北海道を拠点に活動し、ゲーム音楽とアニメ音楽において2000年代からシーンを席巻してきた音楽集団、I’ve。かつてKOTOKOや川田まみが所属していたI’veに、伝説的バンドが存在していた。
そんなOuterが遊結(解散)した2012年以来の再結成を果たし、アルバム『Rebellious Easter』をリリースする。I’veの20年史とシンクロするOuterの歴史、そして待望のニューアルバムについてKOTOKOと高瀬の二人に話を聞いた。
――というわけで、2012年の遊結以来となるOuterの再結成、さらには音源としてもそれ以来となるメジャーデビューアルバム『Rebellious Easter』がいよいよリリースとなります。
KOTOKO そうなんですよ。
高瀬一矢 メジャーデビューアルバムなんだよね(笑)。
――そんな新作のお話をする前に、まずは改めてOuterの歴史を伺いたいなと。まず、KOTOKOさんのデビューが2000年ですが、その頃に結成されたのですか?
高瀬 厳密には1999年かな?
KOTOKO そうだねえ。
高瀬 「発情カルテ」っていうゲームの……。
KOTOKO あまり書けないけど(笑)。そのゲームの主題歌で。
――KOTOKOさんとしては、I’veではほぼ同時期にソロもOuterも始動していたわけですね。そもそもOuter結成のきっかけはなんだったのですか?
高瀬 別に結成というほどではないんですけど、俺が昔パンクバンドをやっていたじゃないですか。そこからパンクバンドと打ち込みの融合、ミクスチャーという、俺の趣味で始めたバンドなんですよ。で、当時KOTOKOちゃんと出会ったのも運命的なもので、雷が地面に導かれて落ちるような感じで、KOTOKOちゃんにはオーディションの段階で色々やらせていたんですよね、「こんな歌い方できるかい?」とか。そしたらこの子なんでもやってくれるなって(笑)。
KOTOKO ふふふふ(笑)。
高瀬 それでOuterでやってみようと思ったのがきっかけですね。
KOTOKO 最初の曲、「Synthetic Organism」のときは音資料一切なしで、「とりあえず来て」って言われて。スタジオに行ってその場でいきなり覚えていきなり歌ったんですよ、練習もせずに。
高瀬 そうだっけ? スタジオがまだ別の場所の時?
KOTOKO そうそう。なんの資料もなしにスタジオに行って、それでいきなり曲覚えてって、それで覚えたら「こんな感じで歌って」って言われて、がなりもわからないから「どうやったらいいですか?」って言いながら最初にやったのが、あのOuterのがなりなんですね。そんな感じでがなってみてって言われて。
高瀬 無茶言うね、俺(笑)。
KOTOKO はい、すごい無茶でした!(笑)。「そんなのやったことないし!」って。
高瀬 その頃って今みたいにメジャーのカチカチっとした仕事ではなかったので、だからこそあんなことができたんだなって思いますね。
――あとから知る人間としてはKOTOKOさんのボーカルのイメージがあったので、それがOuterではあんなにがなるのかと衝撃を受けたというか。それこそ過去のI’veのライブにもOuterとして出演していましたが、あのインパクトがすごかったというか。
高瀬 ありましたね、はい(笑)。
――バンドが音を鳴らして高瀬さんが何か叫んだあとに、KOTOKOさんが登場して……。
KOTOKO 「キュンキュンしてんじゃねえよ!」って(笑)。
高瀬 「おまいら!」って。
KOTOKO そう、”お前ら”じゃなくてね。当時は2ちゃんねるで”おまいら”って言ってたんですよね。それを真似してやって。ふざけたバンドだったのでなんでもありだったんですよ。
高瀬 パンクバンドでもあるじゃないですか、「お前ら座ってんじゃねえ!」っていう。あれをもう少し柔らかく皆さんにお届けしたいというのがあったんですけどね(笑)。
KOTOKO そのあとにコミケ用に作った「L.A.M -laze and meditation-」もやばかったですよね。コミケ用に作った曲で、MVも撮ったんですけど。そのときは脳味噌とかを投げつけようとかいって、白子を買ってきてそこに血糊をつけて、廃墟の壁にぶつけたりとか(笑)。
高瀬 やったやった(笑)。
KOTOKO メイクもマリリン・マンソンみたいにしたかったんだけど、メイクさんが間違えて眉毛をつなげちゃって、こち亀の両さんみたいになっちゃって(笑)。
高瀬 本官ね(笑)。
KOTOKO ”本官メイク”って言われて、その映像はお蔵入りになっちゃったんですけど。
高瀬 今でも探せば観られるのかな?
KOTOKO あと、スモークを薫くお金もなかったから、廃墟の床に積もった埃をみんなでバタバタ扇いで、スモークの代わりにしてね、結構手作りでね。
高瀬 スモークも今みたいにAmazonやサウンドハウスで買える時代じゃなかったからね。それが2000年前後ですね。
KOTOKO なので全部が手作りでしたよね。
高瀬 MVは廃墟で撮ったんだよね、病院の。
KOTOKO そうですね。
高瀬 そこで、車で来てくれてその場で作ってくれるラーメンの出前とったんですよ。うまかったなあ(笑)。
KOTOKO 「10人前なんで!」って言ったら札幌から1時間ぐらいかけて持ってきてくれて。真冬の廃墟だったから、雨漏りの水で階段で凍りついちゃって、それはそれでかっこよかったんですけどね。
高瀬 廃病院なんだけど、別に心霊現象があるわけではなくて。なんなら近所のおじさんがきて、最初は「お前ら冷やかしに来たのか!」って怒られて。「いや違うんです、こうこうこういうビデオを撮っていて……」って説明したら、「そうか!」って機嫌良くなっちゃって、食いきれないぐらいの鹿肉くれて持って帰った覚えがありますよね。
KOTOKO それを事務所のガレージで焼いて食べたんですよね。
高瀬 おいしかったよね(笑)。
――まさにやることなすことパンクバンドらしいDIYなスタイルだったと。
KOTOKO そうですそうです。本当にパンクバンドだったんですよ。
高瀬 当時I’veは一から全部作るということをやっていたんですよね。色んなことを最初から経験しようということで、そういうことがOuterではできてたんですよね。
――そんなOuterがおよそ8年ぶりに再結成を果たしたわけですが、このきっかけは高瀬さんのアイデアだったんですか?
