TVアニメ『月とライカと吸血姫』のOP主題歌が、ALI PROJECTの「緋の月」で華々しく飾られる。作品のテーマとなる月(宇宙)、少女、吸血姫、秘められた想い……どれをとってもアリプロにピッタリの世界観。
――お久しぶりのシングルですね(※昨年リリースの「時空の迷い人」はデーモン閣下×宝野アリカとしてのシングル)。
宝野アリカ 「卑弥呼外伝」(2017年)以来なので、4年ぶりのシングルになります。ランティスさんからというのもお久しぶりですし、アニメのタイアップとなると、もっとお久しぶりです。
――『月とライカと吸血姫』のOP主題歌ですが、このお話をいただいたときは、どう思われましたか?
宝野 作品のタイトルを見たときに「あっ、吸血姫だ!超嬉しい!」って(笑)。吸血姫なら衣装は牙を作ろう、なんて考えました。でも、脚本を読んだら、吸血鬼(姫)であることが本筋ではなく、宇宙を目指す少年少女のお話だったので、それならいつもの派手系のアリプロじゃないほうが良いかな……等々、片倉さんと相談しながら制作に入りました。
――すでに脚本が出来上がっていたんですね。物語を読んだ感想はいかがでしたか?
宝野 そのときは3月くらいだったかな。脚本が11話まであったんですよ。もう、すごく面白くて泣けるの。毎回、わーいいお話だなって。
――先に曲が出来てから作詞をする流れだと思いますが、片倉さんから作曲のコンセプトなどは聞いていますか?
宝野 はい。(2つに折りたたまれた紙を取り出しながら)今日は片倉さんからレポートを預かっています。読みますね。「アリプロの主題歌はインパクトを重視したサビ先が多いのですが、今回は静かにメランコリックなはじまりから激しく変化するサビという風に作って、いつか月を……というカタルシスを表現しました。」とのことです。
――ありがとうございます(笑)。大変わかりやすいです。作詞についてはいかがでしょう?
宝野 静かな部分と情熱的な部分を併せ持った曲なので、夢を実現させるためにがんばる主人公のひたむきな強さを表現しました。イリナが内に秘めているものを。それから、片倉さんが先に脚本読んでいて、「これは宇宙の話だけど、イリナとレフの恋愛の物語でもあるんだ!」って、盛り上がっていたので、少しそういう要素も入れてみて。あからさまな恋愛感情ではない、繊細な心の交流や信頼関係があるのも素敵だと感じました。
――物語が進むと、よりOPがグッときそうですね。
宝野 OPの90秒サイズでは、サビ出(サビからはじまる)になっていますが、CDサイズでは先にAメロBメロが入ります。前半は静かに展開して、サビで盛り上がって大和ソング風の勇ましい印象に変わります。サビへと繋がる駆け上がりも特徴的ですね。
――“翼に乗って~”のところですね。すごくアリプロらしいメロディだと思いました。それから、イントロのピアノも印象的でした。軽快だけど緊張感があって。
宝野 そうですね。こういうはじまりの曲は、最近なかった気がします。「北京LOVERS」という昔の曲が構成としては少し似てるかな。
――ジャケットやMVを見てひとつ不思議だったんですが、タイトルが「緋の月」なのに、赤ではないんですね。
宝野 あははは。
――たしかに、MVに短く入っていた赤い光のカットはインパクトがありました。衣装もすごかったです。
宝野 MVでは2つの衣装があります。ジャケットでも使われているシルバーは、上がフリルのショールになっていてかなり裾が長いのです。伸びるんですよ。目が赤いのと、髪で隠れてるけど耳が尖ってるのも特徴です。もうひとつの紺色のドレスは、本当は私が持っていた同じ色の別のドレスを着たかったんですが、そっちはスカートがチュール素材だったので、グリーンバックだとチュールは背景がキレイに抜けないんですって。それで新しく作ったもので望みました。
――全編グリーンバックでの撮影だったんですか?
