声優アーティストの大橋彩香が“大橋彩香 a.k.a HASSY”として、配信シングル「#HASHTAG ME」をリリース。今年4月1日に動画『私、大橋彩香辞めます。
【 Official MV】大橋彩香 a.k.a HASSY - #HASHTAG ME
“嘘から出た真”を生み出したのは、とある人物のファインプレー
――まず、ラップ曲をリリースすることになったきっかけからお教えください。
大橋大橋彩香 私、今まではカップリング曲でかわいいラップ入りの曲をちょこちょこ歌わせてもらっていて、「いつか本格的なラップができたらいいね」みたいな話もあったんです。そんななか、シングル『犬と猫と彩香』のインタビューでちょろっと「ラップやりたいです」と言ったのをプロデューサーさんが聞き逃さなかったみたいで(笑)。「こういう企画で盛り上げて、みんなで楽しみませんか?」と提案していただいたのがきっかけでした。
――特にアルバム曲などでは、大橋さんの音楽的な趣味が反映された楽曲も多かったと思います。ただ、今回はそういうことではなかった。
大橋 そうですね。
――「メロラップはだいぶ克服できたけど、ガッチガチのラップはまだ少し苦手」というお話もされていた記憶があります。
大橋 やっぱり、「メロディがないとちょっと難しいな」という意識はまだあるんですけど、今回は配信だけなうえに名義も違ったりとどちらかと言うと遊び要素が強いので、「苦手なことだけど、チャレンジするにはいい機会かな」と思って前向きにやらせていただきました。……あと、世の中でラップが流行ってるのでできるようになっておきたい、という気持ちもちょっとだけあります(笑)。
――ただ、きっかけが『犬と猫と彩香』のインタビューとなると、動画UPまでの準備は結構タイトだったのでは?
大橋 はい。1月23日のリリースイベントの日に最終的に「よしやろう!」と決まったのでUPまで2ヶ月ぐらいしかなかったし、映像と写真の撮影自体もUPの1週間前ぐらいに、限られた時間の中でわーって撮影した記憶があります。
――動画UP時の反響には、どのようなものがありましたか?
大橋 意外とみんな騙されていたというか(笑)、本当に私があの結構いかつめなビジュアルでデビューすると信じた方が、割と多かったんですよ。……“やりかねない”って、みんな思ってたんですかね?(笑)。そのあとネタバラシをしてラップ曲のリリースを発表したら、「ラップやるんだ!」と楽しみにしてくださっている方が多くて。そのときはレコーディングもMV撮影もまだしていなかったので、改めて頑張る気持ちが湧きました。
――ラップとひと口に言ってもいろいろなスタイルがありますが、デモが来る前にはどんな曲になると想像していましたか?
大橋 メロディがほとんどない、もっとフリースタイルみたいな曲になるのかなと想像していました。
――歌詞からは、サビの最後が「ふぉーえばぁ!」になっていたりと表記にかわいげが感じられました。
大橋 作詞してくださったカミカオルさんには初めてお世話になったんですけど、「すごい世界観のある歌詞を書かれる方だなぁ」と思って。同じくサビの「ぱぱぱぱぱぱぱ!パーフェクト」とかも「若いな」っていう感じがしましたし(笑)、最初に歌詞を観たときには「流行語みたいなのがいっぱい入ってる!」という感じで、割と衝撃でした。
――衝撃でしたか。
大橋 はい。2番序盤の「ありよりのあり~!」も字面だけ見るとラップじゃなさそうなんですけど、ここはガッツリラップなんですよね(笑)。でもその歌詞とのギャップ感みたいなものも面白いですし、やりがいもすごくありました。
“3人”が登場する!? 「#HASHTAG ME」の歌唱アプローチ
――そんなこの曲、最初に聴いたときから「こういうふうに歌いたいな」みたいなビジョンのようなものは浮かびましたか?
大橋 かわいい曲なので明るく元気に歌えたらいいなというのはあったんですけど、レコーディング前は割と素で歌うメージだったんです。でも実際のレコーディングでは「一応“HASSY”だから」ということでちょっとデフォルメしまして。よりかわいさを強めに入れて、ラップパートのかっこよさとのギャップが出るように意識しました。
――なるほど。素と甘めと、ラップ部分のスタイリッシュな……。
大橋 そうですね。ハシアナさん。
――“ハシアナさん”?
