終わりと始まりの物語を空想するボーカリスト「みあ」による音楽ユニット・三月のパンタシアが、TVドラマ「あのときキスしておけば」のOPテーマ「幸福なわがまま」を配信リリース。そして、メジャーデビューからちょうど5周年を迎える6月1日、それを記念した配信ライブ“5th Anniversary Live 「もう一度、物語ははじまる」”を開催する。
これまでの活動が育んだ、ファンとの絆と自信
――メジャーデビュー5周年ということで、活動を振り返る機会でもあると思うのですが、今どのような心境でいらっしゃいますか?
みあ 6月1日に行うアニバーサリーライブのタイトル“もう一度、物語ははじまる”に、私の今の思いがギュッと凝縮されています。去年からコロナの影響もあってなかなかこれまで通りに音楽を届けることができず、これからはウィズコロナを意識して音楽の伝え方を考えていかなくてはいけないなかで、「ここからもう一度、新しくなって、一緒に物語を紡いでいこう」というライブにしたくて。もちろんこれまで紡いできた物語の続きでもあって、変わっていくわけではないんですけど、でも新しくなっていくことで進める道もあると思うので、その一歩目をファンの皆さんと踏み出すことができれば嬉しいなと思っています。
――三月のパンタシアは、YouTubeやインターネット上での活動、SNSを通してのファンとの交流、みあさんが書き下ろしたものを含む様々な小説とのコラボなど、元々ウィズコロナ的なものに対応したエンターテインメントを展開してきた印象もあるのですが。
みあ たしかに元々インディーズの頃からネットを中心に活動していたので、これまでもやってきたことではあるんですけど、改めて三月のパンタシアの活動を知ってもらえる機会にもなるのかなと思っていて。例えば、去年の9月にリリースしたアルバム『ブルーポップは鳴りやまない』では、今まで以上に小説と音楽をリンクさせて、その都度SNSを活用しながら、より物語と音楽の親和性を楽しんでもらえるような作品を目指したのですが、やっぱり私たちの音楽表現の軸に小説があることを知らない方も結構いたんです。
――前向きに考えると、これまでYouTubeやTwitterなどを通じて発信してきた三月のパンタシアの活動が、こういった状況下だからこそ届く人には届いたのかもしれませんね。あと、改めて今までの楽曲を聴き返して感じたのは、三月のパンタシアの音楽は、色々なタイプの生き方をしている人たちの孤独に寄り添ってくれるということで。その意味では、コロナ禍の状況で三月のパンタシアの音楽に触れたことによって、心が豊かになった人も大勢いたのではないかと思います。
みあ まさに。
――改めて、これまでの活動を振り返ってみていかがですか?
みあ 1歩1歩着実にやってきた感触があります。三月のパンタシアは一足飛びに駆け上がっていくような活動と言いうよりも、ファンと一緒に1つ1つ向き合いながら一緒に作ってきた手応えがあって。だから私は色々な場面で「君と私の物語」や「私とあなたの物語」という表現をするのですが、本当にファンと一対一の物語を一緒に紡いできたなと思います。振り返ってみても最初に思い浮かぶのはファン皆さんの顔だったりしますし。
――こういった状況下のなかでも、みあさんはSNSなどを通じて日々色んな発信をされていて、それに対してファンの方からたくさんの反応やリプライがありますが、そういった声についてはどういった感想をお持ちですか?
みあ 「ランデヴー」という曲があるのですが、あれはラブソングとしても聴けるんですけど、初めてファンへの気持ちをダイレクトに表現した楽曲にもなっていて。想いとしては、自分とファンの1対1の物語であり、私とファンのラブソングでもあるという気持ちで書いていて。「あなたのメッセージ全部覚えてるよ」とか「今でも初めて会ったときのことを覚えているよ」とか、自分でも「ここまで書いていいのかな?」と思うぐらい、素直な気持ちを形にしましたし、私は皆さんの声や笑顔にずっと救われ続けながら活動してきたなと思います。
――この5年の活動の中で、みあさん自身が小説や歌詞を書いたり、コンセプトメイキングにも深く関わることで、ファンとの絆がより深まっていった印象もありますが、その辺はいかがですか?
