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声優として活躍するなか、シンガーソングライターとしても着実にキャリアを積んでいる楠木ともりが、アーティスト活動5周年という節目のタイミングで、2ndアルバム『LANDERBLUE』を完成させた。アルバム収録の11曲中6曲が新曲。
INTERVIEW & TEXT BY 北野 創
“あなた”のためのお守りになるようなアルバムを目指して
――まずはニューアルバム『LANDERBLUE』の制作の起点についてお聞かせください。当初はどんな青写真を描いていたのでしょうか?
楠木ともり 前作の1stアルバム『PRESENCE / ABSENCE』がコンセプトのはっきりした、2枚組という少し変わった形式の作品だったので、それに続く2ndアルバムはどういうパッケージにしていくか、ある程度考えなくてはいけないなと思っていました。そんな時に、ちょうど自分がアーティスト活動5周年という節目にリリースできることになったので、アーティストとしてだけでなく、人として歩んできた中での5年という切り取り方をしたいなと思ったんです。そこで真っ先にモチーフとして浮かんだのが誕生石でした。
――楠木さんの誕生日は12月22日なので、誕生石はターコイズになります。
楠木 ターコイズは、天然石のなかでも色味があまりクリアではなく、どこか濁りがあったり、スパイダーウェブと呼ばれる模様があったりして、その綺麗すぎない感じが昔から好きなんです。それに前作のテーマは「PRESENCE」と「ABSENCE」という概念的なものだったので、今回はそれよりもっとわかりやすいものがいいなと思った時に、アルバムのモチーフにピッタリだなと思って。誕生石は自分の生まれを象徴するものであり、宝石として自分を飾ったり、お守りにしたりと、人を支える意味合いを持つアイテムです。それと同じように、収録曲のひとつひとつが宝石のような役割を果たし、聴いた人のその瞬間を彩るだけでなく、今後の人生において自分を着飾り、強く、美しくしてくれるような、お守りやパワーストーン的な役割を持てるアルバムにしたい。そんなコンセプトから作っていきました。
――なるほど。
楠木 そうですね。昔から通っていたジュエリーのお店があって、自分の誕生石ということもあり、両親にプレゼントで買ってもらっていました。ジュエリーというよりは、ターコイズがついた小物入れや革製品が多かったんですけど。あと、数珠も全部ターコイズでできているものを持っているので、結構いろんな場面で目にしたり、身につけてきましたね。
――今回のアルバムタイトルにもなっている“ランダーブルー”は、非常に希少なターコイズの名前らしいですね。世界三大ターコイズに数えられるものだとか。
楠木 そうなんです。ターコイズにも色んな種類があることは、このアルバム制作を通して知ったのですが、その中でも“ランダーブルー”は、もう鉱脈が掘り尽くされて新たなものが出てこないと言われていて。その希少性や高価な種類だということもありますが、“ランダーブルー”という単語もすごく素敵だと思ったんですよね。“ランダー”は、天体に着陸できる宇宙船のことを指す言葉でもあるので、冒険心や、世界が広がるようなニュアンスのある名前だなと思い、このタイトルに決めました。
――その意味では、自分だけでなく誰かのお守りになるような、ポジティブな意味合いが強いアルバムを目指したのでしょうか。
楠木 一番最初は、そういう温かい曲や力が出るような曲を入れたいなと思って走り出しました。
――1stアルバムから今作までの約2年半の間には、自分自身の想いや感情を色濃く投影した5th EP『吐露』(2024年)のリリースもありました。そういったなかで、創作活動やアーティストとしてのスタンスに変化はありましたか?