大橋 あ、エイプリルフール動画のときの私がちょっとアリアナ・グランデに似てるっていうことで、よくスタッフさんから「ハシアナ・グランデ」と言われてるんです(笑)。
――ラップ曲ということで、レコーディングの準備にも従来との違いがあったのでは?
大橋 あー、それが……過去イチ準備しなかった気がします(笑)。それは今回の企画に、チームみんなで遊ぶようなイメージがあったので、余計な緊張をせずに臨めたというところがあったからかもしれないです。それに今回は、すごくよくお世話になっている岡嶋かな多さんにディレクションしていただいていたのもあって、本当に“仲間内で楽しく録っている”感じがあって。ラップも結構、かな多さんが導いてくださったんですよ。最初はほんっとうに何すればいいかわからなかったんですけど、おかげでなんとか形になりました。
――特によく覚えているアドバイスは、何かありますか?
大橋 ニュアンスについて、すごく教えてくれたことですね。私、譜面みたいなものがないとできないタイプだったので、かな多さんが実演して教えてくれたものを頑張って真似する!みたいな感じで進めていきました。
――やっぱり最初は、教えてくれる方の真似から始まりますもんね。
大橋 そうですね。元々の仮歌さんが結構ナチュラルな感じだったので、そこに自分の味を出していかないといけなかったんですけど、ラップって決まった正解がないから何をやってもいいっていうのがめちゃくちゃ難しくて。最初は仮歌さんの真似をすることしかできなかったんですけど、そこからかな多さんがいろいろ教えてくれたことで、表情感がだいぶ出たような気はしています。それにかな多さんは私が好きな音楽も結構ご存知なので、「誰々さんの、あの曲のこんな感じ」みたいな例も使いながら、わかりやすく教えてくれたんです。
――ということは、今回は御自身のお好きなアーティストのイメージなどは、ディレクションのヒントとして結果的に少し反映できたかもしれない。
大橋 それはあるかもしれないです。だから今回の制作を通じて、これまで自分がいかにラップを意識しないで聴いていたかがすごくよくわかりました(笑)。今までは普通に好きで趣味としてラップパートを聴いてたんですけど、この企画に携わってからはラップがすごく際立って聴こえるようになったんです。
――それは1曲制作を経験したことで、勉強する耳になったからかもしれませんし。
大橋 はい。皆さん滑舌めっちゃいいですよね。早口が結構多いのに「よくこんな綺麗に言えるなぁ」って(笑)。そこに感情も乗っているうえに、外国語だと日本語よりも早口感がさらにすごくて。同じラップでも、国によって全然聴こえ方が違うところに面白さを感じました。
――その他、歌っていて気持ちよかったり楽しい部分も?
大橋 そうですね。Dメロの「ヨコヨコ タテタテ――」のところは、コール・アンド・レスポンスしているみたいな感じで歌ってくださいと言われて。今はできないけど、皆さんといつかコール・アンド・レスポンスできると信じてその光景を想像しながら歌ったのが、結構気持ちよかったですね。ただ、ここも歌詞がすごいんですよ。「井桁(いげた)じゃない」って、最初「な、なんだ?」って思いました(笑)。
――直前の「♯(シャープ)じゃない」とあわせて、ハッシュタグの記号を表した部分ですね。
大橋 はい。
――歌ったあと、手応えみたいなものは感じましたか?