高瀬 いや、あのね、僕はOuterをやるとは思っていなくて。去年の10月ぐらいに西村(潤/NBCユニバーサル プロデューサー)さんに電話して、「I’veの20周年に何かやりたいんですよ」って話していたんですよ、そこで「Outerどうだい?」って話になって。
KOTOKO なんとなんと、西村さんからのアイデアなんですよ。
高瀬 それからしばらく寝かせて、今年の2月か3月ぐらいに決定して、じゃあやりましょうと。それで発売とライブも決定したんですよね。
KOTOKO そうなんですよ。もうちょっと早く始めてもらえたらとてもうれしかったんですけど……私のツアーとどん被りで(笑)。
高瀬 Outerをまたやるということに対して俺が煮え切らなくて。ギターからも離れていたし、もうやらないと思っていたし、ほかにもやることあったから、ここまで寝かせちゃったというのはありますね。
――そうしたOuter再結成の話を聞いたKOTOKOさんの反応は?
KOTOKO 私は正直いうと、遊結したくなかったし、もう1回やるならやりたい、ぜひいつか復活させたいなって思っていたコンテンツだったので、お話がきたときは「よっしゃー! やりましょうやりましょう!」って。たぶん私が一番ノリノリだったと思います。西村さんにもかねてから「Outerどうしたい?」って言われていたときも、私は「やりたい」って言っていたので、私は今回すごく嬉しいですね。
――またKOTOKOさんのメジャー15周年を前後して高瀬さんや中沢伴行さんと作ったアルバム『tears cyclone』シリーズや、ゲーソンBOX『The Bible』とその流れが出来たあとの再結成というのも美しいですよね。
高瀬 あとはOuter、っていうね。
KOTOKO 私にとってはKOTOKO以外のもう1つの顔として、KOTOKOでやりきれていなかった部分を思い切りやれるという場所だったから、本当に大事だったんですよ。私にとっては大切な場所が復活したということで、すごくイキイキしていましたね。これまでの数年間の鬱憤がこの1枚に出せたし、歌詞もやばいことになっていたので、なんなら何回かNGが出るくらいで(笑)。
――それぐらい作詞に関しても攻めているという。
KOTOKO 過去イチ攻めています。これまでのOuterよりも攻めています。
高瀬 そこはジャケットにも現れているもんね。
――そうした復活Ourterの新作『Rebellious Easter』ですが、どのように制作されていきましたか?
高瀬 まずタイトルからで、KOTOKOちゃんから「”復活”みたいなタイトルを入れたい」というのがあって、復活を意味する”Easter”というのを入れたらどうだい?って話になって、それでこのタイトルになったんですよね。それで俺としては、再結成するのだから意外性を求めたかったんですよ。だから1曲目の「omen」でああいう曲が出来たんですね。「28日後…」というゾンビ映画のテーマ曲がああいう感じなんですよ。それを取り入れたいかなっていうのもあって。それで次に作ったのがタイトル曲で、目指すべきところとしてはそこかなと。
――いわゆるパンクサウンドとI’veらしいダンスミュージックの融合ですね。
高瀬 あとは「ジェイルを破れ!」でいうとメロコア、例えばメストとかHi-STANDARDとかの感じですかね。
――一方でKOTOKOさんとしては作詞ですが、表題曲などでも復活を印象づける勢いもありつつ、Outerでのワードチョイスを感じさせるものでしたね。
KOTOKO 表題曲ではOuter復活ということをストレートに表すような、「これぞOuter」ですというのを1曲作りたいという思いで書きました。あとOuterらしい言葉をそこかしこに散りばめつつ、そこに”復活祭”というのを入れたかったんですよね。ただのメジャーデビューとかじゃなくて、1回墓の下で眠らされて地獄に落ちて(笑)、「早く復活したい~!」という怨念を持って地上に戻ってきた、その感じを1曲に込めたいと思って。ただの復活ではなく、キリストの復活のような壮大なものを表現したかったんですよね。なので、歌詞も大袈裟なぐらいの言葉を使って書きました。
――KOTOKOさんとしてもOuter復活を大きく意識した作品作りになったという。
KOTOKO 高瀬さんも「Outerに気持ちがシフトしなかった」って言っていたじゃないですか。実は私も同じで、この5年間ぐらいで丸くなってしまって、あまり“怒り”の感情というものが出なくなってしまって。
高瀬 それはあるね。
KOTOKO 無理やり怒りを自分でシフトさせたというか、忘れていた負の感情というのを思い出すのに結構時間がかかりましたね。気持ちが穏やかになっちゃったんですよね。何が起こっても「まあしょうがないじゃん」って大人になったというか、穏やかになったというか。
高瀬 丸くなったことは悪いことではないんだけどね。
KOTOKO そう、人間としては良い方向に向かっているはずなんですけど、Outerの一番大事な精神である怒りが自然と出なくなってしまって、難しかったんですよね。
高瀬 じゃあ昔は怒りが出ていたってことかい?
