7月4日(日)、May’nがニューアルバム『momentbook』のリリースを記念し、配信イベント“momentbook on line”を開催した。このイベントは、実況動画やライブ配信が可能な動画コミュニティプラットフォーム「OPENREC.tv」から、購入者全員が参加できる第1部と、“May’n Special Live Event「momentbook on line」”と題した有料イベントの第2部の2部構成で行われた。ニューアルバムに込めた思いを自らの声で伝え、かつその新曲を初披露していく、というMay’nからファンへのハートフルなイベントとなった。この二人だからこその制作裏話17時からスタートした1部は、「アイ・マイ・ミー・マイン・May’n!」(毎週火曜日、OPENREC.tvにて配信)でもお馴染みの田中宏幸プロデューサーを司会に、May’nと二人によるトーク中心の内容。May’nが、田中プロデューサーとアルバムという形で本格的に音楽制作で組むのは『momentbook』が初めてだが、「仮面ライダーフォーゼ」でのEDテーマを担当して以来10年余りの付き合いとなる二人ということで、気心の知れた者同士の会話が進んでいく。まずは先日の、“1 to 5”を冠する5ヵ月連続ライブの千秋楽“1 to 5 -MUSIC-”の話に。このライブはMay’nにとって約1年3ヵ月ぶりの有観客ライブだったが、ライブを主戦場の1つとしてきたMay’nからするとそれだけの間、ファンから離れていることは初めての体験だった。それだけに観客の姿を目の当たりにしたオープニングでは言葉にならない感覚が押し寄せ、その結果の涙だったという話が。それでも、足元を映したりアップに寄ったりとカメラワークを駆使するほか、ロックナンバーのコンセプトではカメラを蹴るとダミーのレンズが割れるという激しい演出を見せるなど、オンラインでしか見られない映像を追求してもいた。May’nの口からは、オンラインの意義も実感した今、今後もオンラインならではの部分は求めていきたいという言葉が現れた。そこから話題は、過去と未来を繋ぎつつ今を紡いだというニューアルバムの話へと移っていく。『momentbook』のCD+Blu-ray盤に付属しているBlu-rayには、アルバム制作の裏側などを撮影した約150分のドキュメンタリー「Awesome Studio -May’n-」が収録されたが、レギュラー番組「アイ・マイ・ミー・マイン・May’n!」でも完成に向かう様子をできるだけファンに届ける企画が進行していた。それらは、一人の人間であるMay’nを届けるというアルバムコンセプトを生かしたもの。その一方、May’nとしては、アルバムに向けてゼロから歌詞を書いたり曲を書いたりというクリエイトする難しさも感じていたらしい。だが、利点として、自分が歌うことをイメージし、世界観という意味でも歌いやすい歌詞を書けたという。また、等身大のMay’nを描く新曲群では、持ち味でもある強いビブラートを抑えめに、ナチュラルな歌い回しをディレクションされることが多かったとのこと。歌声と普段の話し声に差の少ないMay’nだが、素に近い彼女を感じさせるアルバムだった理由をここで垣間見られた気がする。田中プロデューサーからは、「ギャラクシー」にいる印象の強いMay’nを「地上にいる」女性として描くことを目指したとの話があり、それでいて、聴く人に力を与える「自己肯定力増し増しアーティスト」であるMay’nの良さを促進する方向性だった、と。ビブラートに関しても、元々持っている深さを抑え、浅いビブラートにすることで熱いメッセージではなく、「楽しいけどもの悲しい」みたいな複数の感情が乗っている表現にできたと説明していく。May’nも「日常感あるボーカル」になったと言い表していた。二人ならではの貴重な証言集はまだまだ続き、ここで田中プロデューサーは、自身が気に入った歌詞の一節をMay’nに解説してもらうことに。そのうちの1つは「Walk with moments」の“坂道くだり 川沿いのベンチで こっそり涙を拭った日もある~一瞬の空色を 見逃さないで”。May’nによると、これは目黒川を歩きながら作った曲で、ランニングした人に追い越される瞬間を人生と重ねたり、歩く速度でなければ見えない景色や瞬間を表現したりした歌詞と説明する。また、「家ではすぐ泣く」「この数年は涙もろくなった」というプライベート話も。イベントでは閲覧者が書き込むコメントを壇上の二人がリアルタイムで確認できるシステムのため、トークの感想や質問をときたま拾い上げてもいた。歌詞が話題となったときは、(作詞の)神様が降りてくるのかという質問に対してMay’nは、何度も似たようなワードを書きながら最高の言葉を見つけ出す、それは「繰り返し神を呼びつける」ようなものだという答えを返していた。田中プロデューサーによってアルバムに関する様々な本音を引き出されたあと、May’nは1部のEDナンバーとして「未来ノート」を歌唱。これからの決意を込められる曲と言う意味で『momentbook』にマッチしているというこの曲に思いを乗せて1部を締めた。