GARNiDELiAのボーカリスト・MARiA(メイリア)によるワンマンライブ“MARiA Live 2021 「うたものがたり」”が、6月5日に東京・チームスマイル豊洲PITで開催された。物心がついた頃から歌とともに生き、シンガーとして様々なキャリアを積んできた彼女だが、実はソロで単独公演を行うのは今回が初めて。
会場には新型コロナウイルスの感染拡大予防対策を徹底したうえで観客を入れ、同時にStreaming+による配信も行われた今回の公演。オープニングではMARiAによるモノローグ調の語りが場内に流れ、彼女が“私の物語”と“あなたの物語”の幕開けを告げると、バトンを持った二人の女性パフォーマーが登場し、華麗なバトントワリングを披露する。彼女らの導きによって、ステージの幕が左右に開くと、暗闇に包まれた舞台の中央にピンスポットが当てられ、MARiAが登場。膝をついて座り込んだ状態の彼女は、ハンドマイクを両手で握りしめながら、ソロアルバムより山下穂尊(いきものがかり)が提供したバラード「憐哀感情」を歌い始める。
インタビューによると、この楽曲は『うたものがたり』収録楽曲の中で一番最初にレコーディングしたもので、彼女自身、現場では「“歌う”というよりも、何にもない暗いステージに私が一人、ピンスポットを受けて立っていて、そこで呟いているみたいな感覚」だったと語っていた。そのイメージから、MARiAが各楽曲の主人公となって全10曲・10編の物語を演じていく、アルバム全体のコンセプトが出来上がったと話していたが、この日のステージでピンスポットを浴びながら静かに歌い上げる彼女は、まさに自身が語っていた前述の印象そのまま。MARiAの歌声は曲が進むにつれて高ぶっていき、最後には立ち上がって身を振り絞るような動きで、この曲の主人公が抱く愛を求める複雑な感傷を表現してみせた。
続けて、山崎まさよしが作曲したブルース調の感傷的なナンバー「マチルダ」を哀愁たっぷりに披露した彼女は、そこから鐘の音を合図に、ラテンのフレイバーを湛えた「ガラスの鐘」へ。MARiAは「“うたものがたり”にようこそ、今日は皆さん楽しんでいきましょう!」と観客に檄を飛ばすと、ステージに現れた四名のダンサーたちとともに“恋という名の煉獄”に捉われた主人公の物語を情熱的な歌唱で紡いでいく。本楽曲の歌詞には童話「シンデレラ」がモチーフに使われているが、このときMARiAが着ていたショルダーレスの華やかなドレス衣装も楽曲のイメージにマッチしていた。
ここで4曲目にして早くも嬉しいサプライズ。
そのあとに挿まれた最初のMCパートで改めて挨拶し、17ヵ月ぶりとなるライブハウスでのライブ、ファンと向かい合って歌えることの喜びを伝えるMARiA。会場からの拍手に「最初から泣かせないで(笑)」と笑う彼女は本当に嬉しそうだ。オーディエンスに向けて「私が歌をうたい始めて、かれこれ18~19年ぐらいになるんですけど、そんな私が今まで以上に自分の歌にフォーカスを当てて作った1枚、『うたものがたり』のライブですから、今日は私の色んな歌を、隅々まで味わって帰ってください!」と呼びかけると、ここでこの日の一人目のゲスト、草野華余子をステージに呼び込む。
MARiAはステージ上に設置されたバーカウンター風のセットの店主となり、草野はその“バーメイリア”のお客さんという体でしばし歓談。MARiAとはGARNiDELiAでメジャーデビューする前からの付き合いだという草野は、以前からMARiAと会うたびに「楽曲を書きたい」と言い続けていたとのことで、その念願が叶ったのが『うたものがたり』に収録された「おろかものがたり」だったという。しかも同曲は、草野が自身の楽曲として発表してきた“「ものがたり」シリーズ”に連なるナンバーとして書いたもの。ということで、この日は草野の楽曲「おわりものがたり」と、MARiAの「おろかものがたり」を2曲続けて二人で歌う、スペシャルなコラボが実現した。