KOTOKO 出てましたよ。私怒ってばっかりだったじゃないですか(笑)。何かと小さなことでも怒ってたんですよ。怒りのパワーで活動していたぐらいで。
高瀬 まあそうだよなあ。
KOTOKO 怒りのパワーがないと歌詞が書けないぐらいで。今はそこから遠ざかって普通に書けるようになって、それが成長といえば成長なんですけど、Outerのパンクな精神ってそこじゃないから。あまり達観してしまうと面白くないかなって。達観できずにいるもっとどろどろしたものや、生まれたての人間の泥臭さとか。
高瀬 剥き出しのね。
KOTOKO そうそう、剥き出しの部分をOuterでは出したかったんですよね。そういう精神は自分をシフトしないと書けなくて、最初の2曲ぐらいは悩みました。そこから昔の自分が戻ってきたんですよね。
高瀬 3曲目はなんだっけ?
KOTOKO 3曲目は「EaRtHwOrM」。そこで「よしっ!」って思って、ちょっと現代の社会の奴らに物申してやる機会がようやく来たと思って。KOTOKOでは言えなかったことがOuterならいいやと思って、もうぞろぞろぞろって出てきたんですよ。そこからは拍車がかかって大変でしたけどね(笑)。
――たしかに「EaRtHwOrM」や、次の「Masturbation」での振り切り方はすごいものがありますよね。
KOTOKO タイトルを「Masturbation」にしようって思ったときに「よっしゃきた!」って(笑)。こんなタイトルがつけられるのが嬉しくてしょうがなくて。
――そうしたワードチョイスもそうですし、語尾1つとってもソロでの歌詞とはまた違う荒々しさがありますよね。それがまたアグレッシブなサウンドやメロディとピタリと合っているのはさすがだなと。
KOTOKO そうですね、スイッチ切り替わると、メロディに対しても勝手にそういう感じになりますよね。
高瀬 KOTOKOちゃんが使ったらそこまで汚い言葉遣いに聴こえないんだよね。どこかでかわいいから、言葉を汚くしてもOKなんですよ。
KOTOKO 風貌とか声質で許されている感じがあるんですかね。
高瀬 これが普通のパンクバンドだったら観客と大暴れって感じだけど、そうじゃないじゃん。ちょうどいい感じなのかな。
KOTOKO 背の小さい女性ボーカルが言うからやんちゃで、「頑張ってる頑張ってる! 精一杯吠えている!」っていう感じなんですかね。
――またKOTOKOさんと高瀬さんのほかにもOuterには中沢さんがメンバーとしても名を連ねています。本作では「Masturbation」や「Red fractionT - ranscendence mix -」のアレンジで参加していますが、Outer再結成についてはどんなお話をされましたか?
高瀬 いや、もうほとんど話はしてないですね。「Outerだから」って発注をして、俺はもう中沢を信頼しているから、実際バッチリしたものがあがってきたし。そういう意味では何も注文していないですね。
KOTOKO でもね、「Red fraction」はめちゃくちゃ悩んでいたよね(笑)。
高瀬 ほかの曲もあいつは悩んでいる(笑)。
KOTOKO 「Red fraction」は特に悩んで、マスタリングの前日まで悩んで何パターンもオケを出してくれましたよね。
高瀬 5、6回ぐらいトラック変えてきましたからね。「Red fraction」って俺が3回ぐらいリミックスして、それもあって中沢に頼んだんですけどね。
KOTOKO みんなが大好きで、かっこいいと思っている原曲があるから、そこに対するプレッシャーは相当なものがあると思うんですよ。私も歌うのちょっと躊躇しましたもん。だってMELLさんのオリジナルはかっこいいし、あれは越えられないから。じゃあどうすればいいんだろうっていうので、原曲好きな気持ちも汚さず、ちゃんとOuter風味でっていうところに持っていかないといけないから、そういう意味ではプレッシャーで。
――たしかに「Red fraction」はI’veのみならずアニソン全体でも語り継がれるアンセムですからね。
KOTOKO 今回カバーする候補は何曲かあってそこに「Red fraction」は最初から入っていて、たしかにOuterでやればかっこいいのは想像つくからすごくいいと思ったんだけど、「これを歌うんだ」って一瞬迷いましたね。でもそういう機会もないし、せっかくだからと思って「面白そうだからいきましょう」って。だから中沢さんもプレッシャーだったんだろうなと思いますね。
――本作はそのほかにも過去のI’ve楽曲のOuterバージョンでのカバーが収録されていますが、そのなかでも「めぃぷるシロップ - The wolf inside mix -」「ねぇ、…しようよ!- Outer Burst mix -」という電波ソングが収録されていますね。
KOTOKO これね、元々”デンパンク”というものをやろうという話が上がっていて、高瀬さんが「めぃぷるシロップ」とかが好きだって言ってくれていて、いつかOuterでやりたいねって話していたんですよ。
高瀬 昔”B.G.M Festival”というイベントに出たときに「めぃぷるシロップ」はやったよね。電波をパンクにするというのはありだと思うんですよ、全然。
――また「ねぇ、…しようよ!」のカバーも、男性コーラスも入って最高ですね。
KOTOKO だいぶふざけていますよねこれ(笑)。もうめちゃくちゃ楽しかったです。
高瀬 僕のボーカルはKOTOKOちゃんがエンジニアしてくれてね。
KOTOKO そう、私が歌ったあとは高瀬さんと入れ替わって私がエンジニアをやって、二人で和気藹々と。「今の叫びいいですね!」って(笑)。”お姉ちゃんは好きですか?””好きです!”っていうのがまたよくて。
高瀬 あれはKOTOKOちゃんが歌っているときに俺がそう言ったんだよね。思わず”好きです!”って言ってしまったという。
KOTOKO そうそう、 あれがタイミングといいキレといい最高だったので。
――そうした曲調のなかでもボーカルは少し強めなお姉ちゃんというか、Outerらしくなっていますね。
KOTOKO ボーカルは悩みましたよね。オケはかわいいんだけど歌はかっこいいのか、歌までかわいくパンクっぽくするのもありだし、どれがいいだろうってブースで試しましたね。「ねぇ、…しようよ!」はかっこいい歌い方にして、「めぃぷる」は歌はかわいいままに落ち着いて。
高瀬 「ねえ、…しようよ!」はね、最初からマイナーコードにしているので。それに対して「めぃぷるシロップ」は頭にアクセントがあるから、かっこよくするとなんか変なんですよ。
KOTOKO 演歌っぽくなる。
高瀬 だから「めぃぷる」はかわいく、拡声器を持って歌っているようなイメージで。
――「めぃぷるシロップ」はインド風味のフレーズもフレッシュですね。
KOTOKO あのエスニック最高ですよね。
――こうして改めて聴くと、電波ソングとOuterの相性はバッチリですね。実は歌詞もスレスレな内容だったりするし。
KOTOKO 元々そうなんですよ、電波も精神はかなりパンクなんですよね。歌い方はかわいいんだけど、こんなのやっちゃえっていうやんちゃな精神はパンクだから、サウンドがゴリゴリになっても合う。思った通りになりましたね。
高瀬 でも、カバー曲を決めたのは俺なんですけど、決めたあとにどうしようかってめちゃめちゃ悩みましたよ。
KOTOKO 悩んでいたねえ(笑)。
高瀬 どうしようかなって。ちなみに今回はピアノじゃなくてギターから作っているのが多いんですよ。それもあってああいうサウンドが生まれたんじゃないですかね。
――そこも普段とは異なるアプローチになるわけですね。しかも短い期間で一気に作るというか。
高瀬 最後は力尽きた状態で作っていたからね。「いやもう勘弁して!」っていう感じで(笑)。
――そんなアルバムをリリースしたあとは、7月に一夜限りのワンマンライブが開催されます。
KOTOKO もうあっという間ですよ!
