異色の2組が演出する【競演】ではなく【共演】“RAISE A...の画像はこちら >>

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2025年12月7日、RAISE A SUILENとトゲナシトゲアリの対バンライブ“RAISE A SUILEN×トゲナシトゲアリ「RAISE MY CATHARSIS」”が京王アリーナTOKYOで開催された。ブシロードのメディアミックスプロジェクト「BanG Dream!(バンドリ!)」の一角を担うリアルバンド・RAISE A SUILEN(以下、RAS)と、アニメ『ガールズバンドクライ』劇中の主人公たちによるバンドと連動するリアルバンド・トゲナシトゲアリ(以下、トゲトゲ)。

出自がまったく異なる2バンドの初めての競演は、”対バン”であることが強調される展開に。6月にはRASが有明アリーナで開催した“RAISE A SUILEN LIVE 2025「REBEL SOUNDWAVE」”にトゲトゲの挑戦状映像が送りつけられたり、7月には公開調印式の模様が生配信されるなど、両者は開演前から対決ムードを立ち上らせていた。

PHOTORAPHY BY ハタサトシ、冨田味我
TEXT BY 成松 哲

トゲトゲ、ゴング早々「対バンライブ」の意味に惑う!?

この日、先制攻撃を仕掛けたのはトゲトゲだ。定刻、サポートキーボーディスト、サポートドラマーを伴ってステージに登場した井芹仁菜役の理名(Vo.)、河原木桃香役の⼣莉(Gt.)、ルパ役の朱李(Ba.)は「声なき魚」を投下。躍動的な朱李のベースラインとノイジーながらもドライでミニマルな理名&⼣莉のコードストロークが、ボーカルの“うるさいんだよほっといてくれよ”と歌う焦燥感を掻き立てるこの曲と、ストレートな8ビートと四つ打ちダンスビートが交錯する「渇く、憂う」で、通常の客席はもちろん、いわゆる見切れ席をも埋め尽くした自身のファンと『BanG Dream!』シリーズファン=バンドリーマー、そしてバックステージに控えるRASとのファーストコンタクトを試みた。

……はずだったのだが、最初のMCでいきなり一騎打ちムードもどこへやら。朱李が「調印式とかやりましたけど、あれはなんだったんでしょう?」と首をかしげれば、⼣莉はRASのライブで挑戦状映像が再生された時、あまりの歓声に自身の声が掻き消され、一生懸命作ったキメ顔だけがただただ巨大スクリーンに流れていたことに触れ「あれは恥ずかしかった……」とポツリ。先ほどまでの熱いパフォーマンスとのギャップが激しい、ゆるい空気のボヤキトークで客席の笑いを誘っていた。これに「RASさんとはホントは仲良しなんですよね」と理名が笑顔で乗っかり、気を取り直した夕莉が「でも、みんなが期待するならやってやりましょうか?60分16曲勝負!」と宣言すると、トゲトゲは変幻自在のセットリストで対バンライブのステージを駆け抜ける。

フォーキーな「蝶に結いた⾚い糸」と、グルーヴィーなリズム隊が誰をも踊らせる「空の箱」。渋めの2曲で意表を突くも、その刹那、朱李の「激しくいきたいんじゃないの?」の声と共にバンドは「空白とカタルシス」をパフォーマンス。理名の高速リリック、目まぐるしく展開する⼣莉のカッティング、朱李の硬質なベースラインの意外なマッチングが面白いこの曲と、四つ打ちキックに乗せてシリアスなメロディラインと手数の多いピアノのオブリガードが絡み合う「闇に溶けてく」を連投してみせた。

また、トゲトゲにとってRASが以前から愛聴していたバンドであり、この日を最高のものにすると誓うMCのあとには、”The ロックギタリスト”といった風情の夕莉のプレイと切れ味鋭い16ビートを背に“願いはいつまでも届かない”ながらも“変わり続けるこの世界で 僕ら 何を浮かべようか”と希望の言葉を届ける「視界の隅 朽ちる音」と、トゲトゲのデビュー曲「名もなき何もかも」をドロップ。

