DEARSTAGEとLantisが共同プロデュースを手がけるボーカルユニット・ARCANA PROJECT。彼女たちの3rdシングル「たゆたえ、七色」が7月14日にリリースされる。
本作に至るまでの、互いの関係性とは?
――草野さんとARCANA PROJECTさんは、「たゆたえ、七色」以前にも「天運へキサグラム」でもご一緒されています。
草野華余子 そもそも、グループ自体のお話はずっと伺っていまして。それよりも前にQ-MHzさんが1曲プロデュースしていたこともあって、今回も一緒に制作している田淵智也さんから「歌のすごく上手な子たちなので、今度はどう個性を引き出してあげられるか」と聞いていたんですよ。なので、それぞれのキャラクターをちゃんと見極めてディレクションできたらと思っていました。ただ、事前情報で「うーちゃん(=桜野)は私の曲をすごく好いてくれてる」と聞いていたのに、当日全然しゃべりかけてくれなくて。
桜野羽咲 態度悪く見えましたよね……?
草野 いやいや(笑)。めっちゃくちゃカチカチで、ずっと下向いて「はい……!はい……!」って言ってたから、「お腹でも痛いのかな?」と思ってたの。そしたら、ブースから出てきた瞬間に「ファンだったんですー!」って、うわぁーって泣いて。「嫌われてたと思った!」って、勘違いしかけました(笑)。
――ファンの部分を、ぐっと我慢していた。
桜野 そうなんですよ!しかもレコーディングでは声がうわずりすぎちゃって、「全然いつもの羽咲じゃない、どうしよう?」みたいにマネージャーさんたちがざわざわしているくらいだったんです。で、なんとかレコーディングが終わったあとに、やっと泣くという……今日も嬉しくて、ずっと膝が震えてます(笑)。
花宮ハナ 私は、お会いする前に親友からお話を聞いていて。
草野 別のグループの、私のボイトレの生徒がハナちゃんの親友なんだよね。
花宮 そうなんです。だからすごい気さくな方だというのは知っていたんですけど、作曲された曲も聴いていたのでめちゃめちゃ緊張していたんですよ。でも、思った以上に気さくに話してくださって。友達の話ですごく盛り上がって、「今度ご飯行こうよ!」と言ってくれたのが、とても嬉しかったです。
草野 うん。「三人で行こう!」って話したよね。
花宮 あと実は私、自粛期間中に最初に観たアニメが、『白い砂のアクアトープ』と同じくP.A.WORKSさんが手がけられた『SHIROBAKO』で。
天野ひかる 私もめちゃくちゃ緊張しちゃって。全然お話できなかったんですけど、ディレクションで華余子さんがたくさん褒めてくださって。おかげでリラックスして歌うことができたのを覚えています。
草野 ひかるちゃんはもう、1回言ったらめちゃくちゃ大幅なチェンジがあるんですよ。1回ディレクションして2トラック目を歌ったときに、レコーディング中なのに周りにいるスタッフさんとかエンジニアさんから拍手が起こるくらい。言ったらすぐできるから、みんな「恐ろしい子……!」ってなってます。でも褒めてもそれがあんまり伝わらなくて、なんかむずむずすることもあるんですけど(笑)。
桜野 私はずっとLiSAさんのファンで、華余子さんの楽曲ももちろん聴いていたんですけど、LiSAさんに楽曲提供している曲もすごく好きで。妄想キャリブレーション(桜野が所属していたDEARSTAGEの女性アイドルグループ)として活動しているときから「誰に書いてもらいたい?」とスタッフさんに聞かれたときには、ずっと名前を出させていただいていたんです。私自身、華余子さんの曲にずっと支えられていた時期があったので……曲を書いてもらえたり、こうしてARCANAのことを話してもらえるだけで、幸せです……(涙)。
草野 オーバーオーバー(笑)。
――でも何年かずっと抱えていた想いを伝えるとなると、そうなるのは仕方ないですよね。
桜野 すみません……恥ずかしい(笑)。
天野 私もすごくLiSAさんが好きですし、華余子さんが作るロックチューンも大好きなんですけど、聴いている人に寄り添うようなシンガーソングライターとしての華余子さんの温かい曲も好きなんです。なので、曲を作っていただけてすごく嬉しかったです。
草野 光栄です。私もARCANA PROJECTさんに曲を書くのはめっちゃ楽しいんですよ。現場の空気も良いし、全員めちゃくちゃ対応力あるし……どんなときでも、しんどそうな素振りを誰一人見せないんですよ。多分「基本ネアカだけどオタクで、でも悩んだりもする」という波長の合うメンバーがほとんどだと感じていて、ディレクションしていても私のことを信用してくれているのも伝わってくるので、「こうやっていったら、次はこの子が良くなるんじゃないかな」みたいなものをお互い喋りながら作っていけているんです。だから、ちゃんと自分も胸を張って「プロデュースさせてもらってる」と言えるし、メンバーのみんなも「自分の歌だ」と言えるようなアイデンティティを見つけ始めている。すごく良い関係が築けているなとは思っています。
各々の長所が集まって、自然と生まれた“多様性”
――今回の「たゆたえ、七色」のレコーディングに臨むときは、どんな想いを持たれていましたか?
草野 『白い砂のアクアトープ』という作品自体が、「多様性を認める」とか「人と人は違う。
――ARCANA PROJECTの皆さんは楽曲を受け取ったとき、曲からどんなイメージが最初に浮かびましたか?
