――山下さんの音楽経歴を教えてください。
山下大輝 遡ること小学生時代になりますが、当時お母さんがディズニー作品のビデオを買ってきたことが始まりでした。ビデオの中でキャラクターたちが歌って踊りながら気持ちを伝え、想いを吐露しているのをすごく魅力的だなと思ったんです。そこからディズニーミュージカルを見漁って、好きな場面は何回も巻き戻したりして見ていましたし、真似をして歌ったり声色を変えて遊んでいたりしていたのですが、それが声優の道へと繋がる最初の一歩だったようにも思いますね。
――そうなると幼少の頃から山下さんのベースに流れていたのはアラン・メンケンの音楽だったのですね。
山下 まさにそうです。アラン・メンケンです!
――その後、音楽の専門学校にも通われたということですが、将来的に音楽の道を、と考えていらっしゃったのでしょうか?
山下 そのときはまだ曖昧でした。高校までテニスをやってきたけれど、卒業を前に「自分が本当にやりたいことってなんだろう」と思ったときに、楽しいと思うことが歌うことや声で何かをすることだったんですよね。友達とカラオケに行くと、僕がディズニーメドレーを歌うんです。それを聴いてみんなが喜んでくれたり楽しんでくれたり笑ってくれたので、こういうことが向いているのかもしれないと思いました。
――音楽を学びに上京してきた山下青年ですが、そこからどのような経緯で声優へと辿り着くのでしょうか?
山下 専門学生でいた2年の間に色々と考えていくうちに、自分の声の個性を活かせるのは声優なのではないかと思い始めたんですね。声優もキャラソンなどを歌いますし、ゴン役の竹内順子さんやキルア役の三橋加奈子さんをはじめとした「HUNTER×HUNTER」の当時の声優さんたちが同作のミュージカルをやっていらしたのもあって、声優さんだったら色んなことができると思ったんです。それから夢が声優へとシフトしていきました。きっと音楽の勉強をしながらも、それまでもずっとどこかに「声優」という選択肢はあったんですよね。何かのきっかけで夢が少し変わったり、そのときそのときに見ているものによって目標が変わったり、変遷しながらも今に至っています。
――専門学校で歌を学んだことが今に活きているなという感覚はありますか?
山下 あります。本当に基本的なことだと思うのですが、人前で自分の声を使って表現をする、歌を披露するということは度胸がなければダメなのを学びました。専門学校でみんなに見られながら評価されることでメンタル的に鍛えられたかなと思います。あとは技術的な部分でもプロの先生が教えてくださるので、「こういうアプローチの仕方があるのか」とか「こういう曲があるのか」と知識を深められましたし、楽器隊と一緒に歌うこともあったので、楽器の音を聴きながら歌うことも学びましたし、色々な経験をさせてもらったなと思います。今の、何人もの役者さんと一緒に1つの作品を作らせてもらうことは、いろんな楽器の人たちと1つの世界観を作っていくことにも通じていますし、コミュニケーションの部分でも学びが大きかったと思っています。
――そんな山下さんが声優になり、活躍されていたなかで一人のアーティストとしてデビューされます。
山下 1年以上前にお話をいただいたのですが、そのときはまだまだ声優としてキャラクターを表現することに集中していきたいという想いがあって。そこをベースにほかのことをたくさん自分の中に入れてしまうと、キャパオーバーになってしまうのではないかという怖さがありましたし、声優として色んなキャラクターをやらせてもらっていることに対して中途半端な気持ちにはなりたくないと思っていたんです。色々なことにチャレンジするということは、枝葉が分かれてしまいますし、それぞれに対して自分の集中力をもっていかなければいけないから、それが果たして自分にはできるのだろうかと感じていました。でもその頃にコロナ禍がきて、業界全体がストップしてしまい、僕ら声優って本当にやることがなくなったんですね。
そんなときだからこそ「何かできないかな」と思っていたら、アーティスト活動をされている方はSNS上やご自身のファンサイトといった発信できる場所から歌を届けて、エールを共有して送り合えている姿を見たんです。それを羨ましく思いました。もしかしたら僕にも同じようにエールを届けることができるのではないだろうか。もしかしてデビューの話によって、そのチャンスが目の前にあるのではないだろうかと感じて、やらせていただくことにしました。
――そうなるとキャラクターとしてではないご自身の歌を表現されることになります。“山下大輝”の歌とは?