2つの才能によって楽曲が誕生していく様1時間ほどのインターバルを挟んでスタートした第2部はライブパート。まずはバンドを伴っての「Walk with moment」から。イベント“アニパチ-Anime Carnival- supported by OPENREC.tv”で初披露したときと同じく、スイングし、力強く歩むように足踏みし、May’nが軽やかに歌っていく。「Shine A Light」同様、アーティストMay’nのファンを増やす曲だ。続いてはライブで歌うのは初となる「SUMMER DREAM」「イリタブル」の2曲。ホーンの効いたファンク感溢れる曲頭からポップさが交わっていく、その展開が心地良い前者。ネガティブさをポジティブに変換するMay’nらしく、表情をくるくると変えて演じる様はまるでMVを生で観ている感覚に陥る後者。どちらもはねたリズムが高揚させ、May’nいわく「太陽や虹が見えた」楽曲は最高のライブ時間を生み出す。曲後、1部に続いて、田中プロデューサーが司会として登場。すると、最初のトークセッションゲストである向井太一を招き入れる。May’nが、「自分の好きという気持ちを詰め込んだアルバムなので」数年前から聴いている(新曲「Love is Life」もお気に入りだとか)向井太一にオファーしたと話す。応えて向井は、女性アーティストへの楽曲提供は初めてだったものの、歌に力のあるMay’nが歌ったら面白くなるように軽く、それでいて今のトレンドの色をメロディに込めたと話す。その後も、May’nが、3サビの後ろの方のコーラス(“touch your life”)は自分にない感性で新鮮と讃えると、向井も自分が入れたコーラスだと忘れるくらいにMay’nらしいコーラスだったと返すなど、話は尽きなかったものの(他に昆虫食の話題も)、ここで「Real Lies」を披露するターンに。楽曲提供者の向井は田中プロデューサーと共にステージ脇のブースに下がり、生での歌声を見守った。続いて、「place roulette」を手がけたRin音が登場し、再び、May’n、田中プロデューサー、と三人でのトークタイムが始まる。May’nからは、「snow jam」で衝撃を受けたこと、新世代を感じるアーティストであるとの紹介が。Rin音は恐縮しつつ、音楽人生が始まって間もない中での楽曲提供だったので胸が躍ったという思い出を告げた。また、Rin音は和田アキ子が今年リリース予定のアルバムに楽曲提供することも決まっているため、May’nは事務所で「大先輩であるアッコさんと会ったときに盛り上がれた」という感謝のエピソードも紹介。田中プロデューサーはここで、May’nがRin音に送った小説を出し、May’nに朗読を促す。「私は今、憧れだった東京の渋谷にいる。毎週末通ったオーディションの最終決戦は渋谷のちょうど真ん中にあるクラブクアトロで。私は夢の東京のど真ん中で人生の始まりを迎えた」から始まった小説は、May’nも読み上げたあとに「思ったより長文だった」と話すほどの力作。Rin音も、非常にMay’n自身を感じられる内容だったので、イメージが沸いて曲を作りやすかったと感想を述べていた。こちらもクリエイター同士の対談は終わりを感じさせない盛り上がりだったが、May’nが、自分の経験を元にした歌詞で共感を得られた喜び、自分の人生を切り取った曲を出す意義を感じたと話し、「place roulette」の初披露タイムへ。Rin音が別ブースで見守るなか、楽しそうな表情で歌を届けてくれた。そして、最後にもう1曲聴かせてくれたのは「未来ノート」。レコーディングのときから、自分の人生や未来への決意を自分の言葉で届けられる幸せを感じ、ライブ“1 to 5 -MUSIC-”でも歌えて幸せだったというこの曲を歌い上げて、エンディングを迎えた。今後の予定として、『momentbook』の店舗でのリリースイベントのほか、Zoomを利用したマンツーマンでのオンラインリリースイベント、さらには、May’nの誕生日当日である10月21日に“May’n Birthday Concert 2021「MOMENTS」”がEX THEATER ROPPONGIで開催されることが発表された。May’nは10月頭までミュージカルが入っており、「部員と歌いたい欲がきっとMaxな時期」であり、かつ、舞台で色気のある役を演じたあとなので新たなMay’nが見られるのではないかと自ら予想していた。最後は、楽曲提供者とプロデューサーという生みの父たち三人と、母であり娘のMay’nが揃っての挨拶。向井とRin音にとって、May’nに提供した両曲は自身でも歌いたいほどの自信作であり、一方のMay’nとしても今回は初披露なので見送ったがいつか「一緒に歌いたい」と野望を抱くほどの両曲だとか。バースデーライブでは、TVアニメ『プラオレ!~PRIDE OF ORANGE~』のED主題歌でMay’nが作詞作曲歌唱を担当、憧れの今井了介がサウンドプロデュースした『オレンジ』のお披露目も期待でき、ますます10月21日が待ち遠しく感じる。今回のリリースイベントの種であるアルバム『momentbook』は、アニソンシンガーであるMay’nとJ-PopシンガーであるMay’nが融合した一作である。