みあ それこそインディーズで活動してる頃のことを振り返ると、もちろん音楽や歌が好きで活動を始めたんですけど、今だから正直に言うと、そこまで具体的なビジョンや夢は思い描けていなくて。でも、だんだん「こういことをやりたい」というのが見えてきたのは、やっぱりファンの存在が大きかったです。「歌が好きです」とか「毎日聴いてます」といった言葉をもらうなかで、自分を信じられるようになったというか。自分が作ったものをもっと聴いてほしい、もっと喜んでほしいという気持ちが、活動をしていくなかで少しずつ膨らんでいって。
――発表した作品への評価がみあさん自身の自信にも繋がって、より自分を表現できるようになっていったというか。
みあ そうですね。特に初めて歌詞を書いたときは、人に見せるのがすごく恥ずかしくて。昔から自分の内側を見せるのがどうしても苦手なんですよね。でもそうやって内側を引きずり出したものに対して声をもらうことで、「見せていいんだ」と思えるようになって。「じゃあ今度はこういうのを見せてみようかな」みたいな感じで、それが楽しくなっていってるのも大きいかもしれないです。
――そういった心持ちの変化や、YouTubeの動画がバズって話題となった「青春なんていらないわ」、そして高い評価を得たアルバム『ブルーポップは鳴りやまない』などで存在が知れ渡っていったのが、この何年かの活動だったのかなと感じます。
みあ そうですね。特に「青春なんていらないわ」のときは、それまで発表してきたものとは方向性を少し変えてみたんです。サウンド面でもバンド色を強くしてみたり、イラストもダイスケリチャードさんにお願いするようになって。色味やアートワークを含めてガラッと印象を変えたので、最初はそれがどう受け取られるのか不安と興奮が混じった気持ちで公開したんですけど、想像以上にたくさんの人に聴いてもらうことができて。
ポップな曲調に滲む切ない予感――新曲「幸福なわがまま」
――改めて新曲のお話を。「幸福なわがまま」はTVドラマ「あのときキスしておけば」のオープニングテーマですが、どんな楽曲になったと思いますか?
みあ 三月のパンタシアの楽曲の中でも突き抜けてポップな楽曲になったと思います。ドラマ側からも「ラブコメディのオープニングなので、アップテンポで、明るくてポップな楽曲」というお話をいただいたので、(作曲・編曲を担当した)堀江晶太さんには、そういうふうな印象がありつつ切なさが滲むような曲にしたいというお話をして。ものすごくポップで明るいけど、どこか別れの予感が滲む、切なさにも寄り添ってくれる楽曲にしてくださって、デモを聴いた瞬間に「これだ!」ってなりました。ドラマの内容にも寄り添いつつ、素直になれない女の子の物語としても聴いてもらえる楽曲になったと思います。
――「あのときキスしておけば」は、毎話泣けるし笑える展開が待っている素晴らしいドラマですよね。主人公とヒロインの秘密を共有しつつ一緒に生活を送る関係性、そのヒロインがいきなり死んでしまって、見知らぬおじさんと人格が入れ替わる……っていう予想がつかない要素をうまく1つにしていて。みあさんは「あのときキスしておけば」という作品をどのように捉えていますか?
みあ 「この手があったか!」って思いました。私はお互い惹かれあっているのにどうしても結ばれない物語にすごく惹かれるところがあるんですけど、そういう関係性って色んな作品で描かれているので今回の楽曲を制作するにあたって台本を読ませていただいたのですが、先の展開が全然予想できないし、すごく面白くて。
――「幸福なわがまま」を聴いたときに、いわゆる少女漫画を原作としたようなストレートな純愛を描いた歌詞だなと思ったのですが、ドラマの物語の核心に迫るほど印象が変わってくるようにも感じました。改めてどんなことを尊重して作詞しましたか?