桜野 水や海の演出がすごくきれいな、P.A.WORKSさんの作品らしい印象がありました。でもサビの展開がすごく意外だったので、「歌いこなせるか不安だな」みたいな気持ちもありましたね。
花宮 私も「海」というイメージは強かったんですけど、個人的にはあまりこういう感じの曲を歌ったことがなかったので、それがめちゃくちゃ不安で。聴けば聴くほどすごく心地が良くなっていく曲だと思うんですけど、前のグループもロックなグループだったし、自分自身も押せ押せドンドンみたいな曲が好きなので、その心地良さに寄り添いながら歌いこなすにはどうすればいいんだろう?みたいなことをすごく考えた曲でした。
天野 本当に「壮大で素敵だな」と感動して……特に出だしのピアノのメロディから、波打ち際を連想したんですよ。サビで一気に大きな海へと広がっていくような感じもとても素敵ですし、音やメロディだけで海を感じられるのって、すごいことですよね。なので、そんな曲に負けないくらい、爽やかに歌えるように心がけました。
草野 イントロは波打ち際でさざ波が前後してるイメージだし、最後のポロロンっていうフレーズも水しぶきが飛ぶイメージで私が作っていたところなんです。だから、ひかるちゃん大正解。全部バッチリ伝わってます。
天野 あと、1番のサビ前の結構静かなところに、サビの歌い出しの前に少しシュッとした音が入るんですけど、そこから一気に広がっていく感じが素敵で……海に浮いているイメージが思い浮かぶ、すごく大きな波の動きを感じられるところなんです。
――その美しい海の光景が浮かぶというのも、最初に意図して作られた部分ではありました?
草野 そうですね。今回はまず最初に、監督さんと打ち合わせさせていただいて。そこで話したことを持って、田淵さんと二人で会議したんですよ。私プロデュースではあるんですけど、田淵さんは相談相手になってくださって。すごくアイディアもお借りしているし、「オープニングとエンディングで歌詞を対にしたい」という提案もさせていただいたりもしているんですよ。それで、オープニングの歌詞が太陽だったり水平線より上の世界を描くなら、私はエンディングで水平線より下の深海の世界を描いて、オープニングとエンディングで1つの物語の裏と表を描けるようにしたい……ということを相談させていただいてから作ったんです。あとこの曲の制作には、各々音楽をやりながらプロデューサーもやっている人が、四人も集まっているんですよ。
――今お話に出た、田淵さんも含めて。
草野 あとは編曲の堀江晶太くんもそうですし、ミックスは透明感を出したくて、岸田教団の岸田さんにお願いしているんです。歌詞も全員に送って編曲もミックスもしてもらうことで隅々まで作りたいイメージを共有できたので、監督さんからいただいたバトンを私が握り締めて繋ぐことができて……だから、久しぶりに文化祭みたいな感じがしたというか(笑)。最後の最後まで本当に信頼する人たちと突き詰められた、自信作になりました。
――そのバトンを繋いでいくなかには、レコーディングという作業もあったかと思います。今回レコーディングはご一緒されたのでしょうか?
草野 はい。ディレクションも担当しました。あと仮歌も私が歌ってある程度の方向性を示しているのもあって、1回目の声出しの瞬間にみんな答えを持ってきてくれている状況なんです。おかげでいつも、「80点できているところから、120点を叩き出すにはどうしよう?」みたいなレコーディングをやれています。でもそれは受け取る側のアンテナが立っていてセンスもないとできないことなので、そこがARCANA PROJECTさんの素晴らしいところだなと思います。
桜野 ただ実は、オープニングのお話を私たちが聞いたのは結構ギリギリで。レコーディングは3月頭だったんですけど、2月末くらいにお話を聞いたので、2週間ないくらいだったんです。でも最初に歌ったときに、華余子さんから「ちゃんと自分の中で『こうしたい』っていうのを考えて、すごく練習してきてくれたんだね」という言葉をいただけて……「それだけで死ねる!」って感動しましたし(笑)、安心した瞬間でもありました。
草野 1回歌ってもらった段階から「ここをこの人でいこう」っていうのが見えるくらい、それぞれみんなよかったんですよ。本当に「全員のソロバージョンでいいんじゃない?」っていうくらい。
桜野 嬉しい……。
草野 うーちゃんは落ちサビの入りがすっごくきれいなファルセット気味のしゃくりだったりと、そういうところの切り返しがすごくうまくて。ハナちゃんはロック系の曲好きならではのパワーの部分で、ロングトーンでパーンと出るところがすごく活きた部分もあったし、ひかるちゃんは自分なりに考えてきたうえで素朴でフラットに声が出るような状態がすごくよかった。それぞれの最適解を作ってきてくれていたので、作家冥利にもディレクター冥利にも、プロデューサー冥利にも尽きるレコーディングになりました。
――ということは、パート割はあまり悩まれなかった。
草野 そうですね。この曲ではそれぞれの良いところが本当にダントツだったので、わざわざ公平性を考えたりしなくても、それぞれ歌う場所がある。まさに、多様性を認められるような仕上がりになりました。
花宮 私は逆にレコーディングまでの短い間、結構ずっと悩んでいたので、「もう、華余子さんのディレクションに頼っちゃえ!」とちょっと悩みながら行った部分があったんですよ。でもそれを、しっかり導いてくださって。特に、1番のBメロは何度もやり直しさせてもらったパートなんですけど……。
草野 実は回数歌ってもらったところは「ここをこの子でいきたい」という気持ちになっている部分で。「元々いいけど、このパートの最高点を叩き出すために粘りたい」というときなんです。
花宮 そうなんですね!よかった、「ライブでもっとよく歌えるようになりたいな」って練習もしているところなんですけど、それを聞けて今すごく安心しました。
天野 私は、歌詞を解釈して「こう歌いたいな」というイメージは浮かぶんですけど、自分の実力だとまだ思ったようにいかないことが多くて。レコーディングでは曖昧に指示を受けるとまだわからないことも多かったんですけど、華余子さんが道筋をしっかり示してくれたおかげで、自信を持って歌うことができました。
――「道筋を示した」とは、どのように?