アコギを弾きながら、紫色の髪を振り乱して激しく「おわりものがたり」をパフォーマンスする草野。それにつられるように、MARiAもまたバンドの生演奏による強烈なグルーヴに乗って身をくねらせながら熱唱する。
そしてライブはバンドのセッションに突入。この日のバンドメンバーは、バンマスを務めた清水信之(key)、『うたものがたり』のサウンドプロデュースを手がけた本間昭光(key)を筆頭に、和田健一郎(g)、ハピネス徳永(b)、海老原 諒(ds)と敏腕プレイヤーが揃い踏み。各メンバーのソロも交えながらロッキンな演奏を展開すると、その最後にゲストである元JUDY AND MARYのギタリスト・TAKUYA(g)が突如乱入。彼がどこかで聴き覚えのあるフレーズを弾くと、そこからなんとJUDY AND MARY「そばかす」のカバーへ。TVアニメ『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』のOPテーマとしても知られる同曲を、黒い衣装にお色直ししたMARiAが元気よく歌唱して会場を盛り上げる。
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続けてMARiAが「さあみんな、もっともっと遊んじゃいませんか?」と呼びかけると、今度はJUDY AND MARY「over drive」をカバー。こちらのサビではTAKUYAがコーラスも担当したほか、間奏ではMARiAとTAKUYAがステージの上手・下手へとそれぞれダッシュして会場に隈なくパフォーマンスを届けるサービスっぷり。その後のMCでTAKUYAが「この2曲をやるのはレア」と語っていた通り、ジュディマリの名曲を元メンバーの演奏でMARiAが歌唱する、またとない機会となった。
TAKUYAが登場したということは、当然、彼が『うたものがたり』に提供したナンバー「キスしてみようか」も披露することに。しかも音源には入っていなかったTAKUYAのコーラスが加わった、この日だけのスペシャルバージョンでのお届けだ。ワイルドに暴れまくるギターリフとトリッキーなメロディ、奔放なイメージを抱かせる歌詞はまさにTAKUYAならではの世界観で、MARiAはそれをスカートの裾をつまんだりしながらキュートかつアグレッシブに歌う。
ここで照明が暗転し、会場にスクエアなビートが鳴り響くと、今度はダンサーのパフォーマンスコーナーに。GARNiDELiAでの活動や“踊っちゃってみた”シリーズを含め、ダンスにも力を入れているMARiAだからこその演出と言えるだろう。そこからバトンを持ったパフォーマー二人が再登場してトワリングで魅了すると、ライブは後半戦へ。今度は仲良し女子たちの会話風の音声が会場に流れ始め、「あー、今日もまたか~」というぼやきの声を合図に、懐かしい曲調のミディアムポップ「あー、今日もまた」が始まる。ドレスタイプの大人っぽい衣装に着替えたMARiAは、OL風の衣装を着たダンサーたちとともに、同世代の女子へと向けた部分もある同楽曲を優しい声音で歌う。
続いて歌われたのは、宇宙まおが歌詞を提供したエモーショナルなバラード「光」(ちなみに「あー、今日もまた」「光」はどちらも本間昭光が作曲)。時の流れとともに薄らいでいくかつての想い、その儚さと切なさを日常的な情景のなかで表現した詞世界を、MARiAは情感たっぷりに歌い上げていく。歌詞に“星座”などのワードが散りばめられていることもあってか、会場の照明も最初は夜のように青みがかった雰囲気だったのが、最後はまたたく星のように光り輝いていたのも印象的だった。
