TVアニメ『さんかく窓の外側は夜』OPテーマは、フレデリックの「サイカ」。切なさと解放感を兼ね備えたメロディ、“感情や才能を分かり合えたら、未来は開ける”というメッセージをたたえた歌詞が1つになったこの曲は、アニメの世界観と重なりつつ、現在のフレデリックのモードを強く感じられる楽曲に仕上がっている。


リスアニ!WEBでは、「サイカ」の作詞・作曲を手がけた三原康司(b)にインタビュー。楽曲の制作プロセス、『さんかく窓の外側は夜』の印象、幼少期に好きだったアニメ楽曲などについて話を聞いた。

アニメの世界観と“自分たちが感じていること”を重ねて制作した「サイカ」
――新曲「サイカ」は、TVアニメ『さんかく窓の外側は夜』OPテーマ。アニメサイドからのオファーを受けて制作されたそうですね。

三原康司 はい。OPテーマのお話をいただいて、アニメのストーリーだったり、今自分たちが感じていることを重ね合わせながら制作を進めました。まず原作を読ませてもらったのですが、ミステリーでもあり、心霊系でもあるんですが、“目に見えない部分”に重きを置いていて、その描き方がすごく繊細で。音楽も目に見えないものだし、普段から“人の気持ちを動かす”ということも意識しているので、作品にも共感できすぐにのめり込みました。

――霊が見える三角康介、霊媒師の冷川理人もそうですが、作品の主要なキャラクターは自分自身の能力や過去の傷と向き合っていますよね。それを乗り越えようとする姿も、この作品のポイントかと。

三原 そうですね。その話は、楽曲のテーマとも繋がっているんです。
「サイカ」という題名は、華やかな才能、漢字で書くと“才華”。『さんかく窓の外側は夜』のキャラクターは、一人一人にすごい才能があって、お互いに繋がることで、活かし合おうとする。そのことの大切さも、この楽曲を書くときに意識しました。アニメの世界だけではなくて、今の時代に対しても同じことを感じるんですよ。普段の生活の中で人と接するときもそうだし、SNSなどもそうですけど、自分とは違う考えの人に対する姿勢や態度って、すごく大事だと思うんです。一方的に決めつけたり、頭ごなしに否定するのではなくて、相手の立場に立って考えるというか。

――特にコロナ禍以降、価値観や考え方の違いによってぶつかったり、分断されることが増えてますからね。

三原 本作のキャラクターもそれぞれが違う考えをもってるんですけど、ぶつかり合いながらも相手を認め合う。その姿がすごく良いなと思ったし、今の世の中にとっても大事なことだなと。それは一人一人の個性を花咲かせることにも繋がるし、色々な問題の解決にもなるんじゃないかなって。楽曲を通して、そういうメッセージを伝えたいという気持ちもありました。

――今の話は、バンドの在り方にもリンクしていると思います。
異なる個性と音楽性を持ったメンバーが集まって、認め合い、協力しながら音楽を作るのがバンドなので。


三原 たしかに。自分の場合、兄(三原健司)がボーカルですけど、個性は全然違いますからね(笑)。メンバー全員、考え方や持ってる楽器も違ってるんだけど、そのなかでお互いの良いところを取り入れながら制作して……。特に(コロナの)こういう状況になってからは、バンドのことについて何度も繰り返して考えましたね。何が正解かはまだわからないですけど、自信が持てないときに「頑張ろう」と思えるきっかけになったり、少しでも寄り添える音楽を作りたいという気持ちは変わってなくて。

――「サイカ」もまさにそういう曲ですよね。

三原 微力かもしれないけれど、少しでも背中を押せるような音を鳴らし続けたいんですよね。そこに関しては、逆にメラメラと燃えてます(笑)。自分たちはずっと音楽をやり続けたいし、エンタメも絶対に必要なものだと思ってるんですよ。実際にステージに立っているときに、そのことを何度も実感してきたし、そのなかで築き上げたものもあって。コロナになって全部まっさらになってしまった瞬間もあったけど、それでも絶やすことなくやり続けたい。
それも変わらないところですね。


美しいメロディとシティポップ的サウンドも聴きどころ
――「サイカ」のアレンジやサウンドについても聞かせてください。これまでのシングル曲に比べると、大人っぽい雰囲気なのかなと感じましたが、その辺りは意識していましたか?