草野 「あともうちょっと口を“オ”の形にしたらいい」とか、「表現はもういいから、もっと上を向いて歌おう」みたいに具体的にちょっとコツを伝えてあげると、ひかるちゃんはそれだけで爆発的に良くなるんです。それは、これまで時間をかけて歌のスキルを突き詰めてきたハナちゃんやうーちゃんとは違うアプローチで。この二人には逆に、具体的に聞くよりも「もうちょっと明るいのなんかない?」という感じの話をしたりと、キャリアとか声の出し方によってディレクションを変えたりはしています。
花宮 あと、華余子さんはいつも、すごく気持ちを上げてくださるんですよ。最近自覚したんですけど、「できない!」となるとどんどん口角が下がっていって暗い声になっちゃって……でも華余子さんはディレクションのときにすっごく褒めてくださって。しかもそれがとても具体的なので、いつも以上に自信を持ててすごく歌いやすいんです。
草野 それは、自分もボーカリストだからかも。ブースに閉じこもったときに、トークバックですぐ感想をもらえなかったらめっちゃ不安になるじゃん?だからそういうときには「ちょっと待っててね。今確認するね」と言ってあげたり、とにかく「ボーカリストとして自分がやられたら嫌なことをやらない」とか、「これがあると、より一層実力が出せる」ということをシンガー・ソングライター目線でやっていきたいという気持ちは、ディレクションの面ではあります。
「たゆたう」からこその、魅せ方の難しさ
――あとこの曲、やはり最初に強く印象に残るのが、サビで拍子が変わる部分です。
草野 8分の6拍子に変わるところですね。まさにこれも田淵さんとお話ししてるときに、「波がサーッと流れていくのって8ビートっぽいな」とか「大きい波の揺らぎって、やっぱり大きな16分か8分の6拍子かなぁ」みたいな話をうっすらしていたので、「サビで転調もするしビートも変わる曲、1曲書いてみたいな」という気持ちもあって、そのイメージに合わせて……今回は、クラシック音楽を作るような気持ちでした。
――クラシックのイメージですか?
草野 はい。元々クラシックをやっていたのもあって、クラシックの大きなオーケストレーションを書くようなイメージでポップスを書いたらどうなるだろう?ということで、今回はいかにサビと平歌のところを差別化できるか。なおかつ、それを転調もビートが戻るときもわからないぐらいナチュラルに、1曲の楽曲としてコンパクトにまとめながら大きな世界観を提案できるようにはどうしたらいいだろう……ということを心がけました。
桜野 その部分は、ライブのときに切り替わるタイミングがズレていかないように、と特に気をつけているところでもあるんです。歌いながら振付も込みで、いかに違和感なく切り替えられるかを突き詰めていくのはやっぱり難しいので、最近はみんなでライブ前に謎トレーニングしながら、一緒にサビの縦の動きを合わせていて……。
――謎トレーニング?
桜野 はい。ダンスの先生に体を使ったリズムの取り方を教えてもらったので、振付とはまた別の動きをして。それを歌でも合わせて、みんなで縦を揃えています。でもあそこは、動きにアクセントがついちゃダメなんですよ。たゆたうように繊細に動きながら揃わないといけないんです。
草野 だけど歌では、「アクセントをちゃんと感じろ」って言われてるからね(笑)。
花宮 そうなんですー!
桜野 だから、地味な動きですけど実は意外と難易度の高いことをやっていると思います。しかも海藻って、それぞれがまったく同じ動きをするわけではないじゃないですか?なので、私たちの頭もそういうふうになるように……というイメージでやっています。
草野 ダンスもだけど、MVを観たら今まで以上にみんな楽しそうで、顔が生き生きしてる。「沖縄楽しそうやな」って思った(笑)。(※「たゆたえ、七色」のMVは沖縄で撮影)
桜野 ひかちゃんは、沖縄初めてだっけ?
天野 初めてではなかったんですけど、だいぶ前に行ったっきりで。海もずっと見ていないぐらいだったので、本当にきれいで、すごく良い思い出にもなりましたし……砂浜で踊ったりするのも初めてだったので、大変なところもあったんですけど、とても楽しかったです。
――砂浜だと、足を取られたりもしたのでは?
天野 あ、めちゃくちゃありました。
花宮 しかも、裸足で踊ってるんですよ。
桜野 カメラマンさんや監督さん的にはもうちょっと海の近くで踊ってほしかったみたいなんですけど、衣装が真っ白だったので、衣装を汚してほしくないマネージャーさんや衣装さんとの板挟みになって……(笑)。でもハナちゃんはどうしても海に飛び込みたくて、海に走り出しちゃうんですよ。
花宮 なんで言うのー!?
草野 もうダメになってるやん、沖縄で(笑)。
花宮 でもちゃんと理由があるんですよ!MV撮影で沖縄に行けたことももちろん嬉しかったんですけど、ARCANA PROJECTってお披露目が去年の1月だったので、コロナ禍でみんなと遠征とか1回もできていなかったんです。なので、みんなで初めて泊まりで遠くに行けた……っていうのもあって。それで、別の衣装を着ているときに「海、入っていいよ」って言われて、はしゃいじゃいました(笑)。
草野 こうやって話しているようなところが、ハナちゃんは本当に歌に出てるよね。思い込んだら一直線!な感じで。ほかのみんなもそれぞれ、性格が歌に出てるんですよ。だから、基本ARCANA PROJECTの歌録りのあとはいつも「素直でいい子たちやなぁ」って思う(笑)。タイプは違うんですけど、全員、褒めたら喜んで声が明るくなって、苦戦したら悲しんで暗い声になって……を繰り返してるから、本当にかわいいんですよね。
――さて、ARCANA PROJECTさんと草野さんのタッグによるリリースは、この曲が2曲目となります。もしまたタッグを組めるときに、歌いたい曲はありますか?
桜野 やっぱりARCANA PROJECTの曲って“丁寧な音楽”みたいなものが結構多いので、もうなんかゴリゴリにロックみたいな感じの曲で……ちょっとね、がなりたいです。
花宮 一緒! がなりたーい!
桜野 ちょっとブラックっぽい感じのやつやりたいよね。
花宮 やりたーい! ゴリゴリのやりたい。
桜野 プロデューサーさーん!