最初のMCや曲間の朱李の言葉のとおり、挑発的で”激しい”楽曲群で自身のステージ前半戦を構成した。

そして公開中の映画『劇場版総集編ガールズバンドクライ【後編】なぁ、未来。』について触れた3人は、ステージ中盤には本作関連曲をサプライズで3連発初披露するわけだが、その前にまずご挨拶とばかりに京王アリーナTOKYOに鳴り響いたのは、映画『劇場版総集編ガールズバンドクライ【前編】青春狂騒曲』のオープニング主題歌「もう何もいらない未来」だ。ツービートと8ビートが行き交うドラムに、ボトムヘビー極まりない朱李のベースと⼣莉の的確なカッティングが応答する。このハイスピードナンバーでアリーナの熱気をさらに一段階上げてみせると、理名が唐突に「本日の初披露曲」と一言。これを合図にバンドはサプライズを開始。『劇場版総集編 ガールズバンドクライ【前編】青春狂騒曲』エンディング主題歌である、スケール感のあるミディアムナンバー「命をくれよ」をステージで初プレイし、以降も「本日の初披露曲」という一言とともに『劇場版総集編 ガールズバンドクライ【後編】なぁ、未来。』オープニング主題歌「arrow」、同エンディング主題歌「荊の薔薇」を初披露。そのエレクトリックなダンスロックと、ポジティブで爽快感溢れるロックナンバーに客席のボルテージが上がり、「本日の初披露曲」タイムを締め括った。

続くトゲトゲのターンの最終盤に待っていたのは大ネタのつるべ打ちだ。「荊の薔薇」から間髪入れずに叩き込まれたのは、テレビアニメ『ガールズバンドクライ』のオープニング主題歌「雑踏、僕らの街」。変則的なリズムパターンとピーキーなピアノ、理名のまくし立てるようなボーカルで魅せた彼女たちは、勢いそのままに”正調J-ROCK”といった趣きの「最期の禱り」を連投。

「RASさんの胸を借りて好き勝手やらせてもらいました」「みんなー!終わっちゃうよー!」と⼣莉が笑うと、トゲトゲは彼女の流れるよなアルペジオ、朱李のぶっといスラップベース、理名のエモーショナルなボーカルが混ざり合う「爆ぜて咲く」と、腕っこきの面々ならではの、いかにもトゲトゲらしいアンサンブルが楽しいパンクチューン「運命の華」を続けてステージをあとにした。

RAISE A SUILENが祝福ムードと戦闘モードで襲いかかる

RAISE A SUILENが祝福ムードと戦闘モードで襲いかかる

ライブ当日となる12月7日は、RASのメンバー・チュチュ(DJ)のバースデー。それだけに後攻のステージはまずは祝福ムードで幕を開ける。トゲトゲのライブを受けてステージに登場したレイヤ役のRaychell(Ba.&Vo.)、ロック役の小原莉子(Gt.)、マスキング役の夏芽(Dr.)、パレオ役の倉知玲鳳(Key.)は、そのチュチュ役の紡木吏佐と共に「Beautiful Birthday」をプレイ。夏芽とRaychellによるメロウなビートと、倉知の清廉なピアノリフが印象的なダンスナンバーで、“世界は(don’t let go)あなたを待ってた”とメンバーの“誕生日”を“美しく”祝福した。

……のはずが、その後のRASは完全に戦闘モードに。「Beautiful Birthday」に万雷の拍手が集めたRASは、その直後タイトルからして戦闘態勢十分のハードロックナンバー「‘FIGHT’ ADDICT」をキック。Raychellが“尽きない勝利への渇望で 魂焦がして”“ぶちかませ 勝負の醍醐味 美味しく平らげ”と歌い、紡木が“負けず嫌い 火花バチバチ””飢えた獣のようにマジガチ”とラップして、この日のバンドの姿勢を表明してみせる。さらに彼女たちはバンド随一のパーティチューン「V.I.P MONSTER」と、紡木がパッドコントローラにアサインした声ネタを叩き、CDJをスクラッチして応えたエレクトロニコアナンバー「EXPOSE ‘Burn out!!!’」という2つのミクスチュアロックナンバーをリレー。オーディエンスを翻弄するかのような構成と、直後のMCタイムのRaychellによる「今日は対バンということで全力で闘いに来ました」の一言でトゲトゲはおろか、そのファン、さらにはバンドリーマーにも宣戦布告してみせた。

