そんな彼らが満を辞して1stアルバムをリリース。自身の名前を冠した『ALL AT ONCE』という名刺代わりの1枚とともに、結成から現在までの二人を改めて振り返ってみた。
理論派と感覚派、異なる個性が織りなすハーモニー
――まずはall at once結成の経緯をお伺いします。お二人は同じ専門学校で出会ったんですよね?
ITSUKI そうですね、お互い同じ専門学校に通っていて、その専門学校で二人で出ないといけないイベントがあったんですよ。そこで僕が一緒に出てくれる人を探していて、たまたまNARITOが目の前を通りかかってですね、そのときに声をかけたのがファーストコンタクトですね。
――そのとき初めて出会ったんですか?
ITSUKI はい、そこで初めましてです。いきなり「一緒のイベントに出てください」って(笑)。
――そのときNARITOさんはどう思われましたか?
NARITO 当たり前ですけど、めちゃくちゃ怖くて(笑)。シンプルに「誰だこの人?」って。
ITSUKI そうだよね(笑)。
NARITO でもせっかくの機会で僕も経験したことがなかったので、二人で出るというのならぜひ一緒にやろうってふたつ返事で。
――それまでは、音楽活動はソロでやっていこうと考えていた?
ITSUKI 僕はそうですね。
NARITO 僕は先のことを考えて一人でやっていこうとは正直考えていなくて。ただ、結果的に音楽というもので飯を食えるようになったらいいなっていう目標がざっくりあったんです。一人でやっていくことにこだわりはなかったので、ITSUKIから「本格的に二人でやろうよ」って言われたときは、結構即答で「やろうよ」って言いましたね。
ITSUKI 僕はどちらかというと感覚というより理論づいて動いているんですけど、そのときだけは本当に感覚で、NARITOと一緒に歌うのがいいってなったんですよ。なんていうんですかね、根拠があるかというとまったくないんですけど(笑)、二人でやっていくのが絶対に良いって思ったんですよね。
――プロフィールによるとITSUKIさんは理論派、NARITOさんは感覚派と性格も逆なんですよね。
ITSUKI 完全に真逆ですね。楽曲の向き合い方も真逆ですし、普段の生活からも真逆ですから。お互いが持ってない音楽の価値観をそれぞれが持っているので、僕がNARITOに「どんな感覚で歌っているの?」とか「どんな感覚でこの楽曲を捉えている?」って聞くこともありますし、逆にNARITOが僕に細かく言うこともありますし、そういう意味では二人でいるのは楽ですね。
――感覚派のNARITOさんから見て、理論派のITSUKIさんはどう感じますか?
NARITO 時々「めんどくせえな」って思ったりすることはありますよ(笑)。それでもITSUKIとしては、こういう結果がこの先にあるからこうしたほうがいいよってちゃんと説明してくれるので、それを踏まえたうえでやってみようってなりますね。僕もITSUKIにはちゃんと意見を伝えることもありますけど、やっぱり性格の違いは出ますね。たまに「ん?」って思うことはあります(笑)。
――そうしたお二人がall at onceを結成して、その後2020年に初の配信シングル「12cm」をリリースします。当時の心境はいかがでしたか?
ITSUKI オリジナルも含めて自分たちの歌というものが出来上がっていくことが嬉しかったですし、たくさんの人に聴いていただく機会が一気に増えたのももちろん嬉しかったという部分はありました。一方で、本格始動と同時に訪れたコロナ禍でそれまではできていたライブ活動が急にできなくなったのは、自分たちの中でもどかしさが今もまだ少しある状況ですね。
――お二人の中でこういうアーティストになりたい、と思っていることはありますか?
NARITO 今回リリースされるアルバムを聴いてくださるとわかると思うんですけど、僕らはジャンルに囚われないアーティストというか、1つのジャンルにこだわりすぎないアーティストになりたいと思っていて。ジャンルでもアップテンポからミディアム、バラード、ファンクとか色んな楽曲が込められていると思うんですけど、そういうマルチなアーティストになりたいと昔から思っていますね。
ITSUKI お互い全然違うジャンルの音楽を聴いているのを共有しあって、色んなジャンルを聴いています。
――all at onceは個々の歌唱やハーモニーが印象に残りますが、楽曲における歌い分けはどのようにして決めていくのですか?