草野 プロデューサーさんお願いしまーす!(笑)
花宮 元々ロックをやりたいとお伝えはしているので、それが華余子さんで叶ったらもう……。
草野 ぜひぜひ……任せてください。
プロデューサー 機会があればぜひ。
桜野 おー! やったぁー!
草野 天の声聞こえてきた!……録音しておきましたんで(笑)。
花宮 やんなきゃいけなくなってきてる(笑)。
――天野さんはいかがですか?
天野 そうですね……本当に「たゆたえ、七色」が大好きなんですけど、この曲は“夏”じゃないですか?だからもしこの曲が、冬だったらとか春だったらとかすごい思うので……ちょっと変かもしれないんですけど、「たゆたえ、七色」の違う季節版、みたいな。
草野 いいね! すごい斬新なアイデア。
――イメージするものを共通させつつも違う季節に当てはめていくというのは、とても面白いと思います。
草野 面白いですよね!……「たゆたえ、粉雪」作りますんで、プロデューサーさんよろしくお願いします(笑)。
――逆に草野さんは、書いてみたい曲のイメージはありますか?
草野 「天運ヘキサグラム」は直接出会う前に声を聴いたときのイメージを元に書かせてもらった曲だったので、今度はそれぞれの性格とか個性も知ったうえでの曲にしたいから……やっぱり、全員活かせるセクションのある曲ですかね。ロックを基調にするにしても、Bメロでアンニュイなセクション作ったりとか、ちょっと早口のラップっぽいアガるところもあったり。3分ぐらいのロック曲だけど割と組曲的な、内容の充実している曲にしたいです。でも、あんまり暗くならないかも。やっぱりみんなネアカだから。
三人 あはは(笑)。
草野 もし私が書くなら“戦う女の子”っていう感じの、かっこいい曲にするかもしれないですね。
INTERVIEW & TEXT BY 須永兼次
●リリース情報
ARCANA PROJECT 3rd シングル
「たゆたえ、七色」
発売中
【初回限定盤[正位置ver.]、CD+BD)】
価格:¥2,200(税込)
品番:LACM-34136
<BD>
「たゆたえ、七色」Music Video
「たゆたえ、七色」Jacket Making Video
【初回限定盤[逆位置ver. ]、CD+BD)】
価格:¥2,200(税込)
品番:LACM-34137
<BD>
「たゆたえ、七色」Music Video
「たゆたえ、七色」Music Video Making Video
【通常盤】
価格:¥1,430(税込)
品番:LACM-24136
【アニメ盤】 ※描き下ろしイラストジャケット
価格:¥1,320(税込)
品番:LACM-24137
<CD>
01.たゆたえ、七色
作詞:田淵智也 作曲:草野華余子 編曲:堀江晶太 ストリングスアレンジ:宮野幸子
02.星影のファンタジア(全形態収録)
作詞・作曲・編曲:志村真白
03.きっと、その未来にたどり着くから。(初回限定盤[正位置ver.]収録)
作詞:安藤紗々 作曲:吉岡大地 編曲:秋浦智裕
04. Ophelia(初回限定盤[逆位置ver.]収録)
作詞:安藤紗々 作曲・編曲:石濱 翔(MONACA)
05.ドンケア(通常盤収録)
作詞・作曲・編曲:久下真音
●作品情報
TVアニメ『白い砂のアクアトープ』
<introduction>
監督・篠原俊哉、シリーズ構成・柿原優子、そして制作・P.A.WORKS。
少女たちの青春を描いた『色づく世界の明日から』でも手を組んだ彼らが新たに手掛けるのは、沖縄のちいさな水族館を舞台にした完全新作オリジナルアニメーション。
水族館で働く18歳の女子高生・海咲野くくるは、東京で居場所をなくし、逃避行をした元アイドル・宮沢風花と出逢う。くくると風花はそれぞれの思いを胸に、水族館での日々を過ごすようになる。
しかし、その大切な場所に、閉館の危機が迫りくる。
少女たちの夢と現実、孤独と仲間、絆と葛藤──。
きらめく新たなページが、この夏、開かれる。
【CAST】
海咲野くくる:伊藤美来
宮沢風花:逢田梨香子
照屋月美:和氣あず未
久高夏凛:Lynn
【STAFF】
原作:projectティンガーラ
監督:篠原俊哉
シリーズ構成:柿原優子
キャラクター原案:U35
キャラクターデザイン・総作画監督:秋山有希
美術監督:鈴木くるみ
美術監修:東 潤一
美術設定:塩澤良憲
撮影監督:並木 智
色彩設計:中野尚美
3D監督:鈴木晴輝
編集:髙橋 歩
特殊効果:村上正博
音楽:出羽良彰
音響監督:山田 陽
プロデュース:infinite
制作:P.A.WORKS
<ARCANA PROJECTプロフィール>
「ARCANA PROJECT」はアイドルユニット「でんぱ組.inc」やアニメ「アイカツ!」の歌唱ユニット「STAR☆ANIS」などが所属するDEARSTAGE と、アニソンに特化した株式会社バンダイナムコアーツの音楽レーベル「Lantis」とが共同でプロデュースを手掛ける5人組ボーカルユニット。タロットカードをベースにした世界観とメンバーの個性溢れるボーカルとパフォーマンスで、楽曲を表現する。
©projectティンガーラ
関連リンク
ARCANA PROJECT 公式サイト
https://www.arcana-project.com
ARCANA PROJECT 公式Twitter
https://twitter.com/arcanaproject
TVアニメ『白い砂のアクアトープ 』公式サイト
https://aquatope-anime.com
TVアニメ『白い砂のアクアトープ』のOPテーマとして制作されたこの曲は、2ndシングルのカップリング曲「天運へキサグラム」でもタッグを組んだ草野華余子が作曲とプロデュースを担当、作詞を田淵智也が、編曲を堀江晶太が手がけており、サビではまさにタイトルどおり美しい海にたゆたうようなイメージを想起させてくれる楽曲になっている。今回はARCANA PROJECTから桜野羽咲・花宮ハナ・天野ひかるの三人と、プロデュースを担当した草野の対談を敢行。楽曲についての話題を中心に、互いの関係性などについてもじっくり話してもらった。
本作に至るまでの、互いの関係性とは?