タイアップ曲と違ってオリジナル曲を語る機会は限られるなか、May’nが「より楽曲の話ができて嬉しかった」と語るように、今回のイベントは誰にとっても実のあるものだったろう。特にMay’nは、アニソンを契機にブレイクを果たしたが、今や高いボーカル力を武器に様々な方向から良い楽曲を呼び寄せるアーティストであるのだと確信させる。シンプルに言えば、ただただ良い曲を次々と私たちに届けてくれるアーティストになりつつある。日々の生活に溶け込むような、心が欲するような楽曲をまた送り届けてくれるだろうことを、トーク、そして歌唱を聴く中で実感できるイベントだった。TEXT BY 清水耕司(セブンデイズウォー)<セットリスト(2部)>01. Walk with moments02. SUMMER DREAM03. イリタブル04. Real Lies05. place roulette06. 未来ノート●イベント情報「momentbook」リリースイベント「momentbook」を下記それぞれの対象店舗にて、1点ご購入いただいたお客様に先着にて参加券を1枚お渡しいたします。参加券各種は無くなり次第終了となります。参加方法は会場ごとに異なりますので、詳しくは各店舗にご確認ください。【日程】2021年7月24日(土)【時間】開演14:00/開演 16:00【会場】TIME SHARING 新宿5A【対象店舗】アニメイト通販【イベント内容】特典お渡し会(ミニライブはございません)★詳細は下記https://www.animate-onlineshop.jp/contents/fair_event/detail.php?id=105627【日程】2021年7月25日(日)【時間】開演14:00/開演 16:00【会場】AKIHABARAゲーマーズ本店【対象店舗】AKIHABARAゲーマーズ本店【イベント内容】ミニライブ&特典お渡し会★詳細は下記https://www.gamers.co.jp/contents/event_fair/detail.php?id=1601【日程】2021年7月31日(土)【時間】開演14:00/開演 16:00【会場】タワーレコード渋谷店5Fイベントスペース【対象店舗】タワーレコード渋谷店【イベント内容】ミニライブ&特典お渡し会★詳細は下記https://towershibuya.jp/2021/05/12/153755「momentbook」発売記念オンライン1on1トーク会【日程】2021年7月25日(日)18:30スタート2021年7月18日(日)23:59までにご注文いただいたお客様へ先着で、オンライン1on1トーク会(Zoomトーク)にご招待&イベント限定絵柄ブロマイドをプレゼント!●ライブ情報May’n Birthday Concert 2021「MOMENTS」日程:2021年10月21日(木)会場:EX THEATER ROPPONGI●リリース情報『momentbook』発売中【CD+Blu-ray】品番:XNDD-00001/B価格:¥4,620(税込)【CD】品番:XNDD-00002価格:¥3,300(税込)<CD>01. Walk with moments作詞:May’n 作曲:May’n、田中隼人 編曲:田中隼人02. SUMMER DREAM作詞:May’n 作曲・編曲:h-wonder03. place roulette作詞:May’n 作曲・編曲:Rin音、Taro Ishida04. 牙と翼作詞:宮川弾 作曲:川崎智哉 編曲:佐藤純一05. Real Lies作詞:May’n 作曲:向井太一、CELSIOR COUPE 編曲:CELSIOR COUPE06. イリタブル作詞:May’n 作曲・編曲:田中秀和(MONACA)07. graphite/diamond作詞:藤林聖子 作曲:高木龍一(Dream Monster) 編曲:白戸佑輔(Dream Monster)08. 天使よ故郷を聞け作詞:岩里祐穂 作曲:TOMOYA/KENT(SALTY DOG) 編曲:CHOKKAKU09. 涙の海を東へ作詞:TAKU INOUE 作曲:JUVENILE 編曲:やしきん10. You作詞:岩里祐穂 作曲:中野領太 編曲:NAOKI-T11. 未来ノート作詞・作曲・編曲:大石昌良<Blu-ray>01. Awesome Studio -May’n-02. Walk with moments(Lyric Video)関連リンクMay’n オフィシャルサイトhttp://mayn.jp/May’n レーベルサイトhttps://www.digitaldouble.co.jp/artists/maynMay’n Twitterhttps://twitter.com/mayn_twMay’n STAFF Twitterhttps://twitter.com/MaynStaffアイ・マイ・ミー・マイン・May’n!(OPENREC.tvレギュラー番組)https://www.openrec.tv/user/mayn-op