高瀬 やばいねえ。
KOTOKO 私はずっとライブ活動をしているんですけど、ほかのメンバーは生のライブから離れている方が多いので、どうなるのかなっていうのが楽しみですね。
――一度だけという実にプレミアムなライブですからね、どうなるか楽しみです。
高瀬 東京で一夜限りっていうことだよね?
KOTOKO そうですね。コロナが明けたらワールドツアーをやるかもしれない。ロサンゼルスで一夜限り、上海で一夜限りってやるかもしれない?(笑)
高瀬 その場所での一夜限りってことだよね。
――わははは、物は言いようですね!(笑)。
KOTOKO でもそれは東京のお客さんの反応によってで、そこで「よかったね」っていう声が多ければまたの機会も増えてくるかもしれないので、まずはアルバム聴いて、がっつりライブを楽しんでほしいなと思います。
INTERVIEW & TEXT BY 澄川龍一
●リリース情報
Outer アルバム
『Rebellious Easter』
2021年6年23日(水)発売
品番:GNCV-0101
価格:¥3,300円(税込)
<収録曲(全13曲)>
01.omen
作詞: KOTOKO/作編曲 : 高瀬一矢
02.Elimination(CRブラックラグーン3テーマ曲)
作詞: KOTOKO/作編曲 : 高瀬一矢
03.Rebellious Easter
作詞: KOTOKO/作編曲 : 高瀬一矢
04.EaRtHwOrM
作詞: KOTOKO/作編曲 : 高瀬一矢
05.Masturbation
作詞: KOTOKO/作編曲 : 中沢伴行
06.明日の向こう - Will you take my hand mix -
作詞曲: 高瀬一矢/編曲 : 高瀬一矢
07.ハレルヤ?!
作詞: KOTOKO/作編曲 : 中沢伴行
08.めぃぷるシロップ - The wolf inside mix -
作詞: KOTOKO/作曲 : C.G mix/編曲 : 高瀬一矢
09.Red fraction - Transcendence mix -
作詞: MELL/作曲 : 高瀬一矢/編曲 : 中沢伴行
10.ねぇ、…しようよ!- Outer Burst mix -
作詞: KOTOKO/作曲 : 中沢伴行/編曲 : 高瀬一矢
11.裁
作詞: KOTOKO/作編曲 : 高瀬一矢
12.ジェイルを破れ!
作詞: KOTOKO/作編曲 : 高瀬一矢
13.Chatty Cemetery
作詞: KOTOKO/作編曲 : 高瀬一矢
●ライブ情報
Outer 一夜限りの復活ライブ!
「I’ve 20th Anniversary PRESENTS 「Outer one-night stand GIG “Rebellious Easter”」
日時:7月4日(日)開場:16:00/開演:17:00
会場:東京・豊洲 PIT
チケット:一般発売中
<Outerプロフィール>
KOTOKO Vo. 2000年9月23日、「Synthetic Organism」でボーカルデビュー。 2004年4月21日、メジャーデビュー。 その活動は、幅広く自ら歌唱活動を続ける他、自身で作詞・作曲も手掛け、他のボーカリストへの歌詞提供も行う。 高瀬一矢 Gtr. I’veの代表にしてゲーム楽曲からKOTOKOをはじめとするボーカリストのプロデュースまでをトータルに手掛けるメインコンポーザー。 作曲・編曲を担当。 中沢伴行 Synth. 川田まみのプロデューサーとして活動しつつ他、メジャーアーティストに多数楽曲を提供。 2019年3月1日、「JOINT」が平成アニソン大賞の編曲賞に選出される。 作曲・編曲を担当。 尾崎武士 Gtr. 高瀬氏がプロデュースしたバンド 「COWPOKES」 の元ギタリスト。 多数の楽曲にギターアレンジ、編曲として参加。 板垣直基 Bass. トータルディレクターとしてI’ve作品のアルバムのジャケットやインナーを手がける。 Outer結成時より、Bassとして参加。
関連リンク
I’ve Sound 公式サイト
http://www.ive.mu/
KOTOKO×NBCユニバーサル公式サイト
https://nbcuni-music.com/kotoko/
その名はOuter。I’veの中心人物・高瀬一矢とKOTOKOらをメンバーから成るこのバンドは、I’veが切り開いたダンスミュージックと高瀬のルーツにあるパンクサウンドが融合したものでI’veの中でもカルト的な人気を誇っていた。
そんなOuterが遊結(解散)した2012年以来の再結成を果たし、アルバム『Rebellious Easter』をリリースする。I’veの20年史とシンクロするOuterの歴史、そして待望のニューアルバムについてKOTOKOと高瀬の二人に話を聞いた。
――というわけで、2012年の遊結以来となるOuterの再結成、さらには音源としてもそれ以来となるメジャーデビューアルバム『Rebellious Easter』がいよいよリリースとなります。
KOTOKO そうなんですよ。
高瀬一矢 メジャーデビューアルバムなんだよね(笑)。
――そんな新作のお話をする前に、まずは改めてOuterの歴史を伺いたいなと。まず、KOTOKOさんのデビューが2000年ですが、その頃に結成されたのですか?
