佐島 勤のライトノベル「魔法科高校の劣等生」を中心に、数々のメディアミックス展開やスピンオフ作品で人気を集める「魔法科」シリーズ。今年7月に10周年を迎え、TVアニメ『魔法科高校の優等生』の放送などでさらなる盛り上がりを見せるなか、シリーズ10周年記念ソング「命ノ証」が配信リリースされた。
歌うのは、TVアニメ『魔法科高校の劣等生 来訪者編』のOPテーマ「Howling」で知られるASCA。この先も広がり続けるであろう「魔法科」シリーズの未来を暗示するような、明るく開放感に満ちた本楽曲のこだわりについて、ASCAに話を聞いた。


司波兄妹と「魔法科」シリーズへの想いを形にした「命ノ証」
――ASCAさんの新曲「命ノ証」は、「魔法科」シリーズの10周年を記念して作られた爽快なアップチューン。お話をいただいたときの率直な感想はいかがでしたか?

ASCA 最初は驚きました。「魔法科」シリーズは同じレーベル(SACRA MUSIC)の先輩たちがテーマ曲を歌ってきた作品ですし、10周年の曲を歌わせていただくことに責任を感じて、「本当に私でいいんですか?」という気持ちでした。ただ、「Howling」もたくさんの人に聴いてもらうことができて、コロナ禍のなかでも「こういう時代だからこそ叫ぼう!」っていう想いを込めた、みんなだけでなく自分のことも鼓舞するような大事な楽曲になったので、大きな意味を感じました。

――その「Howling」と同じく、今回の「命ノ証」はSakuさんが作編曲を担当、歌詞はASCAさんとSakuさんの共作ですが、10周年楽曲を作るにあたってアニメサイドからはどんな要望がありましたか?

ASCA 結構細かくいただいたんですけど、その中でも私は主人公の二人、(司波)達也と深雪兄妹のどんな困難も圧倒的な力で打ち破っていく冷静さと、カタルシス感の二点を意識して作詞しました。私はすぐに熱くなってしまうので、「このワードだとちょっと暑苦しいな」とか、書いては消してを繰り返して。

――ハハハ(笑)。特に達也は、何でも涼しい顔でこなしてしまう余裕のあるところが魅力のキャラクターですものね。

ASCA いつでも世界をひっくり返せる感じがありますよね。あとは“二人の正義”という部分に着目しました。
達也と深雪のお互いを守りたい愛の強さが常識をも凌駕してしまうところが、私には憧れなんですよね。お互いだけがいればいい、みたいな。だから“二人だけの世界”を感じられるワードはたくさん散りばめました。

――カタルシスはどんな部分で表現しましたか?

ASCA サビ前にある“宿る光今放て”という歌詞ですね。周りがどうこうではなく、自分が信じたときに、自分の意思で進んでいくっていう。ここは自分を開放するイメージが出せたと思います。

――確かにこの曲には自分自身を解き放つイメージ、自由を希求する気持ちも表現されていますね。

ASCA “自由”もキーワードの1つにありました。『魔法科』は、ずっと束縛されて生きてきた達也と深雪が、二人の正義で常識を覆して自由を掴む話でもあると思うので。2番の歌詞にそういうワードが入ってますね。“自由への鐘”とか。

――そういった抑圧からの解放、あるいは現状打破といったテーマは、ASCAさんがこれまでの楽曲で表現してきたことでもありますよね。


ASCA デビュー前からずっと「このままじゃいけない」っていう気持ちがあるので。歌やステージ上での立ち振る舞いもそうですし、こういうインタビューで話す言葉だったり、ASCAとして何を伝えていけば、応援してくださっている方にいい影響を及ぼせるのか、というのはずっと考えています。常に自分を更新していきたいんですよね。

――デビューから現在に至るまで、自分を更新し続けてきた実感はありますか?