――草野さんとARCANA PROJECTさんは、「たゆたえ、七色」以前にも「天運へキサグラム」でもご一緒されています。
草野華余子 そもそも、グループ自体のお話はずっと伺っていまして。それよりも前にQ-MHzさんが1曲プロデュースしていたこともあって、今回も一緒に制作している田淵智也さんから「歌のすごく上手な子たちなので、今度はどう個性を引き出してあげられるか」と聞いていたんですよ。なので、それぞれのキャラクターをちゃんと見極めてディレクションできたらと思っていました。ただ、事前情報で「うーちゃん(=桜野)は私の曲をすごく好いてくれてる」と聞いていたのに、当日全然しゃべりかけてくれなくて。
桜野羽咲 態度悪く見えましたよね……?
草野 いやいや(笑)。めっちゃくちゃカチカチで、ずっと下向いて「はい……!はい……!」って言ってたから、「お腹でも痛いのかな?」と思ってたの。そしたら、ブースから出てきた瞬間に「ファンだったんですー!」って、うわぁーって泣いて。「嫌われてたと思った!」って、勘違いしかけました(笑)。
――ファンの部分を、ぐっと我慢していた。
桜野 そうなんですよ!しかもレコーディングでは声がうわずりすぎちゃって、「全然いつもの羽咲じゃない、どうしよう?」みたいにマネージャーさんたちがざわざわしているくらいだったんです。で、なんとかレコーディングが終わったあとに、やっと泣くという……今日も嬉しくて、ずっと膝が震えてます(笑)。
花宮ハナ 私は、お会いする前に親友からお話を聞いていて。
草野 別のグループの、私のボイトレの生徒がハナちゃんの親友なんだよね。
花宮 そうなんです。だからすごい気さくな方だというのは知っていたんですけど、作曲された曲も聴いていたのでめちゃめちゃ緊張していたんですよ。でも、思った以上に気さくに話してくださって。友達の話ですごく盛り上がって、「今度ご飯行こうよ!」と言ってくれたのが、とても嬉しかったです。
草野 うん。「三人で行こう!」って話したよね。
花宮 あと実は私、自粛期間中に最初に観たアニメが、『白い砂のアクアトープ』と同じくP.A.WORKSさんが手がけられた『SHIROBAKO』で。
しかも、華余子さんがオープニングを作曲されていたのを知らなかったんです。そのときは自粛期間中だったうえに、あまり大学に行きたくない時期でもあったのですごく勇気をもらって、そのあと初めてご一緒できたので……あのときは言えなかったんですけど、本当に「ありがとうございます!」という気持ちでした。
天野ひかる 私もめちゃくちゃ緊張しちゃって。全然お話できなかったんですけど、ディレクションで華余子さんがたくさん褒めてくださって。おかげでリラックスして歌うことができたのを覚えています。
草野 ひかるちゃんはもう、1回言ったらめちゃくちゃ大幅なチェンジがあるんですよ。1回ディレクションして2トラック目を歌ったときに、レコーディング中なのに周りにいるスタッフさんとかエンジニアさんから拍手が起こるくらい。言ったらすぐできるから、みんな「恐ろしい子……!」ってなってます。でも褒めてもそれがあんまり伝わらなくて、なんかむずむずすることもあるんですけど(笑)。
桜野 私はずっとLiSAさんのファンで、華余子さんの楽曲ももちろん聴いていたんですけど、LiSAさんに楽曲提供している曲もすごく好きで。妄想キャリブレーション(桜野が所属していたDEARSTAGEの女性アイドルグループ)として活動しているときから「誰に書いてもらいたい?」とスタッフさんに聞かれたときには、ずっと名前を出させていただいていたんです。私自身、華余子さんの曲にずっと支えられていた時期があったので……曲を書いてもらえたり、こうしてARCANAのことを話してもらえるだけで、幸せです……(涙)。
草野 オーバーオーバー(笑)。
――でも何年かずっと抱えていた想いを伝えるとなると、そうなるのは仕方ないですよね。
桜野 すみません……恥ずかしい(笑)。
天野 私もすごくLiSAさんが好きですし、華余子さんが作るロックチューンも大好きなんですけど、聴いている人に寄り添うようなシンガーソングライターとしての華余子さんの温かい曲も好きなんです。なので、曲を作っていただけてすごく嬉しかったです。
草野 光栄です。私もARCANA PROJECTさんに曲を書くのはめっちゃ楽しいんですよ。現場の空気も良いし、全員めちゃくちゃ対応力あるし……どんなときでも、しんどそうな素振りを誰一人見せないんですよ。多分「基本ネアカだけどオタクで、でも悩んだりもする」という波長の合うメンバーがほとんどだと感じていて、ディレクションしていても私のことを信用してくれているのも伝わってくるので、「こうやっていったら、次はこの子が良くなるんじゃないかな」みたいなものをお互い喋りながら作っていけているんです。だから、ちゃんと自分も胸を張って「プロデュースさせてもらってる」と言えるし、メンバーのみんなも「自分の歌だ」と言えるようなアイデンティティを見つけ始めている。すごく良い関係が築けているなとは思っています。
各々の長所が集まって、自然と生まれた“多様性”
――今回の「たゆたえ、七色」のレコーディングに臨むときは、どんな想いを持たれていましたか?
草野 『白い砂のアクアトープ』という作品自体が、「多様性を認める」とか「人と人は違う。
それでも一緒にいたいんだ」という感情を描きたい作品なんだなと脚本からすごく感じたので、十人十色でそれぞれ色んな歌い方やポリシー、信念があるというところを大事にしたいなと思ったんです。だから、できる限りそれぞれのキャラクターを引き出せるディレクションを心がけて、レコーディングに臨みました。
――ARCANA PROJECTの皆さんは楽曲を受け取ったとき、曲からどんなイメージが最初に浮かびましたか?