楠木 スタンスはずっとくねくね動いている気がしますが、今回のアルバムに一番強く影響しているのは、やっぱり「誰に向けて書くか」という考え方です。『PRESENCE / ABSENCE』の頃は、広く色んな人に届けたいという気持ちの方が強くて、ある意味、ビジネス的に考えないといけないという思いもあって、そこに少し迷いがありました。そこから『吐露』をリリースして、皆さんからのリアクションを聞く中で、広く届けることも素敵だけど、自分に合っているやり方はもっとターゲットを絞ることかもしれない、と感じて。今まさしくこういう人に届けたいとか、身近な人を想像するとか、そういう濃いものにしていく方が自分の性に合っているし、そのやり方でいいんだと肯定できた部分があったので、それが今回の『LANDERBLUE』にはかなり強く活きた気がします。
――個人的に、今作を聴いて以前よりもさらにシンガーソングライター色が強くなった印象を受けたのですが、そういった気持ちの変化が反映されているのかもしれませんね。
楠木 そうかもしれないです。今までは広く共感できる歌詞にしようと意識し過ぎて、「自分はこう思うけどこれは書かなくていいや」と切り捨てていた部分もあったと思うんです。
AAAMYYY提供曲で感じた共鳴、学生時代の不当な思いを昇華した曲
――ここからはアルバム収録の新曲についてお聞かせください。1曲目の「twelve」は、arabesque Chocheさんが編曲を担当。同じくarabesque Chocheさんが制作したライブのオープニングSEと同様、楠木さんの世界観に入り込んでいくような感覚になる楽曲です。
楠木 この曲は、まさにアルバムの世界観に誘う立ち位置の曲にしたくて、完全にオーバーチュア的なイメージで作りました。まるでおとぎ話の世界にグッと入り込むような形にしたかったので、歌詞も強いメッセージ性があるというよりは、意味が伝わりすぎないもの、絵本の地の文のような、ふわっとしたニュアンスにしています。それこそターコイズのように、透き通り過ぎていない感じだとか、どこか傷を抱えたようなニュアンスを大切にしたくて。実は歌詞は1行を全部12文字で構成しているんです。なのでタイトルも「twelve」。その12音の中でどれだけメロディにバリエーションを持たせられるかを試してみたくて。ちょっと遊び心も入れた実験的な曲です。
――1行がすべて12文字とは気づきませんでした……!サウンドとしては、ハープやクラップなども交えた神秘的な雰囲気が印象的です。
楠木 arabesqueさんとの打ち合わせでは「ファンタジー系のゲーム音楽っぽくしたい」とお伝えしました。『ゼルダの伝説』の音楽とかもそうですけど、ああいう作品のゲームの曲ってずっと聴いていられるじゃないですか。この曲はリピートして繰り返し聴いてもストレスのない、ある意味、起伏の少ない曲にしたくて。展開も、Aメロ、Bメロ、サビというポップスの定番からは外れた、突飛な曲にしたいけど、聴いていてストレスは感じないものにしたい。その気持ちをarabesqueさんが汲み取って、絶妙な塩梅のアレンジにしてくださいました。元々は繰り返しの1ブロックはなかったのですが、arabesqueさんが「美しいメロディなのでもう1回繰り返す構成にしたい」と言ってくださって、今の構成になりました。
――セルフライナーノーツで、この曲について「御伽話のような入口であり、出口でもある」と書かれていたのは?
楠木 このアルバムは全11曲入りですが、ラストの「turquoise blue」を聴いた後にまた頭に戻って、この「twelve」を聴くという構成も面白いなと思ったんです。それを含むと12曲入りになって、また「twelve」に繋がる。その意味ではアルバムの最初の曲ですが、世界観の場面転換的な役割の曲になったらいいなと思っています。
――2曲目の「浮遊」は、Tempalayのメンバーとしても活躍するシンガーソングライターのAAAMYYYさんが詞曲を含めて提供したナンバー。Xに「大好きで、ずっとお願いしたかった方です」とポストしていましたよね。
楠木 本当に大好きで、特に「愛のため」という楽曲は一日中聴いてしまうくらいなんです。
――どんな風に楽曲をお願いしたのでしょうか。
楠木 AAAMYYYさんの世界観が大好きなので、私からは特にテーマも指定せず、先ほどお話したこのアルバムのコンセプトだけをお伝えして、あとはすべてお任せしました。ただ、AAAMYYYさんからは「パッと頭に浮かんだワードでもいいので、もし何かあれば送ってください」と言っていただいたので、私の中でAAAMYYYさんの音楽はふわっと宙に浮いているイメージが強かったこともあり、重さを感じながら浮いているようなニュアンスがいいなと思って「浮遊」という言葉をお送りしたら、この曲を作っていただきました。
――ドリーミーなシンセと打ち込みが中心の、まさに浮遊感のあるサウンドですよね。プラスしてどこか親密感のある、いわゆるベッドルームポップ的な楽曲になっています。
楠木 ですよね。お送りいただいたデモの仮歌がAAAMYYYさんだったので、「このままリリースしてください!」と思うくらい素敵でした(笑)。私はAAAMYYYさんのどこか不気味さを感じさせるところも好きで、聴いていて落ち着くだけでなく、ゾクッと鳥肌が立つような感覚も覚えるのですが、この曲にも間違いなくそれがあって。歌詞も共感できるフレーズがたくさんありました。
――そういった自分を労わるようなフレーズを含めて、セルフケア感もありますよね。ちなみに楠木さんは普段、セルフケアを心がけていますか?