それからもRASのアティチュードは変わらない。トランシーなシーケンスフレーズが流れる中、Raychellの「チュチュ、よろしくね」の声に続いて紡木のスクラッチから始まった「JUST THE WAY I AM」では、DJブースを離れた彼女がステージを闊歩。夏芽が繰り出すタイトな8ビート、「カッコいい」としか形容しようのない小原の正統派ハードロックギター、ストレンジな倉知のリードシンセに乗せて歌詞の“自画自賛 Yah, yah”との文字通りバンドを”自画自賛”。

メンバーがアドリブソロを回し合うジャムセッションから雪崩れ込んだ「HOWLING AMBITION」では、シリアスでスムーズなビートを乗りこなすRaychellが“I’m No.1!!”と歌い上げるなど、5人は追撃の手を緩めない。その後も夏芽とRaychellが硬質なツービートを繰り出すと、小原のアグレッシブなリフと倉知と紡木の手によるアシッドな電子音がそれに追随。RASならではの音像とアレンジで性急なビートを生み出す「OUTSIDER RODEO」を叩きつけて、トゲトゲに勝るとも劣らない熱狂を生み出していた。

トランス、ガバ、シュランツ、ダブステップなどにリミックスされたRASナンバーをメガミックスされる幕間SEを挟んだステージ終盤、RASもまた、トゲトゲよろしくキラーチューンを連発する。小原によるノイジーなインプロビゼーションからのヘビーなリフと、リズム隊のシャープな8ビート、倉知のエレガントなピアノとワイルドなリードシンセ、紡木の切実なラップという、これまたRAS流のアンサンブルで魅せる「SOUL SOLDIER」でオーディエンスを煽ると、続く「DRIVE US CRAZY」ではその冒頭、右の拳を高々と突き上げたRaychellの“Raise voice! Shout Out!”の声にオーティエンスが“Wow! Wow! Wow!”のシンガロングで応答する。そしてキレッキレの8ビートと盤石のアンサンブルをバックに、彼女が“女々しさ 弱虫 かなぐり捨てて 常識ごとアタマをひっくり返せよ Understand?”“一度きりなら 後悔せず生き抜け!”とハッパをかけると、そのクライマックスに客席が再び呼応。メンバーとオーディエンスたちの“Wow! Wow! Wow!”の大合唱がフロアいっぱいに響き渡るドラマチックな空間が生み出された。

RASのステージのラストナンバーは「HELL! or HELL?」。そのバックトラックに乗せて紡木が声ネタ・音ネタを叩き、CDJをこするいつものシークエンスが始まると、すぐさま割れんばかりの歓声が。そしてオーディエンスのハンドクラップのなか、カラフルな電子音の洪水とヘビーなバンドサウンドを融合させる、”エレクトロニコアバンド・RAISE A SUILEN”だからこそ生み出せる音像とプレイでさらなる熱狂を誘って、自身のステージの幕を下ろした。

アンコールのステージにまず登場したのは、ライブTシャツ姿のRASの面々と理名。その意外な並びにどよめく客席を尻目に6人はRASのデビュー曲にしてキラーチューン中のキラーチューン「R•I•O•T」で共演する。

Raychellと理名は「闘いはもう終わり」とばかりにリラックスムードを漂わせながら、8小節ごとにマイクリレーしてメロディを分け合っていたかと思えば、細かく掛け合ってみせるなど小技の効いたデュエットを披露していた。

“一夜限りの「R•I•O•T」”に観客の笑顔と拍手が集まると、理名が「RASさんの曲を歌わせてもらってメチャクチャ楽しくて、せっかくなので」とトゲトゲメンバーを呼び込み、Raychellを残し、ステージ袖へと歩を進めたRASの楽器隊と入れ替わるように夕莉と朱李が姿を見せると、彼女たちは「みんながメチャクチャ盛り上がる曲を持ってきちゃったんで!」と、”この日限りの「爆ぜて咲く」”をプレイ。理名の響かせる真っ直ぐでタフな歌声に、同じくタフながらもアダルトな余裕をうかがわせるRaychellの声が重なるスペシャルなボーカルワークでこの曲の新たな魅力を現出させていた。

そしてRASメンバーが再び合流したところでこの日の対バンライブは本当にノーサイド。ステージの上の8人はこの日のライブの感想を語り合うと最後にオフマイクで「ありがとうございました!」と声を揃えた。