その美麗なバラード曲から一転、フューチャリスティックなR&Bサウンドで会場をシックなダンスフロアに変貌させたのが、これもまた本公演で初公開となる新曲「Heart Breaker」。スポーティーな衣装に着替えたダンサー4名と動きをシンクロさせながら、クールかつ情熱的な歌声を響かせるMARiA。間奏でのダンスパフォーマンスも見事で、先の「手探る夢、繋ぐ糸」と併せて彼女のソロ活動の新たな可能性を感じさせるナンバーだった。
続くnishi-kenが作編曲した煌びやかなダンスポップ「Brand new me」では、「さあみんなで体揺らして、もっともっと楽しくなっちゃおう!」と呼びかけて、観客と一緒に手を左右に振って一体感を楽しむ。ラスサビでは「みんなで一緒に飛ぶよー!」とジャンプするなど、声援をあげることのできないオーディエンスも、アクションでMARiAと心を通わせ合う。
そしてライブは本編最後の楽曲へ。MCで当たり前の日常が失われてしまった今の状況に触れ、「どんなに苦しいことも、悲しいことも、必ず終わりがやってきます。そして新しい季節も必ずきます。みんなで一緒に歩んで行きましょう」と語った彼女は、「最後にこの曲をお届けします」と客席に向けて力強く手を差し出し、『うたものがたり』のラストを飾った軽やかなロックチューン「ハルガレ」を歌唱。彼女とは付き合いの長い、じんが詞曲を書き下ろしたこのナンバーには、終わってしまった青春とその先に訪れるであろう新しい季節への希望が描かれているが、それはMARiAと同じ青春を過ごしてきたじんだからこそ書けるものだろうし、それと同時にコロナ禍の今という状況に重ねて聴くことができる。思うように音楽やライブを届けることが難しくなった現在、もしかしてかつての春は枯れたのかもしれないが、その先にはきっと新しい季節が待っているのだ。
この曲でのMARiAのパフォーマンスは、その新しい季節の芽吹きを感じさせる、本当に素晴らしいものだった。音に身を任せてステージ上を伸び伸びと舞い、こぶしを突き上げたり、クラップを煽りながら、春のように鮮やかな歌声を響かせる彼女。その声がまるで一陣の風のように心の中を吹き抜けていく。両手を広げてオーディエンスの気持ちを一身に受け止め、間奏で「みんなの気持ち、ちゃんとここまで届いているからね、ありがとー!」と歓びの声を上げたかと思うと、Dメロでは取り戻すことのできないもどかしい想いを切々と表現し、“また、咲き始める”というフレーズをきっかけにその歌声は再び春色に色づき、満開の景色へ。
その後、鳴りやまないアンコールの拍手を受けて、ステージに戻ってきたMARiAは、8月に2冊目の写真集を発表することを告知。「これからもどんどんMARiAとしての作品も発表していけたらと思っています」とのことで、音源を含め、今後もソロでの活動が期待できそうだ。
そしてこの日の最後に歌われたのは、アルバム『うたものがたり』のリード曲でもある、橋口洋平(Wacci)が提供したバラード「コンコース」。序盤では本間のピアノと和田のアコギをメインに、しっとりと歌を紡いでいくMARiA。そしてサビでその他のバンドメンバーの演奏も加わり、彼女の歌声もグッとエモーションを増していく。恋人と別れたあとの後ろ髪を引かれる気持ちを描いた歌詞のシチュエーションも相まって、耳を傾けているうちに、このライブが終わることの名残惜しさが高まっていく。
MARiAもときに胸元に手を当てて、寂しそうな表情を浮かべていたが、その後の最後のMCで彼女自身が「これからもずっと歩みを止めず歌をうたい続けていきますので、みんなのそばにずっといさせてください。また必ず笑顔で会いましょう!」と力強く宣言していたように、MARiAは間違いなく歌とは切り離すことのできない、歌とともにあるべき人間だ。きっとこれからも、彼女だけの「うたものがたり」を様々な形で届けてくれるはずなので、今は次の季節が訪れるのを楽しみにしたい。
TEXT BY 北野 創(リスアニ!)