みあ 私は歌詞を書くときに、いつも主人公像を決めるんですけど、ドラマの制作チームからは「ヒロインの(唯月)巴の気持ちを書いてほしい」「頼りない男の人に対してちょっと文句を言ったりもするけれど、それも愛情表現の1つで、そういう天邪鬼さがあるけれど本当はものすごく大切に思ってる気持ちが歌詞になるとありがたいです」というお話をいただいて。そういう歌詞ってこれまでの三月のパンタシアの楽曲にはなかったかもと思ったんです。天邪鬼な女の子はたくさんいましたけど。
――たしかに(笑)。
みあ だから「いくじなし」とか、かわいい文句が言える女の子を主人公にしてみようと思いました。それとドラマの回が重なるにつれて捉え方が変わっていくような歌詞にもしたかったので、別れの予感みたいなものも滲ませていて。例えば、すごく大切に思っている人と別れなくてはいけない状況になったとき、自分だったら、相手には別れたあとも幸せになってほしい気持ちもありつつ、でも私のことも忘れないでいてほしいって思うんですよね。それって結構なわがままだと思っていて。「忘れないでね」という言葉は相手を縛ることにもなるので。
――この曲がもし悲しいメロディだったら、また全然印象が違ったと思うのですが、こういうポップなメロディとキャッチーなアレンジだから、切ないところは余計に切なく響くし、ストレートなところはストレートに届く曲なんだろうなと思いました。
みあ 堀江(晶太)さんはそういう曲が得意な印象があるんですよね。「三月がずっと続けばいい」も曲調はすごく明るいけど、歌詞はものすごく切なくて。明るくさよならって言うほうが、逆に切ないというか。この曲もそういう切なさが滲む曲になったと思います。
――歌は明るくポップにうたわれていて、歌詞や作品の物語とのイメージのギャップを考えると余計にグッときますが、レコーティングはいかがでしたか?
みあ 基本的には努めて明るく歌おうっていう気持ちがありました。切ない気持ちだけど、頑張って作り笑いをして、さよならって言ってるみたいな。強がりな女の子の気持ちで歌いつつ、でもどこか一行だけ切ないっていう。最後の“なんて、わがままかな”は、強がりきれていない、頑張って明るくふるまってる女の子のつもりで歌いました。
――だからこそ作品にも合うし、楽曲としてのポップさを損なうことなく物語のシーンが伝わる曲になっているんだと感じました。この曲を聴きながらドラマも楽しみたいなと思います。
みあ 一見ありえない設定のお話ですけど、演技派の俳優の皆さんが演じることですごく説得力が生まれていて、ドラマとしてもすごく面白いので、自分も毎週楽しみにしています。
最高にエモーショナルな物語を描くために
――6月1日のライブで、これまでの活動を1つまとめあげるとして、今後はどういった活動を行っていきたいですか?
みあ ライブタイトルの“もう一度、物語ははじまる”にあるように、常に新しく生まれ変わりながら前に進んでいきたいと思っていて。変わらないんだけど新しくなっていく姿を見てほしいですし、1つの大きな目標としては、カルチャーアイコンになりたいというのがあって。音楽や小説、文芸、漫画、そういった芸術を愛する者として、そういう文化を象徴する存在になれたら嬉しいなと思います。「三月のパンタシアが何かやってるんだったらちょっと興味あるな」とか、自分たちをきっかけに色々な文化に触れてもらえる存在になれたら、音楽を作ったり小説や物語を紡いでいる身としてはものすごく光栄なことだと思っていて。そういう存在になれるように、今後の活動も頑張っていきたいです。
――ということは、これからもまだまだ色々なことにチャレンジしていく意欲があるわけですね。
みあ そうですね。やっぱり自分たちが作ったものを広く知ってもらえたり、聴いてもらえるのは、素直に嬉しいことなので、積極的に挑戦していきたいです。もちろんメインの活動は三月のパンタシアの音楽活動なんですけど、小説のほうも色んなチャレンジを続けていきたいと思っていて。以前に小説家の大先輩の方から「書き続けることが大事」と言われたのが、ずっと心に残っているんです。その方は、才能のある人はたくさん見てきたけど、続けることが難しいと話されていて。でも、すぐにそんなにたくさん書けるものでもないから、小説は苦しみながら作るものなんだって言われて。
――そこに答えがあるんですね、なるほど。
みあ 何時間も悩んだり苦しみながら、その表現に合う一行を見つけたりとか。それってすごく大変なことではあるんですけど、自分の中から引っ張り出したときの喜びもあったりして。そういう自分の中にある言葉を探し続けることと、そのうえで物語を紡ぎ続けることに今後もきちんと向き合って、道を進んでいけたらと思います。
――三月のパンタシアを音楽プロジェクトとして捉えたときに、これからやっていきたいことはありますか?