楠木 最近は頑張っています。自分の機嫌が良くなるものをちゃんと把握しておこうと思って。その中でも食べ物はすごく大事だなって、すごく思うようになりました。ある意味、そこに向けて頑張れる自分もいますし、それに“食べる”という行為には無駄がないと思うんですよね。何かを食べることに使った時間やパワーは、100パーセント自分に返ってくる。もちろんゲームも好きなので、それをやる時間もセルフケアになるんですけど、逆に「ゲームだけして終わっちゃったな」みたいな気持ちもどこかにあって。食べる時間には無駄がないので、すごく救われている感じがします。
――自分の血肉やエネルギーになるわけですからね。楽曲の話に戻りますが、この曲は楠木さんの歌声の質感も含めて世界観がありますよね。ウィスパー系の儚いアプローチだけど、どこか生々しさがある。
楠木 実はミックス作業にも立ち会って、AAAMYYYさんと一緒にTD(トラックダウン)をやらせていただいたのですが、浮遊感を出すとなるとボーカルにリバーブをつけるイメージがあると思うんですけど、ミックスの時に結構ドライにされていて。それが逆に距離の近さや部屋っぽさが出て、AAAMYYYさんらしい素敵なミックスになったなと思います。それとシンセがメインの曲なので、「ここにこういう音を入れたい」とか「この音に手を加えたい」みたいなお話をしているなかで、AAAMYYYさんと私の考えがシンクロする瞬間が結構あって。もしかして感性として似たものがあるのかも、と思えて嬉しかったです。一緒に作ってくださった感覚があったので、また機会があればご一緒したいです。
――そこからシングル曲「シンゲツ」とEP『吐露』にも収録された「DOLL」を挿み、5曲目に収められているのが新曲「優等生」。皮肉とトゲのある歌詞が印象的で、「DOLL」の次にこの曲がくるのも良かったです。
楠木 この流れ、私も気に入ってます。元々今回のアルバムには、こういうテイストの曲を入れる予定ではなかったのですが、途中からやっぱりどこか激しい曲を入れたいなと思い始めて。ターゲットを絞ったものを届けたいと考えた時に、「私が理解してほしかったことって何だろう?」と考えたら、学生時代の“評価されない自分”という経験が思い浮かんだんです。過程をすごく頑張っていたのに、結果ばかり見られていたなあと思って。
――楠木さんは中学時代に学校の生徒会長を務めていて、周りから“優等生”と見られることも多かったと思いますが、その時の経験が反映されている?
楠木 例えば、すごく悪ガキが更生すると褒められるけど、元からちゃんとしていた人は、そこを褒められないじゃないですか。同じ地点にいるのになんでだろう?みたいな。いわゆる優等生ジレンマですね。私も学生時代は無理して優等生をしていた自覚があって。期待に応えようと自分にムチ打って頑張っていたのに、それを当たり前とされていた環境が、今になってすごく許せなかったんですよね。落ち込んでいる自分を支える曲はあっても、そうやって頑張っている誇らしい自分を底上げしてくれる曲にはあまり出会ったことがなかったので、じゃあ自分で書こう、と。多分、この曲を書いている時の自分はすごくイライラしていました(笑)。
――今の「無理して優等生をしていた」という発言もそうですが、この曲からは「本当は優等生ではない自分」という部分が見えてきますよね。
楠木 そうなんです。多分、本当の優等生にはこの感情はわからないと思うんですよ。素の自分がそれなので。私は自分から優等生でいたかったわけではなくて、周りから「優等生でいてね」と言われたからそうしていたのに、それを褒めてはくれないんだ、みたいな。気持ち的にひねくれていますけど、そういう人って結構いると思うんです。表に出さないだけで、孤独感や寂しさ、渇望を持ったまま大人になった人っていっぱいいるはず。そういう人に向けて書きたいという思いが強くありました。
――プラスして、この曲の歌詞には“愛”というワードがたくさん登場して、象徴的に使われている印象を受けました。
楠木 私がなぜ優等生でい続けなくてはいけないと思っていたかというと、期待してくれる人への愛とか、取り組んでいるものへの愛とか、全部“愛”で支払っていた感じがあったんです。でも、愛を支払っても愛は返ってこないことに薄々気づきながら頑張っていた。当時、ギリギリのところで自分を立たせていたものが、結果的に愛でしかなかったなと思ったんですね。私が曲を書く時によくやるパターンなんですけど、この曲もだんだん優等生じゃない自分に開き直っていく歌詞になっていて。最初は“だって私の愛はあなた宛”と歌っていて、愛を“あなた”のために使っているけど、その愛を自分のために使ってあげてほしいという思いを込めました。周りのために苦しんでまで優れているフリをする必要はない、と。