桜野 水や海の演出がすごくきれいな、P.A.WORKSさんの作品らしい印象がありました。でもサビの展開がすごく意外だったので、「歌いこなせるか不安だな」みたいな気持ちもありましたね。
花宮 私も「海」というイメージは強かったんですけど、個人的にはあまりこういう感じの曲を歌ったことがなかったので、それがめちゃくちゃ不安で。聴けば聴くほどすごく心地が良くなっていく曲だと思うんですけど、前のグループもロックなグループだったし、自分自身も押せ押せドンドンみたいな曲が好きなので、その心地良さに寄り添いながら歌いこなすにはどうすればいいんだろう?みたいなことをすごく考えた曲でした。
天野 本当に「壮大で素敵だな」と感動して……特に出だしのピアノのメロディから、波打ち際を連想したんですよ。サビで一気に大きな海へと広がっていくような感じもとても素敵ですし、音やメロディだけで海を感じられるのって、すごいことですよね。なので、そんな曲に負けないくらい、爽やかに歌えるように心がけました。
草野 イントロは波打ち際でさざ波が前後してるイメージだし、最後のポロロンっていうフレーズも水しぶきが飛ぶイメージで私が作っていたところなんです。だから、ひかるちゃん大正解。全部バッチリ伝わってます。
天野 あと、1番のサビ前の結構静かなところに、サビの歌い出しの前に少しシュッとした音が入るんですけど、そこから一気に広がっていく感じが素敵で……海に浮いているイメージが思い浮かぶ、すごく大きな波の動きを感じられるところなんです。
――その美しい海の光景が浮かぶというのも、最初に意図して作られた部分ではありました?
草野 そうですね。今回はまず最初に、監督さんと打ち合わせさせていただいて。そこで話したことを持って、田淵さんと二人で会議したんですよ。私プロデュースではあるんですけど、田淵さんは相談相手になってくださって。すごくアイディアもお借りしているし、「オープニングとエンディングで歌詞を対にしたい」という提案もさせていただいたりもしているんですよ。それで、オープニングの歌詞が太陽だったり水平線より上の世界を描くなら、私はエンディングで水平線より下の深海の世界を描いて、オープニングとエンディングで1つの物語の裏と表を描けるようにしたい……ということを相談させていただいてから作ったんです。あとこの曲の制作には、各々音楽をやりながらプロデューサーもやっている人が、四人も集まっているんですよ。
――今お話に出た、田淵さんも含めて。
草野 あとは編曲の堀江晶太くんもそうですし、ミックスは透明感を出したくて、岸田教団の岸田さんにお願いしているんです。歌詞も全員に送って編曲もミックスもしてもらうことで隅々まで作りたいイメージを共有できたので、監督さんからいただいたバトンを私が握り締めて繋ぐことができて……だから、久しぶりに文化祭みたいな感じがしたというか(笑)。最後の最後まで本当に信頼する人たちと突き詰められた、自信作になりました。
――そのバトンを繋いでいくなかには、レコーディングという作業もあったかと思います。今回レコーディングはご一緒されたのでしょうか?
草野 はい。ディレクションも担当しました。あと仮歌も私が歌ってある程度の方向性を示しているのもあって、1回目の声出しの瞬間にみんな答えを持ってきてくれている状況なんです。おかげでいつも、「80点できているところから、120点を叩き出すにはどうしよう?」みたいなレコーディングをやれています。でもそれは受け取る側のアンテナが立っていてセンスもないとできないことなので、そこがARCANA PROJECTさんの素晴らしいところだなと思います。
桜野 ただ実は、オープニングのお話を私たちが聞いたのは結構ギリギリで。レコーディングは3月頭だったんですけど、2月末くらいにお話を聞いたので、2週間ないくらいだったんです。でも最初に歌ったときに、華余子さんから「ちゃんと自分の中で『こうしたい』っていうのを考えて、すごく練習してきてくれたんだね」という言葉をいただけて……「それだけで死ねる!」って感動しましたし(笑)、安心した瞬間でもありました。
草野 1回歌ってもらった段階から「ここをこの人でいこう」っていうのが見えるくらい、それぞれみんなよかったんですよ。本当に「全員のソロバージョンでいいんじゃない?」っていうくらい。
桜野 嬉しい……。
草野 うーちゃんは落ちサビの入りがすっごくきれいなファルセット気味のしゃくりだったりと、そういうところの切り返しがすごくうまくて。ハナちゃんはロック系の曲好きならではのパワーの部分で、ロングトーンでパーンと出るところがすごく活きた部分もあったし、ひかるちゃんは自分なりに考えてきたうえで素朴でフラットに声が出るような状態がすごくよかった。それぞれの最適解を作ってきてくれていたので、作家冥利にもディレクター冥利にも、プロデューサー冥利にも尽きるレコーディングになりました。
――ということは、パート割はあまり悩まれなかった。
草野 そうですね。この曲ではそれぞれの良いところが本当にダントツだったので、わざわざ公平性を考えたりしなくても、それぞれ歌う場所がある。まさに、多様性を認められるような仕上がりになりました。
花宮 私は逆にレコーディングまでの短い間、結構ずっと悩んでいたので、「もう、華余子さんのディレクションに頼っちゃえ!」とちょっと悩みながら行った部分があったんですよ。でもそれを、しっかり導いてくださって。特に、1番のBメロは何度もやり直しさせてもらったパートなんですけど……。
草野 実は回数歌ってもらったところは「ここをこの子でいきたい」という気持ちになっている部分で。「元々いいけど、このパートの最高点を叩き出すために粘りたい」というときなんです。
花宮 そうなんですね!よかった、「ライブでもっとよく歌えるようになりたいな」って練習もしているところなんですけど、それを聞けて今すごく安心しました。
天野 私は、歌詞を解釈して「こう歌いたいな」というイメージは浮かぶんですけど、自分の実力だとまだ思ったようにいかないことが多くて。レコーディングでは曖昧に指示を受けるとまだわからないことも多かったんですけど、華余子さんが道筋をしっかり示してくれたおかげで、自信を持って歌うことができました。
――「道筋を示した」とは、どのように?
