無類の強さを発揮したのが、河野ひより、永井真里子、丸岡和佳奈、涼本あきほの4人体制の放課後クライマックスガールズだ。河野ひよりというスペシャルな表現者の存在の揺るがなさや、太陽のような輝きは逆境でこそ際立つ。
「学祭革命夜明け前」は本来会場のコールの大合唱を前提とした楽曲だが、だったらその分声を出す、無観客の会場を4人のエネルギーで満たしてみせるという強い覚悟と決意を感じる。ラストの「跳べ 跳べ 跳べ 跳べ Yeah」の悲鳴のように突き抜けたテンション感。見ている側が勇気をもらえて何故か泣けてくるようで、放課後クライマックスガールズの本質が見えてきた気がした。

ステージ上で完結された世界を創り上げて魅せる劇場型のパフォーマンスという意味で、アンティーカもオンラインに強いユニットと言えるかもしれない。対となる“黒と白”の世界は、ツアーを折り返してより世界の深度を増しつつある。「シャイニーカラーズ」の配信映像を見ていて感じるのは、別日に行われる同じ楽曲のパフォーマンスを、映像としてどう違いを出して見るものを楽しませるか、という意図の存在だ。たとえば「Black Reverie」での菅沼の“今 合った 貴方の瞳”のフレーズ。DAY1の映像からはカメラと視線を合わせる前に、目を伏せる“溜め”を作ることで、“今、視線が合った”感覚を生み出していることが伝わってきた。DAY2は少し引いたあおり気味の映像で腰を中心としたダンスの円の動きにフォーカスしているように感じた。

ストレイライト、特に「Destined Rival」も配信向けの楽曲かもしれない。紅と白のキューブが会場の空間を満たし、客席にも仮想の“フロア”を敷き詰める。現実と切り離された空間演出はカメラ越しに最大の効果を発揮するものだ。
注目したいのは間奏終わりのダンスソロパートが東京公演向けにアレンジされていたことと、各人のダンスの魅力と見せ場をメンバー同士がきっちりと把握していたこと。それだけ、一緒に練習しながらお互いの努力や工夫をよく見ているのだろう。幸村の「(北原のソロダンスでの)しゃがんでるやつやって」というリクエストに北原が応えたことで、あの動きは“気になる!? 染めちゃう!?”和泉愛依のキメポーズを意識したものかもしれないと気づくことができた。

本公演参加組で一番新しいユニットであるノクチルは、このツアーで一番成長を感じられるユニットであると思う。そして東京DAY2は、その中でも田嶌紗蘭こそ誰よりも頑張って成長した人かもしれない、と思えるものだった。それぐらいこの日の彼女のボーカルと表現両面での仕上がりは良かったと思う。そうなると四人のバランスも微妙に変わってくるのが幼なじみモチーフのユニットの面白いところ。

「いつだって僕らは」で2対2で向かい合ってパフォーマンスするくだりで、DAY1は和久井と土屋の声なきコミュニケーションが印象的だったが、DAY2は田嶌と岡咲の掛け合いがより印象に残った。田嶌のベースとなるパフォーマンスがぐっと安定したからこそ、“なんだって出来るよ”で振り絞るように込める感情が引き立つし、岡咲の表現豊かな“一人じゃないから”の返しとのコミュニケーションが際立つ。小糸がなんだってできると叫び、雛菜が一人じゃないと返す、なんてすごいやりとりだろうと改めて感じるくだりだった。

アルストロメリアは本公演では桑山千雪役の芝崎典子が不参加で、黒木ほの香と前川涼子、大崎姉妹を演じるふたりによるデュオバージョンのアルストロメリアとして初めてステージに立つことになった。歌いながらのすれ違いなどでも、トリオバージョンとは違う動きを工夫していることがわかる。
そして特記しておきたいのが前川の覚醒と言ってもいいほどのパフォーマンスだ。「ダブル・イフェクト」の“舞い降りるから”のフレーズでの大輪の花のように咲く笑顔にも予兆があったが、「Anniversary」での歌声も表情もつよくて優しい、つつみこむような甜花の表現は初めて見る姿だったかもしれない。「甜花、つよい!」の台詞が飛び出したのがDAY1の開幕だったことからも、それが東京公演全体を通した彼女のテーマだったのかもしれないと感じた。黒木が千雪パートのキーフレーズである“束ねては 贈る ひとひら”の歌と特徴的な振付を担当する時には、特別な想いがこもっていることが伝わってきた。三位一体がアルストロメリアの魅力であるからこそ、この公演の映像は折にふれて見返したいものになる気がする。歌うふたりの手元には、最初芝崎が提案したという3人おそろいの指輪が光っていた。