みあ やっぱり一番は、お客さんの前でライブがやりたい気持ちがどうしても強いです。2020年の1月以来、もう1年半近く有観客のライブができていないので、一番エモーショナルな形で再会できるように今チームで考えているところです。そこまでファンのみんなも待っていてくれたら嬉しいし、私はその日をすごく心待ちにしています。オンライン上でも音楽を楽しんでもらえるような、新しいことをどんどん見つけていきたい気持ちもありつつ、やっぱりリアルのライブもやりたいって強く思いますね。
――なるほど。物語を考える三月のパンタシアとしては、ファンの皆さんと再会する場面も最高にエモーショナルなものにしたいと。
みあ 実は6月1日のオンラインライブも、物語を軸にしたライブにしたいなと思っていて。ここまでの5周年を歩んできた物語でもあり、5年前に「はじまりの速度」というシングルでデビューさせてもらったので、その日はその曲をテーマにした物語を届けようかなと思っています。ぜひ楽しみにしてもらえたら嬉しいです。
INTERVIEW BY 冨田明宏
TEXT BY 北野 創(リスアニ!)
●配信情報
「幸福なわがまま」
配信中
●ライブ情報
三月のパンタシア 5th Anniversary Live「もう一度、物語ははじまる」
6月1日(火) 19:30open / 20:00start
アーカイブ配信期間:2021年6月1日(火)配信終了後~6月2日(水)22:00までの24時間限定でアーカイブ配信!
チケット情報※3種類
視聴チケット:¥3,000(税込)
デジタルパンフレット付き視聴チケット:¥3,840(税込)
FC会員限定 デジタルパンフレット&FC限定特典付き視聴チケット:¥3,840(税込)
※全ての視聴チケットに、ライブ終了直後からのAFTER TALK参加券も含みます。
販売期間:6月2日(水)19:00まで
配信プラットフォーム:Fanicon
公演に関するお問い合わせ:info@fanicon.net
●作品情報
『あのときキスしておけば』
テレビ朝日系にて、毎週金曜23:15~放送中(一部地域で放送時間が異なる)
出演:松坂桃李 井浦新 三浦翔平
猫背椿 六角慎司 阿南敦子 うらじぬの 角田貴志
藤枝喜輝 窪塚愛流 川瀬莉子 板倉武志
MEGUMI 岸本加世子 麻生久美子
脚本:大石静
演出:本橋圭太、日暮謙、YukiSaito
ゼネラルプロデューサー:三輪祐見子(テレビ朝日)
プロデューサー:貴島彩理(テレビ朝日)、本郷達也(MMJ)
制作:テレビ朝日、MMJ
<三月のパンタシア プロフィール>
“終わりと始まりの物語を空想する”ボーカリスト「みあ」による音楽ユニット。どこか憂いを帯びた「みあ」の歌声で紡がれるストーリーが、ときに優しく、ときに切なく、聞き手の心に寄り添い多くの共感をよぶ。
2016年6月1日にTVアニメ『キズナイーバー』のエンディングテーマ「はじまりの速度」でメジャーデビュー。
2018年からは、みあ自らが書き下ろす小説を軸とし、“音楽×小説×イラスト”を連動させた自主企画『ガールズブルー』をWeb上で展開。“言いたくても言えない気持ち”素直になれない心の詰まりを音楽に昇華し、青春期という多感な季節の揺らぎをポップに描く。
物語の世界観を表現したワンマンライブは人気を集め、2020年1月に開催した自身最大規模となる豊洲PITでのワンマンライブのチケットは即日SOLD OUTに。いま最も注目される音楽ユニットの一つになっている。
(C)テレビ朝日
関連リンク
三月のパンタシアオフィシャルサイト
http://www.phantasia.jp
配信ライブチケット購入ページはこちら
https://fanicon.net/web/tours/3355
「幸福なわがまま」配信リンクはこちら
https://3pasi.lnk.to/Wagamama
三月のパンタシア 公式TikTokアカウント
https://www.tiktok.com/@3pasi_official?lang=ja-JP
『あのときキスしておけば』公式サイト
https://www.tv-asahi.co.jp/anokiss/
青春の儚くも美しい感情を物語に落とし込み、音楽に昇華してきた彼女は今、何を思い、どんな未来を空想しているのか。その思いの丈を語ってもらった。
これまでの活動が育んだ、ファンとの絆と自信
――メジャーデビュー5周年ということで、活動を振り返る機会でもあると思うのですが、今どのような心境でいらっしゃいますか?