ASCA 自分一人で超えてきたっていう感覚はあまりなくて。やっぱり皆さんからいただく言葉や、ライブで浴びた歓声、ASCAとして歩いてきたなかで外からいただいたもので、今の私はできていると思います。でも、コロナ渦で外からもらえるものが圧倒的に減ってからは、自分の中から自信を得る方法も習得するようになって。例えば体を鍛えているのも、歌をちゃんと届けるためにやっていることで、それによってステージに上がるときの不安が減ったんですよ。

――フィジカルを鍛えることで自分に自信がついたと。

ASCA 今までは外からの情報や評価に左右されがちだったんです。「良い・悪い」で一喜一憂しちゃうみたいな。でも、自分さえ「自分はちゃんとやった」と納得していれば、他人にどう言われようがいいやっていうところに、徐々に辿り着けています。

――なるほど。
ちゃんと自分の芯、「命ノ証」の歌詞で例えると、自分の“正義”ができてきたわけですね。


ASCA そうですね。この曲の歌詞を書いたのが今年のお正月頃で、自分の中の“正義”みたいなものの形が見えてきたのが「Howling」だったので、その意味でも『魔法科』に出会えて良かったなと思っています。多分「Howling」はタイアップをいただけていなかったら書けなかった曲なので。

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“独りじゃないから”――アーティスト活動を通じて届けたい気持ち
――歌に関しても絶好調と言いますか、今回も聴き手を牽引するような力強さが感じられますが、自分的にこの曲で乗り越えられた課題はありますか?

ASCA レコーディングは割と最近にやったんですけど、自分の中で積み上げてきたものをちゃんと歌に載せることができましたね。でも、この曲、リズムが意外とタイトで、AメロとBメロの音程も割と低いんですよ。だから低音をどれだけ聴こえやすく歌えるか、というのはかなり意識して臨みました。

――低音の聴かせ方と言えば、前作のシングル「カルペディエム」でも課題になった部分ですね。

ASCA そうなんですよ。その前の阿部真央さんに書いてもらった「regain」(2ndアルバム『百希夜行』収録曲)もすごく低くて、マイクに載せたときに歌い方ひとつで全然聴こえなくなるので、そのレコーディングやライブでちゃんと修行しているんですよね。

――それらこれまで歌ってきた楽曲の“軌跡”が「命ノ証」になっていると。まさに“傷だらけになっても 残してきた軌跡は ずっとずっと消えない それが命の証だ”という歌詞通りですね。


ASCA ありがとうございます。あと、今までの軌跡の話で言うと、“命”や“生きる”という言葉も、私の書く歌詞に如実に出てくるようになったんですよね。「命に嫌われている」のカバーをさせていただいたのもありますし、『百希夜行』に収録している「進化論」は“命がけの生存競争”という歌詞で始まっていて。2020年は誰もが“命”や“生きる”ことに敏感になったと思うんですけど、その流れもあって「命ノ証」というタイトルに辿り着いたんだと思います。達也と深雪はすごい能力を持っていますが、私たちも一人一人に能力や個性があるし、そこに重きを置いて自分のやりたいことを貫いていってほしい、というメッセージも込めていて。

――改めて“命”の大切さを意識するようになったからこそ、自分の“正義”、いわば自分だけの価値観や個性といったものに、より真摯に向き合えるようになったのかもしれませんね。

ASCA そうですね。それとこれは時代なのか、今は自分を上手に褒められない人が多いのかなって、SNSとかを見ながら思うことが多くて。私のTwitterのアカウントはほぼ相互フォローしているので、みんなのつぶやきをタイムラインでバーッと見れるんですよ。そうすると、息苦しそうなつぶやきをしている人も結構いて。でも、今日に辿りつけているだけですごいじゃんっていう。だから大丈夫、大丈夫っていうマインドではあります、私は。


――「カルペディエム」の取材のときに、最近のASCAさんの歌声には聴き手を導くような力を感じるとお伝えしましたけど、音楽を通じて、毅然とした態度で、力強いメッセージを届けるのが、ASCAさんのアーティストとしての魅力でもあるのかなと。

ASCA 自分自身に向けて言っている側面もずっとあるんですよ。ただ、私に対して強さを感じたり求めてたりしてファンになってくれている方もいると思うので、そこは今後もブレることなく示していきたいです。

――あと「命ノ証」で一番グッときたのが、最後の“独りじゃないから さぁその先へ”という歌詞なんですよね。「Howling」の歌詞にも“独りじゃないだろ”というフレーズがありましたけど。

ASCA ここは「Howling」でも大事にしていたメッセージだったので、今回も入れなくてはダメだろうと思って。「Howling」があったから今回の10周年ソングに繋がって、『魔法科』のお話自体、深雪と達也は二人だけで自由を掴み取るわけではなく、支えてくれる仲間がたくさんいるので、そういう意味での“独りじゃない”というのもありますし。私自身もこの作品を通じてたくさんの人に出会うことができたので、あえてまた入れました。

――しかも今回の歌詞は“独りじゃないから”。前回の“独りじゃないだろ”よりも自信をもって語りかけているような言い回しになっていて。

ASCA そうなんです。「Howling」のときは鼓舞するように歌っていた部分があったけど、今回は言いきりました。
ちゃんと周りを見たら、手を差し伸べてくれる人が絶対一人はいるよ、っていう。

――その変化は、自分の心境としてもそう感じれるようになったから?