ITSUKI パート分けは楽曲によってですね。
――お二人の声が気持ち良くなるというところで楽曲に応じて変えていくと。
ITSUKI あとは、NARITOの感覚にも響いてくるところなので、NARITOが歌っていて気持ちいい、気持ち良くないというのが左右するところですね。なので、細かく決めていくことは大事なのかなって思っています。
――また、all at onceにはプロデューサーの亀田誠治さんが参加されています。お二人にとって亀田さんはどんな存在ですか?
ITSUKI 一番最初に会ったときは、緊張しすぎて記憶にないんですよ(笑)。僕たちからしたら憧れの人で、テレビとかでもよくお見かけする方なので、二人とも緊張しすぎて何を話していたのかまったく覚えていなくて。ふわっとした記憶の中では、とにかく亀田さんが優しかった(笑)。そこはずっと残っていますね。
NARITO 初めましてのときは僕らも正装というか、ジャケットスタイルでお会いしたんですけど、「すごいカチッとした格好で来たね、もっとラフでいいよ」って言ってくださって。そこで心の優しい方なんだなって感じて。
ITSUKI 会えば会うほど亀田さんのお人柄だったり優しさが、本当に温かさに包まれている方だなって毎回感じて。亀田さんと会うときは今もまだ少し緊張するんですけど、それを亀田さんが汲み取ってくださって、「楽曲でこうしたいというところがあれば言ってね」とか「好きなお菓子食べていいよ」とか(笑)、亀田さんから言ってくださるので、そこに毎回救われていますね。
『コナン』テーマソング抜擢から芽生えたプロ意識
――さて、今作には、TVアニメ『ぼくのとなりに暗黒破壊神がいます。』OPテーマ「Take mo’ Chance」が収録されています。アニメの楽曲を手がけたことについてはいかがでしたか?
NARITO 僕はアニメがとても好きなので、この曲で初めてアニメのタイアップをやりますとなったときに、まずその作品の声優さんの名前を見て、「うわっ、福山(潤)さんいるし櫻井(孝宏)さんいるし!」みたいな(笑)。それもあって興奮しながらのレコーディングだったんですけど、いざ放送が始まって、僕たちの声とアニメーションが重なるところを観ると、自分の夢が1つ叶った気がして。そこはすごく感動的な部分もありましたし、アニメーションと重なって、僕たちの音楽は間違っていなかったなっていう1つの自信にも繋がりました。非常に良い経験をさせていただいたなと思っています。
――そこから2ndシングルとなる「星合」は、『名探偵コナン』という国民的アニメのEDテーマに選ばれました。
ITSUKI ドッキリだと思いました(笑)。しかもスタッフさんが意地悪で、「放送されるかわかんないから」ってずっと言われていたんですよ。
NARITO あれはよくない(笑)。
ITSUKI なので、放送が始まるまで二人でドキドキしていて、スタッフさんと一緒に映像を観たときは、最初は「ドッキリじゃなかった!」っていう安堵感がありました(笑)。『名探偵コナン』のファンの方に僕らの曲は受け入れてもらえるのかという不安があったんですけど、放送が終わったあとに「すごく良い曲だった」っていう声もいただき、MVもたくさんの方に観ていただけて……。そこが初めてお客さんの声というものを受けた場所だったので、今の自分たちの活動の糧になっています。
――アニメ好きのNARITOさんとしてはいかがでしたか?
NARITO 『コナン』は小さい頃から、それこそ自分がアニメが好きって気づく前から観ていた作品だったので、そんな作品で歌える衝撃がありつつも、まず先に責任感が来ました。これだけ大きな作品に僕たちが携われるということは、それだけの楽曲を僕たちが出さなくちゃいけないんだっていうプレッシャーとも戦いながらの制作だったので、浮かれるというよりは自分と素直に向き合いながらの時間を過ごしましたね。
――そうしたなかで生まれた「星合」は『コナン』の曲としても、またall at onceを知るうえでも大切な曲になりました。そこから今度は「JUST BELIEVE YOU」で同じく『コナン』の、今度はOPテーマに抜擢されました。
ITSUKI 最初にデモを聴いたときに倉木麻衣さんの声が聴こえてきたので「えっ?」と思って歌詞を見たらクレジットに「作詞:倉木麻衣」って書いてあって……また別の形でドッキリを仕掛けられているのかなって思いました(笑)。それもあって、さっきNARITOが言ったようにより責任感というものが出ましたね。倉木さんや倉木さんのファン、さらに今度はオープニングということでプレッシャーはもちろんありましたし、レコーディングでもお互い悩みました、どうやって歌ったら受け入れてもらえるんだろうって。でもあえて自分たちの良さやall at onceらしさを出したほうがたくさんの人に聴いてもらえるんじゃないか、僕らのことを知ってもらえるんじゃないかと思って、そこをすごく意識してレコーディングしたのを覚えています。
――デビューしてからおよそ半年の濃密な経験は現在の活動に大きな影響がありそうですね。
NARITO めちゃくちゃありました……。
ITSUKI かなりありましたね。技術的な面でもデビューしてからの半年間の楽曲たちによって今の成長があると思いますし、あまりに濃い経験をさせていただいたので、責任感やプロとしての自覚というものも芽生えた半年だったと思います。
名刺代わりの1stアルバム、そして初の有観客ライブへ
――そうした活動を経て、いよいよ待望の1stアルバム『ALL AT ONCE』がリリースされます。アルバムを出すことが決まったときのお二人の感想は?