高瀬 厳密には1999年かな?
KOTOKO そうだねえ。
高瀬 「発情カルテ」っていうゲームの……。
KOTOKO あまり書けないけど(笑)。そのゲームの主題歌で。
実はKOTOKO名義より先に出ているんですよ。ゲーム自体は2000年の8月に出ていて、KOTOKO名義の曲が使われたゲームは2000年の12月に出ているので、Outerのほうが先に発表されてしまって。そのときKOTOKOの名前はまだクレジットされてなかったんですけど、歌声として世に出たのはOuterのほうが先なんですよね。
――KOTOKOさんとしては、I’veではほぼ同時期にソロもOuterも始動していたわけですね。そもそもOuter結成のきっかけはなんだったのですか?
高瀬 別に結成というほどではないんですけど、俺が昔パンクバンドをやっていたじゃないですか。そこからパンクバンドと打ち込みの融合、ミクスチャーという、俺の趣味で始めたバンドなんですよ。で、当時KOTOKOちゃんと出会ったのも運命的なもので、雷が地面に導かれて落ちるような感じで、KOTOKOちゃんにはオーディションの段階で色々やらせていたんですよね、「こんな歌い方できるかい?」とか。そしたらこの子なんでもやってくれるなって(笑)。
KOTOKO ふふふふ(笑)。
高瀬 それでOuterでやってみようと思ったのがきっかけですね。
KOTOKO 最初の曲、「Synthetic Organism」のときは音資料一切なしで、「とりあえず来て」って言われて。スタジオに行ってその場でいきなり覚えていきなり歌ったんですよ、練習もせずに。
高瀬 そうだっけ? スタジオがまだ別の場所の時?
KOTOKO そうそう。なんの資料もなしにスタジオに行って、それでいきなり曲覚えてって、それで覚えたら「こんな感じで歌って」って言われて、がなりもわからないから「どうやったらいいですか?」って言いながら最初にやったのが、あのOuterのがなりなんですね。そんな感じでがなってみてって言われて。
高瀬 無茶言うね、俺(笑)。
KOTOKO はい、すごい無茶でした!(笑)。「そんなのやったことないし!」って。
高瀬 その頃って今みたいにメジャーのカチカチっとした仕事ではなかったので、だからこそあんなことができたんだなって思いますね。
――あとから知る人間としてはKOTOKOさんのボーカルのイメージがあったので、それがOuterではあんなにがなるのかと衝撃を受けたというか。それこそ過去のI’veのライブにもOuterとして出演していましたが、あのインパクトがすごかったというか。
高瀬 ありましたね、はい(笑)。
――バンドが音を鳴らして高瀬さんが何か叫んだあとに、KOTOKOさんが登場して……。
KOTOKO 「キュンキュンしてんじゃねえよ!」って(笑)。
高瀬 「おまいら!」って。
KOTOKO そう、”お前ら”じゃなくてね。当時は2ちゃんねるで”おまいら”って言ってたんですよね。それを真似してやって。ふざけたバンドだったのでなんでもありだったんですよ。
高瀬 パンクバンドでもあるじゃないですか、「お前ら座ってんじゃねえ!」っていう。あれをもう少し柔らかく皆さんにお届けしたいというのがあったんですけどね(笑)。
KOTOKO そのあとにコミケ用に作った「L.A.M -laze and meditation-」もやばかったですよね。コミケ用に作った曲で、MVも撮ったんですけど。そのときは脳味噌とかを投げつけようとかいって、白子を買ってきてそこに血糊をつけて、廃墟の壁にぶつけたりとか(笑)。
高瀬 やったやった(笑)。
KOTOKO メイクもマリリン・マンソンみたいにしたかったんだけど、メイクさんが間違えて眉毛をつなげちゃって、こち亀の両さんみたいになっちゃって(笑)。
高瀬 本官ね(笑)。
KOTOKO ”本官メイク”って言われて、その映像はお蔵入りになっちゃったんですけど。
高瀬 今でも探せば観られるのかな?
KOTOKO あと、スモークを薫くお金もなかったから、廃墟の床に積もった埃をみんなでバタバタ扇いで、スモークの代わりにしてね、結構手作りでね。
高瀬 スモークも今みたいにAmazonやサウンドハウスで買える時代じゃなかったからね。それが2000年前後ですね。
KOTOKO なので全部が手作りでしたよね。
高瀬 MVは廃墟で撮ったんだよね、病院の。
KOTOKO そうですね。
高瀬 そこで、車で来てくれてその場で作ってくれるラーメンの出前とったんですよ。うまかったなあ(笑)。
KOTOKO 「10人前なんで!」って言ったら札幌から1時間ぐらいかけて持ってきてくれて。真冬の廃墟だったから、雨漏りの水で階段で凍りついちゃって、それはそれでかっこよかったんですけどね。
高瀬 廃病院なんだけど、別に心霊現象があるわけではなくて。なんなら近所のおじさんがきて、最初は「お前ら冷やかしに来たのか!」って怒られて。「いや違うんです、こうこうこういうビデオを撮っていて……」って説明したら、「そうか!」って機嫌良くなっちゃって、食いきれないぐらいの鹿肉くれて持って帰った覚えがありますよね。
KOTOKO それを事務所のガレージで焼いて食べたんですよね。
高瀬 おいしかったよね(笑)。
――まさにやることなすことパンクバンドらしいDIYなスタイルだったと。
KOTOKO そうですそうです。本当にパンクバンドだったんですよ。
高瀬 当時I’veは一から全部作るということをやっていたんですよね。色んなことを最初から経験しようということで、そういうことがOuterではできてたんですよね。
――そんなOuterがおよそ8年ぶりに再結成を果たしたわけですが、このきっかけは高瀬さんのアイデアだったんですか?