山下 1年前にはまだ「自分の歌ってなんだろう」と小難しく考えていたんですが、実際に今回のEPに収録した5曲を自分でも何度も聴いて、色んな人にも聴いてもらったらまた気持ちが変わってきました。小難しいことを考えるのではなく、今まで声優としてキャラソンなど色々な歌をうたわせてもらっている経験を活かせばいいんじゃないか、という方向に変化してきて。キャラクターごとに様々なアプローチで歌ってきたものを全部武器として使っちゃえよ、と。
――今回のEP「hear me?」で示す山下さんご自身の音楽性については、どのようなお話をしていかれたのでしょうか。
山下 音楽の方向は決めないことにしました。一発目に「これが僕の音楽です」と決めつけるような作品にしてしまうと、今後の発想ややりたいことを消してしまうことにもなりかねないと思ったので、聴いてくださる皆さんの力になればと「前を向こう」というテーマのもとに楽曲を制作していきました。音楽性で言うと“なんでもやってみよう!”ですかね。沢山の人に聴いていただきたかったので、みんなが共感できるような楽曲が多いのではないかと思っています。このあとどういう音楽性にしていくかについては、やりたいことがたくさんあるので、楽しみながらやっていきたいと思いますし、突拍子もないことが今後あるかもしれないですね。
――「hear me?」の世界観を象徴するようなリード曲が「Tail」です。ご自身が主演するTVアニメ『セブンナイツ レボリューション -英雄の継承者-』のエンディング主題歌ですが、実際に歌ってみていかがでしたか?
山下 聴いているときと歌ってみるときとでは難易度が違うなと思いました。難しいなと思いましたね。
さすがにそんなことはできないから、どういうことだろう?と考えて。今の自分の力でどういうことをすればそこに近づけるんだろうと自問自答の繰り返しで。たぶんこれだ、ということを見つけていきながら、同時に「なんでできないんだろう」と悔しく思ったりもしつつ、その場でできる全力を入れさせてもらったのが「Tail」の歌声だと思います。曲としてスキル的に難しさはあったんですが、レコーディングで何度も試させてもらったり、スタッフさんと「今のところはこうしたほうがよかったかな」とか相談もさせてもらって、何度も何度も、時間をかけて録らせてもらいました。これまでのキャラソンよりも時間がかかりましたし、こんなに自分の声を聴くことは初めての経験でした。
――『セブンナイツ レボリューション -英雄の継承者-』は主人公・ネモとしてのご自身も息づいているかと思いますが、物語に対してどのような視点で歌われたのでしょうか?
山下 歌詞を見たときに「これはアニメの世界観とリンクするな」と思ったんです。
――初回限定盤にはこの「Tail」のMVとスペシャルメイキング映像が収録されています。非常に楽し気な映像でした。
山下 すごく楽しかったです。キャラクターではない自分を撮ってもらうことに対して照れがありつつも、すごくかっこよく撮ってくれた技術に感動しました。何かしら新しいことをするのはワクワクするものだなと思いました。小さい頃に新しい習い事を始めるときや、新しいゲームが発売されたりするとすごくワクワクしたと思うんですが、それに近いものがありました。MVも集合は朝の暗いうちで、ちょっと遠出をしての撮影だったので遠足のような雰囲気でしたし、撮影場所にもテンションが上がりました。遺跡のような場所で、少年心をくすぐるファンタジックな場所というか。
「Tail」を歌って、歌詞も読み込んで色々と考えた結果、僕の中で具体的な映像が浮かんでいたんです。「こういうものにしたい」という絵と物語がしっかりあった。MVはこういうのはどうだろう、ああいうのはどうか、というのをしっかりお伝えさせていただいて、僕の希望に沿って作ってくださっていて。そこに監督やスタッフさんのフレーバーが加わって、さらに良いものにしてくださっているから、色んな人の意見も入ることでどんどん素敵なものになっていくんだなと実感しましたし、そこでのワクワクもあって嬉しかったです。自分が発想したものが肉付けされて、色々な味がついていくのは楽しかったですし、完成が楽しみだなぁと思いながら撮影をしていました。
――ではファンの皆さんが観てくださるものは、山下さんの要素がふんだんに散りばめられたMVなのですね!