大橋 「意外とちゃんとした企画になったな」という感じはしありた(笑)。というのも、エイプリルフールネタがきっかけだから、MVも撮らずにもっとふわっとした感じのものになると想像していたんですよ。だから途中で急にプレッシャーを感じたりもしたんですけど、新しい姿も普段のおちゃらけた自分も詰まっている、私のいろんな一面を楽しんでもらえる曲になりまして。MVもキメキメというよりも親しみやすさのあるものになっているので、新しく好きになってくれる方はもちろん、ずっとファンだった方にいちばん楽しんでもらえるようなものにできたと思っています。
“ハッシュタグダンス”にも要注目!2日間にわたったMV撮影
――そのMVについても、コンセプト等についてお教えください。
大橋 今回は女の子の“かわいい”を詰め込んだMVにもしてもらいました。なので、ダンサーさんも手伝ってくれたんですけど一緒に遊んでいるようなシーンがほとんどで、2日間の撮影のうち初日は全然踊らずに終わり(笑)。ダンサーさんも「こんなに踊らないのははじめてー!」って言ってました。いちばん最後にハシアナさんのパートは踊ったので、そこだけは踊ってもらったんですけど。
――ハシアナさんのシーンは、床のチェックのタイルがエイプリルフールの写真とつながりを感じます。
大橋 そうですね……いやぁ、あそこは恥ずかしくてあんまり観れないんですけど(笑)。あと今回は、映像での遊びもすごいんです。だから撮影中には、どう使われるのかがわからなかったこともたくさんあって(笑)。たとえば「何かやりながら通り過ぎてください」みたいなことを何往復もしたり、ポーズを取ったらちょっとズレてポーズを取って、また少しズレてポーズを取る……というのを繰り返したりしました。あとリップシンクは、半分ぐらいのテンポで撮影したものを元のテンポに戻してもらっているので、いい感じに早回し感が出ていると思います。
――MVを通じていろいろなスタッフさんも含めて本当に楽しく遊んでできた映像だし、1曲になったんだろうな……とお話を聞いて思いました。
大橋 そうですね。メイク動画のところにも、普段お世話になっているメイクさんが登場しますし。やっぱり今みんな大変だからいろんなハッピーを届けたいと思っているので、ぜひこの曲で元気になってほしいですね。あとはこの曲の“ハッシュタグダンス”も、ぜひ踊ってみてほしいです!
――ダンスバージョンも公開されていますしね。
大橋 はい。やっぱり人間、動かないと元気なくなっちゃうと思うんです。この夏もなかなか旅行とか行きづらいと思うので、ぜひいい運動だととらえてやってもらえたら。ずっとぴょんぴょん跳ねている感じなので結構有酸素運動になるはずですし、テンポも速いし細かくて脳トレっぽい部分もあるから、キャッチーに見えても難しいんですけど……いけるいける!(笑)
――大橋さん御自身も、難しさを感じた部分がある?
大橋 私、割と振付の覚えは速いタイプだと思っているんですけど、この曲だけは結構時間がかかりまして。レッスン初日は、難しすぎて何も頭に入らないまま帰ったぐらいなんですよ(笑)。Dメロが特にムズいので、ほんっとうに頑張ってほしいです。しかも皆さんは先生の後ろ姿を観てコピーするわけじゃなくて、そのまま真似ると左右逆になっちゃうじゃないですか?だから、余計に難しいんですよ。皆さんのコピースキルが、問われてくると思います(笑)。
――さて、今回はHASSYとして配信シングルで新しい挑戦をされましたが、1曲完成した今、またラップ曲をやってみたいというお気持ちはありますか?
大橋 今のところは満足しました(笑)。
――今のところは(笑)。
大橋 ただ『PROGRESS』というアルバムも出していますし、常に進化し続けていきたいという気持ちはあるので、ラップだけではなくて今後いろいろなことに挑戦していけたらいいなぁ……とは思っています。それこそ今、ギターを弾けるようになりたくて、弾き語りをやってみたいんですよ。それで救いようがないぐらい暗い曲か、めちゃくちゃかっこいい曲を歌いたいですね。テンポ速くてアコギじゃかじゃかかき鳴らして、「ぅわー!」ってシャウトする……みたいな曲。
――そう思われる、きっかけのようなものが何かあったのでしょうか?
大橋 前に友達の付き合いで観に行った大森靖子さんのライブに、めちゃめちゃ衝撃を受けたんですよ。ピアノとアコギしかない弾き語りの公演で、行く前は全然詳しくなかったんですけど、世界観に圧倒されまして。初見なのに釘付けにする説得力や歌唱力のすごさを感じて、「弾き語り、やってみたい」と思ったんです。ただ、私本当に音楽の移り変わりがめちゃくちゃ早いし感化されやすいから、3ヶ月ぐらい経ったら「弾き語り、いいや」とか言ってるかもしれない……(笑)。
――ただ、暗い曲については長い間「歌いたい」とおっしゃられていますよね。最近は葛藤を歌った曲は増えてきてはいますけれども。
大橋 もっと暗い曲も歌いたいです。ピアノとストリングスがメインで、海の底に沈んでいくような曲をやってみたくて……そろそろやっても大丈夫じゃないかな?って。ファンの方々ももう「あー、はっしーそういうとこあるよね」みたいに(笑)、そろそろ納得してくれるかな?という気はしていて。デビューしてもう7年経ちますし、とびっきりダークな“ダークすぎるコンセプトアルバム”みたいなものを作ってみたいです。
――コンセプトアルバムだとファンもより新しい挑戦を受け入れやすいかもしれないですし、長く応援している方は「あ、ついにやるんだ」と感じてくれそうですね。
大橋 たしかに。去年末にリリースしたアルバム『WINGS』にもハードな曲が多かったのに、その曲たちがすんなり受け入れられて、ライブでもかっこいい曲のがすごくいい反応だったりするんですよ。なので、徐々に求められているものや響くものが変わってきているのかもしれないですね。もちろんみんな、明るく元気な大橋彩香が好きなんだとは思うんですけど、そこから派生して歌っていくジャンルの曲も好きになってもらえるぐらい、自分のスキルも上がったのかもしれない……とも感じています。
INTERVIEW & TEXT BY 須永兼次
●配信情報
大橋彩香 a.k.a HASSY
「#HASHTAG ME」
8月4日配信リリース!
