著者・墨香銅臭が描く中国で人気のWeb小説「天官賜福」(てんかんしふく)のアニメが昨年中国のbilibili動画にて配信され、満を持して日本での放送が開始に。架空の古代中国を舞台に、仙楽国の太子である謝憐(シエ・リェン:CV神谷浩史)が下界で謎の少年・三郎(サンラン:CV福山 潤)と出会ったことから始まる物語。古代中国という世界観と寓話のようでありながらも躍動感に満ちたストーリー、そして美麗なアニメーションで魅せる作品である。そんな『天官賜福」のOPテーマを歌うのはシド。『黒執事』や『鋼の錬金術師』をはじめ『BLEACH』や『七つの大罪』など数多くの人気アニメとコラボレーションしてきた彼らが、中国アニメとの出会いによって新たなサウンドを聴かせる!――今年は5月に河口湖ステラシアターでのスペシャルライブ“SID LIVE 2021 -Star Forest-”を開催されましたが、自然の中でのライブはいかがでしたか?マオ すごく良かったです。ファンとの距離も近いですし。ただ、「どういう景色が見えるのかな」と客席にも立ってみたんですが、一番上の方の子たちは怖くはなかったかな、と心配にはなりました。すり鉢状ですし。でもみんな盛り上がってくれて、とても楽しいライブになりました。――そんなシドの皆さんは7月18日に配信シングル「慈雨のくちづけ」をリリース。今回は中国のアニメ『天官賜福』のOPテーマです。これまで様々なアニメとのコラボレーションを果たしていますが、世界観がどの作品とも違います。海外のアニメの楽曲を依頼されてどのようなことを感じられましたか?マオ 中国アニメが日本にも進出していることや、注目が高まってきているという話は耳にしていたのですが、そんなタイミングでのオファー。逆に18年というキャリアのある俺たちがやってもいいのだろうか、という気持ちも湧きました。ですが、そのなかで新しいバンドの息吹ではなく、俺たちを選んでくださったことがすごく嬉しかったです。だからこそ必要なのは俺たちの新しさだなと思いました。自分たちにとっても今までやったことのないサウンドを目指そう、というコンセプトの元に制作をしていきました。――サウンドメイクとして目指した新しさ。どのような部分でそれを出したのでしょうか。明希 今回はアニメの世界観が完全に伝わってきたので、自ずと音楽についても『天官賜福』の世界観になっていくのだろうと思いましたし、そうした雰囲気のある楽器を使ってくれると嬉しいです、というオーダーもあったので、そこから色々な意思を汲み取りつつも、そのなかでも自分たちらしさを織り込んで作っていきました。――今回、音色でも中国楽器のものがありますよね?明希 中国の民族楽器に詳しいわけではなかったのですが、色々な音色を聴きながら、世界観をイメージできるものをバンドの音と融合させていきましたね。二胡や古箏を使ったのですが、それは半分はオーダーにあったものと、資料としていただいていた絵からのイメージが元でした。――曲調や展開についての発注もあったのでしょうか。明希 オーダーとしてはなかったです。今回は自分がアニメの資料から受け取った印象を繋ぎながら作っていきました。展開についてもあまり意識はせず、アニソンだからどうしようか、ということも考えずに。ただ、設定と絵や、以前放送されていた中国制作のアニメを見せていただいて、今の中国アニメの世界の雰囲気を冒頭のメロディで掴みたかったんです。そこからはメロディの中に和声音階の要素を散りばめたりしながら作っていきました。この和声音階、「ヨナ抜き音階」というんですが、そこに乗るバンドの音については自分たちらしく図太くしっかりした音にしていくという意識で臨んで、そこは昇華できたかなと思います。――例えば『黒執事』ならタッグを組んできた回数や関わってきた時間の濃さもあって、世界観をイメージすることはすぐにできると思うのですが、今回はいかがでしたか?明希 資料となる原作やいただいた設定などを読むんですが、ストーリーはもちろんながらビジュアルからインスパイアされることの方が多いんです。これまで作った曲も半分以上はメインビジュアルから曲を考えてきたことが多いです。だから今回もメインビジュアルから受けた印象が強いですね。――だからこそのティザー映像と楽曲とのマッチ具合だったんですね。