みあ 6月1日に行うアニバーサリーライブのタイトル“もう一度、物語ははじまる”に、私の今の思いがギュッと凝縮されています。去年からコロナの影響もあってなかなかこれまで通りに音楽を届けることができず、これからはウィズコロナを意識して音楽の伝え方を考えていかなくてはいけないなかで、「ここからもう一度、新しくなって、一緒に物語を紡いでいこう」というライブにしたくて。もちろんこれまで紡いできた物語の続きでもあって、変わっていくわけではないんですけど、でも新しくなっていくことで進める道もあると思うので、その一歩目をファンの皆さんと踏み出すことができれば嬉しいなと思っています。
――三月のパンタシアは、YouTubeやインターネット上での活動、SNSを通してのファンとの交流、みあさんが書き下ろしたものを含む様々な小説とのコラボなど、元々ウィズコロナ的なものに対応したエンターテインメントを展開してきた印象もあるのですが。
みあ たしかに元々インディーズの頃からネットを中心に活動していたので、これまでもやってきたことではあるんですけど、改めて三月のパンタシアの活動を知ってもらえる機会にもなるのかなと思っていて。例えば、去年の9月にリリースしたアルバム『ブルーポップは鳴りやまない』では、今まで以上に小説と音楽をリンクさせて、その都度SNSを活用しながら、より物語と音楽の親和性を楽しんでもらえるような作品を目指したのですが、やっぱり私たちの音楽表現の軸に小説があることを知らない方も結構いたんです。
――前向きに考えると、これまでYouTubeやTwitterなどを通じて発信してきた三月のパンタシアの活動が、こういった状況下だからこそ届く人には届いたのかもしれませんね。あと、改めて今までの楽曲を聴き返して感じたのは、三月のパンタシアの音楽は、色々なタイプの生き方をしている人たちの孤独に寄り添ってくれるということで。その意味では、コロナ禍の状況で三月のパンタシアの音楽に触れたことによって、心が豊かになった人も大勢いたのではないかと思います。
みあ まさに。
『ブルーポップは鳴りやまない』はコロナ禍の状況を受けて制作したところもあって、そういうブルーな気分を拭い去ってあげられるような、ポップな音楽を作りたいという思いから制作を始めたので、そういう風な聴き方をしてもらえていたら、私としても嬉しいです。
――改めて、これまでの活動を振り返ってみていかがですか?
みあ 1歩1歩着実にやってきた感触があります。三月のパンタシアは一足飛びに駆け上がっていくような活動と言いうよりも、ファンと一緒に1つ1つ向き合いながら一緒に作ってきた手応えがあって。だから私は色々な場面で「君と私の物語」や「私とあなたの物語」という表現をするのですが、本当にファンと一対一の物語を一緒に紡いできたなと思います。振り返ってみても最初に思い浮かぶのはファン皆さんの顔だったりしますし。
――こういった状況下のなかでも、みあさんはSNSなどを通じて日々色んな発信をされていて、それに対してファンの方からたくさんの反応やリプライがありますが、そういった声についてはどういった感想をお持ちですか?
みあ 「ランデヴー」という曲があるのですが、あれはラブソングとしても聴けるんですけど、初めてファンへの気持ちをダイレクトに表現した楽曲にもなっていて。想いとしては、自分とファンの1対1の物語であり、私とファンのラブソングでもあるという気持ちで書いていて。「あなたのメッセージ全部覚えてるよ」とか「今でも初めて会ったときのことを覚えているよ」とか、自分でも「ここまで書いていいのかな?」と思うぐらい、素直な気持ちを形にしましたし、私は皆さんの声や笑顔にずっと救われ続けながら活動してきたなと思います。
――この5年の活動の中で、みあさん自身が小説や歌詞を書いたり、コンセプトメイキングにも深く関わることで、ファンとの絆がより深まっていった印象もありますが、その辺はいかがですか?