■“MARiA Live 2021「うたものがたり」”
2021 年6月5日(土)
OPEN 16:00/START 17:00
会場:チームスマイル豊洲PIT
<Streaming視聴チケット販売期間>
2021年6月1日(火)19:00~2021年6月11日(金)23:59
<Set List>
-OPENING-
1.憐哀感情
2.マチルダ
3.ガラスの鐘
4.手探る夢、繋ぐ糸(未発表曲)
<草野華余子コラボコーナー>
5.おわりものがたり(草野華余子カバー)
6.おろかものがたり
<TAKUYA コラボコーナー>
7.そばかす(JUDY AND MARY カバー)
8.over drive(JUDY AND MARY カバー)
9.キスしてみようか
10.あー、今日もまた
11.光
12.Heart Breaker(未発表曲)
13.Brand new me
14.ハルガレ
En.コンコース
●リリース情報
MARiA ソロアルバム
『うたものがたり』
発売中
【初回限定盤(CD+Blu-ray)】
価格:¥4,400(税込)
品番:PCCA-06037
※Blu-rayにはMVほか収録予定
【通常盤(CD)】
価格:¥3,300(税込)
品番:PCCA-06036
※収録曲共通
<収録楽曲>
1.コンコース
作詞:橋口洋平 作曲:橋口洋平 編曲:本間昭光
2.憐哀感情
作詞:山下穂尊 作曲:山下穂尊 編曲:中村タイチ
3.ガラスの鐘
作詞:早川博隆 作曲:早川博隆 / 村山シベリウス達彦 編曲:村山シベリウス達彦
4.おろかものがたり
作詞:草野 華余子 作曲:草野 華余子 編曲:本間昭光 / 草野 華余子
5.マチルダ
作詞:岡本定義 作曲:山崎将義 編曲:清水信之
6.キスをしてみようか
作詞:TAKUYA 作曲:TAKUYA 編曲:nishi-ken
7.あー今日もまた
作詞:jam 作曲:本間昭光 編曲:本間昭光 / 清水信之
8.Brand new me
作詞:木村友威 作曲:nishi-ken 編曲:nishi-ken
9.光
作詞:宇宙まお 作曲:本間昭光 編曲:清水信之
10.ハルガレ
作詞:じん 作曲:じん 編曲:本間昭光
全10曲収録
豪華作家陣が参加したソロアルバム『うたものがたり』を引っ提げ、MARiAにしか紡ぐことのできない歌をたっぷりと聴かせる、1日限りの貴重な公演となった。
会場には新型コロナウイルスの感染拡大予防対策を徹底したうえで観客を入れ、同時にStreaming+による配信も行われた今回の公演。オープニングではMARiAによるモノローグ調の語りが場内に流れ、彼女が“私の物語”と“あなたの物語”の幕開けを告げると、バトンを持った二人の女性パフォーマーが登場し、華麗なバトントワリングを披露する。彼女らの導きによって、ステージの幕が左右に開くと、暗闇に包まれた舞台の中央にピンスポットが当てられ、MARiAが登場。膝をついて座り込んだ状態の彼女は、ハンドマイクを両手で握りしめながら、ソロアルバムより山下穂尊(いきものがかり)が提供したバラード「憐哀感情」を歌い始める。
インタビューによると、この楽曲は『うたものがたり』収録楽曲の中で一番最初にレコーディングしたもので、彼女自身、現場では「“歌う”というよりも、何にもない暗いステージに私が一人、ピンスポットを受けて立っていて、そこで呟いているみたいな感覚」だったと語っていた。そのイメージから、MARiAが各楽曲の主人公となって全10曲・10編の物語を演じていく、アルバム全体のコンセプトが出来上がったと話していたが、この日のステージでピンスポットを浴びながら静かに歌い上げる彼女は、まさに自身が語っていた前述の印象そのまま。MARiAの歌声は曲が進むにつれて高ぶっていき、最後には立ち上がって身を振り絞るような動きで、この曲の主人公が抱く愛を求める複雑な感傷を表現してみせた。
