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予想の150%上を行く作品
――まずは衝撃的な最終回で第1クールが終わったわけですが、皆さんの感想はいかがでしたか?
千葉翔也 キャストですらビックリっていう(笑)。僕はヒロインのレーナ(ヴラディレーナ・ミリーゼ)役の長谷川育美さんとラジオをやらせていただいていて、よく感想を交わすんですが、「あれ? シンたちどうなったの?」みたいな(笑)。それはこの1クールずっとそうで、演出面や音楽面で予想の150%上を行くという感覚がありました。考えてもわからないので、むしろ逆にキャラクターに集中して演技ができた1クールだった気がします。普段、僕を応援してくださる方は女性の割合が多めなのですが、戦争や生死というテーマはハードなので、観ていただくまでのきっかけとして興味をもっていただけるか失礼ながら正直少し心配だったんです。でも、最初こそ男性からのリアクションの方が多かったのに、話が進むにつれて女性の視聴者の皆さんはキャラクター一人一人を掘り下げて観てくださるなと多く感じて、それは嬉しかったですね。
澤野弘之 僕自身は元から作品の世界観に惹かれていたところがありましたし、それが映像になって、千葉さんたちキャストの皆さんの声が入って、僕らの音楽がついたことによって、期待していた通りの部分とイメージを超えてきた部分、その両方を見ることができたのが毎週楽しかったですね。この作品は日常を明るく描くじゃないですか。日常の明るさと戦争シーンの激しさとのコントラストがあって、そこが余計に引き込まれる部分だったと思います。音楽の使われ方も“日常”と“戦争”で対比されていて、『86―エイティシックス―』という作品だからできた楽曲だと思いますね。音楽的にも映像的にも物語的に色んなものが対比されたコントラストの強さがこの作品の魅力だなと思いながら、ずっと引き込まれて観ていました。
KOHTA YAMAMOTO 僕もストーリーの大筋はあらかじめ把握して楽曲を作っていったのですが、実際に出来上がった作品を観てみると、回を増すごとに“こうなっていくのかな?”という予想が良い意味で裏切られていきましたね。楽曲の使われ方も想像していたものと違った部分があったりして、これもポジティブな意味で驚くシーンが多かったです。澤野さんのエンディング(「Avid / Hands Up to the Sky」)も、必ず同じところで流れるというわけではなく毎回毎回流れるポイントが違いましたし、Wエンディングでそのときの心情によって変わったりとか。そこがまた、演出でグッと引き込まれた部分ですし、毎回予想外のことが起きるので1話として落ち着いて観られなかったですね。音楽的な部分でもこの1クールは充実した使い方をしていただけて、すごく感謝しています。
――物語が進んでいくと仲間が減っていき、シンの周囲の環境も変わっていきました。
千葉 コロナ禍なので全員揃ってアフレコできなかったのですが、キャスト表を見ると最初は20人くらいいたキャストがだんだん減っていって、10人以下くらいになっていくんですよ(笑)。それに、1話はほぼラストシーンにセリフが集約されていて、一言でシンらしさを出すにはどうしようかと考えていたのが、だんだんセリフが増えていきましたね。それは役者としては嬉しいことなのですが、あんなに賑やかだったダイヤ(・イルマ)やハルト(・キーツ)たちがいなくなってしまったということを実感することでもあり、寂しかったですね。あとは、シンは最初からずっと兄の存在のみを追っている部分があったので、シンの兄を演じている古川 慎さんとの絡みが増えていくにつれて、そこに気持ちがシフトしていく感じはありました。そこは物語では説明されていなかった部分で、“実は最初からシンはこう思っていた”というのが出るところなので、特に意識して演じていましたね。
“日常”と“戦争”のコントラスト
――では、改めて音楽について伺いたいのですが、制作側から何か音楽的なテーマを提示されたことはあったのでしょうか?