高瀬 いや、あのね、僕はOuterをやるとは思っていなくて。去年の10月ぐらいに西村(潤/NBCユニバーサル プロデューサー)さんに電話して、「I’veの20周年に何かやりたいんですよ」って話していたんですよ、そこで「Outerどうだい?」って話になって。
KOTOKO なんとなんと、西村さんからのアイデアなんですよ。
高瀬 それからしばらく寝かせて、今年の2月か3月ぐらいに決定して、じゃあやりましょうと。それで発売とライブも決定したんですよね。
KOTOKO そうなんですよ。もうちょっと早く始めてもらえたらとてもうれしかったんですけど……私のツアーとどん被りで(笑)。
高瀬 Outerをまたやるということに対して俺が煮え切らなくて。ギターからも離れていたし、もうやらないと思っていたし、ほかにもやることあったから、ここまで寝かせちゃったというのはありますね。
――そうしたOuter再結成の話を聞いたKOTOKOさんの反応は?
KOTOKO 私は正直いうと、遊結したくなかったし、もう1回やるならやりたい、ぜひいつか復活させたいなって思っていたコンテンツだったので、お話がきたときは「よっしゃー! やりましょうやりましょう!」って。たぶん私が一番ノリノリだったと思います。西村さんにもかねてから「Outerどうしたい?」って言われていたときも、私は「やりたい」って言っていたので、私は今回すごく嬉しいですね。
――またKOTOKOさんのメジャー15周年を前後して高瀬さんや中沢伴行さんと作ったアルバム『tears cyclone』シリーズや、ゲーソンBOX『The Bible』とその流れが出来たあとの再結成というのも美しいですよね。
高瀬 あとはOuter、っていうね。
KOTOKO 私にとってはKOTOKO以外のもう1つの顔として、KOTOKOでやりきれていなかった部分を思い切りやれるという場所だったから、本当に大事だったんですよ。私にとっては大切な場所が復活したということで、すごくイキイキしていましたね。これまでの数年間の鬱憤がこの1枚に出せたし、歌詞もやばいことになっていたので、なんなら何回かNGが出るくらいで(笑)。
――それぐらい作詞に関しても攻めているという。
KOTOKO 過去イチ攻めています。これまでのOuterよりも攻めています。
高瀬 そこはジャケットにも現れているもんね。
――そうした復活Ourterの新作『Rebellious Easter』ですが、どのように制作されていきましたか?
高瀬 まずタイトルからで、KOTOKOちゃんから「”復活”みたいなタイトルを入れたい」というのがあって、復活を意味する”Easter”というのを入れたらどうだい?って話になって、それでこのタイトルになったんですよね。それで俺としては、再結成するのだから意外性を求めたかったんですよ。だから1曲目の「omen」でああいう曲が出来たんですね。「28日後…」というゾンビ映画のテーマ曲がああいう感じなんですよ。それを取り入れたいかなっていうのもあって。それで次に作ったのがタイトル曲で、目指すべきところとしてはそこかなと。
――いわゆるパンクサウンドとI’veらしいダンスミュージックの融合ですね。
高瀬 あとは「ジェイルを破れ!」でいうとメロコア、例えばメストとかHi-STANDARDとかの感じですかね。
――一方でKOTOKOさんとしては作詞ですが、表題曲などでも復活を印象づける勢いもありつつ、Outerでのワードチョイスを感じさせるものでしたね。
KOTOKO 表題曲ではOuter復活ということをストレートに表すような、「これぞOuter」ですというのを1曲作りたいという思いで書きました。あとOuterらしい言葉をそこかしこに散りばめつつ、そこに”復活祭”というのを入れたかったんですよね。ただのメジャーデビューとかじゃなくて、1回墓の下で眠らされて地獄に落ちて(笑)、「早く復活したい~!」という怨念を持って地上に戻ってきた、その感じを1曲に込めたいと思って。ただの復活ではなく、キリストの復活のような壮大なものを表現したかったんですよね。なので、歌詞も大袈裟なぐらいの言葉を使って書きました。
――KOTOKOさんとしてもOuter復活を大きく意識した作品作りになったという。
KOTOKO 高瀬さんも「Outerに気持ちがシフトしなかった」って言っていたじゃないですか。実は私も同じで、この5年間ぐらいで丸くなってしまって、あまり“怒り”の感情というものが出なくなってしまって。
高瀬 それはあるね。
KOTOKO 無理やり怒りを自分でシフトさせたというか、忘れていた負の感情というのを思い出すのに結構時間がかかりましたね。気持ちが穏やかになっちゃったんですよね。何が起こっても「まあしょうがないじゃん」って大人になったというか、穏やかになったというか。
高瀬 丸くなったことは悪いことではないんだけどね。
KOTOKO そう、人間としては良い方向に向かっているはずなんですけど、Outerの一番大事な精神である怒りが自然と出なくなってしまって、難しかったんですよね。
高瀬 じゃあ昔は怒りが出ていたってことかい?