山下 そうだと思います。Growthをいつも録ってくださっているエンジニアさんや作曲家の滝沢 章さんが「MV観たよ! めっちゃ大輝っぽいじゃん!」って言ってくれたんです。「大輝のもっている世界観がすごく入っていていいね!」って言葉が嬉しかったですし、気づいてくれた!と思いました。みんなが僕に対してもっているイメージに、このMVのような世界があるのかなと思ってはいたんですが、それを感じてくださって、僕のやりたいことを汲み取ってくださったことが嬉しかったです。お客さんの反応も楽しみにしたいと思います。
――その「Tail」以外にも盟友である佐伯youthKさんのプロデュース曲「Hello」や清 竜人さんによる「誰かを」など、どの収録曲も山下さんらしさのある楽曲ばかりであるこの「hear me?」でアーティストとしての一歩を踏み出されますが、今後の展望を教えてください。
山下 今回5曲録らせてもらったなかで、新しい発見がありましたし、自分の中で気持ち良い部分や、どのテンポが自分はノリやすいのかというものも見つけたんです。だからこそ今後は、そういった強味みたいなものをわかったうえで曲を作れそうだと感じています。今回見つけた武器を強化した楽曲や、その真逆で「すごく苦手そうだけど、大丈夫?」みたいな曲も出てきたりするかもしれない。視野を広くとった楽曲もやっていきたいですし、めっちゃ流行に乗ることもあれば、そこに逆らっていくこともあるかもしれない。そのときそのときに楽しそうだなと思うことをやっていきたいと思っています。
その「楽しい」というものをみんなと共有して、もっと楽しくやっていけたらいいよね、ということを念頭に置いた音楽を作れたらいいなと思います。今まで演じてきたキャラクターの要素をどこかしら感じられるようなことももしかしたらやるかもしれないですし。そういった意味では毎回びっくり箱みたいな活動でありたいです。音楽性を狭めずチャレンジ精神をもって僕自身も楽しんでいこうと思っています。いろんな方と曲を通してお仕事ができたらと思っていますし、僕の知らない世界に曲を通して連れていってもらえるとも思っています。だからその知らない世界へみんなのことも連れていけたらいいなと思っています。突然冒険するかもしれませんが、そのときには引かないでくださいね(笑)。皆さんには、旅の仲間としてそんな僕の冒険に付いてきてもらえたら嬉しいです。
●リリース情報
山下大輝 1st EP
「hear me?」
2021年6月9日(水)発売
【初回限定盤(CD+DVD)】
価格:¥3,500(税込)
品番:AZZS-115
【通常盤(CD)】
価格:¥2,200(税込)
品番:AZCS-1099
〈収録楽曲〉
1. 列偶像
作詞・作曲:渡 辺翔 編曲:Naoki Itai
2. Tail
作詞:松原さらり 作曲・編曲:南田健吾
3. Hello
作詞・作曲・編曲:佐伯youthK
4. I’m in love
作詞:Kanata Okajima 作曲・編曲:白戸佑輔
5. 誰かを
作詞・作曲・編曲:清 竜人
関連リンク
山下大輝オフィシャルサイト
https://yamashitadaiki.com/
TVアニメ『セブンナイツ レボリューション -英雄の継承者-』
https://sevenknights-anime.jp