今回もデュオバージョンの「Twinkle way」と「Happy Funny Lucky」でユニットタイムの最初と最後の要を務めたイルミネーションスターズ。関根が笑いかけ、峯田が表情豊かに歌いかける向こうにプロデューサーの存在と温度をたしかに感じる気がする。そして「シャイニーカラーズ」を象徴するユニットとしてのキラキラの存在感とパフォーマンスの安定感に対する信頼と安心があったからこそ、関根が締めの挨拶で泣きじゃくりながら、仲間やプロデューサーの存在の特別さと感謝を伝える姿には驚いたし、胸に迫るものがあった。彼女の笑顔が当たり前の物ではなく、「泣かない強い人でありたい」という強い決意と覚悟とともにあることを覚えておきたい。

公演ごとに顔ぶれが変わるソロ楽曲ブロックは、涼本あきほの「Damascus Cocktail」からスタート。カメラに背中を向けて登場した涼本は、情熱的なイントロにぴったりのダンスで魅せる。
放課後クライマックスガールズにおける夏葉が、無敵の5人の中ではしゃいで弾けてみせる姿だとすれば、「Damascus Cocktail」で表現されるのは等身大の有栖川夏葉に近く思える。吐息混じりの“見せてあげるわ”からニュアンス重視のダンスで見せたつややかさは新境地と言ってもいいものだった。MCでの涼本の「力強い歌詞に、夏葉の強いだけじゃない甘い歌声が混ざってカクテルみたいになってる」という的確な表現の美しさも記憶したい。

岡咲美保は「あおぞらサイダー」を披露。背を向けた岡咲が頭上でキュートに開閉する手のひらが、耳に心地よいコーラスと共に炭酸の泡がぱっとさわやかにはじける様子を表現する。1番では“聞いてる?”“知りたい?”とちょっとわがままで小悪魔的な問いかけになっているAメロが、2番では“あれ?”“今日すっごく楽しかった!”と喜怒哀楽が洪水のようにあふれるフレーズに変わる。「すっごく楽しかった」のはじけるような台詞の中には刹那のウィンクが織り込まれ、躍動する“最近たくさん頑張ったから”のフレーズはCD音源以上にはっちゃけた感じにアレンジ。そこに表出されている感情やテンションの方向性は明確なのに、その奥にある真実はなかなか見通せない……という市川雛菜そのものを体現するようなパフォーマンスだ。歌い終えた岡咲の「リハーサルだと正直余裕かも? わたしつよい! って思ってたのに、本番って緊張するんだね!」という言葉も雛菜らしさ満点だった。

成海瑠奈は「プラスチック・アンブレラ」を披露。成海が演じる三峰結華は一見軽妙でつきあいやすい人物像の奥に、とても複雑でセンシティブな想いを抱えている少女だ。東京公演で髪を下ろしてストレートヘアーにした成海の姿は、“NOT≠EQUAL”の三峰結華を思い出させる。


降りしきる雨の演出の中、アンティーク調の檻のような装飾をほどこしたビニール傘を差した成海がステージに登場。アンティーカのゴシックな衣装とのとりあわせが不思議な非日常感をかもしだしている。メロディアスで壮大なサウンドの中、独白のように語られる三峰結華という少女の想い。“わかってほしい”“わかられたくない”“わからないでいてね”の3連でなんとも言えない笑みを浮かべ、その笑顔の色がすっと消える流れは成海ならではの一流の感情表現だ。転調後、歌詞の流れに合わせて傘を閉じると、傘をステッキに見立ててダンス。やがて再び傘を差した小さな影の向こうには、雨上がりの虹がかかる。憂いの気配はそのままに、しかし美しい余韻が残るラストだった。

関根瞳は「ありったけの輝きで」を披露。まずは曲の並びの話をすると、どこか影の残る空に雨上がりの虹がかかって終わった「プラスチック・アンブレラ」のあとに、キラキラの虹に包まれた街で“もう傘はいらない気がしてる”と歌う「ありったけの輝きで」を歌う構成が見事だ。「プラスチック・アンブレラ」のどこか宙に浮いた(だからこそ美しい)余韻を、別の楽曲が放つ輝きで回収してみせた。