続けて、山崎まさよしが作曲したブルース調の感傷的なナンバー「マチルダ」を哀愁たっぷりに披露した彼女は、そこから鐘の音を合図に、ラテンのフレイバーを湛えた「ガラスの鐘」へ。MARiAは「“うたものがたり”にようこそ、今日は皆さん楽しんでいきましょう!」と観客に檄を飛ばすと、ステージに現れた四名のダンサーたちとともに“恋という名の煉獄”に捉われた主人公の物語を情熱的な歌唱で紡いでいく。本楽曲の歌詞には童話「シンデレラ」がモチーフに使われているが、このときMARiAが着ていたショルダーレスの華やかなドレス衣装も楽曲のイメージにマッチしていた。
ここで4曲目にして早くも嬉しいサプライズ。
なんとこの日のために持ってきたという未発表の新曲「手探る夢、繋ぐ糸」が本邦初披露された。アルバム『うたものがたり』の収録曲にはなかったタイプのジャジーな曲調で、MARiAが冒頭などで聴かせたファルセット交じりのフェイクも雰囲気たっぷり。ダンサーたちと魅せたセクシーな振る舞いを含め、かつてジャズソングも歌っていた彼女だからこその見せ場を感じさせる、大人の恋のナンバーだ。
そのあとに挿まれた最初のMCパートで改めて挨拶し、17ヵ月ぶりとなるライブハウスでのライブ、ファンと向かい合って歌えることの喜びを伝えるMARiA。会場からの拍手に「最初から泣かせないで(笑)」と笑う彼女は本当に嬉しそうだ。オーディエンスに向けて「私が歌をうたい始めて、かれこれ18~19年ぐらいになるんですけど、そんな私が今まで以上に自分の歌にフォーカスを当てて作った1枚、『うたものがたり』のライブですから、今日は私の色んな歌を、隅々まで味わって帰ってください!」と呼びかけると、ここでこの日の一人目のゲスト、草野華余子をステージに呼び込む。
MARiAはステージ上に設置されたバーカウンター風のセットの店主となり、草野はその“バーメイリア”のお客さんという体でしばし歓談。MARiAとはGARNiDELiAでメジャーデビューする前からの付き合いだという草野は、以前からMARiAと会うたびに「楽曲を書きたい」と言い続けていたとのことで、その念願が叶ったのが『うたものがたり』に収録された「おろかものがたり」だったという。しかも同曲は、草野が自身の楽曲として発表してきた“「ものがたり」シリーズ”に連なるナンバーとして書いたもの。ということで、この日は草野の楽曲「おわりものがたり」と、MARiAの「おろかものがたり」を2曲続けて二人で歌う、スペシャルなコラボが実現した。
アコギを弾きながら、紫色の髪を振り乱して激しく「おわりものがたり」をパフォーマンスする草野。それにつられるように、MARiAもまたバンドの生演奏による強烈なグルーヴに乗って身をくねらせながら熱唱する。
続く「おろかものがたり」でもその熱は冷めないどころかますます熱くなっていく一方で、ときにお互いの方を向きながら、情熱的に声を重ね合い、観客を熱狂させた。
そしてライブはバンドのセッションに突入。この日のバンドメンバーは、バンマスを務めた清水信之(key)、『うたものがたり』のサウンドプロデュースを手がけた本間昭光(key)を筆頭に、和田健一郎(g)、ハピネス徳永(b)、海老原 諒(ds)と敏腕プレイヤーが揃い踏み。各メンバーのソロも交えながらロッキンな演奏を展開すると、その最後にゲストである元JUDY AND MARYのギタリスト・TAKUYA(g)が突如乱入。彼がどこかで聴き覚えのあるフレーズを弾くと、そこからなんとJUDY AND MARY「そばかす」のカバーへ。TVアニメ『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』のOPテーマとしても知られる同曲を、黒い衣装にお色直ししたMARiAが元気よく歌唱して会場を盛り上げる。
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続けてMARiAが「さあみんな、もっともっと遊んじゃいませんか?」と呼びかけると、今度はJUDY AND MARY「over drive」をカバー。こちらのサビではTAKUYAがコーラスも担当したほか、間奏ではMARiAとTAKUYAがステージの上手・下手へとそれぞれダッシュして会場に隈なくパフォーマンスを届けるサービスっぷり。その後のMCでTAKUYAが「この2曲をやるのはレア」と語っていた通り、ジュディマリの名曲を元メンバーの演奏でMARiAが歌唱する、またとない機会となった。