みあ それこそインディーズで活動してる頃のことを振り返ると、もちろん音楽や歌が好きで活動を始めたんですけど、今だから正直に言うと、そこまで具体的なビジョンや夢は思い描けていなくて。でも、だんだん「こういことをやりたい」というのが見えてきたのは、やっぱりファンの存在が大きかったです。「歌が好きです」とか「毎日聴いてます」といった言葉をもらうなかで、自分を信じられるようになったというか。自分が作ったものをもっと聴いてほしい、もっと喜んでほしいという気持ちが、活動をしていくなかで少しずつ膨らんでいって。
自分も曲と一緒に成長しながらここまできた実感があります。
――発表した作品への評価がみあさん自身の自信にも繋がって、より自分を表現できるようになっていったというか。
みあ そうですね。特に初めて歌詞を書いたときは、人に見せるのがすごく恥ずかしくて。昔から自分の内側を見せるのがどうしても苦手なんですよね。でもそうやって内側を引きずり出したものに対して声をもらうことで、「見せていいんだ」と思えるようになって。「じゃあ今度はこういうのを見せてみようかな」みたいな感じで、それが楽しくなっていってるのも大きいかもしれないです。
――そういった心持ちの変化や、YouTubeの動画がバズって話題となった「青春なんていらないわ」、そして高い評価を得たアルバム『ブルーポップは鳴りやまない』などで存在が知れ渡っていったのが、この何年かの活動だったのかなと感じます。
みあ そうですね。特に「青春なんていらないわ」のときは、それまで発表してきたものとは方向性を少し変えてみたんです。サウンド面でもバンド色を強くしてみたり、イラストもダイスケリチャードさんにお願いするようになって。色味やアートワークを含めてガラッと印象を変えたので、最初はそれがどう受け取られるのか不安と興奮が混じった気持ちで公開したんですけど、想像以上にたくさんの人に聴いてもらうことができて。
YouTubeの登録者数も一気に増えたので、そこで手ごたえは感じましたね。(「青春なんていらないわ」を作詞・作曲・編曲した)n-bunaさんも「三月のパンタシアにお力添えできてすごく嬉しいです」というメッセージをくださって。本当に周りの人にも助けられながらここまで活動できてきたなと思います。
ポップな曲調に滲む切ない予感――新曲「幸福なわがまま」
――改めて新曲のお話を。「幸福なわがまま」はTVドラマ「あのときキスしておけば」のオープニングテーマですが、どんな楽曲になったと思いますか?
みあ 三月のパンタシアの楽曲の中でも突き抜けてポップな楽曲になったと思います。ドラマ側からも「ラブコメディのオープニングなので、アップテンポで、明るくてポップな楽曲」というお話をいただいたので、(作曲・編曲を担当した)堀江晶太さんには、そういうふうな印象がありつつ切なさが滲むような曲にしたいというお話をして。ものすごくポップで明るいけど、どこか別れの予感が滲む、切なさにも寄り添ってくれる楽曲にしてくださって、デモを聴いた瞬間に「これだ!」ってなりました。ドラマの内容にも寄り添いつつ、素直になれない女の子の物語としても聴いてもらえる楽曲になったと思います。
――「あのときキスしておけば」は、毎話泣けるし笑える展開が待っている素晴らしいドラマですよね。主人公とヒロインの秘密を共有しつつ一緒に生活を送る関係性、そのヒロインがいきなり死んでしまって、見知らぬおじさんと人格が入れ替わる……っていう予想がつかない要素をうまく1つにしていて。みあさんは「あのときキスしておけば」という作品をどのように捉えていますか?
みあ 「この手があったか!」って思いました。私はお互い惹かれあっているのにどうしても結ばれない物語にすごく惹かれるところがあるんですけど、そういう関係性って色んな作品で描かれているので今回の楽曲を制作するにあたって台本を読ませていただいたのですが、先の展開が全然予想できないし、すごく面白くて。
結末がわからないと歌詞が書けないので、ヒロインの女性の結末を一足先に聞かせていただいたのですが、切なくて、でもどうしても触れられないというエモーショナルさがあって、すごく好きな物語。これが映像でどう展開していくのか、一ファンとしても楽しみにしています。
――「幸福なわがまま」を聴いたときに、いわゆる少女漫画を原作としたようなストレートな純愛を描いた歌詞だなと思ったのですが、ドラマの物語の核心に迫るほど印象が変わってくるようにも感じました。改めてどんなことを尊重して作詞しましたか?