澤野 テーマを提示されるということはなかったですね。
――7月7日には2枚組の『86―エイティシックス― オリジナル・サウンドトラック』が発売となりますが、今回のサントラではどちらかといえば重い雰囲気の澤野さんサイド、ほっこりするKOHTAさんサイドの2つに分かれていて、そこも対比がくっきり出ていますね。まず澤野さんサイドの1枚ですが、今回は特にサウンドの後ろで鳴っているノイズや警告音が効果的に使われていて、迫りくる怖さを感じました。
澤野 そうですね。特にレギオン(敵国の無人戦闘兵器)に関しては、シンセのサウンドをわかりやすくノイジーにして、それが耳につくように意識的に構成していったところはあります。でも、それ以外のところでは、戦闘になったときにみんなが観ていて単純にかっこいいと思えるような、スピード感を煽るようなサウンドにしておきたいというのはありましたね。ちなみに今回の曲はどれも、『86―エイティシックス―』にちなんで数字を曲名に入れたんです。でも最後のほうは数字がなくなってきて、12曲目の「!”#$%&’()0」なんかは数字を1から0までシフトキーを押して並べていったらこうなりました(笑)。
――なるほど! どういう意味なんだろうと思っていたのですが、それでこの記号の並びなんですね(笑)。一方、KOHTAさんの楽曲は日常的なシーンが多いですが、特に気を付けられたことはありますか?
KOHTA 日常やコミカルな曲では、作品として重いからといって抑えるのではなく、明るい曲は明るい曲として振り切って作るほうが作品の中での陰影がよりつくと思ってやっていましたね。
――明るいシーンと重いシーンの切り替えという意味では、千葉さんも演じていてどうされていたのか気になります。
千葉 『86―エイティシックス―』という作品の軸としては、ハンマーで殴られてイテテみたいな、そんな突拍子もないギャグアニメみたいなことはなくて(笑)、楽しいシーンでもその人物の感情の振れ幅の中で起こることなので、それは逆にすんなりいけたかなと思っています。それだけに、あとで音楽を入れることでセリフを料理しやすい作品でもあるかもしれないですね。『86―エイティシックス―』の中では気持ちが切り替わる瞬間や、雪解けの瞬間に曲が始まることが多いんです。例えば、4話のレーナがみんなに名前を聞こうと決意するシーンで、台本では長ゼリフのど真ん中のところで曲が変わるんですよ。そこは、曲が変わることによってキャラクターの深い心情が想像できるような演出になっているんだと思います。もし、そこで言い方を変えてやっていたら狙いすぎになっちゃうんですよ。“お前、すぐ許すじゃん”って思ってしまったりだとか。でも、その微妙なキャラクターの心情を音楽が語ってくれてるんだなと思いました。
澤野 これは気になっていたことなのですが、日常のシーンで彼らが明るく楽しんでいるのは、楽しんでるフリをしてるんですか? それとも、そのときは本当に楽しもうとしてるんですか?
千葉 スピアヘッドに関しては、シンの存在があるからこそ、みんな本当に楽しんでるというのはあるかもしれませんね。レギオンがいつ来るかわかるから、そこは気を抜くことができるシーンなんですよ。みんなが楽しそうにしている、それはなぜなんだろう?と考えると、そこには最後まで命を預けられるシンがいるという構図なんだと思います。
――そういった部分に注目すると作品の見え方も変わってくるかもしれませんね。
千葉 スピアヘッドが戦っているときに曲が流れると、なんとなく戦況がわかるのもすごいですね。この曲が流れると“勝てそう!”って思ったり(笑)。ピンチのときでも、“弱くないピンチ感”が出る曲まであって、こんなにシンたちが強いのにピンチに立っているというのがわかるんですよね。あれは“勝ちそうなときの曲”というように考えて作られているんですか?
澤野 もちろん、そこは音響監督が状況に合った曲を選んでいるというのが大きいと思うんですが、僕ら曲を作っている側としては、優位に立っているときにこの曲が流れたらかっこいいなとか、追い込まれているときはより追い込まれている感が出ているサウンドにしようというのは考えますね。
千葉 やっぱりそうなんですね!