ポストロック的アプローチのトゲトゲと、エレクトリックなハードコアサウンドで鳴らすRAS。いずれも”ロック以降”、”パンク以降”の音楽を指向する2組ながら、誰がどう聴こうともそのサウンドストラクチャや音像はまるで違っている。そしてこれまた当然ながら、その2組を愛するファンの音楽的嗜好も大きく異なっているはずだ。ところがこの日の公演では、RASファンがトゲトゲ楽曲の複雑なリズムを巧みに乗りこなしてペンライトを振り、トゲトゲファンがRASの繰り出すボトムヘヴィな四つ打ちキックと由緒正しきハードロックギターと奇っ怪な電子音に楽しげに身体を揺らしステップを踏んでいた。

開演早々トゲトゲの面々がぶっちゃけていた通り、どちらのバンドのメンバーもお互いの音楽をリスペクトし、愛している。また、両バンドのファンも無条件にそれを受け入れてダンスするくらい、初めて聴いたかもしれないトゲトゲナンバー、RASナンバーにハマっていた。当日の京王アリーナTOKYOで行われていたのは【競演】というよりも【共演】。

エモーショナルなグッドミュージックを通じて2バンドが我々を徹底的にエンタテインしてくれるステージだった。年の瀬にとにかく楽しいライブを観ることができた。それがこの日の偽らざる感想だ。

なお、この日のライブの模様はアーカイブ配信される予定になっている。配信日時などの詳細は両バンドの公式サイトや公式SNSなどでチェックしてほしい。

2025.12.07 RAISE A SUILEN×トゲナシトゲアリ「RAISE MY CATHARSIS」@京王アリーナTOKYO

<セットリスト>
トゲナシトゲアリ
M01.声なき魚
M02.渇く、憂う
M03.蝶に結いた⾚い糸
M04.空の箱
M05.空⽩とカタルシス
M06.闇に溶けてく
M07.視界の隅 朽ちる音
M08.名もなき何もかも
M09.もう何もいらない未来
M10.命をくれよ
M11.arrow
M12.荊の薔薇
M13.雑踏、僕らの街
M14.最期の禱り
M15.爆ぜて咲く
M16.運命の華

RAISE A SUILEN
M17.Beautiful Birthday
M18.‘FIGHT’ ADDICT
M19.V.I.P MONSTER
M20.EXPOSE ‘Burn out!!!’
-DJ play-
M21.JUST THE WAY I AM
-Solo session-
M22.HOWLING AMBITION
M23.OUTSIDER RODEO
-“REVELATION” megamix show-
M24.SOUL SOLDIER
-Inst session-
M25.DRIVE US CRAZY
M26.HELL! or HELL?

<アンコール>
RAISE A SUILEN×井芹仁菜 from トゲナシトゲアリ
EN1. R•I•O•T
トゲナシトゲアリ×レイヤ from RAISE A SUILEN
EN2. 爆ぜて咲く

セトリプレイリスト公開中
https://bmu.lnk.to/RAISE_MY_CATHARSISpr

(C)BanG Dream! Project (C)東映アニメーション

●配信情報

RAISE A SUILEN×トゲナシトゲアリ「RAISE MY CATHARSIS」アーカイブ配信の実施決定
※配信期間などの詳細は後日発表

●ライブ情報

RAISE A SUILEN×Fear, and Loathing in Las Vegas「Drown Out the Noise」

2026年
01/22(木)大阪・ Zepp Osaka Bayside
チケット好評発売中
受付URL:https://eplus.jp/ras-vegas2026/
※先着順・上限数に達し次第終了
詳細:https://bang-dream.com/events/ras-vegas2026

トゲナシトゲアリ Zepp Tour 2026 “拍動の未来”

2026年
02/11(水・祝)神奈川・KT Zepp Yokohama
02/14(土)福岡・Zepp Fukuoka
02/23(月・祝)愛知・Zepp Nagoya
02/28(土)北海道・Zepp Sapporo
03/08(日)大阪・Zepp Osaka Bayside
03/13(金)東京・Zepp DiverCity(TOKYO)
03/14(土)東京・Zepp DiverCity(TOKYO)
詳細:https://girls-band-cry.com/live/post-18.html

関連リンク

バンドリ!公式サイト
https://bang-dream.com/

ガールズバンドクライ公式サイト
https://girls-band-cry.com/

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