ITSUKI またさっきのくだりじゃないですけど、アルバムを出すよってなったときは……これもまたドッキリだと思いました(笑)。
NARITO 僕たちall at onceとして「12cm」「Take mo’ Chance」から始まり色んな楽曲と向き合ってきて、それこそ「12cm」をリリースした直後に、新型コロナウイルスの影響で予定していた活動が困難な状況に陥ったりして……僕たちの心境の変化もあって音楽に対しての向き合い方がその期間で変わったと思います。僕らも音楽に対して真摯に向き合うことで、アルバムを通して僕たちall at onceというアーティストがいることを一人でも多くの方に知ってもらいたいという気持ちが大きくなりましたね。
ITSUKI 僕らが音楽をやってきて、その集大成としてアルバムが出せるというのはすごく嬉しかったですし、こういう状況下でも動いてくださるスタッフさんや応援してくださるファンの方々に感謝を込めた意味でも、自分たちの最大限の気持ちを込めたアルバムになっているので、たくさんの方に手にとっていただけたら嬉しいです。
――その『ALL AT ONCE』ですが、アルバムの幕開けは「星合」「JUST BELIEVE YOU」なんですよね。
ITSUKI アルバムの曲順に関しては僕たち二人とスタッフさん、あと亀田さんとで決めました。色々悩んだ結果、やっぱり特に多くの方に知っていただけている「星合」と「JUST BELIEVE YOU」を頭にもってくることで、よりたくさんの方に聴いていただけるんじゃないかなって思って。アルバムは名刺がわりになるので、最初のキャッチーさが大事だと思い、この2曲を最初にもってきました。
――本作はこれまでリリースした楽曲に加えて、新曲も収録されています。まず「オーバーライド」はどんな楽曲になりましたか?
ITSUKI 「オーバーライド」は物理的な距離感としては近いんですけど、心の距離は遠くに離れてしまったような、自分の愛する人への後悔といった感情を込めた楽曲になっているので、ポジティブな楽曲が多いall at onceのなかでは色の違った楽曲になっていますね。ただ、歌詞は後ろめたい感じになっているんですけど、トラックは明るく爽快感がある曲になっていて、そこは今までの形は残しつつという感じになっていますね。
――続きましては「Mission to the moon」。
ITSUKI これは今までの僕たちがやってきたなかで、より80年代であったり、僕が好きなブラックミュージックやソウルのテイストが出ていて。僕らall at onceの楽曲の流れとして、歌い始めはNARITOの場合が多いんですけど、この曲だけは僕からスタートになっているんです。それもやっぱり感覚と理論で考えたうえで、僕が始めに歌うことによってこの曲の良さやサウンドのグルーヴ感が伝わるのかなって。ノリが良い曲でみんな踊り出しちゃいそうな曲なので、ライブでやるのが楽しみですね。
――その直後の「Make it better」はどんな楽曲ですか?