TAKUYAが登場したということは、当然、彼が『うたものがたり』に提供したナンバー「キスしてみようか」も披露することに。しかも音源には入っていなかったTAKUYAのコーラスが加わった、この日だけのスペシャルバージョンでのお届けだ。ワイルドに暴れまくるギターリフとトリッキーなメロディ、奔放なイメージを抱かせる歌詞はまさにTAKUYAならではの世界観で、MARiAはそれをスカートの裾をつまんだりしながらキュートかつアグレッシブに歌う。
ラストには彼女がTAKUYAの肩を掴んで寄り添う場面も見られた。
ここで照明が暗転し、会場にスクエアなビートが鳴り響くと、今度はダンサーのパフォーマンスコーナーに。GARNiDELiAでの活動や“踊っちゃってみた”シリーズを含め、ダンスにも力を入れているMARiAだからこその演出と言えるだろう。そこからバトンを持ったパフォーマー二人が再登場してトワリングで魅了すると、ライブは後半戦へ。今度は仲良し女子たちの会話風の音声が会場に流れ始め、「あー、今日もまたか~」というぼやきの声を合図に、懐かしい曲調のミディアムポップ「あー、今日もまた」が始まる。ドレスタイプの大人っぽい衣装に着替えたMARiAは、OL風の衣装を着たダンサーたちとともに、同世代の女子へと向けた部分もある同楽曲を優しい声音で歌う。
続いて歌われたのは、宇宙まおが歌詞を提供したエモーショナルなバラード「光」(ちなみに「あー、今日もまた」「光」はどちらも本間昭光が作曲)。時の流れとともに薄らいでいくかつての想い、その儚さと切なさを日常的な情景のなかで表現した詞世界を、MARiAは情感たっぷりに歌い上げていく。歌詞に“星座”などのワードが散りばめられていることもあってか、会場の照明も最初は夜のように青みがかった雰囲気だったのが、最後はまたたく星のように光り輝いていたのも印象的だった。
その美麗なバラード曲から一転、フューチャリスティックなR&Bサウンドで会場をシックなダンスフロアに変貌させたのが、これもまた本公演で初公開となる新曲「Heart Breaker」。スポーティーな衣装に着替えたダンサー4名と動きをシンクロさせながら、クールかつ情熱的な歌声を響かせるMARiA。間奏でのダンスパフォーマンスも見事で、先の「手探る夢、繋ぐ糸」と併せて彼女のソロ活動の新たな可能性を感じさせるナンバーだった。
続くnishi-kenが作編曲した煌びやかなダンスポップ「Brand new me」では、「さあみんなで体揺らして、もっともっと楽しくなっちゃおう!」と呼びかけて、観客と一緒に手を左右に振って一体感を楽しむ。ラスサビでは「みんなで一緒に飛ぶよー!」とジャンプするなど、声援をあげることのできないオーディエンスも、アクションでMARiAと心を通わせ合う。
そしてライブは本編最後の楽曲へ。MCで当たり前の日常が失われてしまった今の状況に触れ、「どんなに苦しいことも、悲しいことも、必ず終わりがやってきます。そして新しい季節も必ずきます。みんなで一緒に歩んで行きましょう」と語った彼女は、「最後にこの曲をお届けします」と客席に向けて力強く手を差し出し、『うたものがたり』のラストを飾った軽やかなロックチューン「ハルガレ」を歌唱。彼女とは付き合いの長い、じんが詞曲を書き下ろしたこのナンバーには、終わってしまった青春とその先に訪れるであろう新しい季節への希望が描かれているが、それはMARiAと同じ青春を過ごしてきたじんだからこそ書けるものだろうし、それと同時にコロナ禍の今という状況に重ねて聴くことができる。思うように音楽やライブを届けることが難しくなった現在、もしかしてかつての春は枯れたのかもしれないが、その先にはきっと新しい季節が待っているのだ。
この曲でのMARiAのパフォーマンスは、その新しい季節の芽吹きを感じさせる、本当に素晴らしいものだった。音に身を任せてステージ上を伸び伸びと舞い、こぶしを突き上げたり、クラップを煽りながら、春のように鮮やかな歌声を響かせる彼女。その声がまるで一陣の風のように心の中を吹き抜けていく。両手を広げてオーディエンスの気持ちを一身に受け止め、間奏で「みんなの気持ち、ちゃんとここまで届いているからね、ありがとー!」と歓びの声を上げたかと思うと、Dメロでは取り戻すことのできないもどかしい想いを切々と表現し、“また、咲き始める”というフレーズをきっかけにその歌声は再び春色に色づき、満開の景色へ。