ASCA (小声で)もちろんです。

――なんで小声なんですか(笑)。

ASCA 細かいところまでありがとうございます(笑)。多分この部分は触れていただかなかったら話してなかったと思います。

――「命ノ証」は「魔法科」シリーズ10周年記念のアニメーションPVにも使われています。PVをご覧になった感想は?

ASCA 泣きました! 私が歌詞で伝えたかったことがそのまま映像になっていたので、制作の方々の愛情を感じて。歌詞のフレーズに合わせたシーンもところどころにあって、深雪と達也が手を取り合って笑顔で駆けていくシーンは「そう!これこれこれ!」ってなりましたし、“抱きしめた”のところも、まさに深雪のことを思って書いた歌詞だったので、「ここはどうなるの!?」って思いながら観ていたら、ちゃんと達也が深雪を抱きしめていて。もう鳥肌でした。



――達也と深雪が二人で桜並木を駆けていくカットは、冒頭と最後の2ヵ所にあるのもいいですよね。

ASCA 私がこの曲で伝えたかったのは「10周年歩んできた道のりの先にあるもの」だったので、まさにこれ!と思って。「魔法科」シリーズはずっと人気ですけど、これから先もたくさんの人に愛されていくと思いますし、私ももっともっと続いて欲しいので。二人が駆けていく映像の最後は空に向けてパーッとなるところが、この二人の物語はずっと終わらずに続いていくし、それを見ていたいと思わせるものになっているので、ぜひ皆さんにも観てほしいです。


“アニサマ”初出演に賭ける情熱、あの話題ドラマ主題歌からの刺激
――せっかくなのでASCAさんの今後の予定や近況についてもお聞かせください。まず8月27日(金)には“Animelo Summer Live 2021 COLORS”に出演。“アニサマ”には昨年初出演予定だったのが、コロナの影響で延期となったので、ようやく念願が叶う形ですね。

ASCA 今だから言えますけど、(延期が決まった)当時は悔しすぎて、泣きました。とは言え、こればかりは仕方ないことだったので、今回は本当にリベンジなんですよ。なので気持ちもメラメラしていますし、自分がもっているものを全部出し切りたいなと思っています。

――やはり“アニサマ”に出演したい気持ちは昔からあった?

ASCA ありましたね。毎年開催されているアニソンフェスということで、実際にさいたまスーパーアリーナの会場までライブを観に行ったこともありましたし、「ここで歌えたらすごく気持ちいいんだろうな」っていう憧れがあって。なので想いはすごいことになっています!

――そういえば、亜咲花さんのラジオ番組「亜咲花 Animetick Night」にコメント出演した際に、“アニサマ”に関する質問をしたそうですね。

ASCA 亜咲花は“アニサマ”の先輩なので、「先輩として当日の持ち物を教えてもらっていいですか?」って訊いたら、「屈強の魂」と「のど飴」って言ってました。さすがの返しでした(笑)。

――ASCAさんは屈強の魂、もっていますか?

ASCA もってます! のど飴もいつも持ち歩いているので、準備はばっちりですね。頑張りますので期待していてください!

――で、話は変わるのですが、ASCAさんは最近どんな音楽を聴いているのかも聞いてみたくて。何か刺激を受けた音楽はありますか?

ASCA 「大豆田とわ子と三人の元夫」というTVドラマがありまして。もう終わってしまったんですけど、すごくいいドラマで、心底愛しているんですよ。そのEDテーマが、毎回ラッパーさんが入れ替わり参加して、松たか子さんや三人の元夫役の俳優さんも歌うという曲で。

――STUTS & 松たか子 with 3exesによる「Presence」ですね。

ASCA そうです。松さんが歌う歌詞はずっと一貫しているんですけど、ラッパーさんの歌詞とか参加する俳優さんはドラマの展開に合わせて変化していく形で、全部で5曲リリースされているんですよ。で、私は今そのドラマのロスに陥っているので、この曲たちを毎日聴きながら浸っているところです。

――それらの楽曲は、ドラマの内容を踏まえて聴くと、よりグッとくるポイントがあるわけですよね?