宝野 そうです。今回は全部合成でした。お月様に座っているシーンも、実は台に座ってます(笑)。でも合成だからこそ、実写では作れないような表現ができたと思います。崖の上を歩いたりできるのもグリーンバックならではですね。
――鏡のカット(ジャケット写真にもなっている)もすごく良かったです。
宝野 これは鏡で小さな部屋を作って撮影しています。無限の宇宙のイメージです。
――合わせ鏡の撮影は大変ですよね。
宝野 そう、大変なの。少しでも映り込みがあったらダメなので、照明やカメラを入れる角度にも細心の注意が必要で。カメラの方もスタッフさんも黒子みたいな服を着て映らないように映らないように……私の動きを見ながら慎重に撮影してました。
――カップリングの「ノスフェラトゥ」についても。この曲も『月とライカ~』の世界観があるように感じました。
宝野 こちらはアニメとは関係ないけど、吸血鬼=ノスフェラトゥ被せで。「ノスフェラトゥ」という言葉は、同じタイトルの吸血鬼の映画があるんですよ。その話を聞いてから、ノスフェラトゥで曲を書きたいとずっと思っていました。
――アリプロのタイトルや歌詞で「ノスフェラトゥ」が未出だったのは、ちょっと意外です。
宝野 ありそうでしょ?でもなかったんですよ。「血の断章」という吸血鬼の女の子の曲はあるけど、ノスフェラトゥは初です。露骨な吸血鬼の物語ではないけど、儚くて冷たい曲ができるなと思い、片倉さんに「カップリングはノスフェラトゥでいくからね」と先に伝えておきました。ここで、また片倉さんからのレポートの登場です。
――お願いします(笑)。
宝野 はい。
――エスニックなメロディもアリプロらしさですよね。
宝野 定番っぽいけど、けっこう難しいんですよ。言葉の繋ぎ方とか、息継ぎの入れ方とか。今回だとサビのところですね。メロディではなく言葉で切らないといけないから、意識して歌わないと息切れします。
――作詞面でのポイントはいかがでしょう?
宝野 ノスフェラトゥと対応する言葉として、エスメラルとエターナルを入れています。エスメラルは「儚い」という意味で、エターナルは「永遠」ですね。それと、最後のノスフェラトゥのところは、メロディ通りに歌う予定でしたが、出来上がってみたらセリフの方が良いんじゃない? と言われて、囁くことになりました。ちょっと照れました(笑)。
――終わりのところですね。ゾクッとします(笑)。リリース後の予定などはありますか?
宝野 まだしばらくコンサートはないけれど、「緋の月」はリリースイベントがあります。オンラインなので、たくさんの方にご参加いただけると思います。あとは、来年アリプロが30周年を迎えるので、そのときはコンサートができたら良いですね。それまではゆっくりしたいところですが、最近は次のアルバムの制作をやっているので、ひたすら籠もってます。今年12月にリリース中にはできる予定です。
――制作は、外に出て様々な刺激を受けて、という行動が大切になりますよね。
宝野 そうですね。すごく大切だと思います。もっといろんなところに行きたいけれど、まだ我慢の時期かな。美術館も予定していた展示が中止になることも多くて。仕方がないことだけど、ちょっとつまんないなって思います。
――では最後に読者にメッセージをお願いします。
宝野 久しぶりのALI PROJECTのシングルなので、アニメともどもご贔屓に。『月とライカと吸血姫』、すごく面白い作品です。ご覧になって、OPがいいなって思ったらぜひフルで聴いてみてほしいです。CDだと構成が違うので印象が変わると思います。両方楽しんでいただけたら嬉しいです。
INTERVIEW & TEXT BY 池田 桂
●リリース情報
「緋ノ月」
10月20日発売
【初回限定盤】
品番:LACM-34176
価格:¥2,420(税込)
【通常盤】
品番:LACM-24176
価格:¥1,320(税込)
<CD>
1.緋ノ月
2.ノスフェラトゥ
3.緋ノ月(off vocal)
4.ノスフェラトゥ(off vocal)
<Blu-ray>
緋ノ月~Music Clip~
関連リンク
ALI PROJECTオフィシャルサイト
https://aliproject.jp/
久しぶりのシングル、また久しぶりのタイアップ曲に胸踊らせるアリカ様が、楽曲制作の裏話と魅力について語ってくださいました。お手紙で参加してくださった片倉さんの作曲レポートも必見です!