明希 確かにシンクロ具合がすごかったですね。完成を見たときには嬉しかったです。クオリティもめちゃくちゃ高い作品だなぁ、と感じました。――Shinjiさんはこの「慈雨のくちづけ」とどのように向き合われたのでしょうか。Shinji 音色に気を付けました。ガンガンに歪んでいる音では合わないよね、という話もしていましたが、アレンジ的にもギターの勢いは欲しかったんです。普段だったらダブリングで両サイドに分けるようなギターを、今回は片方からシンプルに鳴らしてみたりもしました。この部分は一番意識しての音作りとなりましたね。意外とギターのフレーズについては、明希の言っていたヨナ抜き音階もそこまで明確ではないので、いつも通りの感じで弾けました。――中国の民族楽器とのセッションについて、特別に意識したことはありましたか?Shinji この曲に関してはギターよりも中国楽器の方がメインの音だと思っているので、邪魔をしない且つギターはかっこよく響いている、というアレンジに落ち着きたかったので、そこは意識しました。――ドラムについてはいかがでしたか?ゆうや Shinjiが言うように、歪みすぎているのは違う、という具体的な要望はまったくなかったので、シドの新曲としてドラムはドラムで中国の雰囲気とのセッションをしっかりと作ることができたと思っています。民族楽器の音については面白いな、と思いましたね。――面白い?ゆうや そんなに遠くないんですよね。日本の和楽器の要素にも近くて。音の繋がっていく様を感じながら臨むことができました。違和感なく向き合えましたし、最近の自分が「こういう音でやりたい」という想いも全面に出せたので、“今”が詰まっていると思います。――歌詞はどのようなことをイメ-ジして作られたのでしょうか。マオ 色々な情報をいただいたり、自分でも調べたりもしながら作詞をしていきました。今回は中国のスタッフさんとのやりとりになったんですが、タイアップをやるときには相手側の意見を聞くようにしているので、今回も先方と話をさせてください、とお願いしました。アニメのコンセプトやストーリー、世界観や「こういう言葉が入っていたらいいですね」といったことを聞いて、それを参考にさせてもらいながら作りました。タイアップについては自分だけでシドの世界で書き上げるというよりは、タイアップの良さを出したいという想いです。ただ今回は、本当に国を跨いでやりとりをしているのかな、と思うくらいスムーズでした。僕の意図もすごく汲み取ってくれましたし、感謝しています。――この作品とのコラボレーションでなければ出なかったフレーズはありますか?マオ “煩い続け”という言葉や“溢れ出したら もう戻れない”といった表現に滲む、進みたいけれどそれができないもどかしさを最大まで出したかったんです。そのために“表面張力”という言葉も使ったんですが、ここは表現に少し悩みましたし、『天官賜福』がなければ出てこなかったのかな、という気はします。――曲についてはどのようなことを感じましたか?マオ 一番気になったのはアニメとのハマりだったんです。どんなふうに展開されるのかな、と曲から想像をしました。それから、この曲はライブでもやっていくと思うので、ライブでの立ち位置や、どの辺で響かせるといいのかな、とか。ちょっと未来のことも考えましたね。――歌うときに、中国の民族楽器の音の存在はどのように感じていらっしゃいましたか?マオ 歌詞に“川の流れ”とあるんですが、言葉の通りに楽曲からも川の流れを感じたんです。メロディにも。ということは、歌声としても流れるように歌うことを意識したらハマるのかなと思って、特にAメロBメロではその部分を意識したので、うまく表現できたと思います。――アニメのティザーで鳴っているのをご覧になっていかがでしたか?マオ すごく綺麗でした。世界観も美しいなという印象で、嬉しかったですね。Shinji 毎回アニメのタイアップをするときには、ティザーや映像が発表になる瞬間はドキドキするんですよね。自分たちの作った曲と絵がはまっているのを見るのは、子供のように嬉しくなります。ゆうや SNSを見ていたら、バッと流れたんです。それを見た瞬間、「いいな!」と思いましたし、感動もしました。世界観に音で近づけてもいたので、なるほどこうなったか、と。