ASCA そうなんですよ。このドラマって登場人物の誰も否定しないんです。みんな欠点はあるんですけど、それすらも憎めない。登場人物の一人一人が愛すべき人なんですよね。だから誰がみても、自分を認めてあげられるドラマ、心に優しいお話なんです。なので楽曲も聴いている側を肯定してくれるし、そこは自分とも通ずるところだなと感じて。

――たしかに。

ASCA ちゃんと今まで生きてきて、生きることを選択して、今日に辿り着いているわけだから、それだけで素晴らしいじゃないか、っていう。そういう自分の考え、マインドともすごくあっていた作品でした。大好き。

――いい刺激を受けたみたいですね。

ASCA 受けましたね。何かのインタビューで読んだんですけど、松さんはレコーディングのときに、片手をジーンズのポケットに入れながら歌われていたらしくて、「かっこよすぎだろ!」と思って。その精神、日常の中に歌があるような感じがかっこいいなあと思って、私も「やろう」ってなりました(笑)。きっと私が様になるまでにはまだまだ時間がかかりそうですが。

――松さんがヒップホップ/R&B系の曲調に合う歌をうたわれているのも、意外だけどハマっていてかっこよかったですよね。

ASCA そう、だから無限の可能性を感じさせていただきました。私もなんでもやってみたくて。それこそ歌い上げるだけじゃなく、セリフみたいに語るだけの歌とか、歌わずとも聴かせることができるような表現力も磨きたいですし、今は色んなものをインプットしながら、やりたいことをたくさん溜めています。「命ノ証」で“宿る光今放て”と歌ってますけど、いつか私が溜めているものを大放出するときを、ファンの皆さんには楽しみに待っていてほしいです!

INTERVIEW & TEXT BY 北野 創(リスアニ!)

●配信情報
「命ノ証」

配信中

「命ノ証」
作詞:ASCA, Saku 作曲・編曲:Saku

配信リンクはこちら
https://asca.lnk.to/inochinoakashi

●ライブ情報
ASCA TOUR 2021
「ASCA LIVE TOUR 2021 -百希夜行-」
9月17日(金)大阪 UMEDA CLUB QUATTRO
開場18:00/開演19:00 料金:5,300円(ドリンク代別)
問い合わせ:キョードーインフォメーション(TEL:0570-200-888 平日・土11:00-16:00)

9月20日(月祝)東京LIQUIDROOM
開場17:00/開演18:00 料金:5,300円(ドリンク代別)
問い合わせ:ディスクガレージ(TEL:050-5533-0888 平日12:00-15:00)

10月2日(土)名古屋THE BOTTOM LINE
開場17:00/開演18:00 料金:5,300円(ドリンク代別)
問い合わせ:サンデーフォークプロモーション(TEL:052-320-9100 全日12:00~16:00)

「ASCA LIVE TOUR 2021-君の街へ-」
10月9日(土)高松 DIME
[一部]開場15:30/開演16:00/[二部]開場18:30/開演19:00
料金:3,800円(ドリンク代別)
問い合わせ:DUKE 高松(TEL:087-822-2520 平日11:00~17:00)

10/10(日)京都 FANJ
[一部]開場15:30/開演16:00/[二部]開場18:30/開演19:00
料金:3,800円(ドリンク代別)
問い合わせ:キョードーインフォメーション(TEL:0570-200-888 平日・土11:00-16:00)

10月16日(土)福岡 The Voodoo Lounge
[一部]開場13:30/開演14:00/[二部]開場16:30/開演17:00
料金:3,800円(ドリンク代別)
問い合わせ:キョードー西日本(TEL:0570-09-2424 平日・土11:00-17:00)

10月17日(日)新横浜NEW SIDE BEACH
[一部]開場15:30/開演16:00/[二部]開場18:30/開演19:00
料金:3,800円(ドリンク代別)
問い合わせ:ディスクガレージ(TEL:050-5533-0888 平日12:00-15:00)

10月29日(金)札幌cube garden
[一部]開場15:30/開演16:00/[二部]開場18:30/開演19:00
料金:3,800円(ドリンク代別)
問い合わせ:マウントアライブ(https://www.mountalive.com/contact/)

10月30日(土)高崎club FLEEZ
[一部]開場15:30/開演16:00/[二部]開場18:30/開演19:00
料金:3,800円(ドリンク代別)
問い合わせ:ディスクガレージ(TEL:050-5533-0888 平日12:00-15:00)

関連リンク
ASCAオフィシャルサイト
http://www.asca-official.com

ASCAオフィシャルTwitter
https://twitter.com/ASCA_and_staff

ASCAオフィシャルYouTube
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