草野 「あともうちょっと口を“オ”の形にしたらいい」とか、「表現はもういいから、もっと上を向いて歌おう」みたいに具体的にちょっとコツを伝えてあげると、ひかるちゃんはそれだけで爆発的に良くなるんです。それは、これまで時間をかけて歌のスキルを突き詰めてきたハナちゃんやうーちゃんとは違うアプローチで。この二人には逆に、具体的に聞くよりも「もうちょっと明るいのなんかない?」という感じの話をしたりと、キャリアとか声の出し方によってディレクションを変えたりはしています。
花宮 あと、華余子さんはいつも、すごく気持ちを上げてくださるんですよ。最近自覚したんですけど、「できない!」となるとどんどん口角が下がっていって暗い声になっちゃって……でも華余子さんはディレクションのときにすっごく褒めてくださって。しかもそれがとても具体的なので、いつも以上に自信を持ててすごく歌いやすいんです。
草野 それは、自分もボーカリストだからかも。ブースに閉じこもったときに、トークバックですぐ感想をもらえなかったらめっちゃ不安になるじゃん?だからそういうときには「ちょっと待っててね。今確認するね」と言ってあげたり、とにかく「ボーカリストとして自分がやられたら嫌なことをやらない」とか、「これがあると、より一層実力が出せる」ということをシンガー・ソングライター目線でやっていきたいという気持ちは、ディレクションの面ではあります。
「たゆたう」からこその、魅せ方の難しさ
――あとこの曲、やはり最初に強く印象に残るのが、サビで拍子が変わる部分です。
草野 8分の6拍子に変わるところですね。まさにこれも田淵さんとお話ししてるときに、「波がサーッと流れていくのって8ビートっぽいな」とか「大きい波の揺らぎって、やっぱり大きな16分か8分の6拍子かなぁ」みたいな話をうっすらしていたので、「サビで転調もするしビートも変わる曲、1曲書いてみたいな」という気持ちもあって、そのイメージに合わせて……今回は、クラシック音楽を作るような気持ちでした。
――クラシックのイメージですか?
草野 はい。元々クラシックをやっていたのもあって、クラシックの大きなオーケストレーションを書くようなイメージでポップスを書いたらどうなるだろう?ということで、今回はいかにサビと平歌のところを差別化できるか。なおかつ、それを転調もビートが戻るときもわからないぐらいナチュラルに、1曲の楽曲としてコンパクトにまとめながら大きな世界観を提案できるようにはどうしたらいいだろう……ということを心がけました。
桜野 その部分は、ライブのときに切り替わるタイミングがズレていかないように、と特に気をつけているところでもあるんです。歌いながら振付も込みで、いかに違和感なく切り替えられるかを突き詰めていくのはやっぱり難しいので、最近はみんなでライブ前に謎トレーニングしながら、一緒にサビの縦の動きを合わせていて……。
――謎トレーニング?
桜野 はい。ダンスの先生に体を使ったリズムの取り方を教えてもらったので、振付とはまた別の動きをして。それを歌でも合わせて、みんなで縦を揃えています。でもあそこは、動きにアクセントがついちゃダメなんですよ。たゆたうように繊細に動きながら揃わないといけないんです。
草野 だけど歌では、「アクセントをちゃんと感じろ」って言われてるからね(笑)。
花宮 そうなんですー!
桜野 だから、地味な動きですけど実は意外と難易度の高いことをやっていると思います。しかも海藻って、それぞれがまったく同じ動きをするわけではないじゃないですか?なので、私たちの頭もそういうふうになるように……というイメージでやっています。
草野 ダンスもだけど、MVを観たら今まで以上にみんな楽しそうで、顔が生き生きしてる。「沖縄楽しそうやな」って思った(笑)。(※「たゆたえ、七色」のMVは沖縄で撮影)
桜野 ひかちゃんは、沖縄初めてだっけ?
天野 初めてではなかったんですけど、だいぶ前に行ったっきりで。海もずっと見ていないぐらいだったので、本当にきれいで、すごく良い思い出にもなりましたし……砂浜で踊ったりするのも初めてだったので、大変なところもあったんですけど、とても楽しかったです。
――砂浜だと、足を取られたりもしたのでは?
天野 あ、めちゃくちゃありました。
花宮 しかも、裸足で踊ってるんですよ。
桜野 カメラマンさんや監督さん的にはもうちょっと海の近くで踊ってほしかったみたいなんですけど、衣装が真っ白だったので、衣装を汚してほしくないマネージャーさんや衣装さんとの板挟みになって……(笑)。でもハナちゃんはどうしても海に飛び込みたくて、海に走り出しちゃうんですよ。
花宮 なんで言うのー!?
草野 もうダメになってるやん、沖縄で(笑)。
花宮 でもちゃんと理由があるんですよ!MV撮影で沖縄に行けたことももちろん嬉しかったんですけど、ARCANA PROJECTってお披露目が去年の1月だったので、コロナ禍でみんなと遠征とか1回もできていなかったんです。なので、みんなで初めて泊まりで遠くに行けた……っていうのもあって。それで、別の衣装を着ているときに「海、入っていいよ」って言われて、はしゃいじゃいました(笑)。
草野 こうやって話しているようなところが、ハナちゃんは本当に歌に出てるよね。思い込んだら一直線!な感じで。ほかのみんなもそれぞれ、性格が歌に出てるんですよ。だから、基本ARCANA PROJECTの歌録りのあとはいつも「素直でいい子たちやなぁ」って思う(笑)。タイプは違うんですけど、全員、褒めたら喜んで声が明るくなって、苦戦したら悲しんで暗い声になって……を繰り返してるから、本当にかわいいんですよね。
――さて、ARCANA PROJECTさんと草野さんのタッグによるリリースは、この曲が2曲目となります。もしまたタッグを組めるときに、歌いたい曲はありますか?