まっすぐに王道を行き、輝きで世界を満たすパフォーマンスが最後に控えてくれているという安心感は、関根と真乃が283プロダクションという場所で担う役割とどこか重なるものだ。そして関根が明るく素直で誰からも愛される櫻木真乃像を全身で体現しているからこそ、ラスト前の転調部で、真乃がかつての臆病な自分を思い起こす歌詞を歌う時の少し切なげな表情がさらに印象的になる。そこから再び大輪の笑顔を取り戻し、ありったけの輝きとともにステージを締めくくるのだが、ライブ終わりの関根の涙と想いを知ってから見返すと、また違った感慨を覚えるパフォーマンスだった。歌い終えた関根は、真乃の誕生日に大切なソロ曲を歌えた喜びを語っていた。

アンコールでは、スクリーンに全国のプロデューサーたちの声なき呼び声があふれる中、七色のユニットになった283プロのアイドルたちが再び登場。そこには前日に続き、新ユニット・SHHisより七草にちか役の紫月杏朱彩、緋田美琴役の山根 綺の姿があった。「Resonance+」の冒頭でアイドル(キャラクター)イラストとともに映し出されたふたりは、髪型や雰囲気を含めてにちかと美琴をよく再現している。サビの「だから精一杯の声を」のフレーズで生き生きと舞う山根の姿が印象的で、いつか作品の世界の美琴もこんな風に自由に、仲間たちとステージで躍動してほしいと感じた。

初ステージの2日目に立つふたりを見ていると、前日のお披露目だけでも有観客で迎えることができたささいなタイミングのいたずらに、少しだけ感謝したくなった。雪のイベントが、嵐のライブがいつしか忘れられない記憶になるように、22人が支え合って作り上げた無人のライブが、いつか大切な思い出になることを願いたい。

Text by 中里キリ

THE IDOLM@STER SHINY COLORS 3rdLIVE TOUR PIECE ON PLANET / TOKYO DAY2
2021.4.25 東京ガーデンホール
<セットリスト>

M01:リフレクトサイン(Team.Luna/菅沼千紗、成海瑠奈、結名美月、丸岡和佳奈、前川涼子、北原沙弥香、田嶌紗蘭)
M02:プラニスフィア ~planisphere~(Team.Stella/関根 瞳、礒部花凜、河野ひより、黒木ほの香、田中有紀、土屋李央)
M03:SOLAR WAY(Team.Sol/峯田茉優、八巻アンナ、永井真里子、涼本あきほ、幸村恵理、和久井 優、岡咲美保)
M04:Spread the Wings!!(シャイニーカラーズ)
M05:Twinkle way(イルミネーションスターズ/関根 瞳、峯田茉優)
M06:ダブル・イフェクト(アルストロメリア/黒木ほの香、前川涼子)
M07:五ツ座流星群(放課後クライマックスガールズ/河野ひより、永井真里子、丸岡和佳奈、涼本あきほ)
M08:Black Reverie(アンティーカ/礒部花凜、菅沼千紗、八巻アンナ、成海瑠奈、結名美月)
M09:Hide & Attack(ストレイライト/田中有紀、幸村恵理、北原沙弥香)
M10:いつだって僕らは(ノクチル/和久井 優、土屋李央、田嶌紗蘭、岡咲美保)
M11:純白トロイメライ(アンティーカ(礒部花凜、菅沼千紗、八巻アンナ、成海瑠奈、結名美月)
M12:Anniversary(アルストロメリア/黒木ほの香、前川涼子)
M13:あの花のように(ノクチル/和久井 優、土屋李央、田嶌紗蘭、岡咲美保)
M14:Damascus Cocktail(有栖川夏葉(CV.涼本あきほ))※以下、ソロ曲は公式表記による
M15:あおぞらサイダー(市川雛菜(CV.岡咲美保))
M16:プラスチック・アンブレラ(三峰結華(CV.成海瑠奈))
M17:ありったけの輝きで(櫻木真乃(CV.関根 瞳))
M18:Destined Rival(ストレイライト/田中有紀、幸村恵理、北原沙弥香)
M19:学祭革命夜明け前(放課後クライマックスガールズ/河野ひより、永井真里子、丸岡和佳奈、涼本あきほ)
M20:Happy Funny Lucky(イルミネーションスターズ/関根 瞳、峯田茉優)
M21:Multicolored Sky(シャイニーカラーズ)
-ENCORE-
EN1:Resonance+(シャイニーカラーズ)
EN2:Color Days(シャイニーカラーズ)
EN3:Dye the sky.(シャイニーカラーズ)

(C)BANDAI NAMCO Entertainment Inc.


関連リンク
「アイドルマスター シャイニーカラーズ」公式サイト
https://shinycolors.idolmaster.jp/
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