MVで実現した異例のコラボ
――今回、劇伴をやってみていかがでしたか?
澤野 作品にリンクさせていうと、シンとレーナって、心は通ってるんですけど、少し意地になる部分もあるじゃないですか。敵対心まではいかないけど、いい意味でライバル感もある関係というか。それは僕も音楽面で大事だと思っていて、二人でやるから仲良くやりましょうということじゃなくて、制作サイドに「KOHTA君が作っている音楽のほうが面白い」と思われたらそれはもちろん悔しいですし、僕も「澤野、良いじゃん!」って言ってもらえるような音楽を作らなきゃっていう気にさせられるんですよ。そうやってお互い意地になって、シンとレーナのように相乗効果が生まれて最終的に前を向いていけるようになったらいいかなって。……なんて、無理やり『86―エイティシックス―』に当てはめてみました(笑)。
KOHTA 僕も、澤野さんとご一緒させていただくときは、「気を遣うことなく自分の色を出してやってくれ」とおっしゃってくださるんですが、特にこの『86―エイティシックス―』はエイティシックスとサンマグノリア共和国で世界観が違う中での制作だったので、作品全体の統一感を意識せず、自分の中で作品が面白くなりそうなアプローチをしやすい作品でしたね。それだけに、今回は自分がどういう表現をしようかというのを突き詰めることができたと思います。
――ところで、「Avid」のMVには千葉さんが参加されていますよね。実際、撮影にあたって千葉さんにはどんな説明があったのでしょうか?
千葉 MVを通してのストーリー性をご説明いただいて、シンっぽさはなくてもいいんだなというのは意識しましたね。
澤野 かっこよかったです。イケメン! 作品でご一緒した役者さんにMVに出ていただくのは初めてだったんですよ。これは『86―エイティシックス―』だからできたことだなと思っています。貴重な機会をいただけて感謝ですね!
千葉 僕も、自分が歌っていないMVに出演するのは初めてでした。オンエアで流れたときとんでもない名曲だと思っていたので、その大切な曲のMVに出て大丈夫なのかという不安ははあったのですが……。でもすごく嬉しかったです。
――お二人は撮影のときにお会いになられていたそうですね。
澤野 病院のシーンは撮影風景を見させていただきました。
千葉 曲を作った澤野さんに「これは違う」と思われないかが心配だったんですよ。
澤野 いえいえ。さすがだなって思いながら見させてもらってましたよ!
――最後に、今後に向けてのお話を伺いたいのですが、第1クールがあのような終わり方をしただけに、千葉さんにどう聞けばいいのか……(笑)。
千葉 まあまあまあまあ。僕はちゃんと毎週観ますよ(笑)。僕は第2クールの音楽もすごく楽しみです。これからまた曲が増えていくのかなとか。
澤野 第2クールに向けて追加で出して、まだ使われていない曲もありますね。
KOHTA 今回のサントラにも第2クールを想定した楽曲も実は入っています。どんな使われ方をするのか、楽しみにしていてください!