桜野 やっぱりARCANA PROJECTの曲って“丁寧な音楽”みたいなものが結構多いので、もうなんかゴリゴリにロックみたいな感じの曲で……ちょっとね、がなりたいです。
花宮 一緒! がなりたーい!
桜野 ちょっとブラックっぽい感じのやつやりたいよね。
花宮 やりたーい! ゴリゴリのやりたい。
桜野 プロデューサーさーん!
草野 プロデューサーさんお願いしまーす!(笑)
花宮 元々ロックをやりたいとお伝えはしているので、それが華余子さんで叶ったらもう……。
草野 ぜひぜひ……任せてください。
プロデューサー 機会があればぜひ。
桜野 おー! やったぁー!
草野 天の声聞こえてきた!……録音しておきましたんで(笑)。
花宮 やんなきゃいけなくなってきてる(笑)。
――天野さんはいかがですか?
天野 そうですね……本当に「たゆたえ、七色」が大好きなんですけど、この曲は“夏”じゃないですか?だからもしこの曲が、冬だったらとか春だったらとかすごい思うので……ちょっと変かもしれないんですけど、「たゆたえ、七色」の違う季節版、みたいな。
草野 いいね! すごい斬新なアイデア。
――イメージするものを共通させつつも違う季節に当てはめていくというのは、とても面白いと思います。
草野 面白いですよね!……「たゆたえ、粉雪」作りますんで、プロデューサーさんよろしくお願いします(笑)。
――逆に草野さんは、書いてみたい曲のイメージはありますか?
草野 「天運ヘキサグラム」は直接出会う前に声を聴いたときのイメージを元に書かせてもらった曲だったので、今度はそれぞれの性格とか個性も知ったうえでの曲にしたいから……やっぱり、全員活かせるセクションのある曲ですかね。ロックを基調にするにしても、Bメロでアンニュイなセクション作ったりとか、ちょっと早口のラップっぽいアガるところもあったり。3分ぐらいのロック曲だけど割と組曲的な、内容の充実している曲にしたいです。でも、あんまり暗くならないかも。やっぱりみんなネアカだから。
三人 あはは(笑)。
草野 もし私が書くなら“戦う女の子”っていう感じの、かっこいい曲にするかもしれないですね。
INTERVIEW & TEXT BY 須永兼次
●リリース情報
ARCANA PROJECT 3rd シングル
「たゆたえ、七色」
発売中
【初回限定盤[正位置ver.]、CD+BD)】
価格:¥2,200(税込)
品番:LACM-34136
<BD>
「たゆたえ、七色」Music Video
「たゆたえ、七色」Jacket Making Video
【初回限定盤[逆位置ver. ]、CD+BD)】
価格:¥2,200(税込)
品番:LACM-34137
<BD>
「たゆたえ、七色」Music Video
「たゆたえ、七色」Music Video Making Video
【通常盤】
価格:¥1,430(税込)
品番:LACM-24136
【アニメ盤】 ※描き下ろしイラストジャケット
価格:¥1,320(税込)
品番:LACM-24137
<CD>
01.たゆたえ、七色
作詞:田淵智也 作曲:草野華余子 編曲:堀江晶太 ストリングスアレンジ:宮野幸子
02.星影のファンタジア(全形態収録)
作詞・作曲・編曲:志村真白
03.きっと、その未来にたどり着くから。(初回限定盤[正位置ver.]収録)
作詞:安藤紗々 作曲:吉岡大地 編曲:秋浦智裕
04. Ophelia(初回限定盤[逆位置ver.]収録)
作詞:安藤紗々 作曲・編曲:石濱 翔(MONACA)
05.ドンケア(通常盤収録)
作詞・作曲・編曲:久下真音
●作品情報
TVアニメ『白い砂のアクアトープ』
<introduction>
監督・篠原俊哉、シリーズ構成・柿原優子、そして制作・P.A.WORKS。
少女たちの青春を描いた『色づく世界の明日から』でも手を組んだ彼らが新たに手掛けるのは、沖縄のちいさな水族館を舞台にした完全新作オリジナルアニメーション。
水族館で働く18歳の女子高生・海咲野くくるは、東京で居場所をなくし、逃避行をした元アイドル・宮沢風花と出逢う。くくると風花はそれぞれの思いを胸に、水族館での日々を過ごすようになる。
しかし、その大切な場所に、閉館の危機が迫りくる。
少女たちの夢と現実、孤独と仲間、絆と葛藤──。
きらめく新たなページが、この夏、開かれる。
【CAST】
海咲野くくる:伊藤美来
宮沢風花:逢田梨香子
照屋月美:和氣あず未
久高夏凛:Lynn
【STAFF】
原作:projectティンガーラ
監督:篠原俊哉
シリーズ構成:柿原優子
キャラクター原案:U35
キャラクターデザイン・総作画監督:秋山有希
美術監督:鈴木くるみ
美術監修:東 潤一
美術設定:塩澤良憲
撮影監督:並木 智
色彩設計:中野尚美
3D監督:鈴木晴輝
編集:髙橋 歩
特殊効果:村上正博
音楽:出羽良彰
音響監督:山田 陽
プロデュース:infinite
制作:P.A.WORKS
<ARCANA PROJECTプロフィール>
「ARCANA PROJECT」はアイドルユニット「でんぱ組.inc」やアニメ「アイカツ!」の歌唱ユニット「STAR☆ANIS」などが所属するDEARSTAGE と、アニソンに特化した株式会社バンダイナムコアーツの音楽レーベル「Lantis」とが共同でプロデュースを手掛ける5人組ボーカルユニット。タロットカードをベースにした世界観とメンバーの個性溢れるボーカルとパフォーマンスで、楽曲を表現する。
©projectティンガーラ
関連リンク
ARCANA PROJECT 公式サイト
https://www.arcana-project.com
ARCANA PROJECT 公式Twitter
https://twitter.com/arcanaproject
TVアニメ『白い砂のアクアトープ 』公式サイト
https://aquatope-anime.com
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