最後の、今にも気持ちが零れそうな、感慨深げな表情で客席を見渡す彼女の姿が目に焼き付いて離れない。
その後、鳴りやまないアンコールの拍手を受けて、ステージに戻ってきたMARiAは、8月に2冊目の写真集を発表することを告知。「これからもどんどんMARiAとしての作品も発表していけたらと思っています」とのことで、音源を含め、今後もソロでの活動が期待できそうだ。
そしてこの日の最後に歌われたのは、アルバム『うたものがたり』のリード曲でもある、橋口洋平(Wacci)が提供したバラード「コンコース」。序盤では本間のピアノと和田のアコギをメインに、しっとりと歌を紡いでいくMARiA。そしてサビでその他のバンドメンバーの演奏も加わり、彼女の歌声もグッとエモーションを増していく。恋人と別れたあとの後ろ髪を引かれる気持ちを描いた歌詞のシチュエーションも相まって、耳を傾けているうちに、このライブが終わることの名残惜しさが高まっていく。
MARiAもときに胸元に手を当てて、寂しそうな表情を浮かべていたが、その後の最後のMCで彼女自身が「これからもずっと歩みを止めず歌をうたい続けていきますので、みんなのそばにずっといさせてください。また必ず笑顔で会いましょう!」と力強く宣言していたように、MARiAは間違いなく歌とは切り離すことのできない、歌とともにあるべき人間だ。きっとこれからも、彼女だけの「うたものがたり」を様々な形で届けてくれるはずなので、今は次の季節が訪れるのを楽しみにしたい。
TEXT BY 北野 創(リスアニ!)
■“MARiA Live 2021「うたものがたり」”
2021 年6月5日(土)
OPEN 16:00/START 17:00
会場:チームスマイル豊洲PIT
<Streaming視聴チケット販売期間>
2021年6月1日(火)19:00~2021年6月11日(金)23:59
<Set List>
-OPENING-
1.憐哀感情
2.マチルダ
3.ガラスの鐘
4.手探る夢、繋ぐ糸(未発表曲)
<草野華余子コラボコーナー>
5.おわりものがたり(草野華余子カバー)
6.おろかものがたり
<TAKUYA コラボコーナー>
7.そばかす(JUDY AND MARY カバー)
8.over drive(JUDY AND MARY カバー)
9.キスしてみようか
10.あー、今日もまた
11.光
12.Heart Breaker(未発表曲)
13.Brand new me
14.ハルガレ
En.コンコース
●リリース情報
MARiA ソロアルバム
『うたものがたり』
発売中
【初回限定盤(CD+Blu-ray)】
価格:¥4,400(税込)
品番:PCCA-06037
※Blu-rayにはMVほか収録予定
【通常盤(CD)】
価格:¥3,300(税込)
品番:PCCA-06036
※収録曲共通
<収録楽曲>
1.コンコース
作詞:橋口洋平 作曲:橋口洋平 編曲:本間昭光
2.憐哀感情
作詞:山下穂尊 作曲:山下穂尊 編曲:中村タイチ
3.ガラスの鐘
作詞:早川博隆 作曲:早川博隆 / 村山シベリウス達彦 編曲:村山シベリウス達彦
4.おろかものがたり
作詞:草野 華余子 作曲:草野 華余子 編曲:本間昭光 / 草野 華余子
5.マチルダ
作詞:岡本定義 作曲:山崎将義 編曲:清水信之
6.キスをしてみようか
作詞:TAKUYA 作曲:TAKUYA 編曲:nishi-ken
7.あー今日もまた
作詞:jam 作曲:本間昭光 編曲:本間昭光 / 清水信之
8.Brand new me
作詞:木村友威 作曲:nishi-ken 編曲:nishi-ken
9.光
作詞:宇宙まお 作曲:本間昭光 編曲:清水信之
10.ハルガレ
作詞:じん 作曲:じん 編曲:本間昭光
全10曲収録
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