三原 うん、そうですね。たしかにこれまでのフレデリックのイメージとは、また違った楽曲だと思います。フレデリックらしいリズムを重視しつつも、健司のボーカルの良さやメロウな部分を出したかったんですよね。ただ、こういうテイストの楽曲は、自分たちが元々持っているものでもあるんです。シングル(表題曲)以外のEPやアルバムに入ってる曲には、メロディに重きを置いた曲もあるので。今回は「その方がアニメに合うだろうな」と思って、メロウな部分を押し出しました。

――なるほど。コード進行も洗練されているし、ギターのカッティングも含めて、“フレデリック流のシティポップ”という印象もありました。

三原 シティポップ感はたしかにあるかも。僕は元々音楽的に雑食というか、結構何でも聴くので、こういうサウンドも前から好きなんですよ。
「サイカ」に対してどういう反応が返ってくるのか、すごく楽しみですね。

――メンバーそれぞれのセンスや技術も存分に活かされていますね。レコーディングのときは、全員でスタジオに入ったんですか?

三原 この曲はそうですね。ただ、アレンジを固めるまでは、デモ音源をやり取りすることが多かったんです。僕が作ったデモをメンバーに送って、それぞれが自宅でアレンジを考えて、さらにやり取りして。スタジオに入ったのは本番のレコーディングの日だけで、直接顔を合わせる機会は少なかったかも。

――リモート制作が基本だったんですね。この方法はやっぱり、コロナ禍になってから?

三原 そうです。会話の回数自体は全然減ってないんですけどね。今日の取材みたいにリモートで繋ぐこともできるし、メンバー同士で色んな話をするなかで、各々の状態や考えていることも理解できて。「サイカ」の制作もすごくスムーズでした。楽曲のテーマやメッセージを伝えて、あとは自由にやってもらったんですけど、良い意味で「お、こうきたか」ということも多かったんですよ。
「これは違うな」ではなくて、自分では思いつかないアイデアをメンバーが加えてくれたことで、楽曲がさらに良くなった。その過程も面白くて、自分自身も楽しめましたね。

――コミュニケーションを取ることが大事なんですね。

三原 そうだと思います。楽曲のテーマを共有して、お互いの考え方を理解して、活かしあって……この曲の制作自体も作品のメッセージに合ってたのかも(笑)。さっきも言いましたけど、この期間はバンド活動について改めて考え直すことも多くて。大変な時期もあったけど、普段からよく話していていたし、その結果が楽曲の制作に現われるんだなと。それも1つの発見でした。

三原康司が手がけたジャケットは、異なるモチーフを融合
――ジャケットのアートワークも康司さんが担当。かなりサイケデリックなデザインですね。

三原 そうですね(笑)。「アニメのメッセージ性や、そのときに自分たちが思っていたことを重ねながら制作した」という話を最初にしましたけど、その時点でデザインのイメージもあったんです、自分の中に。


――花、心臓、手などが組み合わさったデザインですね。

三原 違う形のモチーフをコラージュしたかったんです。グラフィックも写真もあって、それが1つのデザインになるっていう。ちなみに“手”は、健司の手なんですよ。撮影したものを組み合わせたんですけど、楽曲に込めた思いだったり、“今はこういう考え(他者を尊重し、理解すること)をもつことが大事なんだ”ということを表わしていて。色々な受け取り方ができると思うので、想像しながら見てもらえたら嬉しいですね。

――想像力を刺激するデザインだと思います。ちょっと横尾忠則さんのテイストもあるような……。

三原 好きですからね(笑)。特にポスターのデザインがそうですけど、横尾さんは、人物の写真をモチーフにしたり、グラフィックやイラストなどを混ぜて構成することも多いじゃないですか。その影響はあるかもしれないですね。

――康司さんは美大出身だし、元々アート志向も強くて。

三原 楽曲や歌詞を書くときに、まず絵から始めることもあるんですよ。自分のなかのイメージと曲を繋げるトライは、今もやってますね。『さんかく窓の外側は夜』の作者のヤマシタトモコさんの絵もすごく繊細で、そこにも強く惹かれました。作品自体のテーマ性と線のタッチや描写が合っているし、それが物語を進んでいく力になっていて。

――アニメ版のOP映像はどうでしたか?

三原 すごく良かったです。映像と楽曲がしっかり合っていて、嬉しかったですね。小さい頃に観ていたアニメのオープニングの曲って、今も歌えるんですよ。ストーリーにも繋がっているし、すごく記憶に残ってる。自分たちが鳴らしている音楽がアニメと一緒に届いて、色んな人たちと出会えるのは本当に楽しみです。

――ちなみに康司さん自身が印象に残ってるアニメの楽曲は?