配信リンクはこちら
●リリース情報
「大橋彩香ワンマンライブ2021~Our WINGS~ at 幕張メッセイベントホール」
11月24日発売
品番:LABX-8508
価格:¥10,780(税込)
アコースティックミニアルバム
2021年12月頃発売予定
関連リンク
大橋彩香オフィシャルサイト
http://ohashiayaka.com
』でラッパー・HASSYとしての活動を発表。作り込んだエイプリルフールネタかと思いきや、同日投稿したネタバラシ動画でラップソングのリリースを発表。二重の驚きを呼んだ。そのラップソングが、今回リリースされる「#HASHTAG ME」。メロラップからダークでスタイリッシュなラップまでさまざまな側面をもつこの曲への取り組み、さらには制作が決まるまでの裏話について、たっぷり語ってもらった。
【 Official MV】大橋彩香 a.k.a HASSY - #HASHTAG ME
“嘘から出た真”を生み出したのは、とある人物のファインプレー
――まず、ラップ曲をリリースすることになったきっかけからお教えください。
大橋大橋彩香 私、今まではカップリング曲でかわいいラップ入りの曲をちょこちょこ歌わせてもらっていて、「いつか本格的なラップができたらいいね」みたいな話もあったんです。そんななか、シングル『犬と猫と彩香』のインタビューでちょろっと「ラップやりたいです」と言ったのをプロデューサーさんが聞き逃さなかったみたいで(笑)。「こういう企画で盛り上げて、みんなで楽しみませんか?」と提案していただいたのがきっかけでした。
――特にアルバム曲などでは、大橋さんの音楽的な趣味が反映された楽曲も多かったと思います。ただ、今回はそういうことではなかった。
大橋 そうですね。
曲自体も、今回は割と決まった曲が上がってきていて。デモも2曲の中からどちらか……というなかで、自分の好きな歌い上げる感がちょっと強かったこちらのほうを、チーム満場一致で選ばせていただきました。
――「メロラップはだいぶ克服できたけど、ガッチガチのラップはまだ少し苦手」というお話もされていた記憶があります。
大橋 やっぱり、「メロディがないとちょっと難しいな」という意識はまだあるんですけど、今回は配信だけなうえに名義も違ったりとどちらかと言うと遊び要素が強いので、「苦手なことだけど、チャレンジするにはいい機会かな」と思って前向きにやらせていただきました。……あと、世の中でラップが流行ってるのでできるようになっておきたい、という気持ちもちょっとだけあります(笑)。
――ただ、きっかけが『犬と猫と彩香』のインタビューとなると、動画UPまでの準備は結構タイトだったのでは?
大橋 はい。1月23日のリリースイベントの日に最終的に「よしやろう!」と決まったのでUPまで2ヶ月ぐらいしかなかったし、映像と写真の撮影自体もUPの1週間前ぐらいに、限られた時間の中でわーって撮影した記憶があります。
――動画UP時の反響には、どのようなものがありましたか?
大橋 意外とみんな騙されていたというか(笑)、本当に私があの結構いかつめなビジュアルでデビューすると信じた方が、割と多かったんですよ。……“やりかねない”って、みんな思ってたんですかね?(笑)。そのあとネタバラシをしてラップ曲のリリースを発表したら、「ラップやるんだ!」と楽しみにしてくださっている方が多くて。そのときはレコーディングもMV撮影もまだしていなかったので、改めて頑張る気持ちが湧きました。
――ラップとひと口に言ってもいろいろなスタイルがありますが、デモが来る前にはどんな曲になると想像していましたか?