みあ 私は歌詞を書くときに、いつも主人公像を決めるんですけど、ドラマの制作チームからは「ヒロインの(唯月)巴の気持ちを書いてほしい」「頼りない男の人に対してちょっと文句を言ったりもするけれど、それも愛情表現の1つで、そういう天邪鬼さがあるけれど本当はものすごく大切に思ってる気持ちが歌詞になるとありがたいです」というお話をいただいて。そういう歌詞ってこれまでの三月のパンタシアの楽曲にはなかったかもと思ったんです。天邪鬼な女の子はたくさんいましたけど。
――たしかに(笑)。
みあ だから「いくじなし」とか、かわいい文句が言える女の子を主人公にしてみようと思いました。それとドラマの回が重なるにつれて捉え方が変わっていくような歌詞にもしたかったので、別れの予感みたいなものも滲ませていて。例えば、すごく大切に思っている人と別れなくてはいけない状況になったとき、自分だったら、相手には別れたあとも幸せになってほしい気持ちもありつつ、でも私のことも忘れないでいてほしいって思うんですよね。それって結構なわがままだと思っていて。「忘れないでね」という言葉は相手を縛ることにもなるので。
気持ちとしては、毎日でも思い出してほしいけれど、でもそうは言えない。だからこの曲の歌詞の最後は“なんて、わがままかな”で締めているんですけど、そのくらいポップにしないと言えないというか。そういう素直になれない女心みたいなものを歌詞にしました。
――この曲がもし悲しいメロディだったら、また全然印象が違ったと思うのですが、こういうポップなメロディとキャッチーなアレンジだから、切ないところは余計に切なく響くし、ストレートなところはストレートに届く曲なんだろうなと思いました。
みあ 堀江(晶太)さんはそういう曲が得意な印象があるんですよね。「三月がずっと続けばいい」も曲調はすごく明るいけど、歌詞はものすごく切なくて。明るくさよならって言うほうが、逆に切ないというか。この曲もそういう切なさが滲む曲になったと思います。
――歌は明るくポップにうたわれていて、歌詞や作品の物語とのイメージのギャップを考えると余計にグッときますが、レコーティングはいかがでしたか?
みあ 基本的には努めて明るく歌おうっていう気持ちがありました。切ない気持ちだけど、頑張って作り笑いをして、さよならって言ってるみたいな。強がりな女の子の気持ちで歌いつつ、でもどこか一行だけ切ないっていう。最後の“なんて、わがままかな”は、強がりきれていない、頑張って明るくふるまってる女の子のつもりで歌いました。
――だからこそ作品にも合うし、楽曲としてのポップさを損なうことなく物語のシーンが伝わる曲になっているんだと感じました。この曲を聴きながらドラマも楽しみたいなと思います。
みあ 一見ありえない設定のお話ですけど、演技派の俳優の皆さんが演じることですごく説得力が生まれていて、ドラマとしてもすごく面白いので、自分も毎週楽しみにしています。
最高にエモーショナルな物語を描くために
――6月1日のライブで、これまでの活動を1つまとめあげるとして、今後はどういった活動を行っていきたいですか?
みあ ライブタイトルの“もう一度、物語ははじまる”にあるように、常に新しく生まれ変わりながら前に進んでいきたいと思っていて。変わらないんだけど新しくなっていく姿を見てほしいですし、1つの大きな目標としては、カルチャーアイコンになりたいというのがあって。音楽や小説、文芸、漫画、そういった芸術を愛する者として、そういう文化を象徴する存在になれたら嬉しいなと思います。「三月のパンタシアが何かやってるんだったらちょっと興味あるな」とか、自分たちをきっかけに色々な文化に触れてもらえる存在になれたら、音楽を作ったり小説や物語を紡いでいる身としてはものすごく光栄なことだと思っていて。そういう存在になれるように、今後の活動も頑張っていきたいです。
――ということは、これからもまだまだ色々なことにチャレンジしていく意欲があるわけですね。
みあ そうですね。やっぱり自分たちが作ったものを広く知ってもらえたり、聴いてもらえるのは、素直に嬉しいことなので、積極的に挑戦していきたいです。もちろんメインの活動は三月のパンタシアの音楽活動なんですけど、小説のほうも色んなチャレンジを続けていきたいと思っていて。以前に小説家の大先輩の方から「書き続けることが大事」と言われたのが、ずっと心に残っているんです。その方は、才能のある人はたくさん見てきたけど、続けることが難しいと話されていて。でも、すぐにそんなにたくさん書けるものでもないから、小説は苦しみながら作るものなんだって言われて。
――そこに答えがあるんですね、なるほど。
みあ 何時間も悩んだり苦しみながら、その表現に合う一行を見つけたりとか。それってすごく大変なことではあるんですけど、自分の中から引っ張り出したときの喜びもあったりして。そういう自分の中にある言葉を探し続けることと、そのうえで物語を紡ぎ続けることに今後もきちんと向き合って、道を進んでいけたらと思います。
――三月のパンタシアを音楽プロジェクトとして捉えたときに、これからやっていきたいことはありますか?