そのマッチングが良かったですし、映像も美しかったです。明希 アニメと主題歌が一緒になったときに、すごくクオリティの高いアニメなんだなということを感じましたし、正直に言えば感動しました。――先ほどマオさんが「ライブでの姿を想像していた」とおっしゃっていました。皆さんはライブでの「慈雨のくちづけ」をどのように想像されましたか?ゆうや ライブはライブなので、シドとしてしっかりと、という感じでしょうか。ライブだからこそのシドの色をしっかり加えていくことがライブだと思いますね。明希 割とこういうテンポの曲は、ライブだとCDや音源で聴いた印象よりも重たく感じるんですよ。そのギャップも楽しめるんじゃないかなと思いますし、次のライブでは肝になる曲になるんじゃないかなと思っています。Shinji イメージしているよりも激しくなりそうです。ギターのフレーズとあのテンポ感は自分の中でガンガンしている雰囲気もありますし、Aメロは穏やかな感じですが後半ではグイグイと響くギターが印象的だとも思うので、僕としてはかなり激しくなる感じがしています。――この曲こそステラシアターが似合いそうですね。マオ もう1回やりましょう!また“Star Forest”はやりたいなって思っていて。そのときにはいいかもしれないですね。――TVアニメ『七つの大罪 神々の逆鱗』以来のアニメタイアップとなりますが、ここまで数多くのアニメや映画などのタイアップ楽曲を作ってこられているシド。タイアップ楽曲の制作はシドにとってどんな経験になっているのでしょうか。明希 タイアップでは、新たなヒントをもらったり、僕らだけで作っていたらやらないことややれないことが楽曲に込められますね。例えば、今回なら中国の民族楽器を使ったこと。それはコンセプトがなければ知ることができないですし、それをきっかけに民族楽器の音とは、と知ることにも繋がる。チャンスを広げてくれることなのかなと思います。絵から音楽を作るなんて究極の表現だと思うのですが、それだってアニメがなければできないですし。可能性を伸ばしてくれる、成長するチャンスをくれる制作だと感じています。マオ 外的刺激はありますね。アニメに限らずですが、自分の好きなものは自分で見つけ出せるし、その感想を書くことは簡単なんですよね。でも簡単ではあるけれど、今までと同じ言葉が出てくることも多くなる。長くなればなるほど、新しい刺激に出会うことで表現も広がる、元々知らなかったものを、関わったことで好きになることだってある。順番が逆かもしれないけれど、それだってまた新しい自分との出会いなので楽しいんです。さらには作品のファンの人たちが俺たちを知ってくれるきっかけになって、チームがまた大きくなることも楽しいですね。Shinji 子供のときに観ていたアニメでも、すごく好きな主題歌はたくさんあったので、こんなにたくさんのタイアップをやらせてもらっていますが、今でもすごく嬉しいです。自分たちの楽曲と絵が一緒になったものを初めて見たときの喜びの瞬間を今でも覚えていますし、やるたびにその興奮は今も刻まれています。ゆうや 僕らが子供の頃は、アニメソングとカテゴライズされる前だったと思うし、必ずアニメのタイトルが歌詞に出てくるような、まさしく「アニメのための歌」だった面が強かったと思うんです。僕らはきっとそこから数えると第3世代くらいでアニメに関わるようになったと思うんです。アーティストの新曲だけどアニメにハマっている。それが文化として広がっていって、今や主流になっていますよね。自分自身の子供のときのように、僕らがアニメとタイアップした音楽をそのアニメを見ている子供たちが聴いていて、その子たちを育む音楽になっていく。それも意識して作っていきたいと感じますね。――今作を配信リリースしたのち、9月からはいよいよツアーがスタートします。今のお気持ちをお聞かせください。マオ ツアーのコンセプトなどはまだ考えていないのですが、Zeppを巡る有観客ツアーなので、すごく楽しみです。Shinji 地方にライブをしに行けるのは本当に久しぶりだし、この間のステラシアターでも感じたんですが、会えない状況下で会えることはすごく喜びが大きいんです。やっと行けるんだ、と思うとすごく楽しみですね。ゆうや ツアーはすべての行程が楽しいんですよね。