大橋 メロディがほとんどない、もっとフリースタイルみたいな曲になるのかなと想像していました。
だから最初に聴いたときは、「私が歌いやすそうな感じになってるー!」という印象がありましたね。もちろんラップパートのところは「おっ」ってなりましたけど、それ以外は結構歌いやすそうに感じました。
――歌詞からは、サビの最後が「ふぉーえばぁ!」になっていたりと表記にかわいげが感じられました。
大橋 作詞してくださったカミカオルさんには初めてお世話になったんですけど、「すごい世界観のある歌詞を書かれる方だなぁ」と思って。同じくサビの「ぱぱぱぱぱぱぱ!パーフェクト」とかも「若いな」っていう感じがしましたし(笑)、最初に歌詞を観たときには「流行語みたいなのがいっぱい入ってる!」という感じで、割と衝撃でした。
――衝撃でしたか。
大橋 はい。2番序盤の「ありよりのあり~!」も字面だけ見るとラップじゃなさそうなんですけど、ここはガッツリラップなんですよね(笑)。でもその歌詞とのギャップ感みたいなものも面白いですし、やりがいもすごくありました。
“3人”が登場する!? 「#HASHTAG ME」の歌唱アプローチ
――そんなこの曲、最初に聴いたときから「こういうふうに歌いたいな」みたいなビジョンのようなものは浮かびましたか?
大橋 かわいい曲なので明るく元気に歌えたらいいなというのはあったんですけど、レコーディング前は割と素で歌うメージだったんです。でも実際のレコーディングでは「一応“HASSY”だから」ということでちょっとデフォルメしまして。よりかわいさを強めに入れて、ラップパートのかっこよさとのギャップが出るように意識しました。
なので、少しキャラソンに近い感じかもしれないです。逆に「Bメロだけは自分でもいい」みたいに言われてもいたので、この曲は3人いるような感じなんですよ。
――なるほど。素と甘めと、ラップ部分のスタイリッシュな……。
大橋 そうですね。ハシアナさん。
――“ハシアナさん”?
大橋 あ、エイプリルフール動画のときの私がちょっとアリアナ・グランデに似てるっていうことで、よくスタッフさんから「ハシアナ・グランデ」と言われてるんです(笑)。
――ラップ曲ということで、レコーディングの準備にも従来との違いがあったのでは?
大橋 あー、それが……過去イチ準備しなかった気がします(笑)。それは今回の企画に、チームみんなで遊ぶようなイメージがあったので、余計な緊張をせずに臨めたというところがあったからかもしれないです。それに今回は、すごくよくお世話になっている岡嶋かな多さんにディレクションしていただいていたのもあって、本当に“仲間内で楽しく録っている”感じがあって。ラップも結構、かな多さんが導いてくださったんですよ。最初はほんっとうに何すればいいかわからなかったんですけど、おかげでなんとか形になりました。
――特によく覚えているアドバイスは、何かありますか?
大橋 ニュアンスについて、すごく教えてくれたことですね。私、譜面みたいなものがないとできないタイプだったので、かな多さんが実演して教えてくれたものを頑張って真似する!みたいな感じで進めていきました。
――やっぱり最初は、教えてくれる方の真似から始まりますもんね。
大橋 そうですね。元々の仮歌さんが結構ナチュラルな感じだったので、そこに自分の味を出していかないといけなかったんですけど、ラップって決まった正解がないから何をやってもいいっていうのがめちゃくちゃ難しくて。最初は仮歌さんの真似をすることしかできなかったんですけど、そこからかな多さんがいろいろ教えてくれたことで、表情感がだいぶ出たような気はしています。それにかな多さんは私が好きな音楽も結構ご存知なので、「誰々さんの、あの曲のこんな感じ」みたいな例も使いながら、わかりやすく教えてくれたんです。
――ということは、今回は御自身のお好きなアーティストのイメージなどは、ディレクションのヒントとして結果的に少し反映できたかもしれない。
大橋 それはあるかもしれないです。だから今回の制作を通じて、これまで自分がいかにラップを意識しないで聴いていたかがすごくよくわかりました(笑)。今までは普通に好きで趣味としてラップパートを聴いてたんですけど、この企画に携わってからはラップがすごく際立って聴こえるようになったんです。
――それは1曲制作を経験したことで、勉強する耳になったからかもしれませんし。
大橋 はい。皆さん滑舌めっちゃいいですよね。早口が結構多いのに「よくこんな綺麗に言えるなぁ」って(笑)。そこに感情も乗っているうえに、外国語だと日本語よりも早口感がさらにすごくて。同じラップでも、国によって全然聴こえ方が違うところに面白さを感じました。
――その他、歌っていて気持ちよかったり楽しい部分も?