ITSUKI テーマとして、誰しもがつまづくことってあると思うんですけど、つまづいて俯いているときに、前を向こうよっていうメッセージを込めた楽曲になっています。楽曲自体は爽快感がある曲なので、テーマの熱さとは裏腹に聴きやすい楽曲になっていますね。また曲順的にも「Mission to the moon」との繋がりになっているので、そことのテンション感も楽しんでいただけたらなって思いますね。
――そして最後に「Two of us」。
ITSUKI この曲に登場する二人の幸せを願う曲になっているんですけど、歌詞が壮大なんです。”100年先も君と生きていたい”という歌詞が入っているんですけど、そういう愛というものを大きく捉えて、そこにall at onceが伝えるメッセージや音楽観が込められた楽曲になっています。あとコーラスもゴスペル調になっていて、all at onceが歌うウェディングソングみたいな感じになっていますね。
――まさに名刺代わりとなる本作をリリースしたあとの、2022年の3月には東京と大阪で初の有観客ライブが開催されますね。
ITSUKI 僕たちはずっと、二人で奏でるハーモニーを大事にして歌っているので、それをやっと生で届けられる機会をいただけたのがとにかく嬉しいです。それと何より、僕たちはライブが大好きなので。僕たちもそこで初めてファンの皆さんの顔を見られるので、それらを含めてすごく楽しみにしていますし、改めて自分たちのハーモニーを聴いていただくためにたくさん準備を重ねていかないといけないと思っています。すでにライブの準備は始まっていますが、多くのお客さんに「良いライブだな、良いアーティストだな」って感じていただき、一人でも多くの人に届けられるように頑張っていきたいと思いますね。
NARITO all at onceとしてのライブを初めて有観客でできるのは素直に嬉しいっていう気持ちが大きいです。僕は感覚派って話をしましたけど、ライブになると僕たち自身も歌に感情が乗ってよりエモーショナルになるんですよね。それが生歌の良さ、ライブの良さだと思うし、今は僕らを含めた多くの人がそれを求められていると思うので。素直にライブを楽しんで、忘れかけていたライブの楽しさをたくさんの人に届けられたらなと。「星合」「JUST BELIEVE YOU」も多くの人に聴いていただきましたが、それ以外のall at onceの曲をよく知らないなっていう人も、このアルバムを聴いてもらい、生のライブをみんなで楽しんでいただけたらなって思います。
TEXT & INTERVIEW BY 澄川龍一
●リリース情報
all at once 1st アルバム
『ALL AT ONCE』
10月6日(水)発売
【通常盤(CD)】
品番:JBCZ-9124
価格:¥2,750(税込)
<CD収録曲>
1.星合
(読売テレビ・日本テレビ系全国ネット 土曜よる6:00放送「名探偵コナン」エンディングテーマ)
2.JUST BELIEVE YOU
(読売テレビ・日本テレビ系全国ネット 土曜よる6:00放送「名探偵コナン」オープニングテーマ)
3.マカロン
(テレビ東京系 連続ドラマ「シェフは名探偵」オープニングテーマ)
4.12cm
(テレビ朝日「お願い!ランキング 」 4月度エンディングテーマソング)
5.雨上がり架かる虹
(テレビ東京系列「たけしのニッポンのミカタ!」エンディングテーマ)
6.オーバーライド
7.Take mo’ Chance
(アニメ「ぼくのとなりに暗黒破壊神がいます。」OP主題歌)
8.Mission to the moon
9.Make it better
10.Two of us
11.23:59
(MBSドラマ特区「ラブファントム」エンディング主題歌)
12.年をかさねて
(東京シティ競馬 トゥインクルレース35周年 CMテーマソング、
日本テレビ系「それって!?実際どうなの課」10月エンディングテーマ)
【初回限定盤(CD+DVD)】
品番:JBCZ-9123
価格:¥3,850(税込)
<CD収録曲>
通常盤と同様
<特典DVD内容>(品番:JBBZ-9123)
『all at once ONLINE LIVE ~Zero to One~』ライブ映像 約50分
1.雨上がり架かる虹
2.ake mo’ Chance
3.JUST BELIEVE YOU
4.Make it better
5.Two of us
6.オーバーライド
7.Mission to the moon
8.星合
9.12cm
10.JUST BELIEVE YOU with樹徳高等学校ダンス部
■共通封入特典
・「1stライブツアー東京公演のリハーサルに抽選でご招待」応募シリアルナンバー
詳細はこちら(https://aao.beinggiza.com/news/20210903.html)
●ライブ情報
all at once 1stライブツアー
2022年3月5日(土)
【東京】赤羽ReNY alpha
[開場/開演] 18:00/18:30
※開場開演の時間は変更の可能性がございます
2022年3月12日(土)
【大阪】BananaHall
[開場/開演] 18:00/18:30
※開場開演の時間は変更の可能性がございます
関連リンク
all at once 公式サイト
https://aao.beinggiza.com/
all at once 公式Twitter
https://twitter.com/allatonce_info
all at once 公式YouTubechannel
https://www.youtube.com/channel/UCQWp-fQpJ4KpDGd2j8EEgag