――お久しぶりのシングルですね(※昨年リリースの「時空の迷い人」はデーモン閣下×宝野アリカとしてのシングル)。
宝野アリカ 「卑弥呼外伝」(2017年)以来なので、4年ぶりのシングルになります。ランティスさんからというのもお久しぶりですし、アニメのタイアップとなると、もっとお久しぶりです。
――『月とライカと吸血姫』のOP主題歌ですが、このお話をいただいたときは、どう思われましたか?
宝野 作品のタイトルを見たときに「あっ、吸血姫だ!超嬉しい!」って(笑)。吸血姫なら衣装は牙を作ろう、なんて考えました。でも、脚本を読んだら、吸血鬼(姫)であることが本筋ではなく、宇宙を目指す少年少女のお話だったので、それならいつもの派手系のアリプロじゃないほうが良いかな……等々、片倉さんと相談しながら制作に入りました。
――すでに脚本が出来上がっていたんですね。物語を読んだ感想はいかがでしたか?
宝野 そのときは3月くらいだったかな。脚本が11話まであったんですよ。もう、すごく面白くて泣けるの。毎回、わーいいお話だなって。
映画を見ているような感覚でした。
――先に曲が出来てから作詞をする流れだと思いますが、片倉さんから作曲のコンセプトなどは聞いていますか?
宝野 はい。(2つに折りたたまれた紙を取り出しながら)今日は片倉さんからレポートを預かっています。読みますね。「アリプロの主題歌はインパクトを重視したサビ先が多いのですが、今回は静かにメランコリックなはじまりから激しく変化するサビという風に作って、いつか月を……というカタルシスを表現しました。」とのことです。
――ありがとうございます(笑)。大変わかりやすいです。作詞についてはいかがでしょう?
宝野 静かな部分と情熱的な部分を併せ持った曲なので、夢を実現させるためにがんばる主人公のひたむきな強さを表現しました。イリナが内に秘めているものを。それから、片倉さんが先に脚本読んでいて、「これは宇宙の話だけど、イリナとレフの恋愛の物語でもあるんだ!」って、盛り上がっていたので、少しそういう要素も入れてみて。あからさまな恋愛感情ではない、繊細な心の交流や信頼関係があるのも素敵だと感じました。
――物語が進むと、よりOPがグッときそうですね。
宝野 OPの90秒サイズでは、サビ出(サビからはじまる)になっていますが、CDサイズでは先にAメロBメロが入ります。前半は静かに展開して、サビで盛り上がって大和ソング風の勇ましい印象に変わります。サビへと繋がる駆け上がりも特徴的ですね。
――“翼に乗って~”のところですね。すごくアリプロらしいメロディだと思いました。それから、イントロのピアノも印象的でした。軽快だけど緊張感があって。
宝野 そうですね。こういうはじまりの曲は、最近なかった気がします。「北京LOVERS」という昔の曲が構成としては少し似てるかな。
――ジャケットやMVを見てひとつ不思議だったんですが、タイトルが「緋の月」なのに、赤ではないんですね。
宝野 あははは。
突っ込まれるかなって思ってました。赤い方が良かったかしら? 今回は印象的に赤を使いたかったんです。というのも、去年のアルバムの『人生美味礼讃』も赤で、少し前のシングルの「波羅蜜恋華」も赤い衣装だったので、これ以上の連続は避けたくて。それに赤を使わなくても赤を表現することはできるじゃん? なんて思い、シルバーのドレスに決めました。
――たしかに、MVに短く入っていた赤い光のカットはインパクトがありました。衣装もすごかったです。
宝野 MVでは2つの衣装があります。ジャケットでも使われているシルバーは、上がフリルのショールになっていてかなり裾が長いのです。伸びるんですよ。目が赤いのと、髪で隠れてるけど耳が尖ってるのも特徴です。もうひとつの紺色のドレスは、本当は私が持っていた同じ色の別のドレスを着たかったんですが、そっちはスカートがチュール素材だったので、グリーンバックだとチュールは背景がキレイに抜けないんですって。それで新しく作ったもので望みました。
――全編グリーンバックでの撮影だったんですか?