大橋 そうですね。Dメロの「ヨコヨコ タテタテ――」のところは、コール・アンド・レスポンスしているみたいな感じで歌ってくださいと言われて。今はできないけど、皆さんといつかコール・アンド・レスポンスできると信じてその光景を想像しながら歌ったのが、結構気持ちよかったですね。ただ、ここも歌詞がすごいんですよ。「井桁(いげた)じゃない」って、最初「な、なんだ?」って思いました(笑)。
――直前の「♯(シャープ)じゃない」とあわせて、ハッシュタグの記号を表した部分ですね。
大橋 はい。
Dメロ最後の「二礼 二拍手 一礼」も、「ヨコヨコ タテタテ」で描ける鳥居からの連想でしょうし……これだけ歌詞で遊ばれてるのは、やっぱりすごいなぁと感じます。その他にも今どきの言葉が使われていたりもするので、10年後ぐらいに聴いたら「懐かしいなぁ」ってなっちゃったりするのかもしれないですね。これまでの私の曲って、特に表題曲はアニメの主題歌になっていることが多かったから、今っぽさとか流行りを詰め込んだ曲があんまりないんですよ。だから今まででいちばん、あとから振り返って「懐かしいな」とか「こんなんあったな」と思える、2021年の流行りみたいなものが詰まっている曲になりました。MVもちょっとTikTokっぽいですし。
――歌ったあと、手応えみたいなものは感じましたか?
大橋 「意外とちゃんとした企画になったな」という感じはしありた(笑)。というのも、エイプリルフールネタがきっかけだから、MVも撮らずにもっとふわっとした感じのものになると想像していたんですよ。だから途中で急にプレッシャーを感じたりもしたんですけど、新しい姿も普段のおちゃらけた自分も詰まっている、私のいろんな一面を楽しんでもらえる曲になりまして。MVもキメキメというよりも親しみやすさのあるものになっているので、新しく好きになってくれる方はもちろん、ずっとファンだった方にいちばん楽しんでもらえるようなものにできたと思っています。
“ハッシュタグダンス”にも要注目!2日間にわたったMV撮影
――そのMVについても、コンセプト等についてお教えください。
大橋 今回は女の子の“かわいい”を詰め込んだMVにもしてもらいました。なので、ダンサーさんも手伝ってくれたんですけど一緒に遊んでいるようなシーンがほとんどで、2日間の撮影のうち初日は全然踊らずに終わり(笑)。ダンサーさんも「こんなに踊らないのははじめてー!」って言ってました。いちばん最後にハシアナさんのパートは踊ったので、そこだけは踊ってもらったんですけど。
――ハシアナさんのシーンは、床のチェックのタイルがエイプリルフールの写真とつながりを感じます。
大橋 そうですね……いやぁ、あそこは恥ずかしくてあんまり観れないんですけど(笑)。あと今回は、映像での遊びもすごいんです。だから撮影中には、どう使われるのかがわからなかったこともたくさんあって(笑)。たとえば「何かやりながら通り過ぎてください」みたいなことを何往復もしたり、ポーズを取ったらちょっとズレてポーズを取って、また少しズレてポーズを取る……というのを繰り返したりしました。あとリップシンクは、半分ぐらいのテンポで撮影したものを元のテンポに戻してもらっているので、いい感じに早回し感が出ていると思います。
――MVを通じていろいろなスタッフさんも含めて本当に楽しく遊んでできた映像だし、1曲になったんだろうな……とお話を聞いて思いました。
大橋 そうですね。メイク動画のところにも、普段お世話になっているメイクさんが登場しますし。やっぱり今みんな大変だからいろんなハッピーを届けたいと思っているので、ぜひこの曲で元気になってほしいですね。あとはこの曲の“ハッシュタグダンス”も、ぜひ踊ってみてほしいです!