――楠木さんの歌もうっぷんを晴らすようなところがありますし、妖しくも激しさのあるアレンジが楽曲と素晴らしくマッチしています。編曲を手がけたのは、楠木さんとはメジャーデビュー曲「ハミダシモノ」以来の付き合いとなる重永亮介さん。
楠木 重永さんは最初、激しさの中にラスボスっぽさがあるアレンジを上げてくださったんです。闇堕ちしてめちゃくちゃ強くなったやつ、みたいな(笑)。そのアレンジもすごく迫力があって素敵だったのですが、でも、私がこの曲で書きたかったのは、そういう強い子ではなくて、そうなれない子だったので、その圧倒的な強者感を削ぎ落として、どこか脆さのある、「この子は勝てないんだろうな」というヒリヒリする感じにしてもらいました。
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自分に自信を持つための歌、ままならない世界を受け入れる心の在り方
――アルバムはそこから既発曲の「MAYBLUES」を挿み、同じく重永さんが編曲した新曲「Nemesia」へ。一転して明るくソウルフルな曲調で、語りかけるようなメッセージが温かな1曲です。
楠木 最近、明るい曲も書きたいなと思うことが増えてきて。でも、私が書きたいのは、カーンと突き抜けたような明るさではなく、心が温かくなるような明るさ。なのでこの曲は、背中を押すようなニュアンスにしたいなと思って作りました。私は言葉を紡ぐ仕事をしているので、自分の考えを表明することが多いですが、言葉にすることが苦手な人もたくさんいると思うんです。自分の言葉選びに自信がなかったり、自分の言葉を自分で否定してしまったり。それは自分自身を否定することに近いんじゃないかなって。そういう、自己表現が苦手な人に、自信を持ってほしい、自分を愛してほしいという思いで作った曲です。
――“僕は信じるよ あなたの言葉を”というフレーズがまさにですね。なおかつ“紡いで 思うがままに 特別じゃなくていいよ”と歌っているのが良くて。誰でもない“あなた自身の言葉”を紡ぐのが大事っていう。
楠木 そうなんです。言葉というのは、その内容だけに捉われがちですけど、その言葉だけで存在しているのではなくて、誰が、どんな気持ちで言っているかがすごく大事だと思っていて。そこに特別感を感じてほしいし、それが1周回って自己愛に繋がる曲になったらいいなと思って書きました。
――タイトルになっている“ネメシア”のお花のモチーフについては?
楠木 ネメシアは、たくさんの小さな花が集まっている花で、色もパキッとしていなくて控えめなんですけど、その寄り集まっている感じがすごく素敵なんですよね。それがこの歌を届けたい人たちのイメージにもぴったりですし、“正直”や“偽りのない心”という花言葉も込みで、この曲名にしました。
――そして「back to back」「風前の灯火」の既発2曲が続き、10曲目に置かれた新曲「それでも」。セルフライナーノーツにある「会ったこともない大切な人と離れ離れになりました」という言葉と、編曲を担当したのが江口 亮さんということからも、憧れの方への特別な思いが込められている曲だと感じました。
楠木 この曲は本当に自分のために書いた曲で、歌にすることにすごく意味を感じていました。ずっと構成を練っていた曲です。こうやって自分の思いから何かを作って届ける仕事をしていると、届くことが当たり前とまでは言わないまでも、すごく近くにある気がしていたんですけど、もう絶対に届かないという気持ちを感じたのが、25年間で初めてだったんです。私にはすごく影響があったけど、何の交わりもなくて、相手には何もなかった。そういう虚しさみたいなものを歌いたくて。
スタッフさんからは、もっとリズムを大きく取ってエモい感じにした方がいいのでは、と提案されましたが、私にとってはエモい曲ではなく、叫びに近い、届けたかったものを全部出すような感じだったので、「この曲はあまり綺麗なものじゃないんです」とお話しして、このアレンジに落ち着きました。江口さんにもそのお話をして、ご本人の楽曲のオマージュみたいな部分も入れていただいたりしています。
――歌詞の最後は“あなたは僕を知らないまま 僕はあなたを忘れないまま さようなら それでも”で締め括られています。タイトルにもなっている「それでも」という言葉にはどんな思いが?