三原 えーと、結構たくさんありますよ。ベタなところでは、『デジモンアドベンチャー』の「Butter-Fly」(和田光司)。学生の頃、カラオケに行くと全員歌えましたから。あとは『幽遊白書」の「微笑みの爆弾」(馬渡松子)も好きでしたね。

――最後にバンドの近況について聞かせてください。今年4月に「名悪役」、そして今回「サイカ」をリリース。その後も制作は続いていますか?

三原 はい。フルアルバム『フレデリズム3」を出すことを発表しているので、制作はずっとしています。形になっている曲もあるんですけど、これから制作する曲もあるので、引き続き頑張らないと。これからさらに忙しくなるだろうし……もちろん、嬉しいことなんですけど(笑)。10月末からツアーが始まるんですが、そこにも『フレデリック3』の楽曲のイメージが含まれているんですよ。

――ということは、未発表の新曲が披露されることも……?

三原 あ、どうだろう?それは秘密というか、「楽しみにしていてください」とだけ言っておきます(笑)。ツアーに関しては、開催できること自体がすごく嬉しいですね。こういう状況になって、全国各地に自分たちから行って、音楽を届けることが難しくなって……。フェスやイベントも延期・中心が続いて、地方のファンの方に直接届ける機会がほとんどなくなったので、そのなかで自分たちのツアーをやれることは本当に嬉しいし、少しでも生活に彩りを与えられたらいいなと思ってます。ライブの内容に関しても色々と考えているんですけど、“今”感じていることをそのまま表現したいなと。自分たちもすごく楽しみです。

――コロナ禍においても、バンドは確実に前進を続けているんですね。

三原 そうだと思います。思うように動けない時期も、何ができるだろう?と考えて、それを実行して。「サイカ」にも、それが音として出ているんだと思います。

――素晴らしい。メンバーの皆さんもお元気ですか?

三原 元気ですよ(笑)。楽曲作りのこともそうだし、「サイカ」についても色々と話していて。和気あいあいとしつつ、気合いも入ってます!

TEXT & INTERVIEW 森 朋之

●配信情報
TVアニメ『さんかく窓の外側は夜』OPテーマ
フレデリック デジタルシングル
「サイカ」

2021月10日6日(水)リリース

配信はこちら

●作品情報
TVアニメ『さんかく窓の外側は夜』
2021年10月3日(日)22:00よりTOKYO MXほかにて放送開始
FODにて独占配信!

TOKYO MX (初回) 10月3日スタート 毎週日曜 22:00~
サンテレビ  10月3日スタート 毎週日曜 23:30~
BSフジ 10月5日スタート 毎週火曜 24:00~
CS「ホームドラマチャンネル」 11月より放送スタート
FOD独占配信 10月3日スタート 毎週日曜 22:00~ 最新話配信

<イントロダクション>
「わたしの運命だ、君が。」
除霊師&助手による史上最強の心霊探偵バディが誕生!

昔から不気味なモノを「視て」しまう体質の三角康介は、偶然出会った除霊師・冷川理人にその才能を見い出され、心霊探偵コンビを無理やり組まされてしまう。
「これは運命の出会いですよ」
三角に執着する冷川と、危うげな冷川を放っておけない三角。数々の事件を解決していくなか、浮かび上がる“運命” の真実とは──。
ヤマシタトモコによる漫画『さんかく窓の外側は夜』(クロフネコミックス/リブレ刊)。
累計発行部数200万部を突破したベストセラーコミックスが、実写映画化に続きTVアニメ化!「ホラー×ミステリー×バディ愛」の三拍子そろった新感覚“霊感エンターテインメント”がこの秋、幕を開ける!

【原作】
ヤマシタトモコ「さんかく窓の外側は夜」(クロフネコミックス/リブレ刊にて全10巻発売中)

【キャスト】
島﨑信長(三角康介役)
羽多野 渉(冷川理人役)
斉藤壮馬(迎 系多役)
安済知佳(非浦英莉可役)
三上 哲(半澤日路輝役)
諏訪部順一(逆木一臣役)ほか

【スタッフ】
監督・キャラクターデザイン:安田好孝
チーフディレクター:岩永大慈
シリーズ構成:関根アユミ
アニメーション制作:ゼロジー
製作:さんかく窓プロジェクト

主題歌
OPテーマ:フレデリック「サイカ」
EDテーマ:羽多野 渉「Breakers」

©ヤマシタトモコ/リブレ・さんかく窓プロジェクト

関連リンク
フレデリック 公式サイト
https://frederic-official.com/

フレデリック 公式Twitter
https://twitter.com/frederitter

三原康司/フレデリック 公式Instagram
https://www.instagram.com/miharakoji/

『さんかく窓の外側は夜』公式サイト
https://sankakumado-anime.com
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