――ダンスバージョンも公開されていますしね。
大橋 はい。やっぱり人間、動かないと元気なくなっちゃうと思うんです。この夏もなかなか旅行とか行きづらいと思うので、ぜひいい運動だととらえてやってもらえたら。ずっとぴょんぴょん跳ねている感じなので結構有酸素運動になるはずですし、テンポも速いし細かくて脳トレっぽい部分もあるから、キャッチーに見えても難しいんですけど……いけるいける!(笑)
――大橋さん御自身も、難しさを感じた部分がある?
大橋 私、割と振付の覚えは速いタイプだと思っているんですけど、この曲だけは結構時間がかかりまして。レッスン初日は、難しすぎて何も頭に入らないまま帰ったぐらいなんですよ(笑)。Dメロが特にムズいので、ほんっとうに頑張ってほしいです。しかも皆さんは先生の後ろ姿を観てコピーするわけじゃなくて、そのまま真似ると左右逆になっちゃうじゃないですか?だから、余計に難しいんですよ。皆さんのコピースキルが、問われてくると思います(笑)。
――さて、今回はHASSYとして配信シングルで新しい挑戦をされましたが、1曲完成した今、またラップ曲をやってみたいというお気持ちはありますか?
大橋 今のところは満足しました(笑)。
――今のところは(笑)。
大橋 ただ『PROGRESS』というアルバムも出していますし、常に進化し続けていきたいという気持ちはあるので、ラップだけではなくて今後いろいろなことに挑戦していけたらいいなぁ……とは思っています。それこそ今、ギターを弾けるようになりたくて、弾き語りをやってみたいんですよ。それで救いようがないぐらい暗い曲か、めちゃくちゃかっこいい曲を歌いたいですね。テンポ速くてアコギじゃかじゃかかき鳴らして、「ぅわー!」ってシャウトする……みたいな曲。
――そう思われる、きっかけのようなものが何かあったのでしょうか?
大橋 前に友達の付き合いで観に行った大森靖子さんのライブに、めちゃめちゃ衝撃を受けたんですよ。ピアノとアコギしかない弾き語りの公演で、行く前は全然詳しくなかったんですけど、世界観に圧倒されまして。初見なのに釘付けにする説得力や歌唱力のすごさを感じて、「弾き語り、やってみたい」と思ったんです。ただ、私本当に音楽の移り変わりがめちゃくちゃ早いし感化されやすいから、3ヶ月ぐらい経ったら「弾き語り、いいや」とか言ってるかもしれない……(笑)。
――ただ、暗い曲については長い間「歌いたい」とおっしゃられていますよね。最近は葛藤を歌った曲は増えてきてはいますけれども。
大橋 もっと暗い曲も歌いたいです。ピアノとストリングスがメインで、海の底に沈んでいくような曲をやってみたくて……そろそろやっても大丈夫じゃないかな?って。ファンの方々ももう「あー、はっしーそういうとこあるよね」みたいに(笑)、そろそろ納得してくれるかな?という気はしていて。デビューしてもう7年経ちますし、とびっきりダークな“ダークすぎるコンセプトアルバム”みたいなものを作ってみたいです。
――コンセプトアルバムだとファンもより新しい挑戦を受け入れやすいかもしれないですし、長く応援している方は「あ、ついにやるんだ」と感じてくれそうですね。
大橋 たしかに。去年末にリリースしたアルバム『WINGS』にもハードな曲が多かったのに、その曲たちがすんなり受け入れられて、ライブでもかっこいい曲のがすごくいい反応だったりするんですよ。なので、徐々に求められているものや響くものが変わってきているのかもしれないですね。もちろんみんな、明るく元気な大橋彩香が好きなんだとは思うんですけど、そこから派生して歌っていくジャンルの曲も好きになってもらえるぐらい、自分のスキルも上がったのかもしれない……とも感じています。
INTERVIEW & TEXT BY 須永兼次
●配信情報
大橋彩香 a.k.a HASSY
「#HASHTAG ME」
8月4日配信リリース!
配信リンクはこちら
●リリース情報
「大橋彩香ワンマンライブ2021~Our WINGS~ at 幕張メッセイベントホール」
11月24日発売
品番:LABX-8508
価格:¥10,780(税込)
アコースティックミニアルバム
2021年12月頃発売予定
関連リンク
大橋彩香オフィシャルサイト
http://ohashiayaka.com
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