これまでそれは当たり前のことだった。移動するのも、リハーサルも本番も。新幹線や飛行機に乗っていつも見ていた景色もそうですし。そういった行動を一切していないので、またこの感じが戻ってきてくれたんだ、と思うだけでも楽しいので、ツアーが始まるともっと楽しいと思えば今は期待感がすごく大きくなっています。明希 この四人で最大限に音を出すことを何よりも楽しみたいです。「慈雨のくちづけ」もライブでは化けそうなので、期待したいですね。個人的には新しいモデルのベースを作っていて、この間ステラシアターでお披露目をしたんですがそこで使って感じたことをまたフィードバックしてより進化させているので、ツアーのメインを飾れるようにメンテナンスしていきたいです。ベーシストとして作る喜びという素敵な時間でもあります。マオ ツアーって単発のライブと違って毎回ドラマがあるので、終わったあとにどんなドラマだったかを思い返すことがすごく楽しくて。それをまた感じられることが楽しみです。――では最後に、ツアーを前に「慈雨のくちづけ」をどのように楽しんでもらいたいか、お聞かせください。マオ アニメと重ねて見てもらうのが一番楽曲を楽しんでいただける形だと思うので、アニメと「慈雨のくちづけ」の世界観を感じながら、「ここが世界観として一致しているんだなぁ」と感じるのも楽しいと思います。そして、この曲で新たにシドと出会う人たちもいると思いますし、ここからシドを深堀りしてもらえるのも嬉しいので、隅々まで楽しんでもらいたいですね。INTERVIEW & TEXT BYえびさわなち●配信情報シド 配信シングル「慈雨のくちづけ」2021年7月 18日 配信スタート●ライブ情報SID TOUR 2021 ~peep of 2022~2021年9月3日(金) Zepp Haneda2021年9月12日(日) Zepp Haneda2021年9月17日(金) Zepp Nagoya2021年9月18日(土) Zepp Nagoya2021年9月22日(水) Zepp Osaka Bayside2021年9月23日(木) Zepp Osaka Bayside2021年10月3日(日) Zepp Sapporo2021年10月9日(土) SENDAI GIGS2021年10月15日(金) Zepp DiverCity TOKYO2021年10月16日(土) Zepp DiverCity TOKYO2021年10月31日(日) Zepp Fukuoka●作品情報アニメ『天官賜福』日本語吹替版2021年7月4日よりTOKYO MX・BS11にて放送開始予定2021年秋よりCS「ホームドラマチャンネル」にて放送開始予定日本語字幕版2021年6月26日(土)第1話先行放送2021年7月よりCS「ホームドラマチャンネル」にて放送開始予定<あらすじ>仙楽国の太子・謝憐(シエ・リェン)は天賦の才を持ち、人々を救うことを志して修行を積み、飛昇し武神となった。しかし彼は二度も天界から追放されてしまう。そして800年。謝憐は三度目の飛昇を果たした。しかし”三界の笑い者”といわれる彼に祈りを捧げる者は今やどこにもいない。謝憐は功徳を集めるべく、人々の住む下界に降りてこつこつとガラクタ集めをしながら、神官として出直すのであった。ある日、謝憐はガラクタ集めの帰り道で、”三郎(サンラン)”と名乗る不思議な少年と出会う――【キャスト】謝憐(シエ・リェン):神谷浩史三郎(サンラン):福山潤霊文(リンウェン):日笠陽子南風(ナンフォン):古川慎扶揺(フーヤオ):小林千晃【スタッフ】原作:墨香銅臭(モーシャントンシウ)監督:李豪凌(リー・ハオリン)キャラクターデザイン:イ・サンミサブキャラクターデザイン:キム・ミジン、パク・ミンジョン、ユ・ミンジ、ホン・インスシリーズ構成・脚本:春日幽鈴(チュンリーヨウリン)音楽:楊秉音(ヤン・ビンイン)アニメーション制作:絵夢動画日本版制作:株式会社ソニー・ミュージックソリューションズ、株式会社アニプレックス関連リンクシド オフィシャルサイトhttp://sid-web.info/シド 公式Twitterhttps://twitter.com/sid_staffアニメ「天官賜福」日本版公式サイトhttps://tgcf-anime.com