KOTOKO 出てましたよ。私怒ってばっかりだったじゃないですか(笑)。何かと小さなことでも怒ってたんですよ。怒りのパワーで活動していたぐらいで。
高瀬 まあそうだよなあ。
KOTOKO 怒りのパワーがないと歌詞が書けないぐらいで。今はそこから遠ざかって普通に書けるようになって、それが成長といえば成長なんですけど、Outerのパンクな精神ってそこじゃないから。あまり達観してしまうと面白くないかなって。達観できずにいるもっとどろどろしたものや、生まれたての人間の泥臭さとか。
高瀬 剥き出しのね。
KOTOKO そうそう、剥き出しの部分をOuterでは出したかったんですよね。そういう精神は自分をシフトしないと書けなくて、最初の2曲ぐらいは悩みました。そこから昔の自分が戻ってきたんですよね。
高瀬 3曲目はなんだっけ?
KOTOKO 3曲目は「EaRtHwOrM」。そこで「よしっ!」って思って、ちょっと現代の社会の奴らに物申してやる機会がようやく来たと思って。KOTOKOでは言えなかったことがOuterならいいやと思って、もうぞろぞろぞろって出てきたんですよ。そこからは拍車がかかって大変でしたけどね(笑)。
――たしかに「EaRtHwOrM」や、次の「Masturbation」での振り切り方はすごいものがありますよね。
KOTOKO タイトルを「Masturbation」にしようって思ったときに「よっしゃきた!」って(笑)。こんなタイトルがつけられるのが嬉しくてしょうがなくて。
――そうしたワードチョイスもそうですし、語尾1つとってもソロでの歌詞とはまた違う荒々しさがありますよね。それがまたアグレッシブなサウンドやメロディとピタリと合っているのはさすがだなと。
KOTOKO そうですね、スイッチ切り替わると、メロディに対しても勝手にそういう感じになりますよね。
高瀬 KOTOKOちゃんが使ったらそこまで汚い言葉遣いに聴こえないんだよね。どこかでかわいいから、言葉を汚くしてもOKなんですよ。
KOTOKO 風貌とか声質で許されている感じがあるんですかね。
高瀬 これが普通のパンクバンドだったら観客と大暴れって感じだけど、そうじゃないじゃん。ちょうどいい感じなのかな。
KOTOKO 背の小さい女性ボーカルが言うからやんちゃで、「頑張ってる頑張ってる! 精一杯吠えている!」っていう感じなんですかね。
――またKOTOKOさんと高瀬さんのほかにもOuterには中沢さんがメンバーとしても名を連ねています。本作では「Masturbation」や「Red fractionT - ranscendence mix -」のアレンジで参加していますが、Outer再結成についてはどんなお話をされましたか?
高瀬 いや、もうほとんど話はしてないですね。「Outerだから」って発注をして、俺はもう中沢を信頼しているから、実際バッチリしたものがあがってきたし。そういう意味では何も注文していないですね。
KOTOKO でもね、「Red fraction」はめちゃくちゃ悩んでいたよね(笑)。
高瀬 ほかの曲もあいつは悩んでいる(笑)。
KOTOKO 「Red fraction」は特に悩んで、マスタリングの前日まで悩んで何パターンもオケを出してくれましたよね。
高瀬 5、6回ぐらいトラック変えてきましたからね。「Red fraction」って俺が3回ぐらいリミックスして、それもあって中沢に頼んだんですけどね。
KOTOKO みんなが大好きで、かっこいいと思っている原曲があるから、そこに対するプレッシャーは相当なものがあると思うんですよ。私も歌うのちょっと躊躇しましたもん。だってMELLさんのオリジナルはかっこいいし、あれは越えられないから。じゃあどうすればいいんだろうっていうので、原曲好きな気持ちも汚さず、ちゃんとOuter風味でっていうところに持っていかないといけないから、そういう意味ではプレッシャーで。
――たしかに「Red fraction」はI’veのみならずアニソン全体でも語り継がれるアンセムですからね。
KOTOKO 今回カバーする候補は何曲かあってそこに「Red fraction」は最初から入っていて、たしかにOuterでやればかっこいいのは想像つくからすごくいいと思ったんだけど、「これを歌うんだ」って一瞬迷いましたね。でもそういう機会もないし、せっかくだからと思って「面白そうだからいきましょう」って。だから中沢さんもプレッシャーだったんだろうなと思いますね。
――本作はそのほかにも過去のI’ve楽曲のOuterバージョンでのカバーが収録されていますが、そのなかでも「めぃぷるシロップ - The wolf inside mix -」「ねぇ、…しようよ!- Outer Burst mix -」という電波ソングが収録されていますね。
KOTOKO これね、元々”デンパンク”というものをやろうという話が上がっていて、高瀬さんが「めぃぷるシロップ」とかが好きだって言ってくれていて、いつかOuterでやりたいねって話していたんですよ。
高瀬 昔”B.G.M Festival”というイベントに出たときに「めぃぷるシロップ」はやったよね。電波をパンクにするというのはありだと思うんですよ、全然。
――また「ねぇ、…しようよ!」のカバーも、男性コーラスも入って最高ですね。
KOTOKO だいぶふざけていますよねこれ(笑)。もうめちゃくちゃ楽しかったです。
高瀬 僕のボーカルはKOTOKOちゃんがエンジニアしてくれてね。
KOTOKO そう、私が歌ったあとは高瀬さんと入れ替わって私がエンジニアをやって、二人で和気藹々と。「今の叫びいいですね!」って(笑)。”お姉ちゃんは好きですか?””好きです!”っていうのがまたよくて。
高瀬 あれはKOTOKOちゃんが歌っているときに俺がそう言ったんだよね。思わず”好きです!”って言ってしまったという。
KOTOKO そうそう、 あれがタイミングといいキレといい最高だったので。
――そうした曲調のなかでもボーカルは少し強めなお姉ちゃんというか、Outerらしくなっていますね。