みあ やっぱり一番は、お客さんの前でライブがやりたい気持ちがどうしても強いです。2020年の1月以来、もう1年半近く有観客のライブができていないので、一番エモーショナルな形で再会できるように今チームで考えているところです。そこまでファンのみんなも待っていてくれたら嬉しいし、私はその日をすごく心待ちにしています。オンライン上でも音楽を楽しんでもらえるような、新しいことをどんどん見つけていきたい気持ちもありつつ、やっぱりリアルのライブもやりたいって強く思いますね。
――なるほど。物語を考える三月のパンタシアとしては、ファンの皆さんと再会する場面も最高にエモーショナルなものにしたいと。
みあ 実は6月1日のオンラインライブも、物語を軸にしたライブにしたいなと思っていて。ここまでの5周年を歩んできた物語でもあり、5年前に「はじまりの速度」というシングルでデビューさせてもらったので、その日はその曲をテーマにした物語を届けようかなと思っています。ぜひ楽しみにしてもらえたら嬉しいです。
INTERVIEW BY 冨田明宏
TEXT BY 北野 創(リスアニ!)
●配信情報
「幸福なわがまま」
配信中
●ライブ情報
三月のパンタシア 5th Anniversary Live「もう一度、物語ははじまる」
6月1日(火) 19:30open / 20:00start
アーカイブ配信期間:2021年6月1日(火)配信終了後~6月2日(水)22:00までの24時間限定でアーカイブ配信!
チケット情報※3種類
視聴チケット:¥3,000(税込)
デジタルパンフレット付き視聴チケット:¥3,840(税込)
FC会員限定 デジタルパンフレット&FC限定特典付き視聴チケット:¥3,840(税込)
※全ての視聴チケットに、ライブ終了直後からのAFTER TALK参加券も含みます。
販売期間:6月2日(水)19:00まで
配信プラットフォーム:Fanicon
公演に関するお問い合わせ:info@fanicon.net
●作品情報
『あのときキスしておけば』
テレビ朝日系にて、毎週金曜23:15~放送中(一部地域で放送時間が異なる)
出演:松坂桃李 井浦新 三浦翔平
猫背椿 六角慎司 阿南敦子 うらじぬの 角田貴志
藤枝喜輝 窪塚愛流 川瀬莉子 板倉武志
MEGUMI 岸本加世子 麻生久美子
脚本:大石静
演出:本橋圭太、日暮謙、YukiSaito
ゼネラルプロデューサー:三輪祐見子(テレビ朝日)
プロデューサー:貴島彩理(テレビ朝日)、本郷達也(MMJ)
制作:テレビ朝日、MMJ
<三月のパンタシア プロフィール>
“終わりと始まりの物語を空想する”ボーカリスト「みあ」による音楽ユニット。どこか憂いを帯びた「みあ」の歌声で紡がれるストーリーが、ときに優しく、ときに切なく、聞き手の心に寄り添い多くの共感をよぶ。
2016年6月1日にTVアニメ『キズナイーバー』のエンディングテーマ「はじまりの速度」でメジャーデビュー。
2018年からは、みあ自らが書き下ろす小説を軸とし、“音楽×小説×イラスト”を連動させた自主企画『ガールズブルー』をWeb上で展開。“言いたくても言えない気持ち”素直になれない心の詰まりを音楽に昇華し、青春期という多感な季節の揺らぎをポップに描く。
物語の世界観を表現したワンマンライブは人気を集め、2020年1月に開催した自身最大規模となる豊洲PITでのワンマンライブのチケットは即日SOLD OUTに。いま最も注目される音楽ユニットの一つになっている。
(C)テレビ朝日
関連リンク
三月のパンタシアオフィシャルサイト
http://www.phantasia.jp
配信ライブチケット購入ページはこちら
https://fanicon.net/web/tours/3355
「幸福なわがまま」配信リンクはこちら
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三月のパンタシア 公式TikTokアカウント
https://www.tiktok.com/@3pasi_official?lang=ja-JP
『あのときキスしておけば』公式サイト
https://www.tv-asahi.co.jp/anokiss/
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