楠木 この「それでも」という言葉は、その方が昔のインタビューで残していた言葉なんです。それへのアンサーというわけではないですが、そこに紐づけた曲を書きたいと思って。正直、この最後のフレーズを書き終わるまで、タイトルも全然決められなかったのですが、あらゆるインタビューを読み返していた時に、まさにこの言葉だなと感じて。本当に毎日この曲のことを考えていました。
――歌詞に“手紙も書いてた 渡せないまま 泣くしかなくて”とありますが、これも実体験でしょうか。
楠木 はい。スマホに下書きをして、機会があればいずれ、と思ったままでしたね。だからもう、その日に、その手紙は消しました。
――結果、この楽曲自体が手紙みたいなところがありますよね。また、歌詞には“理由なんかないのに 理由を探している僕に 理由をくれる歌が あなたを愛する理由だった”ともあります。楠木さんがその人の歌からもらった“理由”とは、どんなものでしたか?
楠木 端的に言うと、生きる理由とか、この活動をする理由、音楽を愛する理由に繋がってくると思います。私は何かにつけて理由が欲しいタイプで、10代の時にその方の音楽に出会って、自分の基礎というか、色んなものへの理由を与えてくださった方だなと思います。音楽で受け取った理由を音楽で返したい気持ちもあったので、手紙とかではなく、こういう形でリリースできたことは良かったなと思います。
――そしてアルバムの最後を飾る新曲「turquoise blue」。このアルバムで伝えたかったものが凝縮されている曲なのかなと思いました。
楠木 今回のアルバムの新曲の中では、この曲が一番最初にできて、表題にしようと決めて作った曲です。誰かに対してターゲットを絞ったというよりは、アルバムのテーマ曲という立ち位置です。ターコイズが持つお守り的な意味合いのように、この曲自体もターコイズの石言葉の“成功・繁栄・安全”を象徴するような、お守り的な立ち位置の曲になったらいいなと思って。
――なかでもサビの“勇気を出してもういちど 私の青を掴み取りたい”“希望を捨てずもういちど 私の青を咲き誇りたい”というフレーズが気になりました。楠木さんがこの曲でイメージした“青”というのは?
楠木 私の中で“青”は、すごくアバウトなんですけど、自由や美しさを感じさせる色で、海や空の他には自然にあまりない色ですし、でも逆に静けさや落ち着きも感じさせる、総じて美しいものだと感じていて。それを掴み取るだけでなく、さらに咲き誇ることで、自分に自信を持つとか、穏やかな中で自分を美しくしていく、というニュアンスを込めました。ターコイズがテーマなので、どこかオーガニックな雰囲気が欲しくて、編曲の重永さんには極力音を削ぎ落としてもらったんです。だからこそ、スッと入ってくる、身近に感じられる曲になったんじゃないかなと思います。
――確かに、冒頭のアコギを軸にしたフォーキーな雰囲気から、サビで開けていくサウンドの澄んだ質感は、楠木さんの美しい歌声も合わさって、自然の青さを感じさせるものでした。
楠木 実はこの曲、ミックスをやり直させていただきました。最初にミックスした後、他の曲ができていく中で「ちょっと違うかも」と思って。もっと広がりがほしいと無理を言って、ボーカルのリバーブ感やディレイを足してもらい、水のようにスッと体に入って広がっていくような曲にし直してもらいました。なので他の曲とは全然聴こえ方が違うんじゃないかなと思います
――聴いた後に優しい気持ちになれるような曲で、アルバムの最後に相応しい聴き心地だと思いました。その一方で、歌詞には諦めや挫折からの再起のような部分も感じられます。
楠木 そこは、完全にここ最近の自分の心境変化が出ていますね。挫折という言葉には悪いイメージがありますけど、それは自分で納得いかないのに諦めるから挫折になるんだと思うんです。最近、自分の中のテーマとして“受容”が大きくて。世の中にはポジティブなこともネガティブなことも含めて、自分でどうにもならないことはたくさんある。そういう世界だと受け入れた上で、じゃあそこから何ができるかを考えるのが、今の自分には大事なのかも、という気持ちを曲にしました。
――ありがとうございます。音楽の世界ではよく“2作目のジンクス”という言葉が使われますが、そんなことは微塵も感じさせない、今の楠木さんの表現したいものを丁寧に編んだ素晴らしい作品だと感じました。ご自身としては、どんな仕上がりになったと感じていますか?