KOTOKO ボーカルは悩みましたよね。オケはかわいいんだけど歌はかっこいいのか、歌までかわいくパンクっぽくするのもありだし、どれがいいだろうってブースで試しましたね。「ねぇ、…しようよ!」はかっこいい歌い方にして、「めぃぷる」は歌はかわいいままに落ち着いて。
高瀬 「ねえ、…しようよ!」はね、最初からマイナーコードにしているので。それに対して「めぃぷるシロップ」は頭にアクセントがあるから、かっこよくするとなんか変なんですよ。
KOTOKO 演歌っぽくなる。
高瀬 だから「めぃぷる」はかわいく、拡声器を持って歌っているようなイメージで。
――「めぃぷるシロップ」はインド風味のフレーズもフレッシュですね。
KOTOKO あのエスニック最高ですよね。
――こうして改めて聴くと、電波ソングとOuterの相性はバッチリですね。実は歌詞もスレスレな内容だったりするし。
KOTOKO 元々そうなんですよ、電波も精神はかなりパンクなんですよね。歌い方はかわいいんだけど、こんなのやっちゃえっていうやんちゃな精神はパンクだから、サウンドがゴリゴリになっても合う。思った通りになりましたね。
高瀬 でも、カバー曲を決めたのは俺なんですけど、決めたあとにどうしようかってめちゃめちゃ悩みましたよ。
KOTOKO 悩んでいたねえ(笑)。
高瀬 どうしようかなって。ちなみに今回はピアノじゃなくてギターから作っているのが多いんですよ。それもあってああいうサウンドが生まれたんじゃないですかね。
――そこも普段とは異なるアプローチになるわけですね。しかも短い期間で一気に作るというか。
高瀬 最後は力尽きた状態で作っていたからね。「いやもう勘弁して!」っていう感じで(笑)。
――そんなアルバムをリリースしたあとは、7月に一夜限りのワンマンライブが開催されます。
KOTOKO もうあっという間ですよ!
高瀬 やばいねえ。
KOTOKO 私はずっとライブ活動をしているんですけど、ほかのメンバーは生のライブから離れている方が多いので、どうなるのかなっていうのが楽しみですね。
――一度だけという実にプレミアムなライブですからね、どうなるか楽しみです。
高瀬 東京で一夜限りっていうことだよね?
KOTOKO そうですね。コロナが明けたらワールドツアーをやるかもしれない。ロサンゼルスで一夜限り、上海で一夜限りってやるかもしれない?(笑)
高瀬 その場所での一夜限りってことだよね。
――わははは、物は言いようですね!(笑)。
KOTOKO でもそれは東京のお客さんの反応によってで、そこで「よかったね」っていう声が多ければまたの機会も増えてくるかもしれないので、まずはアルバム聴いて、がっつりライブを楽しんでほしいなと思います。
INTERVIEW & TEXT BY 澄川龍一
●リリース情報
Outer アルバム
『Rebellious Easter』
2021年6年23日(水)発売
品番:GNCV-0101
価格:¥3,300円(税込)
<収録曲(全13曲)>
01.omen
作詞: KOTOKO/作編曲 : 高瀬一矢
02.Elimination(CRブラックラグーン3テーマ曲)
作詞: KOTOKO/作編曲 : 高瀬一矢
03.Rebellious Easter
作詞: KOTOKO/作編曲 : 高瀬一矢
04.EaRtHwOrM
作詞: KOTOKO/作編曲 : 高瀬一矢
05.Masturbation
作詞: KOTOKO/作編曲 : 中沢伴行
06.明日の向こう - Will you take my hand mix -
作詞曲: 高瀬一矢/編曲 : 高瀬一矢
07.ハレルヤ?!
作詞: KOTOKO/作編曲 : 中沢伴行
08.めぃぷるシロップ - The wolf inside mix -
作詞: KOTOKO/作曲 : C.G mix/編曲 : 高瀬一矢
09.Red fraction - Transcendence mix -
作詞: MELL/作曲 : 高瀬一矢/編曲 : 中沢伴行
10.ねぇ、…しようよ!- Outer Burst mix -
作詞: KOTOKO/作曲 : 中沢伴行/編曲 : 高瀬一矢
11.裁
作詞: KOTOKO/作編曲 : 高瀬一矢
12.ジェイルを破れ!
作詞: KOTOKO/作編曲 : 高瀬一矢
13.Chatty Cemetery
作詞: KOTOKO/作編曲 : 高瀬一矢
●ライブ情報
Outer 一夜限りの復活ライブ!
「I’ve 20th Anniversary PRESENTS 「Outer one-night stand GIG “Rebellious Easter”」
日時:7月4日(日)開場:16:00/開演:17:00
会場:東京・豊洲 PIT
チケット:一般発売中
<Outerプロフィール>
KOTOKO Vo. 2000年9月23日、「Synthetic Organism」でボーカルデビュー。 2004年4月21日、メジャーデビュー。 その活動は、幅広く自ら歌唱活動を続ける他、自身で作詞・作曲も手掛け、他のボーカリストへの歌詞提供も行う。 高瀬一矢 Gtr. I’veの代表にしてゲーム楽曲からKOTOKOをはじめとするボーカリストのプロデュースまでをトータルに手掛けるメインコンポーザー。 作曲・編曲を担当。 中沢伴行 Synth. 川田まみのプロデューサーとして活動しつつ他、メジャーアーティストに多数楽曲を提供。 2019年3月1日、「JOINT」が平成アニソン大賞の編曲賞に選出される。 作曲・編曲を担当。 尾崎武士 Gtr. 高瀬氏がプロデュースしたバンド 「COWPOKES」 の元ギタリスト。 多数の楽曲にギターアレンジ、編曲として参加。 板垣直基 Bass. トータルディレクターとしてI’ve作品のアルバムのジャケットやインナーを手がける。 Outer結成時より、Bassとして参加。
関連リンク
I’ve Sound 公式サイト
http://www.ive.mu/
KOTOKO×NBCユニバーサル公式サイト
https://nbcuni-music.com/kotoko/
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