宝野 そうです。今回は全部合成でした。お月様に座っているシーンも、実は台に座ってます(笑)。でも合成だからこそ、実写では作れないような表現ができたと思います。崖の上を歩いたりできるのもグリーンバックならではですね。
――鏡のカット(ジャケット写真にもなっている)もすごく良かったです。
宝野 これは鏡で小さな部屋を作って撮影しています。無限の宇宙のイメージです。
――合わせ鏡の撮影は大変ですよね。
宝野 そう、大変なの。少しでも映り込みがあったらダメなので、照明やカメラを入れる角度にも細心の注意が必要で。カメラの方もスタッフさんも黒子みたいな服を着て映らないように映らないように……私の動きを見ながら慎重に撮影してました。
――カップリングの「ノスフェラトゥ」についても。この曲も『月とライカ~』の世界観があるように感じました。
宝野 こちらはアニメとは関係ないけど、吸血鬼=ノスフェラトゥ被せで。「ノスフェラトゥ」という言葉は、同じタイトルの吸血鬼の映画があるんですよ。その話を聞いてから、ノスフェラトゥで曲を書きたいとずっと思っていました。
――アリプロのタイトルや歌詞で「ノスフェラトゥ」が未出だったのは、ちょっと意外です。
宝野 ありそうでしょ?でもなかったんですよ。「血の断章」という吸血鬼の女の子の曲はあるけど、ノスフェラトゥは初です。露骨な吸血鬼の物語ではないけど、儚くて冷たい曲ができるなと思い、片倉さんに「カップリングはノスフェラトゥでいくからね」と先に伝えておきました。ここで、また片倉さんからのレポートの登場です。
――お願いします(笑)。
宝野 はい。
「当初、イリナのバラードと思いましたが、やはりそこは吸血鬼ですので、神秘的で少しエスニックな愛の歌を作りました。」とのことです。ぽわ~んとしたエスニックな感じが特徴ですね。
――エスニックなメロディもアリプロらしさですよね。
宝野 定番っぽいけど、けっこう難しいんですよ。言葉の繋ぎ方とか、息継ぎの入れ方とか。今回だとサビのところですね。メロディではなく言葉で切らないといけないから、意識して歌わないと息切れします。
――作詞面でのポイントはいかがでしょう?
宝野 ノスフェラトゥと対応する言葉として、エスメラルとエターナルを入れています。エスメラルは「儚い」という意味で、エターナルは「永遠」ですね。それと、最後のノスフェラトゥのところは、メロディ通りに歌う予定でしたが、出来上がってみたらセリフの方が良いんじゃない? と言われて、囁くことになりました。ちょっと照れました(笑)。
――終わりのところですね。ゾクッとします(笑)。リリース後の予定などはありますか?
宝野 まだしばらくコンサートはないけれど、「緋の月」はリリースイベントがあります。オンラインなので、たくさんの方にご参加いただけると思います。あとは、来年アリプロが30周年を迎えるので、そのときはコンサートができたら良いですね。それまではゆっくりしたいところですが、最近は次のアルバムの制作をやっているので、ひたすら籠もってます。今年12月にリリース中にはできる予定です。
――制作は、外に出て様々な刺激を受けて、という行動が大切になりますよね。
宝野 そうですね。すごく大切だと思います。もっといろんなところに行きたいけれど、まだ我慢の時期かな。美術館も予定していた展示が中止になることも多くて。仕方がないことだけど、ちょっとつまんないなって思います。
――では最後に読者にメッセージをお願いします。
宝野 久しぶりのALI PROJECTのシングルなので、アニメともどもご贔屓に。『月とライカと吸血姫』、すごく面白い作品です。ご覧になって、OPがいいなって思ったらぜひフルで聴いてみてほしいです。CDだと構成が違うので印象が変わると思います。両方楽しんでいただけたら嬉しいです。
INTERVIEW & TEXT BY 池田 桂
●リリース情報
「緋ノ月」
10月20日発売
【初回限定盤】
品番:LACM-34176
価格:¥2,420(税込)
【通常盤】
品番:LACM-24176
価格:¥1,320(税込)
<CD>
1.緋ノ月
2.ノスフェラトゥ
3.緋ノ月(off vocal)
4.ノスフェラトゥ(off vocal)
<Blu-ray>
緋ノ月~Music Clip~
関連リンク
ALI PROJECTオフィシャルサイト
https://aliproject.jp/
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