楠木 1stアルバムとの繋がりは全く無視したので、本当に一つのアルバムとして、新たな目線もありつつ、きっと私らしさもすごく出ているんじゃないかなと思います。自分の挑戦もたくさんできたし、やりたい音楽の幅も入れることができた。このアルバムを通して、また何か違うものが広がっていけばいいなと思います。
――そして、楠木さんの26歳の誕生日当日、12月22日には恒例のバースデーライブ「TOMORI KUSUNOKI BIRTHDAY LIVE 2025“LAPIDARIES”」の開催が決定しています。本作を携えて、どんなライブにしたいと考えていますか?
楠木 今までは「ライブに来てこういう気持ちになってほしい」という自分の強い意志があったなかで、最近は「そこも自由だよな」と思うようになって。音楽は聴く人がいて初めて価値が生まれるし、その価値も一つではない。ライブは一方的に見えて、実は相互的なものだということを、皆さん自身に感じてもらえたらいいなと思っています。今回はスタンディングのライブなので、コミュニケーションも大事にしながら、皆さんには“ラピダリー(宝石細工人)”になっていただいて、それぞれの青を刻むようなライブになればいいなと思っています。
●リリース情報
楠木ともり 2nd Album
『LANDERBLUE』
11月26日発売
【完全生産限定盤(CD+BD+Visual Book)】
品番:VVCL-2821~23
価格:¥16,500(税込)
【初回生産限定盤(CD+BD)】
品番:VVCL-2824~5
価格:¥4,400(税込)
【通常盤(CD)】
品番:VVCL-2826
価格:¥3,300(税込)
<CD>
01. twelve
作詞・作曲:楠木ともり 編曲:arabesque Choche(Chouchou)
02. 浮遊
作詞・作曲・編曲:AAAMYYY
03. シンゲツ
作詞:楠木ともり 作曲:TETSUYA 編曲:陶山 隼&TETSUYA
04. DOLL
作詞・作曲:楠木ともり 編曲:亀田誠治
05. 優等生
作詞・作曲:楠木ともり 編曲:重永亮介
06. MAYBLUES
作詞・作曲:楠木ともり 編曲:KBSNK
07. Nemesia
作詞・作曲:楠木ともり 編曲:重永亮介
08. back to back
作詞・作曲:楠木ともり 編曲:重永亮介
09. 風前の灯火
作詞・作曲:楠木ともり 編曲:重永亮介
10. それでも
作詞・作曲:楠木ともり 編曲:江口 亮
11. turquoise blue
作詞・作曲:楠木ともり 編曲:重永亮介
<Blu-ray(完全生産限定盤)>
01. turquoise blue -Music Video-
02. 浮遊 -Lyric Video-
03. LANDERBLUE -Before processing Movie-
<Blu-ray(初回生産限定盤)>
01. turquoise blue -Music Video-
02. 浮遊 -Lyric Video-
03. turquoise blue -Before processing Movie-
●ライブ情報
「TOMORI KUSUNOKI BIRTHDAY LIVE 2025“LAPIDARIES”」
2025年12月22日(月)
会場:EX THEATER ROPPONGI
open 18:00 / start 19:00
お問い合わせ:H.I.P. 03-3475-9999
関連リンク
楠木ともり オフィシャルサイト
https://www.kusunokitomori.com/
楠木ともり オフィシャルX
https://x.com/tomori_kusunoki
楠木ともり オフィシャルTikTok
楠木ともり オフィシャルYouTube
https://www.youtube.com/channel/UCYU-61cZHXE0P48ZCxvs4cQ
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