PHOTOGRAPHY BY 堀内彩香
INTERVIEW BY 澄川龍一 TEXT BY 金子光晴
●リリース情報
澤野弘之 / KOHTA YAMAMOTO
『86―エイティシックス― オリジナル・サウンドトラック』
発売中
購入ページはこちら
https://www.aniplexplus.com/itemDkYaAwOh
配信はこちら
https://anxmusic.lnk.to/ddwX8v
価格:¥3,850(税込)
品番:SVWC70532~3
<DISC 1 / HIROYUKI SAWANO>
01. THE ANSWER
02. 8SIX
03. RE:g1-ON
04. JaguarN0-10
05. Voices of the Chord
06. sp∃ar
07. 4N
08. 6eighty
09. 2side
10. 9re7
11. ZERO×5
12. !”#$%&’()0
13. pianoVIIIVI-i
14. pianoVIIIVI-ii
15. pianoVIIIVI-iii
16. pianoVIIIVI-iv
17. CELLOpianoVIIIVI
<DISC 2 / KOHTA YAMAMOTO>
01. Two Worlds Apart
02. TararaTaTa
03. うんざり蹴ったり
04. Magnolia
05. レーナとアネット
06. BuraraBaBa
07. Talk to you
08. Underneath the Sky
09. 死者の声
10. LEGION
11. 名もなき悲劇
12. No Reality
13. 同じ空の黄昏
14. no distance
15. Trigger or Die
16. SPEARHEAD
17. REGINLEIF
18. Alive Today
19. SLUMDOG PARADISE
20. President me
21. The Last Empress
22. Reality
23. So Tired
24. Hear my voice
25. MORPHO
SawanoHiroyuki[nZk]
10thシングル『Avid / Hands Up to the Sky』
発売中
購入ページはこちら
https://nzk.lnk.to/dOvcT7
配信はこちら
https://nzk.lnk.to/avid_huts
【初回生産限定盤(CD+Blu-ray)】
価格:¥3,080(税込)
品番:VVCL 1867-8
<CD>
01 Avid by SawanoHiroyuki[nZk]:mizuki
02. Hands Up to the Sky by SawanoHiroyuki[nZk]:Laco
03. A/Z by SawanoHiroyuki[nZk]:mizuki
04. Tranquility by SawanoHiroyuki[nZk]:Anly
05. Into the Sky by SawanoHiroyuki[nZk]:Tielle
06. Avid (instrumental)
07. Hands Up to the Sky (instrumental)
<Blu-ray>
澤野弘之 LIVE “BEST OF VOCAL WORKS [nZk]” Side 澤野弘之 ライブ映像
Inferno (Vo.Benjamin&mpi)
Gallant Ones (Vo.Benjamin&mpi)
Warcry (Vo.mpi)
Next of Kin (Vo.Benjamin)
No differences (Vo.Aimee Blackschleger)
DOA (Vo.Aimee Blackschleger)
Release My Soul (Vo.Aimee Blackschleger)
S_TEAM (Vo.Eliana)
BRAVE THE OCEAN (Vo.Eliana)
em0t1on (Vo.Eliana)
Vigilante (Vo.mpi, Gemie)
ΛSHES (Vo.Gemie)
NEXUS (Vo.Laco [EOW])
Zero Eclipse (Vo.Laco [EOW])
Barricades (Vo.Yosh [Survive Said The Prophet])
The Brave (Vo.Yosh [Survive Said The Prophet])
scaPEGoat (Vo.Yosh [Survive Said The Prophet])
BELONG (Vo.Yosh [Survive Said The Prophet])
【通常盤(CD)】
価格:¥1,430(税込)
品番:VVCL 1869
<CD>
01. Avid by SawanoHiroyuki[nZk]:mizuki
02. Hands Up to the Sky by SawanoHiroyuki[nZk]:Laco
03. A/Z by SawanoHiroyuki[nZk]:mizuki
04. Tranquility by SawanoHiroyuki[nZk]:Anly
05. Into the Sky by SawanoHiroyuki[nZk]:Tielle
【期間生産限定盤(CD+DVD)】
価格:¥1,870(税込)
品番:VVCL 1870-1
※TVアニメ「86―エイティシックス―」描きおろしデジパック仕様
<CD>
01. Avid by SawanoHiroyuki[nZk]:mizuki
02. Hands Up to the Sky by SawanoHiroyuki[nZk]:Laco
03. A/Z by SawanoHiroyuki[nZk]:mizuki
04. Tranquility by SawanoHiroyuki[nZk]:Anly
05. Into the Sky by SawanoHiroyuki[nZk]:Tielle
06. Avid (TV size)
07. Hands Up to the Sky (TV size)
<DVD>
01. Hands Up to the Sky Music Video 86―エイティシックス― ver.
●放送情報
TVアニメ『86―エイティシックス―』第2クール
2021年10月より放送開始!
●関連リンク
TVアニメ『86―エイティシックス―』公式サイト
https://anime-86.com/
TVアニメ『86―エイティシックス―』公式Twitter
https://twitter.com/anime_eightysix